拝察申し上げます(読み:はいさつもうしあげます)について、意味と上司や目上への正しい使い方、注意点をビジネスメールの例文つきで誰よりもくわしく解説していく記事。
まず簡単にまとめを。
「拝察申し上げます」の意味は直訳すると「(相手の心中や立場・事情を)察する」。
敬語をつかっているため実際にはもっと丁寧で「お察しいたします」という意味になります。
- 【例文】日頃のご心労はいかほどであったかと拝察申し上げます。
- 【例文】ご心労も多々おありかと拝察申し上げます。
- 【例文】このたびのこと、皆様のご心痛はいかほどかと拝察申し上げます。
たとえば上記のようにすると「(相手の苦労などを)お察しますよ…お気の毒に…」というニュアンスでつかえます。これらはよくお見舞いのビジネスメールでつかわれます。
ほかにもある使い方としては。
上司なり社内目上・取引先のおかれている立場に共感しつつ、でも何かしらお願いしないといけないとき。
- 【例文】ご多忙のことと拝察しますが、お早めにご対応いただけますと幸いです。
- 【例文】ご多用のことと拝察いたしますが、お早めにお返事いただければ幸いです。
たとえば上記のように「拝察しますが・拝察いたしますが」とした上で「忙しい状況とは察しますが~」という意味でビジネスメール結びにつかうと丁寧です。これらはとくに催促メールやお願い・依頼メールによくつかわれます。たとえ相手が窓際族であろうと関係なくつかえる気づかいのフレーズです。
どの例文も社内メールで目上(上司や先輩)につかっても、社外のビジネスメールにつかってもよい丁寧な敬語表現。
なお。
「拝察申し上げます」の部分は「拝察いたします※現在形」「拝察します※現在形」「拝察いたしております※進行形」に言い換えても丁寧です。
ざっくりとした解説はこれにて終了。
くわしくは本文中にて意味と使い方、注意点を述べていきます。
※長文になりますので、時間の無い方は「見出し」より目的部分へどうぞ。
“拝察申し上げます”の意味
拝察(読み:はいさつ)の意味は・・・
- 他人の事情や心中を思いやることを謙っていう語
つまり「他人の事情や心中を察すること」の謙譲語ですね。
「察する」に謙譲表現「拝」をくっつけているため上記の意味になります。
「拝察申し上げます」だと「他人の事情や心中を察する」の意味となります。
身近な「拝察申し上げます」のたとえ・例文
日常生活ではほとんど使うことのない「拝察申し上げます」ですが…
「拝察申し上げます」って一体どんなシーンでつかえるのかというと身近ではたとえば…
- 異性にフラれてつらい心中を察するよ…
というときに「xxさんの悲しみはいかほどかと拝察申し上げます」 - 身内が亡くなってつらい心中を察するよ…
というときに「心中拝察申し上げます」 - 悩ましい部下をかかえる苦労を察するよ…
というときに「ご心労も多々おありかと拝察申し上げます」 - 忙しい状況を察するけど何とかお願いしたい…
というときに「ご多忙のことと拝察申し上げますが、何卒よろしくお願い申し上げます」 - 今後ビジネスはイケイケになると推察しています
というときに「貴社のインドビジネスはますます発展するものと拝察申し上げます」
こんなシーンでつかいます。ここではネガティブな内容ばかりになりましたが「お喜びはいかほどかと拝察申し上げます」のようにポジティブな事柄についても同様につかえます。
【補足①】”拝察申し上げます”の敬語解説
なお補足として「拝察申し上げます」の敬語を解説しておきます。
- 「拝察」=「察すること」の意味の謙譲語(単体では名詞)
- 「申し上げる」=「する」の意味の謙譲語
- さらに丁寧語”ます”をくっつけると「拝察申し上げます」となる
上記のようにして「察する」を敬語にしています。
「①察すること」「②する」という2つの異なる単語にそれぞれ謙譲語を用いているため二重敬語ではなく、正しい敬語です。
ビジネスメールでよく使う以下の敬語と成り立ちとしては同じ。
- ご報告申し上げます
“①報告”に謙譲語「ご」で「ご報告」
“②する”を謙譲語「申し上げる」に変換し丁寧語「ます」で「申し上げます」 - ご連絡申し上げます
“①連絡”に謙譲語「ご」で「ご連絡」
“②する”を謙譲語「申し上げる」に変換し丁寧語「ます」で「申し上げます」 - お知らせ申し上げます
“①知らせる”に謙譲語「お」で「お知らせ」
“②する”を謙譲語「申し上げる」に変換し丁寧語「ます」で「申し上げます」 - お願い申し上げます
“①願う”に謙譲語「お」で「お願い」
“②する”を謙譲語「申し上げる」に変換し丁寧語「ます」をくっつけ「申し上げます」
もし「拝察申し上げます」が二重敬語になるのであれば「ご報告申し上げます」や「お知らせ申し上げます」「お願い申し上げます」も二重敬語になりますよね??
ところが実際にはどれも正しい敬語でありビジネスメールによく使われます。
【補足②】”〜申し上げます”の意味と敬語
「〜申し上げます」は「〜を言う・〜する」という意味の敬語。
謙譲語「〜申し上げる」に丁寧語「ます」をくっつけて敬語にしています。
使い方はたとえば、
- 例文①それでは申し上げます。→「言う」の意味の敬語(謙譲語)
- 例文②申し上げるまでもない事ですが…→「言う」の意味
- 例文③祝辞を申し上げます。→「言う」の意味
というように「〜を言う」の意味としてつかいます。
また。
このほかにも「〜する」のかしこまった敬語として、
- 例文④ご報告申し上げます。→「報告する」の意味
- 例文⑤ご案内申し上げます。→「案内する」の意味
- 例文⑥ご挨拶申し上げます。→「挨拶する」の意味
- 例文⑦お願い申し上げます。→「お願いする」の意味
としても使います。
さらに。
例文④⑤⑥の使い方は謙譲語「〜致します」「お(ご)〜します」にも言い換えOK。「〜申し上げます」とするとより堅苦しい文章になりますので、公式な挨拶などのビジネスメールにおおく用います。
使い方
つづいて「拝察申し上げます」の使い方について。
「(相手の心中や立場・事情を)察する」という意味ですので、上司なり社内目上・取引先のおかれている立場に共感するべきビジネスシーンでつかいます。
使い方①お見舞いビジネスメールなど
「拝察申し上げます」の使い方。
ほかにもある使い方としては。
- 【例文】日頃のご心労はいかほどであったかと拝察申し上げます。
- 【例文】ご心労も多々おありかと拝察申し上げます。
- 【例文】このたびのこと、皆様のご心痛はいかほどかと拝察申し上げます。
たとえば上記のようにすると「(相手の苦労などを)お察しますよ…お気の毒に…」というニュアンスでつかえます。これらはよくお見舞いのビジネスメールでつかわれます。
使い方②”拝察します・いたします”として催促メールにつかう
「拝察申し上げます」の使い方。
「拝察申し上げます」ではなく「拝察いたします・拝察します」に言い換えさらに「ご多忙=とても忙しいこと」「ご多用=忙しいこと」をくっつけて、
- 例文「ご多忙のことと拝察いたしますが+お願いフレーズ」
- 例文「ご多用のことと拝察いたしますが+お願い」
とすると「忙しい状況とは察しますが+お願い」の意味となります。使い方はとくに催促ビジネスメールにおいて、たとえば以下のようにすると上司なり目上・取引先への配慮が感じられて好感がもてます。
- 返信/連絡を催促する時のメール結び
例文「ご多忙のことと拝察いたしますが、ご連絡(ご返信・ご回答・お返事)いただければ幸いです。」
例文「ご多用のことと拝察いたしますが、ご返信いただけましたら幸いです。」 - 質問メールの返事を催促するメール結び
例文「ご多忙のことと拝察いたしますが、どうかご教示いただけますと幸いです。」
例文「ご多用のことと拝察いたしますが、ご教示いただけますと幸甚に存じます。」 - 仕事の依頼を催促するメール結び
例文「ご多忙のことと拝察いたしますが、何卒ご対応いただければ幸いです。」
例文「ご多用のことと拝察いたしますが、お取り計らいの程お願い申し上げます。」 - 検討依頼メールの催促をする時
例文「ご多忙のことと拝察いたしますが、何卒ご検討いただければと存じます。」
例文「ご多用のことと拝察いたしますが、ご検討いただけますと幸いです。」
のように催促メールの文末・結びに添えると丁寧です。あとは催促する内容におうじて後半部分をそれっぽく言い換えればいくらでも応用できますね。
もちろん催促メールでなくても仕事の依頼・お願いをするときに「忙しい状況とは察しますが+お願い」の意味でもちいてもOK。
使い方③その他「何かしらお察ししますよ」と言いたい時
「拝察申し上げます」の使い方。
あとは「何かしらお察ししますよ」と言いたいときであれば大抵はつかえます。
たとえば、
- 【例文】xx様のこれまでの努力が実を結びこのたびのご栄転につながったものと拝察申し上げます。(栄転のお祝いフレーズ)
- 【例文】今後の化学業界は東南アジアの強い成長をうけ、ますます発展していくものと拝察いたしております。
- 【例文】このたびの東南アジア支店オープンを受け、皆様のご期待はいかほどかと推察申し上げます。(挨拶など)
などのようなビジネスシーンにつかいますね。
【注意点】”拝察申し上げます”はこう使う!
つづいて「拝察申し上げます」をつかうときの注意点について簡単に。
①”ご拝察申し上げます”は二重敬語!
「拝察申し上げます」をつかうときの注意点その一。
もっとも初歩的な敬語の使い方なのですが…「ご拝察申し上げます」はNGです。
「拝察」はすでに「察すること」の敬語(謙譲語)なのに、さらに謙譲語「ご」をくわえてしまっています…
結果として「察すること」に①謙譲語「拝察」+②謙譲語「ご」としており二重敬語になりますね。※二重敬語とはひとつの単語におなじ種類の敬語を2回つかうことでありNGです。
あるいは。
「お(ご)~申し上げる」のひとかたまりを謙譲語として見たとき。「ご拝察申し上げます」でもいいんじゃないのか?とする意見もあります。ただ「~する」の謙譲語が「お(ご)~申し上げる」だという解釈を適用した場合には「拝察」が謙譲語であるため、そもそも二重敬語ということになります。
②”拝察してください”は間違い敬語!
「拝察申し上げます」をつかうときの注意点その二。
こちらも初歩的な敬語の使い方なのですが…「察してほしい!察してください!」と言いたいときに「拝察してください!」は間違い敬語です。
「拝察」は謙譲語であるため自分の行為につかい相手の行為にはつかいません。※例外あり
たとえば以下の使い方は間違い敬語となりNGです。十分にお気をつけください。
- NG例×上司なり目上・取引先が拝察申し上げます「どうか拝察してください」
- NG例×上司なり目上・取引先に拝察いただく「どうか拝察してもらった上で了解いただけますか?」
相手の行為には基本的に謙譲語ではなく尊敬語をつかいます。※例外あり
したがって。
察することの尊敬語「高察・賢察」や察するの尊敬語「お察しになる」をつかいます。以下のようにすると正しい敬語になりますね。
- 正しい例◎「どうかご賢察のほどお願い致します」
- 正しい例◎「どうかご高察の上、ご了承いただけますと幸いです」
こうすると「お察しください」の意味の丁寧な敬語となります。
③拝察申し上げます・拝察申し上げますは二重敬語ではない!
あとは注意点というよりもよくある敬語の勘違いについて。
「拝察申し上げます」「拝察申し上げます」は二重敬語だから誤りだという意見もあります。ただし答えはどちらも二重敬語ではなく100%正しい敬語です。
なぜ「拝察申し上げます」や「拝察申し上げます」が間違い敬語のように感じてしまうかというと…
「拝察」はすでに謙譲語であり、さらに「する」の謙譲語「申し上げる・いたす」をつかって「拝察申し上げる・拝察いたす」としているから…
「拝察=謙譲語」×「申し上げる・いたす=謙譲語」
「拝察申し上げる」は「謙譲語 x 謙譲語」だから二重敬語??
このようなロジックで二重敬語だという意見がでてくるのかと。
ただし答えは…「二重敬語ではない」です。
二重敬語とは「ひとつの語におなじ敬語を二回つかうこと」であり敬語のマナー違反です。
たとえば「お伺いいたす」「お伺いする」などが二重敬語の例。「行く・尋ねる」の謙譲語「伺う」をつかっているのに、さらに「お〜いたす」「お〜する」という謙譲語をつかっているためです。
ところが。
「拝察申し上げる・拝察いたす」は以下のように「①察すること」「②する」という2つの異なる単語にそれぞれ謙譲語を用いているため二重敬語ではなく、正しい敬語の使い方をしているのですね。
①「拝察」=「察すること」の意味の謙譲語(単体では名詞)
②「申し上げる」「いたす」=「する」の意味の謙譲語
くわしくは以下の記事にて。
【例文】ビジネスメール全文
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「拝察申し上げます」の使い方をビジネスメール例文とともにご紹介。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
ビジネスメール例文①メールの返事を催促する(to社外)
メール件名:転送Fw: 【再送】貴社訪問のお願い(転職・ノマド)
ビジネス 株式会社
研究部 〇〇 様(社外ビジネス取引先)
いつもお世話になっております。
転職・ノマドでございます。
さて、先日メールにてお送りしておりました貴社訪問お願いの件、その後いかがでしょうか。なにかとご多忙のためと拝察しますが確認のため連絡いたしました。
先日のメールを転送いたしますので、再度ご確認いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。
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メール署名
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ビジネスメール例文②病気のお見舞いメール(to社外)
メール件名:お見舞い申し上げます
ビジネス 株式会社
営業部 〇〇 様(社外ビジネス取引先)
(株)転職・ノマドです。
このたびご入院なさったと伺い大変驚いております。
心よりお見舞い申し上げます。
日ごろよりご多用の御身であったため
ご心労も多々おありであろうかと拝察申し上げます。
お仕事のことをお気になさっているとは存じますが、
この際はどうか十分にご静養なさって、一日も早いご全快を心よりお祈り申し上げます。
お見舞いにと思いましたがかえってご迷惑をおかけしてはと思い、不躾ながらメールにて大変失礼いたします。
どうかご自愛くださいませ。
※なおご返信はお気遣いないようお願い致します。
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メール署名
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