「ご講演いただけましたか?」は直訳すると「講演してもらえましたか?」という意味。
ようは「すでに講演したか?」「講演したのか?」と言いたいわけですが・・・丁寧な敬語にするとこんな風にややこしい表現になります。
使い方は何かしら講演したかを確認・催促するときのビジネスシーン。
どちらかというと商談や電話などの会話シーンでよくつかわれる敬語ではありますが、ビジネスメールにつかっても丁寧です。
社内上司や目上にかぎらず社外取引先にもつかえる丁寧なフレーズですね。
くわしくは本文にて意味や敬語の種類、ビジネスシーンにふさわしい使い方、ビジネスメール例文、注意点を解説していきます。
※長文になりますので「見出し」より目的部分へどうぞ
意味と敬語
「ご講演いただけましたか?」は「講演してもらえましたか」という意味。
なぜこのような意味になるのか?
そもそもの意味と敬語について順をおって解説していきます。
“講演”の意味
講演(こうえん)の意味は・・・
- 大ぜいの人に向かって、ある題目に従って話をすること。また、その話。「教授の講演会に出席する」「地球温暖化に関する講演をした」
- 経典を講じ仏法を説くこと。説法。
“ご講演いただける”の意味は「講演してもらえる」
まずは前半部分。
「ご講演いただける」の意味は…
「講演してもらえる」と解釈できます。
“ご講演”のもとになる単語は”講演”であり、「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)~いただく」をつかって敬語にしています。
「いただける」の部分は謙譲語「いただく」の可能表現をつかっています。可能の表現をつかっているので意味としては「〜してもらえる」となります。
おなじような可能の表現にはたとえば、
「泳ぐ → 泳げる」
「書く → 書ける」
「聞く → 聞ける」
などあり。どれも「〜できる」という意味になりますね。
ちなみに”ご講演”の「お(ご)」の部分は向かう先を立てるために使う敬語であり謙譲語の「お(ご)」です。余談ですが尊敬語にも「お(ご)」の使い方があり混同しがち。
むずかしく感じるかたは「お(ご)●●いただく」のセットで謙譲語とおぼえておきましょう。
“ましたか?”は丁寧語の疑問形+過去形
つづいて後半部分。
「〜ましたか?」は丁寧語「ます」の疑問形を過去形にしたもの。
意味としてはシンプルに「〜したか?」というような質問・疑問の形になります。
目上・上司や取引先に質問するときにはたとえば、
「泳げたか? → 泳げましたか?」
「書けたか? → 書けましたか?」
「聞けたか? → 聞けましたか?」
このように丁寧語の疑問形をつかうと丁寧です(例文を使うかどうかは別として…)。
ちなみに、
「ご講演いただけますか?」と現在形をつかうと「講演してもらえますか?」というお願い・依頼のフレーズになります。
あわせると意味は「講演してもらえましたか」
- ご講演 = 講演すること
- お(ご)~いただける = 「〜してもらえる」の意味の敬語(謙譲語)
- ますか = 「〜か?」という意味の敬語(丁寧語)
これらの単語を合体させて意味を考えます。
すると「ご講演いただけましたか?」の意味は…
「講演してもらえましたか?」
のように解釈できます。
ようするに「すでに講演したのか?」「もう講演したのか?」という催促や確認の意味をあらわしているのですが、このままではあまりにストレート過ぎて目上や上司・取引先に使うにはイマイチです。
そこで遠まわりに「~してもらえましたか?」として、とてもやわらか~い確認・催促の敬語フレーズにしています。
そんなに丁寧に催促する必要あるの?って思うくらい。
目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズですね。
敬語の解説
ややこしいので、これまでの敬語の解説をまとめておきます。
「ご講演いただけましたか」を敬語としてみていくと以下のとおりに成り立ちます。
- もとになる単語「講演」
- “〜してもらう”の謙譲語「お(ご)〜いただく」で「ご講演いただく」
- 可能形にして「ご講演いただける」
- 丁寧語”ます”の疑問形「ますか」を過去形にして「ましたか?」
→ すべてあわせると「ご講演いただけましたか?」という敬語の完成
※「お(ご)」を省いて「講演いただけましたか?」でも正しい敬語です。
このようにして元になる語「講演」を敬語にしています。つまり敬語としては何もおかしいところはありません。間違いではなく正しい敬語です。
相手に強制しない、とてもやわらか~い確認・催促の敬語フレーズになります。
なお「ご講演していただけましたか?」は間違い敬語となりますのでご注意を。
この場合、謙譲語「お(ご)」をなくして「講演していただけましたか?」とすれば正しい敬語になります。
理由は長くなるので省きますが、あくまでも「ご講演いただけましたか?」をつかうことをオススメします。
それでは次項より使い方についても見ておきましょう。
使い方
つづいて「ご講演いただけましたか」の使い方について。
①基本:講演してもらえたか?と催促・確認するビジネスシーン
「ご講演いただけましたか」の使い方
意味のとおりで何かしら「すでに講演してもらえたか?」と催促したい、あるいは確認したいときのビジネスシーンで使います。
「ご講演いただけましたか」にかぎらず「〜いただけましたか?」という表現はビジネスメールよりも、どちらかというと電話対応や商談・会話シーンで多くつかいますね。
だからと言ってメールにつかったら失礼とかではなく、ビジネスメールにつかっても違和感はありません。
②例文
たとえば、
- 【例文】先日メールにてご案内しておりました生命保険の件、ご講演いただけましたか。
- 【例文】先般お願いしておりました件は、ご講演いただけましたか?
のようにして催促や確認をともなうビジネスシーン(会話・電話対応・メール)に使われます。
ようするに「すでに講演してもらえたか?」という意味なのですが丁寧な敬語にすると、こんな風にややこしい文章になります。
③講演してもらえるか?と依頼する時は”ご講演頂けますか?”
これまで見てきたように「ご講演いただけましたか?」は「すでに講演したのか?」という催促や確認の意味をあらわしています。
で、
講演してもらえるか?と依頼・お願いしたいときには…
- 【例文】ご講演いただけますか?
- 【例文】ご講演いただけますでしょうか?
のように現在形「〜いただけますか?」をつかうと丁寧です。
あるいは尊敬語「お(ご)〜くださる」をつかい…
- 【例文】ご講演くださいますか?
- 【例文】ご講演くださいますでしょうか?
のように「〜くださいますか?」をつかっても丁寧。
こうすると意味は「講演してくれるか?」となります。
ニュアンスと敬語の使い方は違いますが、言いたいことは同じでありどちらも丁寧です。
“ご講演頂けましたか vs 頂けますか?”の違い
ここで「ご講演いただけましたか? vs ご講演いただけますか?」の違いについて簡単にまとめ。
「確認・催促 vs 依頼・お願い」の違いあり
これまで解説したとおり、
- 「ご講演いただけましたか?」は過去形であるため「すでに講演したのか?」「もう講演したのか?」という催促や確認の意味でつかわれます。
いっぽうで、
- 「ご講演いただけますか?」と現在形をつかうと「講演してもらえますか?」というお願い・依頼のフレーズになります。
まったく違う意味になりますのでご留意ください。
ご講演頂けましたでしょうか?とするとなお丁寧
「講演してもらえましたか?」と催促・確認したいときに使える敬語。
「ご講演いただけましたか」でも十分に丁寧ではありますが…
「ご講演いただけましたでしょうか」とすると、よりやわらか〜い感じの敬語フレーズになります。
推測「〜だろうか?」の丁寧語「〜でしょうか?」を「ご講演いただけましたか」に加えるとこうなります。
意味と使い方
「ご講演いただけましたでしょうか」の意味は「講演してもらえただろうか?」
つまり「すでに講演しただろうか?」と言いたい訳ですね。
使い方は「ご講演いただけましたか」とおなじく確認・催促のビジネスシーン(電話・会話・ビジネスメール)。
例文は重複するため省略します。
いただけましたでしょうか?の方が丁寧
いずれも上司・目上・社外取引先につかえる素晴らしい敬語です。
が、どちらかというと「〜いただけましたでしょうか?」のほうが丁寧です。
ただしバカ丁寧だという意見もあるため「〜いただけましたか?」で差し支えありません。
私の場合・・・
ビジネスメールでは「~いただけましたでしょうか?」をつかうことが多く、会話シーンであれば「ご講演いただけましたか?」とします。
会話は多少カジュアルに、メールは堅苦しく、というのが私のポリシーです。
でも結局のところあなたの好みです。あまりお気になさらないように。
ちなみに、
「ご講演いただけますでしょうか?」と現在形をつかうと「講演してもらえるだろうか?」というお願い・依頼のフレーズになります。
敬語の解説
「ご講演いただけましたでしょうか?」
の敬語の成り立ちとしては…
- “講演”に「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」で「ご講演いただく」
- 可能形にして「ご講演いただける」
- 丁寧語”ます”の過去形”ました”をくっつけて「ご講演いただけました」
- 疑問形にして「ご講演いただけましたか?」
- さらに”〜だろうか”の丁寧語「〜でしょうか」をくっつけると「ご講演いただけましたでしょうか?」
どちらの表現も謙譲語をうまくつかい、このうえなく丁寧な敬語フレーズとなっていることがわかります。
したがって上司・目上・社外取引先につかえる素晴らしい敬語、と言えるでしょう。
どちらかというと「〜いただけましたでしょうか?」のほうが丁寧なのですが…バカ丁寧だという意見もあるため「〜いただけましたか?」でオッケー。
ご講演くださいましたか?としても丁寧
「講演してもらえましたか?」と催促・確認したいときにつかえる敬語。
「ご講演いただけましたか?」「ご講演いただけましたでしょうか?」だけでなく…
- 【例文】ご講演くださいましたか?
→意味は「講演してくれたか?」 - 【例文】ご講演くださいましたでしょうか?
→意味は「講演してくれただろうか?」
※「~してくれる」の尊敬語「お(ご)~くださる」をつかって敬語にしています。
もあります。
目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズですね。
“いただけましたか vs くださいましたか”意味と違い・使い方
「ご講演いただけましたか?」vs「ご講演くださいましたか?」の意味と違い。
どちらも言いたいことは結局のところ「すでに講演したか?」なのですが…
敬語の使い方に違いあり。
- “ご講演いただけましたか?“だと意味は「講演してもらえたか?」
→敬語は謙譲語「お(ご)〜いただく」の可能形+丁寧語
vs.
- “ご講演くださいましたか?“だと意味は「講演してくれたか?」
→敬語は尊敬語「お(ご)〜くださる」+丁寧語
というように意味と敬語の使い方が違います。
が、
結局のところ言いたいことはどちらも全く同じなわけです。
いただけましたか?のほうが丁寧
「講演してくれたか?=ご講演くださいましたか?」
よりも”いただく+可能形”をつかって、
「講演してもらえたか?=ご講演いただけましたか?」
としたほうが丁寧な印象のフレーズとなります。
ただ、
敬語の使い方には違いはあれど、どちらもひとしく丁寧な敬語であり目上・上司・社外取引先につかえるフレーズです。
ただ少しニュアンスの違いというか敬語の使い方が違うよ、ということですね。
これは好みで分かれるところ。
どちらかというと「いただく」を使ったほうがやんわ~りとした表現になりますが、心底どちらでも差し支えありません。
まぁ、ひとつのオプションとしてお好みでお使いください。
ご講演いただきましたか?でも丁寧
「講演してもらえましたか?」と催促・確認したいときにつかえる敬語。
これまで紹介した例文のほかにも…
- 【例文】ご講演いただきましたか?
→意味は「講演してもらったか?」 - 【例文】ご講演いただきましたでしょうか?
→意味は「講演してもらっただろうか?」
※「~してもらう」の謙譲語「お(ご)~いただく」をつかって敬語にしています。
※「お(ご)」を省いて「講演いただきましたか?」でも正しい敬語です。
もあります。
目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズですね。
“いただけましたか vs いただきましたか”の意味と違い・使い方
「ご講演いただけましたか?」vs「ご講演いただきましたか?」の意味と違い。
どちらも言いたいことは結局のところ「すでに講演したか?」なのですが…
敬語の使い方に違いあり。
- “ご講演いただけましたか?“だと意味は「講演してもらえたか?」
→敬語は謙譲語「お(ご)〜いただく」の可能形+丁寧語
vs.
- “ご講演いただきましたか?“だと意味は「講演してもらったか?」
→敬語は謙譲語「お(ご)〜いただく」+丁寧語
というように、
可能形をいれるかどうかという点において違いますね。
が、結局のところ言いたいことはどちらも全く同じなわけです。
いただけましたか?のほうが丁寧
「講演してもらいましたか?=ご講演いただきましたか?」
よりも可能形をつかって、
「講演してもらえましたか?=ご講演いただけましたか?」
というほうが丁寧な印象のフレーズとなります。
ホントに些細なことなので誰も気にしないかもしれませんけど…。
まぁとにかく、これまで紹介した例文はどれを用いても丁寧ではあります。
シンプルに”ご講演なさいましたか?”でもOK
「講演してもらえましたか?」と催促・確認したいときにつかえる敬語。
いい加減くどいのですが、まだまだあります…
とくに会話や電話対応はビジネスメールとちがって堅苦しい敬語は好まれません。
そこでシンプルに、
- 【例文】ご講演なさいましたか?
→意味は「講演しましたか?」 - 【例文】ご講演なさいましたでしょうか?
→意味は「講演しましたでしょうか?」
※「~する」の尊敬語「お(ご)~なさる」をつかって敬語にしています。
でも十分に丁寧です。
「講演する」に尊敬語「お(ご)〜なさる」をつかい、さらに丁寧語の疑問形をつけくわえると例文のような敬語になります。
こちらも目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズですね。
いただけましたか?のほうが丁寧
「講演しましたか?=ご講演なさいましたか?」
よりも”いただく+可能形”をつかって、
「講演してもらえましたか?=ご講演いただけましたか?」
というほうが丁寧な印象のフレーズとなります。
もっとシンプルに”ご講演はお済みでしょうか?”でもOK
「講演してもらえましたか?」と催促・確認したいときにつかえる敬語。
ほかにもシンプルに、
- 【例文】xxのご講演はお済みでしょうか?
→意味は「xxの講演は終わったでしょうか?」
としても丁寧です。
こちらも目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズですね。
結局どれがもっとも丁寧?
敬語の種類というのは本当にいろいろあります。
あまりにも言い換え敬語フレーズがおおいので、どれを使うべきか迷ってしまうというあなたのために。
ここまで紹介した言い換えだけでなく、思いつくかぎりの敬語フレーズを丁寧レベルごとに整理しておきます。
どれも「講演してもらえましたか?」「講演してくれましたか?」と催促・確認したいときにつかえる敬語です。
※ あくまでも目安としてお考えください。
①会話・電話対応につかえる丁寧レベル
「講演してもらえましたか?」「講演してくれましたか?」と催促・確認したいときの敬語。
まずは会話や電話対応シーンでよくつかう敬語フレーズから。
下にいくほど丁寧な敬語になります。また、おすすめの敬語フレーズは青文字にしておきます。
- 講演してくれましたか?
- 講演してもらえましたか?
- 講演していただきましたか?
- 講演していただけましたか?
- ご講演になりましたか?
- ご講演なさいましたか?
- ご講演されましたか?
- ご講演いただきましたか?
- ご講演くださいましたか?
- ご講演いただけましたか?
②ビジネスメール対上司・対社内につかえる丁寧レベル
「講演してもらえましたか?」「講演してくれましたか?」と催促・確認したいときの敬語。
つづいて、上司や社内目上のビジネスメールにふさわしい敬語フレーズをご紹介。
下にいくほど丁寧な敬語になります。おすすめの敬語フレーズは青文字にしておきます。
- ご講演になりましたか?
- ご講演なさいましたか?
- ご講演されましたか?
- ご講演いただきましたか?
- ご講演くださいましたか?
- ご講演いただけましたか?
- ご講演になりましたでしょうか?
- ご講演なさいましたでしょうか?
- ご講演されましたでしょうか?
- ご講演いただきましたでしょうか?
- ご講演くださいましたでしょうか?
- ご講演いただけましたでしょうか?
注)上下関係に厳しい上司や、社内でも相当のポジションにいる人にたいしては例文⑥以降をつかいましょう。
【敬語の補足】
・「なさる/される」は”〜する”の尊敬語
・「お(ご)〜になる」は”〜する”の尊敬語
・「お(ご)〜くださる」は”〜してくれる”の尊敬語
・「お(ご)〜いただく」は”〜してもらう”の謙譲語
・「〜でしょうか」は”〜だろうか”の丁寧語
③ビジネスメール対取引先・対顧客につかえる丁寧レベル
「講演してもらえましたか?」「講演してくれましたか?」と催促・確認したいときの敬語。
最後に、社外取引先や顧客のビジネスメールにふさわしい敬語フレーズをご紹介。
下にいくほど丁寧な敬語になります。おすすめの敬語フレーズは青文字にしておきます。
- ご講演いただきましたか?
- ご講演くださいましたか?
- ご講演いただけましたか?
- ご講演になりましたでしょうか?
- ご講演なさいましたでしょうか?
- ご講演されましたでしょうか?
- ご講演いただきましたでしょうか?
- ご講演くださいましたでしょうか?
- ご講演いただけましたでしょうか?
【敬語の補足】
・「なさる/される」は”〜する”の尊敬語
・「お(ご)〜になる」は”〜する”の尊敬語
・「お(ご)〜くださる」は”〜してくれる”の尊敬語
・「お(ご)〜いただく」は”〜してもらう”の謙譲語
・「〜でしょうか」は”〜だろうか”の丁寧語