「借りる」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)と、
ビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点について。ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。
まずは要点のまとめから。
借りる の謙譲語は
①お借りする・お借りいたす
②拝借する
謙譲語は自分の行為につかうことが基本となるため、
- (自分が)少しお借りします
- (自分が)少し借りいたします
- (自分が)1000円、お借りしたいのですが…
- (自分が)このペンを拝借してもよろしいでしょうか?
として使います。もっと丁寧にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「お借りします・お借りいたします・拝借します」とするのが一般的。
借りる の尊敬語は…
①お借りになる
②借りられる
※お借りになられる は間違い敬語
いっぽうで尊敬語は相手の行為につかうことが基本となるため、
- 部長が本をお借りになりました
- 部長が私のペンを借りられました
として使います。
ただし、
尊敬語の「~られる」は受身や可能の「~れる・られる」と間違われることもおおいため、「~なる」を使うほうが無難。そうすると尊敬語は「お借りになる」を使うのがベター。
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではいろいろな例文を紹介しながら使い方、注意点について説明していきます。
借りる の謙譲語「お借りする・お借りいたす・拝借する」使い方と例文
まずは「借りる」の謙譲語「お借りする」「お借りいたす」「拝借する」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。
そもそも謙譲語とは?
念のため基本となる謙譲語とはなにか?について簡単に復習しておきます。
- 謙譲語Ⅰ = 自分を低めることで行為のおよぶ先を高めて敬意を表す敬語のこと。
例文「お伝えします」「お土産をいただく」「貴社へ伺う」 - 謙譲語Ⅱ = 聞き手に敬意を表す敬語のことで「もうす」「おる」「まいる」「いたす」などがある。
例文「母に申します」「海へ参ります」
2種類ありややこしく感じるかもしれませんが「①自分側を低めて相手を高める」か「②話し手に敬意を示すために使う」だと理解しておきましょう。
【出典】文化庁「敬語の指針」
使い方
「借りる」の謙譲語「お借りする」「お借りいたす」「拝借する」の使い方は先にのべたとおり、
「自分が誰か対象となる目上のヒトからなにかを借りる」のようにして自分の行為・行動に使う謙譲語です。
そうすると、
- 正しい例文「1000円、お借りします」
- 正しい例文「このペンをお借りいたします」
- 正しい例文「ちょっと拝借したいのですが…」
のような感じで「自分が借りる」ときにつかいます。
一方でNGとなる使い方にはたとえば、
- NG例文「部長が私のペンをお借りする」
のような例文はダメ。
目上のヒトが「借りる」としたいときには謙譲語ではなく尊敬語を使い「部長が私のペンをお借りになります」とします。
拝借いたす は二重敬語だから間違い?
「借りる」の謙譲語「拝借する」にさらに謙譲語「いたす」をつかうと「拝借いたす」という謙譲語になります。
ここでひとつ問題が…
ただ、
わたしは「拝借いたす」を使っても間違いではないと考えます。
なぜなら、
「拝借」は謙譲表現ではあるものの謙譲語とまでは言えないから。
「拝借いたす」を二重敬語で間違いだとするのであれば、おなじく謙譲表現をふくむ以下の表現もすべて二重敬語ですね…
- 承知いたしました
- 拝聴いたしました
- 拝読いたしました
- 拝受いたしました
- 拝見いたしました
でも、これらの敬語はビジネスシーンではどの表現もフツーに使われます。ビジネスパーソンのつかう敬語って実は、わたしも含めてBroken敬語なのです。
ということで、
「拝借いたします」を使うか使わないかはご自身でお考えください。無責任ですみません…
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
「借りる」の謙譲語「お借りする」「お借りいたす」「拝借する」を使うときには、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。
すでに例文にはしていますが…
ビジネスシーンにおいては
「お借りします」「お借りいたします」「拝借します」として使うとより丁寧です。というより、ほぼ100%こういった使い方をします。
例文
「借りる」の謙譲語「お借りする」「お借りいたす」「拝借する」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文まとめ。
- 例文「先般ご紹介いただいた書籍をお借りしたく存じます」
例文「大変恐れ入りますが、しばらくの間お借りいたします」
例文「誠に勝手ながらペンを拝借しました」
・使い方はなにかを借りるときのビジネスメール
・意味はどれを使ってもおなじく「借ります・借りました」
・ビジネスメールではかしこまった敬語フレーズが好まれる
・謙譲語を使うことで自分の行為を低くし話の受け手を高めている - 例文「こちらの傘をお借りしてもよろしいでしょうか?」
例文「トイレを拝借したいのですが…」
例文「しばしの間、お借りいたします」
・使い方は相手に何かを借りるときのビジネスシーン
・謙譲語を使うことで自分の行為を低くし話の受け手を高めている
借りる の尊敬語「お借りになる・借りられる」使い方と例文
つづいて「借りる」の尊敬語「お借りになる」「借りられる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。
そもそも尊敬語とは?
念のため基本となる尊敬語とはなにか?について簡単に復習しておきます。
尊敬語とは、相手を高めるときに使う敬語のことを言います。敬意を表したい相手の動作や行為を高めて使う敬語ですね。
注意点として、
社外のひとに社内のひとのことを話すときには尊敬語ではなく、謙譲語を使います。このシーンで尊敬語を使うと「社内のひと > 社外のひと」というようになってしまいますね。
社外の人の前で尊敬語「弊社の部長がおっしゃいました」ではおかしくって謙譲語「弊社の○○が申しておりました」とします。
高めるべき順番は「社外 > 社内」であり、この図式を守って使いましょう。
使い方
「借りる」の尊敬語「お借りになる」「借りられる」の使い方は先にのべたとおり、
「目上の相手が何かをお借りになる」のようにして相手の行為・行動に使う尊敬語です。
そうすると、
- 正しい例文「部長が私のネクタイをお借りになりました」
- 正しい例文「部長が私の本を借りられました」
のような感じで「相手が借りる」ときにつかいます。
一方でNGとなる使い方にはたとえば、
- NG例文「部長が私のネクタイを拝借しました」
のような例文はダメ。
目上のヒトが「借りる」としたいときには謙譲語ではなく、相手の行為をうやまって高める敬語(尊敬語)を使います。
お借りになる・借りられる どっち使う?
ここでひとつ注意点というか、まぎらわしいので少し解説を。
「借りる」の尊敬語には、
①お借りになる
②借りられる
と2パターンあります。どちらとも正しい敬語なのですが「借りられる」は受け身や可能形の「れる・られる」との混同をまねいてしまうため①お借りになる をつかうのが無難。
たとえば
「部長、クルマは借りられましたか?」
だと敬語なのかなんなのか、難しい表現になってしまいます。
そこで
「部長、クルマはお借りになりましたか?」
のように「お・ご〜なる」という尊敬語を使うことをオススメします。
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
繰り返しにはなりますが、
「借りる」の尊敬語「お借りになる」「借りられる」は、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。
すでに例文にはしていますが…
ビジネスシーンにおいては
「お借りになります」「お借りなりました」として使うとより丁寧です。
例文
「借りる」の尊敬語「お借りになる」「借りられる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文。
- 例文「部長、レンタルシューズはお借りになりましたか?」
例文「部長が1万円を消費者金融からお借りになりました」
・使い方はビジネス会話やメールで「借りましたか?」と質問するときに使えるフレーズ。
他にもよく使う敬語の変換表
「借りる」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)のほかにもビジネスシーンでよく使う敬語をまとめておきます。これを機にマスターしておきましょう。
謙譲語 | 尊敬語 | 丁寧語 | |
---|---|---|---|
受け取る | 拝受する 拝受いたす |
お受け取りになる | 受け取ります |
来る | 伺う 参る 参上する |
お見えになる お越しになる いらっしゃる 来られる |
来ます |
言う | 申す 申し上げる |
おっしゃる 言われる |
言います |
会う | お会いする お目にかかる |
お会いになる 会われる |
会います |
する | 致す (いたす) |
なさる | します |
伝える | お伝えする 申し伝える |
お伝えになる 伝えられる |
伝えます |
思う | 存じる | お思いになる 思われる |
思います |
行く | 伺う 参る 参上する |
いらっしゃる おいでになる お越しになる |
行きます |
借りる | お借りする お借りいたす 拝借する |
お借りになる 借りられる |
借ります |
もらう | いただく | くださる | もらいます |
借りる の謙譲語・尊敬語はこう使う!
つづいて「借りる」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点を解説します。
敬語を正しく使うことはもちろん、
ふさわしいビジネスシーンを考えて使いましょう。
○拝借させていただく はまぁOK
「借りる」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
- お借りさせていただきます
- 拝借させていただきます
のような敬語フレーズを見かけることがあります。
「させていただく」は多用するとみっともないのですが「拝借させていただく」であればOKです。
なぜなら「借りる」という行為には相手の許しが必要だから。「拝借させてもらいますよ~」として相手の許しを得ようとしていると解釈できます。
×部長、ペンを拝借しましたか?
「借りる」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
きわめて初歩的ではありますが…
したがって、
- NG例文「部長、机の上のペンを拝借しましたか?」
は間違い敬語です。
上司や目上のヒトが何かを借りるのであれば
- 正しい例文「部長、机の上のペンをお借りになりましたか?」
とするのが正解。
×(私が)本をお借りになりたいのですが?
「借りる」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
こちらもきわめて初歩的ではありますが…
したがって、
- NG例文(私が)本をお借りになりたいのですが?
は間違い敬語です。
こうすると、あなたが自分で自分のことを高めてしまっています。あなたが借りたいのであれば、
- 正しい例文(私が)本をお借りしたいのですが?
- 正しい例文(私が)本を拝借したいのですが?
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
「借りる」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
何度もしつこいですが…
丁寧語「です・ます」を謙譲語や尊敬語と組み合わせると、より丁寧な敬語フレーズになります。むしろビジネスシーンでは必ずといっていいほど組み合わせて使いますね。
たとえば、
- 借りる の謙譲語「お借りする・お借りいたす・拝借する」は「お借りします・お借りいたします・拝借します」
- 借りる の尊敬語「お借りになる」は「お借りになります・お借りになりました」
のようにするとより丁寧な敬語となります。