拝受いたしました(読み:はいじゅ)について、意味と上司や目上への正しい使い方、注意点をビジネスメールの例文つきで誰よりもくわしく解説していく記事。
まず簡単にまとめを。
「拝受いたしました」の意味は直訳すると「(モノや資料・メールを)受け取りました」。
敬語をつかっているため実際にはもっと丁寧で「お受け取りしました」という意味になります。
使い方は意味のとおりで上司なり社内目上・取引先からなにか受け取ったとき。
- 【例文】本日ご注文書を拝受いたしました。
- 【例文】メール拝受いたしました。早々にご対応いただき誠にありがとうございます。
- 【例文】先ほどカタログを拝受いたしました。ご多忙にも関わらず早々に手配いただきありがとうございます。
たとえば上記のように「何かしらお受け取りしました」「受領しました」という意味でビジネスメールにつかうと丁寧です。とくに「受け取りました」という報告として返信メールにつかうことの多い敬語フレーズですね。
どの例文も社内メールで目上(上司や先輩)につかっても、社外のビジネスメールにつかってもよい丁寧な敬語表現。
なお。
等しくつかえる丁寧な言い換えには「お受け取りしました」もあり。どれをつかっても丁寧です。
ざっくりとした解説はこれにて終了。
くわしくは本文中にて意味と使い方、注意点を述べていきます。
※長文になりますので、時間の無い方は「見出し」より目的部分へどうぞ。
“拝受いたしました”の意味と使い方
拝受(読み:はいじゅ)の意味は・・・
- 受け取ることをへりくだっていう語。
つまり「受け取ること」の謙譲語ですね。
「受ける・受け取る」に謙譲表現「拝」をくっつけているため上記の意味になります。
「拝受する」だと「受け取る」の意味となります。
身近な「拝受いたしました」のたとえ・例文
日常シーンではほとんど使うことのない「拝受いたしました」ですが…
「拝受いたしました」って一体どんなシーンでつかえるのかというと身近ではたとえば…
- SNSで写真を受け取った
というとき「お写真拝受しました」or「拝受いたしました」 - Amazonで買った商品を受け取った
というときに「商品のほう拝受しました」or「拝受いたしました」 - メールを受け取ったことの報告/連絡
というときに「メール拝受しました」or「拝受いたしました」
こんなシーンでつかいます。
「拝受する」のより丁寧な敬語
なお「拝受する」の使い方として。
例文にもしましたが「拝受する」を単体でつかうことはほとんどなく。「受け取った」と過去のことを言うケースがほとんど。したがって過去形「拝受した」をつかい「〜した」の部分を以下のようにもっと丁寧な敬語にしてつかいます。
- 【丁寧】丁寧語”ます”をくっつけて「拝受しました」
- 【かなり丁寧】謙譲語”いたす”丁寧語”ます”で「拝受いたしました」
【注意点】”拝受いたしました”はこう使う!
つづいて「拝受いたしました」の使い方というか注意点について簡単に。
①”ご拝受いたしました”は二重敬語!
「拝受いたしました」をつかうときの注意点その一。
もっとも初歩的な敬語の使い方なのですが…「ご拝受いたしました」はNGです。
「拝受」はすでに「受け取ること」の敬語(謙譲語)なのに、さらに謙譲語「ご」をくわえてしまっています…
結果として「受け取ること」に①謙譲語「拝受」+②謙譲語「ご」としており二重敬語になりますね。※二重敬語とはひとつの単語におなじ種類の敬語を2回つかうことでありNGです。
あるいは。
「お(ご)~いたす」のひとかたまりを謙譲語として見たとき。「ご拝受いたす」でもいいんじゃないのか?とする意見もあります。ただ「~」の謙譲語が「お(ご)~いたす」だという解釈を適用した場合には「拝受」が謙譲語であるため、そもそも二重敬語ということになります。
②”拝受しましたか?””拝受していただく”は間違い敬語!
「拝受いたしました」をつかうときの注意点その二。
こちらも初歩的な敬語の使い方なのですが…
「受け取ってほしい!受け取ってください!」と言いたいときに「拝受してください!」「拝受していただけますか?」は間違い敬語です。
「受け取りましたか?」と言いたいときに「拝受しましたか?」も間違い敬語。
「拝受」は謙譲語であるため自分の行為につかい相手の行為にはつかいません。※例外あり
たとえば以下の使い方は間違い敬語となりNGです。十分にお気をつけください。
- NG例×上司なり目上・取引先が拝受したか?「メール拝受しましたか?」
- NG例×上司なり目上・取引先が拝受しました「資料を拝受してください」
- NG例×上司なり目上・取引先に拝受いただく「お土産を拝受していただけますか」
相手の行為には基本的に謙譲語ではなく尊敬語をつかいます。※例外あり
したがって相手に受け取ってほしいときには。
- 正しい例◎「メールはお受け取りいただきましたか?」「メールはご覧いただきましたか?」「ご確認いただきましたか?」
- 正しい例◎「資料をお受け取りください」
- 正しい例◎「別便にて心ばかりの品をお送りいたしました。お受け取りいただけますと幸いです」
というようにシンプルに「お受け取り」をつかった敬語にするほか。
ビジネスシーンで上司・目上・取引先になにかしら受け取ってもらいたいときには「ご査収」「ご笑納」をつかった言い換えもできます。
どちらも「受け取ること」の意味ですが、受け取る物の中身によって使い分けが必要です。
ご査収(ごさしゅう)はとくに資料やメールなどを「受け取ってほしい」ときにつかう敬語。
ご笑納(しょうのう)はお土産などを「つまらないものですが受け取ってほしい」というときにつかいます。
具体的には以下の例文のようにつかいます。
- 正しい例◎「ご査収ください」「ご笑納ください」など
- 正しい例◎「別便にて心ばかりの品をお送りいたしました。ご笑納いただけますと幸いです」
あとはシーンにおうじて「受領=物や金を受け取ること」「領収=金を受け取ること」「受理=(申請書などを)受け取って処理すること」にも言い換えできます。ビジネスシーンにおうじて使い分けましょう。
③”拝受いたしました”は二重敬語ではない!
あとは注意点というよりもよくある敬語の勘違いについて。
「拝受いたしました」は二重敬語だから誤りだという意見もあります。ただし答えは二重敬語ではなく100%正しい敬語です。
なぜ「拝受いたしました」が間違い敬語のように感じてしまうかというと…
「拝受」はすでに謙譲語であり、さらに「する」の謙譲語「いたす」をつかって「拝受いたす」としているから…
「拝受=謙譲語」×「いたす=謙譲語」
「拝受いたしました」は「謙譲語 x 謙譲語」だから二重敬語??
このようなロジックで二重敬語だという意見がでてくるのかと。
ただし答えは…「二重敬語ではない」です。
二重敬語とは「ひとつの語におなじ敬語を二回つかうこと」であり敬語のマナー違反です。
たとえば「お伺いいたす」「お伺いする」などが二重敬語の例。「行く・尋ねる」の謙譲語「伺う」をつかっているのに、さらに「お〜いたす」「お〜する」という謙譲語をつかっているためです。
ところが。
「拝受いたす」は以下のように「①受け取ること」「②する」という2つの異なる単語にそれぞれ謙譲語を用いているため二重敬語ではなく、正しい敬語の使い方をしているのですね。
①「拝受」=「受け取ること」の意味の謙譲語(単体では名詞)
②「いたす」=「する」の意味の謙譲語
くわしくは以下の記事にて。
【例文】ビジネスメール全文
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「拝受いたしました」の使い方をビジネスメール例文とともにご紹介。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
ビジネスメール例文①メール受け取りの報告返信(to社内上司)
メール件名: 返信RE:RE:残業に関する意識調査実施
営業部 ○○部長 (社内上司・目上など)
お疲れ様です。
人事部・ノマドです。
メール拝受いたしました。
早々にご回答いただきありがとうございます。
また何かにつけてご相談することもあるかと存じますが、何卒ご了承いただけますと幸いです。今後ともよろしくお願い致します。
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メール署名
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ビジネスメール例文②メール受け取りの報告返信(to社外)
メール件名:返信RE:【製品A】環境調査依頼
ビジネス 株式会社
営業部 〇〇 様(社外ビジネス取引先)
いつもお世話になっております。
転職・ノマドでございます。
メール拝受いたしました、ご連絡ありがとうございます。
それではご依頼の件、調査を実施し期日までにご報告いたします。
お急ぎのこととは存じますが回答にしばしお時間を頂戴したく、お願い申し上げます。
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メール署名
*********
ビジネスメール例文③”まずは拝受のご連絡までに”と返信する
メール件名:返信RE:カタログ送付のお願い
ビジネス 株式会社
営業部 〇〇 様(社外ビジネス取引先)
いつもお世話になっております。
転職・ノマドでございます。
先日カタログのほう拝受いたしました。
早々にご対応いただき有難うございました。
略儀ながら、まずは拝受のご連絡までに。
*********
メール署名
*********
※「拝受のご報告までに」と言い換えても丁寧
ビジネスメール例文④注文書を受け取った報告返信(to社外)
メール件名:返信RE:新規PO送付
ビジネス 株式会社
資材部 xx 様(社外ビジネス取引先)
いつもお世話になっております。
転職・ノマドでございます。
先ほどご注文書を拝受いたしました。
誠にありがとうございます。
それではご注文いただいた内容で手配を進めて参ります。
納期等確定しましたら改めてご報告いたしますので、どうぞ宜しくお願いいたします。
********
メール署名
********
「相手に受け取ってほしい」ときの敬語は??
注意点で述べたことの繰り返しにはなりますが重要なので深掘りします。
ここまでは自分が「受け取りました」というときに使える敬語「拝受」を紹介しました。
では…
上司なり目上・取引先などの相手に「受け取ってほしい!」「受け取ってください!」と言いたいときにはどんな敬語をつかうでしょう?
NG×「ご拝受お願いします??」
NG×「ご拝受ください??」
NG×「拝受していただけますか??」
残念ながらハズレ…上記はいずれも間違い敬語です。
正しい◯「ご査収の程お願い申し上げます」
正しい◯「どうかご笑納ください」
のように「ご査収」「ご笑納」などを使います。
ご査収の意味は(金銭・物品・書類などを)受け取ること
「ご査収」のそもそもの意味は「金銭・物品・書類などを、よく調べて受け取ること」
たとえば、
- 【例文】履歴書を添付ファイルにて送付いたします。ご査収ください
- 【例文】下記の書類を郵送いたしました。ご査収のほどお願い申し上げます
のようにして使います。こうすると「資料なりメールを受け取ってください」の意味の丁寧な敬語になります。
ご笑納の意味は「つまらないものですが受け取ってください」
「ご笑納」のそもそもの意味は…「人に贈り物をするとき、つまらない物ですが笑ってお納めくださいという気持ちを込めて用いる語」※「納める」は「受け取る」の意味
たとえば、
- 【例文】別便にて心ばかりの品を郵送いたしました。どうかご笑納ください
- 【例文】別便にて返礼の品を郵送いたしました。ご笑納いただけますと幸甚に存じます
のようにして使います。こうすると「つまらないものですが受け取ってください」という意味の丁寧な敬語になりますね。
“査収 vs 笑納 vs 受理 vs 受領 vs 領収 vs 拝受”の使い分け
ビジネスシーンで上司・目上・取引先に「受け取ってほしい!」と言いたいとき。
「査収 vs 笑納 vs 受理 vs 受領 vs 領収 vs 拝受」のどれ使う?
結論としては何を受け取ってほしいかによって使い分けできます。
たとえば、
- ビジネス書類・メールや添付ファイルを受け取ってほしい時…
→ ご査収(ごさしゅう) - ご祝儀やギフト・贈答品を受け取ってほしい時…
→ ご笑納(ごしょうのう) - 役所の申請書などを受け取ってほしい時…
→ 受理(じゅり) - 会費などのお金を受け取ってほしい時…
→ 受領(じゅりょう) - 製品・サービスの代金を受け取ってほしい時…
→ 領収(りょうしゅう) - 自分が何かしら受け取るときは…
→ 拝受(はいじゅ)・受理・受領・領収などを使う
こんな感じで使うとよいでしょう。