「ご抗議いただきたく存じます」は「抗議してもらいたいと思います」という意味。
ようは「抗議してほしい!」「抗議してください!」と言いたいわけですが・・・丁寧な敬語にするとこんな風にややこしい表現になります。
使い方は何かしら抗議してほしいときのお願い・依頼ビジネスメール。社内上司や目上にかぎらず社外取引先にもつかえる丁寧なフレーズです。
くわしくは本文にて意味や敬語の種類、ビジネスシーンにふさわしい使い方、ビジネスメール例文、注意点を解説していきます。
※長文になりますので「見出し」より目的部分へどうぞ
意味と敬語
「ご抗議いただきたく存じます」は「抗議してもらいたいと思います」という意味。
なぜこのような意味になるのか?
そもそもの意味と敬語について順をおって解説していきます。
“抗議”の意味は「不当な行為に反対すること」
抗議(こうぎ)の意味は・・・
「相手の発言・決定・行為などを不当として、反対の意見・要求を主張すること」
たとえば、
【例文】不当にクビになったため経営陣に抗議の電話をいれた。
【例文】断固として抗議します。
のようにして使います。
“ご抗議いただきたく”の意味は「抗議してもらいたい」
まずは前半部分。
“ご抗議いただきたく〜”の意味は、
「抗議してもらいたい」
「抗議してもらいたく」
のように解釈できます。
「ご抗議」のもととなる単語は「抗議」であり、「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)~いただく」をつかって敬語にしています。
「いただきたく」の部分は謙譲語「いただく」に意思・希望「〜したい」をつかっています。
ここで「ご抗議」の「お(ご)」の部分は向かう先を立てるために使う敬語であり謙譲語の「お(ご)」です。
余談ですが尊敬語にも「お(ご)」の使い方があり混同しがち。
難しく感じるかたは「お(ご)●●いただく」のセットで謙譲語とおぼえておきましょう。
なお表記は、
漢字表記「ご抗議頂きたく」vs. ひらがな表記「ご抗議いただきたく」の両方ともOK。どちらをつかっても正しい敬語です。
“存じます”の意味は「思います」
つづいて後半部分。
“存じます”の意味は「思います」
“思う”の敬語(謙譲語)「存じる」に丁寧語”ます”をつかって敬語にしています。
あわせると意味は「抗議してもらいたいと思います」
- ご抗議 = 抗議すること
- お(ご)~いただきたく = 「〜してもらいたい」の意味の敬語(謙譲語)
- 存じます = 「思います」の意味の敬語(謙譲語)
※漢字表記「ご抗議頂きたく」vs. ひらがな表記「ご抗議いただきたく」の両方ともOK。
これらの単語を合体させて意味を考えます。
すると「ご抗議いただきたく存じます」の意味は…
「抗議してもらいたいと思います」
であり、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズになります。
「抗議してください!」とストレートに言うのではなく遠回しに自分の意思や気持ちをつたえる、とても丁寧なフレーズですね。
ニュアンスとしては「抗議してもらいたいと思うのだけど…」みたいなイメージ。
あまりに堅苦しくて大げさかもしれませんが、とにかく目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズになります。
敬語の解説
ややこしいので、これまでの敬語の解説をまとめておきます。
「ご抗議いただきたく存じます」を敬語としてみていくと以下のとおりに成り立ちます。
- もとになる単語「抗議」
- “〜してもらう”の謙譲語”お(ご)〜いただく”で「ご抗議いただく」
- 意思・希望”〜したい”で「ご抗議いただきたい」
- “思う”の謙譲語「存じる」に丁寧語”ます”をくっつけて「存じます」
→ すべてあわせると「ご抗議いただきたく存じます」という敬語の完成
このようにして元になる語「抗議」を敬語にしています。つまり敬語としては何もおかしいところはありません。間違いではなく正しい敬語です。
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズになります。
なお「ご抗議していただきたく存じます」は間違い敬語となりますのでご注意を。
この場合、謙譲語「お(ご)」をなくして「抗議していただきたく存じます」とすれば正しい敬語になります。
理由は長くなるので省きますが、あくまでも「ご抗議いただきたく存じます」をつかうことをオススメします。
それでは次項より使い方についても見ておきましょう。
【使い方】抗議してほしい!と伝えるビジネスシーン
「ご抗議いただきたく存じます」の使い方は…
意味のとおりで何かしら「抗議してほしい!」と言いたいビジネスシーンに使います。
①おもにビジネスメールに使われる
「ご抗議いただきたく存じます」の使い方その1
「ご抗議いただきたく存じます」にかぎらず「〜いただきたく存じます」という表現は電話対応や商談よりも、どちらかというとビジネスメールで多くつかいますね。
会話でつかうにはあまりに堅苦しいフレーズだからです。
だからと言って電話対応などにつかったら失礼とかではなく、堅苦しいというだけ。
ようするにビジネスメールで上司や目上・社外取引先に「抗議してほしい!」と言いたいシーンであれば使えます。
②電話対応・会話では”ご抗議いただけますか?”など推奨
「ご抗議いただきたく存じます」の使い方その2
わたし個人としては電話対応や会話シーンに「ご抗議いただきたく存じます」のような堅苦しいフレーズをつかうのがあまり好きではありません。
そこで、
- 【例文】ご抗議ください
- 【例文】ご抗議くださいませ
- 【例文】ご抗議いただけますか?
- 【例文】ご抗議いただけますでしょうか?
など会話シーンにふさわしい、ちょっとカジュアルな敬語をつかって意思や希望をつたえますね(下の例文ほど丁寧な敬語になります)。
とくに「〜いただけますか?」サラッと言えるためビジネスシーンで重宝するフレーズです。
※「~いただけますか?」の意味は「~してもらえますか?」
※「~いただけますでしょうか?」の意味は「~してもらえますでしょうか?」
敬語の補足
念のため「ご抗議いただけますか?」「ご抗議いただけますでしょうか?」の敬語について少し。
- “抗議”に「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」で「ご抗議いただく」
- 可能形にして「ご抗議いただける」
- さらに丁寧語”ます”で「ご抗議いただけます」
- 疑問形にして「ご抗議いただけますか?」
“〜だろうか”の丁寧語「〜でしょうか」を使うと「ご抗議いただけますでしょうか?」
どちらの表現も謙譲語をうまくつかい、このうえなく丁寧な敬語フレーズとなっていることがわかります。
したがって上司・目上・社外取引先につかえる素晴らしい敬語、と言えるでしょう。
どちらかというと「〜いただけますでしょうか?」のほうが丁寧なのですが…
バカ丁寧だという意見もあるため「〜いただけますか?」でも十分に丁寧です。
“ご抗議いただければと存じます”だとなお丁寧
“抗議してほしい!”と言いたいときに使える敬語。
「ご抗議いただきたく存じます」でも十分に丁寧ではありますが…
「ご抗議いただければと存じます」とすると、より丁寧な敬語になります。
意味と敬語
どちらも言いたいことは結局のところ「抗議してほしい」なのですが…
「ご抗議いただければと存じます」の意味は…「抗議してもらえたらと思います」
謙譲語「ご抗議いただく」を可能形にして「ご抗議いただける」とし、
さらに仮定の「たら・れば」をくっつけると「ご抗議いただければ」という敬語の完成。
かな〜り遠回しにお願いをしているわけで、目上・上司・取引先への言葉づかいとしてはこの上なく丁寧ですね。
そんなに丁寧にする必要あるの?って思うくらい。
違いと使い分け
「ご抗議いただきたく存じます」vs.「ご抗議いただければと存じます」の違いと使い分けについて簡単に。
- 「ご抗議いただきたく存じます」だと意味は「抗議してもらいたいと思います」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+希望”~したい”+謙譲語”存じる”+丁寧語”ます”
いっぽうで、
- 「ご抗議いただければと存じます」の意味は「抗議してもらえたらと思います」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形”いただける”+仮定”たら・れば”+謙譲語”存じる”+丁寧語”ます”
「ご抗議いただきたく存じます」だと「~してもらいたい」と言いながらも「思います」として、遠回しにあなたの希望を伝える敬語にしています。
いっぽうで、
「ご抗議いただければと存じます」だと「~してもらえたらと思います」というように、もっと遠まわしかつ大げさなお願いのフレーズになります。
まぁ、どちらも丁寧な敬語であり使い分けの必要はありませんが…
より丁寧なメールがもとめられるシーンでは「ご抗議いただければと存じます」を使うとよいでしょう。
シンプルに”ご抗議いただきたくお願い致します”でも丁寧
“抗議してほしい!”と言いたいときに使える敬語。
「ご抗議いただきたく存じます」「ご抗議いただければと存じます」だけでなく、
「ご抗議いただきたく、お願い致します」もあります。
言いたいことは結局のところ「抗議してほしい」なのですが…
“存じます”ばかりのメールは気持ち悪い
ビジネスメールで「存じます」つまり「思います」を多用すると気持ち悪い文章になってしまいます。あなたの意思が伝わらずぼんや〜りとしたメールになって「結局なにが言いたいの?」ということになりかねません。
そんなときに活躍するのが「ご抗議いただきたく、お願い致します」です。
「ご抗議いただきたく存じます」だと「抗議してもらいたいと思います」という意味であり、
「ご抗議いただきたく、お願い致します」だと「抗議してもらいたい、お願い!」というような意味になります。
敬語としてはどちらも、これでもかというくらい丁寧なので使い分けする必要はありません。
文章のバランスを考えてお好みでお使いください。
なお「ご抗議をいただきたく、お願い致します」というように「を」を入れるケースもあります。どちらを使っても正しい敬語です。
敬語の解説
一応「ご抗議いただきたく、お願い致します」の敬語の成り立ちをまとめておきます。
- もとになる単語「抗議」
- “〜してもらう”の謙譲語”お(ご)〜いただく”で「ご抗議いただく」
- 意思・希望”〜したい”で「ご抗議いただきたい」
- “願う”に謙譲語”お(ご)〜いたす”で「お願いいたす」
- 丁寧語”ます”をくっつけて「お願いいたします」
→ すべてあわせると「ご抗議いただきたく、お願いいたします」という敬語の完成
※「お願い申し上げます=お願いいたします」言い換えOK
※「お願いいたします」の表記は漢字「お願い致します」としてもOK
謙譲語をうまくつかい、このうえなく丁寧な敬語フレーズとなっていることがわかります。
したがって上司・目上やビジネスメールで使うのにふさわしい表現、と言えるでしょう。
もっとシンプルに”ご抗議をお願い致します”でもOK
“抗議してほしい!”と言いたいときに使える敬語。
あとはシンプルに、
- 【例文】ご抗議をお願い致します/ご抗議をお願い申し上げます
- 【例文】ご抗議をお願いします
としてもOKです。
意味としては「抗議をお願いします!」であり、
言いたいことは結局のところ「抗議してほしい」となります。
社内メールや懇意にしている取引先につかう
基本の使い方はこれまでとおなじ。
なにかしら「抗議してほしい!」というときに使います。
とくに懇意にしている社外取引先や社内コミュニケーション(上司・目上)であれば、そこまで堅苦しい敬語をつかう必要はありません。
あまりに丁寧すぎる敬語は相手との間に壁をつくってしまいますからね。
ということで相手をみてシンプルに「ご抗議をお願い致します」としてもなんら問題はありません。
ほかにも使える丁寧な敬語
これまで紹介した例文のほかにも…
- 【例文】ご抗議いただければ幸いです
※意味は「抗議してもらえたら嬉しいです」 - 【例文】ご抗議いただけますと幸いです
※意味は「抗議してもらえると嬉しいです」 - 【例文】ご抗議いただけましたら幸いです
※意味は「抗議してもらえたら嬉しいです」 - 【例文】ご抗議いただければ幸甚に存じます
※意味は「抗議してもらえたら、とても嬉しく思います」 - 【例文】ご抗議いただけますと幸甚に存じます
※意味は「抗議してもらえると、とても嬉しく思います」 - 【例文】ご抗議いただけましたら幸甚に存じます
※意味は「抗議してもらえたら、とても嬉しく思います」
なども似たような意味であり、とても丁寧な敬語です。
補足
※ 幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
※ 「幸い」は「幸せであること、嬉しい気持ち」の意味
※ 「存じる」は「思う」の謙譲語
※ 「いただきたく」は謙譲語「いただく」+希望「~したい」
※ 「いただければ」は謙譲語「いただく」+可能形+仮定「たら・れば」
※ 「いただけましたら」は謙譲語「いただく」+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
ビジネスメール例文
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「ご抗議いただきたく存じます」の使い方をビジネスメール例文とともにご紹介。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
なおビジネスメールにおいては以下の敬語もオススメです。
① それなりに丁寧「ご抗議くださいませ」
② 丁寧「ご抗議いただければと存じます」
③ かなり丁寧「ご抗議いただければ幸いです」など
④ ↓とくにビジネスメール結び/文末につかう↓
「ご抗議頂きますようお願い申し上げます」
「ご抗議くださいますようお願い致します」
「ご抗議のほど宜しくお願い致します」
ビジネスメール例文①抗議のお願い(社内)
メール件名:会員除名処分に対する抗議のお願い
xx部長(社内上司・目上など)
お疲れ様です。
営業部・ノマドです。
さて首記の件、ご承知のこととは存じますが、このたびの独占禁止法違反にともない化学工業会員からの除名処分を受けております。
ただ、過去に独占禁止法を侵し処分を受けた企業(鹿島など)も除名処分になっていないことから、このたびの除名処分は大変不服なものとなっております。
また、弊社としても化学工業会員を除名処分となるとビジネスに大きな支障をきたします。
そこでxx部長のほうからもぜひ、本処分についてご抗議いただきたく存じます。
大変お手数ではございますが、
お取り計らいの程よろしくお願い致します。
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メール署名
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ビジネスメール例文②抗議する(社外)
メール件名:会員除名処分に対する抗議
財団法人ビジネス会員
営業部 ●● 部長(社外取引先)
いつもお世話になっております。
(株)転職・ノマドです。
さて首記の件、ご承知のこととは存じますが、このたびの独占禁止法違反により貴団体より会員の除名処分を受けております。
ただ、過去に独占禁止法を侵し処分を受けた企業(鹿島など)も除名処分になっていないことから、このたびの除名処分は大変不服なものと考えており、強く抗議いたします。
誠に勝手を申し上げますが、
どうかご再考の程よろしくお願い申し上げます。
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メール署名
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