世の中のIT化の流れやIT技術の発展により、ITエンジニアとしての将来は約束されていると考えている人もいるでしょうが、果たして本当にそうでしょうか。
IT化の流れは日進月歩であり、世の中のニーズはエンジニアの数を上回っていますし、新しい技術を学ぶためには情報を効率よく取り込み、スキルへと変えていく努力をしていかなければなりません。
今20代のITエンジニアの中で、どれくらいの人が30代、40代と経験を積んでいく中でのキャリアパスを正確に指し示すことができているでしょうか。
ここでは現役エンジニアがITエンジニアの将来性について考察していきます。
ITエンジニアにとって明るい展望
ITエンジニアの将来性を考察するにあたり。
まずはポジティブな情報から紹介します。
1.IT産業はとどまるところを知らず成長する
ITエンジニアにとって明るい展望その1
- IT産業はとどまるところを知らず成長する
これはもう一般的に言われていることなので、あまり解説する必要もないとは思いますが…
インターネットが発展をしてわずか20年、家にあった黒電話は小さいコンピューターとなって誰もが携帯できるスマートホンへと姿を変えました。パソコンを購入してインターネットに接続していたものが、パソコンがなくても情報を仕入れることが容易にできるようになったのです。
技術の発展スピードはとても速く、映画の中の世界だった「AI」についても商用化が進んでおり、IT技術が人間を凌駕する存在になってくるといっても過言ではありません。
もしかしたら近い将来、一家に一台のロボットが家政婦として活躍する場面がやってくることも考えられます。
技術が発展をすると、世の中の様々なものが便利に活用できるようになります。IT化される事例が増えることで、企業の作業効率は向上をしていき、人々の暮らしは豊かになっていくのです。私たちの生活が豊かになり、業務が効率化されていくためにはITの利用が不可欠であり、そこにはITエンジニアが必要となります。
そういう意味でITエンジニアの需要は増えることはあっても無くなることはなく、将来性のある職業といえます。
2.人材不足で引く手あまた
ITエンジニアにとって明るい展望その2
- ITエンジニアは人材不足が深刻な職種であり、転職しやすい
経済産業省の調べによるとIT人材不足は2030年の中位シナリオで59万人、最大で79万人に達するとのこと。ちなみに近い将来である2020年でもすでに37万人の人材不足が予測されています。
どのくらいIT人材が不足しているか分かりやすくするために少し補足。
2019年卒・大学生の民間企業志望者数が40万人超。つまり民間志望の新卒全員がIT系の仕事に就職しても不足するくらい、すさまじい人材不足が予想されているのです。
IT人材の中核をなすのがITエンジニアですから、そっくりそのまま置き換えられます。
そういう意味でITエンジニアが職を失うリスクは低く、将来性のある職業といえそうです。
【出所】経済産業省HP
3.年収UPおよび待遇改善が期待される
ITエンジニアにとって明るい展望その3
- 今後、人材不足が深刻になれば年収UPおよび待遇改善が期待されること
ITエンジニアはその過酷な労働環境から、就職人気がそこまで高くありません。ただし今後、ホントに人材不足が深刻になってこれば年収なり処遇を改善してヒトを確保する企業が増えていくでしょう。
ITエンジニアの年収は500万円に満たないレンジに集中しています。
さらに年収1000万円超のエンジニアともなると、全体の1%くらいしかいません。
ところが米Googleや米AppleではたらくITエンジニアともなると、平均年収ですら1000万円以上になります。米国と比較しても仕方ないのでしょうけど…
魅力的な年収じゃないこと、および劣悪な労働環境が不人気の理由でヒトが集まらないとしたら…もう解決策は待遇を改善するしか無いのです。
すなわちITエンジニアの待遇がこれ以上に悪くなることはなく、将来の改善に期待できる職業と言えます。
ITエンジニアにとって気をつけるべき今後
ITエンジニアの将来性を考察するにあたり。
つづいてネガティブな情報にも触れておきます。
1.海外ITエンジニアの増加(海外ワーカーの国内流入)
ITエンジニアの今後ネガティブな点その1
- 海外ITエンジニアの増加、および海外ワーカー受け入れの加速
ITエンジニアの需要が高まっていることは前段でご説明をしましたが、逆に気を付けておかなければならない現状もあります。
まず考えられるのが海外での技術者の増加です。
日本で成功したいと考えているアジア圏の若い人は、猛烈に勉強をしており、技術力の平均値が年々向上しています。
これまではオフショアといって、海外にシステム開発の一部を委託することが流行していました。数年前までは、日本で開発する30%程度の費用で委託が出来ていたため、大企業を中心に多くの企業がオフショアを活用していたのです。
しかし今は日本の技術者と変わらない技術とスキルを保持し、委託費用に差が出なくなっています。
それどころか高い技術を持った状態で日本に来て、優秀なITエンジニアとして活躍している若者が目立つようになっているのです。日本にはビジネスチャンスがあると、必死に努力を続けてきた海外のITエンジニアに職業を奪われる現状があり、注意が必要です。
たとえ年収500万円程度であっても、インド人やベトナム人からすれば、自国の給料よりもはるかに高いわけですから。日本の労働市場というのは年収の面で米国の次くらいに魅力的で、海外労働者の積極的な受け入れも今後加速していくでしょう。
ということで。
人材の不足分を外人労働者でおぎなった場合、ITエンジニアに将来性は無いと考えることもできます。
2.AIや汎用ソフトによって仕事がなくなるリスク
ITエンジニアの今後ネガティブな点その2
- AIや汎用ソフトによって仕事がなくなるリスクあり
技術の発展がかえってITエンジニアを苦しませる現状もあります。AIを代表としたITの技術向上は、人の手を奪ってしまうこともあるのです。
これから新しいシステムを構築しようとした際、一から全てを作り込むことはなくなりました。世の中にある多様なサービスを活用した方が工数も少なく済みますし品質も向上します。
たとえば。
会計システムを一から開発をしようと思うと数千万円かかりますが、世の中に出回っているソフトを利用すれば数百万円、場合によっては数十万円で導入することができます。
クラウドサービスも増えており、一度に多額の予算をかけなくても、毎月の利用ライセンスによって課金されるソリューションも中小企業では人気となっているのです。
IT化することが一般的となっている一方で、便利なサービスが増えているため、技術者として活躍するシーンが減っているのも確かです。
ITエンジニアとして中途半端なスキルしか持ち合わせていなければ、このような便利なサービスや技術革新によって、仕事を失ってしまうリスクがあります。
3.日系企業が下請化するなど、いろいろ
ITエンジニアの今後ネガティブな点その3
あとはリスクとして、
- 日系企業がSAPやIBM、オラクル、その他グローバル企業にやられて、下請け的な仕事ばかりになってしまうこと
- 外国人の雇用が促進されれば、さらに劣悪な労働環境になる恐れもあること
- 身につけたスキルがすぐに古くなってしまい、つかえない人材になってしまうこと
などなど、ダークサイドをあげればキリがありません。
とくに①日系企業の下請化は10年ほど前からどんどん加速しているように感じます。日本には画期的なソフトウェアやサービスを開発する企業が圧倒的にすくないのですよね…。
SalesForceなりSAPがつくったおおもとのシステムを改造して企業におさめる、みたいな下請け的な仕事ばかりになってしまうともう、産業全体がダメになります。なぜならIT業界の産業構造として、下流にいけばいくほど儲からない仕組みになっていくから。
こうならないように富士通とかNEC・NTTデータは独自でなんとか頑張って欲しいですね。
まぁ考え始めると病んじゃうので、もう少し楽観的に考えたほうがいいでしょう(笑)
今後求められる、将来性のあるITエンジニア
あとは独断と偏見ですが…
将来性のありそうなITエンジニアの仕事をまとめておきます。ITエンジニアといってもその中にはプログラマ・SE・専門プログラマ・デザイナーなど色々な職種があります。
その中から、将来にわたって安泰な(安泰そうな)職種をピックアップしておきます。
1.セキュリティエンジニア
今後求められる、将来性のあるITエンジニアその1「セキュリティエンジニア」
IT化が進むにつれて、重要な概念となるのが「セキュリティ」です。
私たちの個人情報は多数のシステムに登録されており、それぞれのシステムの中で厳重に管理をされているはずです。これらの情報が世の中に流出してしまうと、悪質な業者に悪用されてしまうことがありますし、犯罪に巻き込まれる事も考えられます。
ピザ屋の宅配システムをつくったのであれば、名前や住所、電話番号などの会員情報が誰かに覗き見されることが考えられるのです。ピザ屋の受発注システムが普段から気軽に利用できているのは、そのセキュリティが安全であると思っているからです。
技術の向上によって個人情報を盗み出すハッカーやクラッカーのスキルも向上をしています。
- そこで求められるのがセキュリティエンジニアです。セキュリティのスキルを向上させれば、様々な企業において重宝されます。
クラウドは、誰もが気軽に利用できるメリットがある一方で、誰もがアクセスできる場所に情報を置くことになります。
外部からの侵入を許さないセキュリティ設計ができるITエンジニアがいれば、IT企業も安心してサービスを展開できるようになるのです。進化するサイバー攻撃をよく理解して、セキュリティとサーバの知識を向上させていけば、一生もののスキルへと変わっていくでしょう。
2.ゲームアプリエンジニア
今後求められる、将来性のあるITエンジニアその2「ゲームアプリエンジニア」
今スマホを開いたら、複数のスマホゲームがインストールされているのではないでしょうか。ゲーム業界は、家庭でハードを利用したものからスマホなどの携帯ゲームへと人が流れています。
スマホゲームの数は年々増え続けており「課金」という新しいビジネスモデルが一般的となりました。ゲームのプロモーションだけでソフトが売れる時代ではなく、口コミがとても有効で、本質的に面白いと感じてもらえるゲームが売れる時代になっているのです。
スマホゲームはこれからも増え続けていくでしょう。
ただし新しい企画が立ち上がっても人の手が足りていないのがゲームアプリの業界です。ゲームアプリは、リリースが1週間伸びるだけでビジネスチャンスを逃し、場合によっては会社にとって大きな損失になることがあります。
スピード感が重要視される中でも品質がとても大切であり、不具合が続くとファンは離れていってしまうシビアな業界です。
- どれだけ早く質の良いものをリリースできるかが重要であり、企業はゲームアプリに精通したITエンジニアを欲しがっています。
ゲームアプリを作っていると「こんなゲームが流行るのではないか」とエンドユーザーのニーズが見えてくるようになります。新しいゲームを作ってみたいと思ったら、どのようにして収益を上げるのかビジネスモデルを考え、自分で会社を立ち上げることも夢ではありません。
ベンチャー企業として成功すれば、多額の収益を手にすることも夢ではありません。
3.分析エンジニア
今後求められる、将来性のあるITエンジニアその3「分析エンジニア」
ビッグデータというキーワードをよく耳にするようになりました。
IT化の流れで情報はデータベース化され、蓄積された情報を活用していく時代となったのです。蓄積された情報はセールスの武器になり、個人情報を省いた状態で他の企業へ販売できる時代になっています。
よく集計と分析を混同してしまう人がいます。ビッグデータは、データだけでは意味を成しません。集計されたデータを提供するだけでは、価値に変わることがないのです。
- 集まったビッグデータをどのように活用していくのか、どのポイントに価値があるのかを指し示して提供することができるエンジニアが必要とされています。
たとえばコンビニの購買データを例に考えてみます。
コンビニのレジには、お会計の際に年齢層と性別を入力するようになっています。日々多くの購買データが蓄積されていくことになり、今後の販売戦略への材料となるのです。
ただし「40代の男性にこの商品が売れている」という情報だけでは購買データの分析としては活用することができず、次の販売戦略へとつながっていきません。
40代の男性がどの時間帯に購入をしており、一緒に購入している商品は何なのか。多店舗とはどのような差があるのか、店舗の環境や周りのライバル店とどのような関係性があるのか。
こういった様々な角度から分析をし、販売戦略を提案をしてくれるところまでデータを活用することができるエンジニアが必要とされています。
データを活用する企業は増えてきましたが、一方でデータを集めることだけに満足をしている企業がたくさんあります。そんななか「刺さる提案」をするためには他の人とは違った視点を持ち、データを活用した結果どのような効果があったのかを見届ける必要があります。
分析のスキルを高めるためには、仮説を立てて検証を続け、自分の中に経験値を蓄えていくといいでしょう。自分だからこそ見れる分析結果を得られることができれば、世間からも企業からも求められるITエンジニアへと変わっていくことになります。
4.コンサルタントエンジニア
今後求められる、将来性のあるITエンジニアその4「コンサルタントエンジニア」
ITの技術を持っているコンサルタントがこれからは必要になる時代です。システムを開発する際には、お客様の要望が第一になりますが、そのお客様も「本当にこれでいい」という確信があるわけではありません。
お客様の要望だけを聞くITエンジニアは、どこか物足りなく、誰でも出来ることをただ実施しているだけのITエンジニアで終わってしまいます。
これからの時代に求められるITエンジニアは、お客様に対してしっかりと「NO」が言えるITエンジニアです。これをやっても意味がありませんよ、こっちのやり方の方がいいですよ、と伝えることができるコンサルタントが真に求められています。
また、一からシステムを作り上げるのではなく、既にあるシステムを上手く組み合わせてお客様の本当の課題を解決することが大切です。
「分かりました作りましょう」とするのではなく、「この場合はこのシステムがいいですよ」と提案出来るコンサルタントを目指します。場合によってはシステムを作らなくても改善できる案が出てくることもあるでしょう。
ITエンジニアとして経験してきたからこそ、お客様の真の課題を解決する提案ができるようになるのです。
- ITエンジニアとして経験を積んだコンサルタントは、大手企業でも求められる存在
とくにアクセンチュアやデロイト・トーマツなど外資コンサルはITエンジニアを積極的に採用しています。これらの企業では年収1000万円もかる~く見えてきます。
ただし注意点として。
コンサルタントは、自分が得意としている何かを持っているとより力を発揮します。コンサルタントエンジニアを目指す場合は、お客様と真摯に付き合い、その業界の事を研究し続ける必要あり。ITエンジニアのスキルアップと並行して、社会の流れを知り、交渉力を強化をしていくといいでしょう。
5.英語のできるITエンジニア
今後求められる、将来性のあるITエンジニアその5「英語のできるITエンジニア」
ビジネスはどんどんグローバルになっています。
消費者やクライアント企業は国内だけにとどまらず、海外にも多数あります。また、たとえクライアントが日系企業であっても、彼らが世界に複数拠点をもっていればどうなるでしょう?
海外とのコミュニケーション窓口となるITエンジニアが必要になりますよね。
そんなこんなで。
ビジネスがグローバルになるなか、英語のできるITエンジニアは重宝されます。
たいしたスキルをもっていなくても、英語力だけを徹底的にみがけば職をうしなうリスクは低く、必ず転職先はあります。ITコンサルなどになり、飛躍的に年収UPすることも可能になります。
転職しないにしても、キャリアUPするための強力なツールになることでしょう。
- TOEICで800点に満たないITエンジニアのかたは、ぜひ英語を身につけましょう。
どんなITエンジニアになりたいか、考えてみよう
現在ITエンジニアとして働いている人の多くは、溢れかえる仕事に埋もれて将来が見えていない人がほとんどではないでしょうか。
年々、新しい技術を覚えるのが辛くなってきて、年齢的にもパフォーマンスが落ちてきた時の事を想像してみると「本当にこのままITエンジニアとして働いていていいのか」という疑問が浮かび上がってくるものです。
ITエンジニアとして将来も働いていたいと考えるのであれば、自分がどのようなITエンジニアになりたいのかを明確にイメージしておくことが大切です。
- 新しいアプリを作ってみたい!
- 世の中の役に立ってみたい!
と考えるITエンジニアはたくさんいます。ただ一方で、その夢に向かって今出来る努力を続けている人はほんの一握りです。
目指すべきITエンジニア像とやりたい仕事をリンクさせ、仕事とは別に個人で勉強する時間を設けることが必要なのです。
まとめ
総括するとITエンジニアの将来は明るいです。あるいはそう思いたいですね。
自分がやりたいと思っていた事を目指し、世のため人のために役立つ仕事は、ITエンジニアとしての誇りになります。
ITエンジニアの将来は誰かに決められているものではありません。これから自分の手で作り上げていくのだ、というくらいの意気込みと努力、そして様々な経験を積んでいくことが大切だと言えるでしょう。