拝見(読み:はいけん)について、意味と上司や目上への正しい使い方、注意点をビジネスメールの例文つきで誰よりもくわしく解説していく記事。
まず簡単にまとめを。
「拝見」の意味は「見ること」。敬語(謙譲語)をつかっているため実際にはもっと丁寧なニュアンスです。
使い方は意味のとおりで上司や目上・取引先を前にして何かしら見たい、あるいは見たとき。
- 現在「見ます」としたい時
「拝見します。」※丁寧
「拝見いたします。」※さらに丁寧
「拝見させて頂きます。/拝見させてください。」※許可を得たいときのみ - 過去「見ました」としたい時
「拝見しました。」※丁寧
「拝見いたしました。」※さらに丁寧
「拝見させて頂きました。」※相手の許しが必要な時のみ - 進行形「見ている」とする
「拝見しています。」※丁寧
「拝見しております。」※さらに丁寧
「拝見いたしております。」※めちゃ丁寧
「拝見させて頂いております。」※相手の許しが必要な時のみ - 希望「見たい」とする
「拝見したく存じます。」※丁寧
「拝見いたしたく存じます。」※さらに丁寧
「拝見させて頂きたく存じます。」※相手の許しが必要な時のみ - 許可「見てもいいか?」とする
「拝見してもよろしいでしょうか。」
「拝見できればと存じます。」 - 「見させてもらう」とする ※常に使える訳ではない
「拝見させて頂きます。/拝見させてください。」
「拝見させて頂きました。」
「拝見させて頂いております。」
「拝見させて頂きたく存じます。」
たとえば上記のように「何かしら見ます」あるいは「見ました」「見ています」「見たいです」という意味でビジネスメールにつかうと丁寧です。
どの例文も社内メールで目上(上司や先輩)につかっても、社外のビジネスメールにつかってもよい丁寧な敬語表現。
なお注意点として。
「拝見していただく」「拝見してください」「拝見しましたか?」はすべて間違い敬語です。ご留意ください。
ざっくりとした解説はこれにて終了。
くわしくは本文中にて意味と使い方、注意点を述べていきます。
※長文になりますので、時間の無い方は「見出し」より目的部分へどうぞ。
“拝見”の意味と敬語
拝見(読み:はいけん)の意味は・・・
- 見ることをへりくだっていう語。
つまり「見ること」の謙譲語ですね。
「見る」に謙譲表現「拝」をくっつけているため上記の意味になります。
※なお類語は「見る」「借用(しゃくよう)」などあり
「拝見する」だと「見る」の意味となります。
身近な「拝見」のたとえ・例文
日常シーンではほとんど使うことのない「拝見」ですが…
「拝見」って一体どんなシーンでつかえるのかというと身近ではたとえば…
- ホームページを見た
というとき「貴社ホームページを拝見しました。」or「拝見いたしました」 - Facebookの投稿を見た
というとき「部長のFacebookを拝見させていただきました。」or「拝見しました」or「拝見いたしました」 - テレビCMを見た
というときに「貴社のテレビCM拝見いたしました。商品の魅力がわかりやすく伝わる、すばらしいCMでしたね!」 - 他人あての手紙を見たい
というときに「失礼ながら、お手紙拝見したく存じます。」
こんなシーンでつかいます。
「拝見」の丁寧な使い方
なお「拝見」の使い方として。
「拝見」は「見ること」の意味の名詞であるため単体ではほとんど使えません。
たとえば先の例文で「ホームページを拝見ました」「テレビCMを拝見ました」では意味不明ですね。
そこで「拝見する=見る」というように動詞にして「する」の部分を以下のようにもっと丁寧な敬語にしてつかいます。
- 【丁寧】丁寧語”ます”をくっつけて「拝見します」
- 【かなり丁寧】謙譲語”いたす”丁寧語”ます”で「拝見いたします」
- 【バカ丁寧】謙譲語”させていただく”丁寧語”ます”で「拝見させていただきます」
- 【許可を得る】謙譲語”させていただく”丁寧語”ます”で「拝見させてください」
- 【見たいとする時】謙譲語”存じる”丁寧語”ます”「拝見したく存じます」※希望の表現
なお過去のことには「~ました」をつかいます。
あるいは希望「~したい」とするときには「拝見したく」「拝見いたしたく」。
許可を得たいときに「~させてもらう」とするには「拝見させていただく」とします。
“拝見”の使い方とビジネス例文
つづいて「拝見」の使い方について。
ビジネスメールの例文をまじえながらシーン別に紹介します。
使い方①”見ます”と言いたい時
ビジネスシーンにおける「拝見」の丁寧な使い方、その1。
「見ます」と言いたいときにはビジネスシーンにおうじて以下のような敬語をつかうと丁寧。
- 【丁寧】拝見します。
- 【かなり丁寧】拝見いたします。
※「拝見する」の「する」を謙譲語「いたす」に変換し丁寧語「ます」をくっつけた敬語
どちらも意味は「見ます」。敬語「拝見」をつかっているため実際にはもっと丁寧なニュアンスとなります。「する」の部分に謙譲語「いたす」をつかうとより丁寧な敬語になります。
また。
- 【バカ丁寧】拝見させていただきます
※「拝見させてもらう」の「もらう」を謙譲語「いただく」に変換し丁寧語「ます」をくっつけた敬語
とすることもできます。「拝見させて頂きます」の意味は直訳すると「見させてもらう」。つまり「見る」という意味ですが「恐れ多くも見させてもらいますよ、許してね」という許可をえるようなニュアンスになります。
ただし。
「拝見させて頂く」は使い方によってヘンテコな日本語となることもあるためご留意を。シンプルに「拝見します」「拝見いたします」で十分に丁寧です。※くわしくは後述
▼ビジネス例文▼
- 【例文】レポート拝見します。
- 【例文】資料を拝見いたします。
◎参考記事:「拝見する」の意味と使い方・ビジネスメール例文
使い方②”見ました”と言いたい時
ビジネスシーンにおける「拝見」の丁寧な使い方、その2。
「見ました」と言いたいときにはビジネスシーンにおうじて以下のような敬語をつかうと丁寧。
- 【丁寧】拝見しました。
- 【かなり丁寧】拝見いたしました。
※「拝見する」の「する」を謙譲語「いたす」に変換し丁寧語の過去形「ました」をくっつけた敬語
どちらも意味は「見ました」。敬語「拝見」をつかっているため実際にはもっと丁寧なニュアンスとなります。「する」の部分に謙譲語「いたす」をつかうとより丁寧な敬語になります。
また。
- 【バカ丁寧】拝見させていただきました。
※「拝見させてもらう」の「もらう」を謙譲語「いただく」に変換し丁寧語の過去形「ました」をくっつけた敬語
とすることもできます。「拝見させて頂きました」の意味は直訳すると「見させてもらいました」。つまり「見る」という意味ですが「恐れ多くも見させてもらいましたよ、許してね」という許可をえるようなニュアンスになります。
ただし。
「拝見させて頂く」は使い方によってヘンテコな日本語となることもあるためご注意を。※くわしくは後述
▼ビジネス例文▼
- 【例文】貴社ホームページを拝見しました。
- 【例文】カタログを拝見いたしました。
- 【例文】貴社HPを拝見し、連絡いたしました。
- 【例文】貴社の求人広告を拝見し連絡いたしました。
あるいは。
- 【例文】会議資料を拝見しましたところ、いくつか修正をお願いしたい箇所が見つかりました。
- 【例文】貴社ホームページを拝見いたしましたが、製品スペックに関する記載が見あたらず問合せいたしました。
上記のように「見たところ~・見ましたが~」という意味でビジネスメールにつかっても丁寧です。
◎参考記事:「拝見いたしました」の意味と使い方・ビジネスメール例文
使い方③”見ています”と言いたい時
ビジネスシーンにおける「拝見」の丁寧な使い方、その3。
「見ています」と言いたいときにはビジネスシーンにおうじて以下のような敬語をつかうと丁寧。
- 【丁寧】拝見しています。
- 【かなり丁寧】拝見しております。
- 【かなり丁寧】拝見いたしております。
※「拝見している」の「している」を謙譲語「しておる」に変換し、さらに丁寧語「ます」をくっつけた敬語
どちらも意味は「見ています」。敬語「拝見」をつかっているため実際にはもっと丁寧なニュアンスとなります。「する」の部分に謙譲語「いたす」をつかうとより丁寧な敬語になります。
また。
- 【バカ丁寧】拝見させて頂いております。
※「拝見させてもらっている」の「もらっている」を謙譲語「いただいておる」に変換し丁寧語「ます」をくっつけた敬語
とすることもできます。「拝見させて頂きたく存じます」の意味は直訳すると「見させてもらいたいと思います」。つまり「見たい」という意味ですが「恐れ多くも見させてもらいたく思います、許してね」という許可をえるようなニュアンスになります。ただしこれまで同様「拝見させて頂く」は使い方によってヘンテコな日本語となることもあるためご注意を。※くわしくは後述
▼ビジネス例文▼
- 【例文】いつもブログを拝見しています。
- 【例文】いつもNHK大河ドラマを拝見しおります。
- 【例文】xxさんの投稿をいつも楽しみに拝見いたしております。
◎参考記事:「拝見しています」の意味と使い方・ビジネスメール例文
使い方④”見たいです”と言う時
ビジネスシーンにおける「拝見」の丁寧な使い方、その4。
「見たいです」と言いたいときにはビジネスシーンにおうじて以下のような敬語をつかうと丁寧。
- 【丁寧】拝見したく存じます。
- 【かなり丁寧】拝見いたしたく存じます。
※「拝見したいと思う」の「したい」を謙譲語「いたしたい」に変換し、さらに「思う」の謙譲語「存じる」+丁寧語「ます」をくっつけた敬語
どちらも意味は「見たいと思います」。「見たいです!」と直接的に言うのではなく「見たいと思います」とすることでやんわ~りとしたお願いのフレーズになりますね。
また。
- 【かなり丁寧】拝見させてください。
※「拝見させてくれる」の「くれる」を尊敬語「くださる」に変換し命令形にした敬語
としても丁寧です。「拝見させてください」の意味は直訳すると「見させてください」。ようは相手から「見ることを許してほしい」という許可をえるような感じのニュアンスになります。使い方はおなじですが、許可をえるときの敬語フレーズ「させてください」をつかっているため、こちらの方が丁寧です。
- 【バカ丁寧】拝見させていただきたく存じます。
※「拝見させてもらいたいと思う」の「させてもらいたい」を謙譲語「させていただきたい」に変換し、さらに「思う」の謙譲語「存じる」+丁寧語「ます」をくっつけた敬語
「拝見させて頂きたく存じます」の意味は直訳すると「見させてもらいたいと思います」。ようは相手に「見ることを許してほしい」という許可をえるような感じのニュアンスになります。ただしあまりに遠まわしすぎてうっとおしく感じられるフレーズです。シーンを選んで慎重につかう必要があるため、敬語ビギナーはこれまで紹介した例文をつかいましょう。
▼ビジネス例文▼
- 【例文】安全上の理由によりお手荷物の中身を拝見したく存じます。
- 【例文】製造ラインを拝見いたしたく存じます。
- 【例文】よろしければ現場を拝見したく存じます。
- 【例文】資料を拝見いたしたく存じます。
- 【例文】まずは製品カタログを拝見したく存じます。
◎参考記事:「拝見したい」ときにつかえる敬語5選とメール例文
使い方⑤”見てもいいですか”と言いたい時
ビジネスシーンにおける「拝見」の丁寧な使い方、その5。
「見てもいいですか?」と相手の許可をえるような言い方にするには以下のような敬語をつかうと丁寧。
- 【例文】拝見できますでしょうか?
※意味は「見ることができるでしょうか?」つまり「見てもいいですか?」 - 【例文】拝見できればと存じます。
※意味は「見ることができたらと思います」 - 【例文】拝見してもよろしいでしょうか。
※意味は「見てもいいでしょうか?」
もっともオーソドックスにつかえるのは「拝見してもよろしいでしょうか?」ですね。「~してもよろしいでしょうか?」は「~してもいいでしょうか?」の意味の許可を得るときの敬語であり、サラッと使えてしかも丁寧なのでビジネスシーンでは重宝するフレーズ。
敬語の補足
※「存じる」は「思う」の意味の敬語(謙譲語)。「~したく存じます」だと「~したいと思います」の意味になる。
※「いたしたく」は「する」の謙譲語「いたす」に希望・願望の「~たい」をくっつけた敬語
※「させてください」は「させてくれる」の尊敬語「させてくださる」を命令形にした敬語
※「させていただきたく」は「させてもらいたい」の謙譲語
【注意点】”拝見”はこう使う!
つづいて「拝見」の使い方というか注意点について簡単に。
①”ご拝見”は二重敬語!
「拝見」をつかうときの注意点その一。
もっとも初歩的な敬語の使い方なのですが…「ご拝見」はNGです。
「拝見」はすでに「見ること」の敬語(謙譲語)なのに、さらに謙譲語「ご」をくわえてしまっています…
結果として「見ること」に①謙譲語「拝見」+②謙譲語「ご」としており二重敬語になりますね。※二重敬語とはひとつの単語におなじ種類の敬語を2回つかうことでありNGです。
あるいは。
「お(ご)~する」のひとかたまりを謙譲語として見たとき。「ご拝見する」でもいいんじゃないのか?とする意見もあります。ただ「~」の謙譲語が「お(ご)~する」だという解釈を適用した場合には「拝見」が謙譲語であるため、そもそも二重敬語ということになります。
②”拝見しましたか?””拝見していただく”は間違い敬語!
「拝見」をつかうときの注意点その二。
こちらも初歩的な敬語の使い方なのですが…
×「見ましたか?」と言いたいときに「拝見しましたか?」は間違い敬語です。
×「見ていただけますか?」と言いたいときに「拝見していただけますか?」も間違い敬語。
「拝見」は謙譲語であるため自分の行為につかい相手の行為にはつかいません。※例外あり
たとえば以下の使い方は間違い敬語となりNGです。十分にお気をつけください。
- NG例×上司なり目上・取引先が拝見しています「添付のレポートを拝見してください」
- NG例×上司なり目上・取引先に拝見いただく「お手元の資料を拝見していただけますか」
相手の行為には基本的に謙譲語ではなく尊敬語をつかいます。※例外あり
したがって相手に見てほしいときには。
見ることの尊敬語「ご覧くださる」や例外的に謙譲語「ご覧いただく」をつかいます。以下のようにすると正しい敬語になりますね。
- 正しい例◎「添付のレポートをご覧ください」
- 正しい例◎「まずはお手元の資料をご覧ください」
いずれも上司なり目上・取引先に何かしら「見てください・見てほしい」といいたいときに使える敬語になります。
③”拝見いたします”は二重敬語ではない!
あとは注意点というよりもよくある敬語の勘違いについて。
「拝見いたします」は二重敬語だから誤りだという意見もあります。ただし答えは二重敬語ではなく100%正しい敬語です。
なぜ「拝見いたします」が間違い敬語のように感じてしまうかというと…
「拝見」はすでに謙譲語であり、さらに「する」の謙譲語「いたす」をつかって「拝見いたす」としているから…
「拝見=謙譲語」×「いたす=謙譲語」
「拝見いたします」は「謙譲語 x 謙譲語」だから二重敬語??
このようなロジックで二重敬語だという意見がでてくるのかと。
ただし答えは…「二重敬語ではない」です。
二重敬語とは「ひとつの語におなじ敬語を二回つかうこと」であり敬語のマナー違反です。
たとえば「お伺いいたす」「お伺いする」などが二重敬語の例。「行く・尋ねる」の謙譲語「伺う」をつかっているのに、さらに「お〜いたす」「お〜する」という謙譲語をつかっているためです。
ところが。
「拝見いたす」は以下のように「①見ること」「②する」という2つの異なる単語にそれぞれ謙譲語を用いているため二重敬語ではなく、正しい敬語の使い方をしているのですね。
①「拝見」=「見ること」の意味の謙譲語(単体では名詞)
②「いたす」=「する」の意味の謙譲語
くわしくは以下の記事にて。
④”拝見させて頂く”も正しい敬語だが…
あとはこちらもよくある敬語の勘違い。
「拝見させていただく」「拝見させていただきます」は二重敬語だから誤りだという意見もあります。ただし答えは二重敬語ではなく100%正しい敬語です。
「拝見させていただく」は以下のように「①見ること」「②させてもらう」という2つの異なる単語にそれぞれ謙譲語を用いているため二重敬語ではなく、正しい敬語の使い方をしているのですね。
①「拝見」=「見ること」の意味の謙譲語(単体では名詞)
②「させていただく」=「させてもらう」の意味の謙譲語
ただし。
使うシーンによっては日本語としておかしくなるため注意が必要。
「拝見させていただく」の意味は「見させてもらう」ということですから、何かしら相手にとって不都合なことにたいして許可を得るようなニュアンスです。
たとえば。
○「部長のご自宅を拝見させていただきました」としたとき。上司が自宅を大々的に自慢しているわけでないのでしたら、上司のプライバシーにかかわることです。そんなときには「自宅を見させてもらったよ、許してね」というニュアンスで「拝見させていただく」をつかうのは何ら問題ではありません。正しい日本語の使い方です。
ところが。
×「貴社ホームページを拝見させていただきました」とした場合。会社としてはお客さんなり誰かしらに訪れてもらうためにホームページを作っているわけです。それなのにこの使い方だと「ホームページ見させてもらったよ、許してね」というようようなニュアンスになります。
もし会社のホームページが極秘情報や会社のスキャンダルで埋められていて誰にも見られたくないようなものであれば、「ホームページを拝見させていただきました」でもまぁよいでしょう。ところが常識的にはそうじゃない訳です。
したがってこんな時には「ホームページを拝見しました/拝見いたしました」が正しい日本語の使い方ということになります。