「する」の敬語変換|謙譲語と尊敬語、ビジネスメール例文、使い方

「~する」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)と、

ビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点について。ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。

まずは要点のまとめから。

~する の謙譲語は

①~いたす
②お・ご~する
③お・ご~いたす

※「させていただく」は「する」の謙譲語ではなく、「させてもらう」の謙譲語。

謙譲語は自分の行為につかうことが基本となるため、

  1. (自分が)ご連絡いたします
  2. (自分が)ご報告いたします
  3. (自分が)お伝えいたしましょうか?

として使います。もっと丁寧にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「~いたします」とするのが一般的。

また、

「~いたす」の「~」にはホントにいろいろな語がはいります。上記はほんの一例です。

~する の尊敬語は

①~される
②~なさる
③お・ご〜なさる

いっぽうで尊敬語は相手の行為につかうことが基本となるため、

  1. どうなさいましたか?
  2. どうされましたか?
  3. 空席状況はご確認なさいましたか?されましたか?
  4. 展示会には部長も訪問なさいますか?されますか?

として使います。「~される・~なさる」の「~」部分にはホントにいろいろな語がきます。上記はほんの一例。

また、もっと丁寧にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「~なさいます」「お・ご~なさいます」「~されます」とするのが一般的。

ただし、

尊敬語の「~される」は受身や可能の「~れる・られる」と間違われることもおおいため、「~なさる」「~なさいます」を使うほうが無難。まぁ使い方にもよるのですけど…

ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではいろいろな例文を紹介しながら使い方、注意点について説明していきます。

する の謙譲語「いたす」「お~する」「お~いたす」使い方と例文

まずは「する」の謙譲語「いたす」「お・ご~する」「お・ご~いたす」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。

そもそも謙譲語とは?

念のため基本となる謙譲語とはなにか?について簡単に復習しておきます。

  • 謙譲語Ⅰ = 自分を低めることで行為のおよぶ先を高めて敬意を表す敬語のこと。
    例文「お伝えします」「お土産をいただく」「貴社へ伺う」
  • 謙譲語Ⅱ = 聞き手に敬意を表す敬語のことで「もうす」「おる」「まいる」「いたす」などがある。
    例文「母に申します」「海へ参ります」

2種類ありややこしく感じるかもしれませんが「①自分側を低めて相手を高める」か「②話し手に敬意を示すために使う」だと理解しておきましょう。

【出典】文化庁「敬語の指針」

使い方

「する」の謙譲語「いたす」「お・ご~する」「お・ご~いたす」の使い方は先にのべたとおり、

「自分が~いたす」のようにして自分の行為・行動に使う謙譲語です。

自分を低くすることで対象を立てる・うやまう・高める敬語が謙譲語であるため、決して対象の行為にたいして謙譲語を使ってはいけません。

そうすると、

  • 正しい例文「ご連絡いたします」
  • 正しい例文「ご報告いたします」
  • 正しい例文「お伝えいたしましょうか?」

のような感じで「自分が~する」ときにつかいます。

一方でNGとなる使い方にはたとえば、

  • NG例文「取引先の○○部長が弊社にご訪問しました」

のような例文はダメ。

目上のヒトなり社外の相手が「する」としたいときには謙譲語ではなく尊敬語を使い「取引先の○○部長が弊社にご訪問なさいました」あるいは「いらっしゃいました」とします。

お伺いいたします・お伺いする は二重敬語だから間違い!

ここでひとつ注意点を。

謙譲語「いたす」をつかうと二重敬語になってしまう表現がおおくあります。

たとえば、

「行く・聞く」の謙譲語「伺う」にさらに謙譲語「お~いたす」「お~する」をつかうと「お伺いいたす」「お伺いする」という謙譲語になります。

ここでひとつ問題が…

お伺いいたす・お伺いする はおなじ「行く・聞く」という語に謙譲語を2回つかっているため二重敬語にあたりNGです。

おなじように以下の謙譲語も二重敬語となりNG。

  • 間違い敬語「お伺いしたい」
    → 正しくは「伺いたい」
  • 間違い敬語「お伺い」
    → 正しくは「伺い」

でも、これらの敬語はビジネスシーンではどの表現もフツーに使われます。ビジネスパーソンのつかう敬語って実は、わたしも含めてBroken敬語なのです。

ということで、
間違っていても突っ込まれることは少ないとは思いますがお気をつけください。

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

「する」の謙譲語「いたす」「お・ご~する」「お・ご~いたす」を使うときには、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。

すでに例文にはしていますが…

ビジネスシーンにおいては
「いたします」「お・ご~します」「お・ご~いたします」として使うとより丁寧です。というより、ほぼ100%こういった使い方をします。

「いたします」「お~します」「お~いたします」どれ使う?

これまで述べたように「する」の謙譲語には以下3つの種類があります。

  1. 「いたす」「いたします」
  2. 「お~する」「お・ご~します」
  3. 「お~いたす」「お・ご~いたします」

で、一体どれを使うべきかという点について少し。

ビジネスメール・手紙・文書では「お・ご~いたします」

ビジネス会話では「お・ご~します」あるいは「いたします」

のようにして使い分けするとよいでしょう。文書やメールなど顔の見えないコミュニケーションではよりかしこまった敬語フレーズが好まれるからです。

いっぽうで会話シーンでの堅苦しい敬語は「バカ丁寧」であり、相手に不快感をあたえるリスクあり。多少はくだけた敬語をつかっても差し支えありません。

ただしホントに相手によるのですけど…

させていただく は「させてもらう」の謙譲語

ここでもう一つ注意点を。

「する」の謙譲語を「させていただく」としているウェブサイトを見かけますが、これは100%間違いです。「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語ですのでご注意を。

「させていただく」は敬語としては正しいです。

ただ、

「する」の謙譲語だと思って多用していると相手に不快感を与えます。

たとえば何かの資料を相手に送りたいとき。

  • ×送付させていただきます
  • ×お送りさせていただきます

のような敬語フレーズを見かけることがありますが…間違い敬語ではないものの、あまりオススメしません。

させていただきます は「させてもらう」の謙譲語です。

ということは、

  • ×送付させていただきます=送付させてもらいます
  • ×お送りさせていただきます=送らせてもらいます

という意味になります。

で、

なぜダメかということですが…
「させてもらいます」には自分の意思を感じられないことが問題。

「資料などを送付する」のはあなたの意思で行っているハズ。それなのに「資料を送付させてもらいます」ではまるで資料を送るのに相手の許可がいるみたいでオカシイ。

この場合、ビジネスシーンにふさわしい敬語は…

  • 適切な謙譲語「送付いたします」
  • 適切な謙譲語「お送りいたします」
  • 適切な謙譲語「お送りします」

となります。

「させていただく」をビジネスシーンで多用するのはヤメておきましょう

例文

「する」の謙譲語「いたす」「お・ご~する」「お・ご~いたす」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文まとめ。

ホントに色々と使えます。

  1. ビジネスメールで「~する」とするシーン
    ・例文「ご依頼のサンプル出荷が完了いたしました。以下、納期等の仔細につきご報告いたします」
    ・例文「一度、ご挨拶かたがたご訪問いたしたく存じます」
    ・例文「○○部長の送別会を開催いたしたく、以下、日程等の仔細につきご案内いたします」
  2. 疑問形「~しましょうか?」とするシーン
    ・例文「お荷物、お持ちいたしましょうか?」
    ・例文「空港までお届けいたしましょうか?」
【補足】
・使い方は「~する」としたいときのビジネスメール、会話
・存じる は「思う」の謙譲語でビジネスメールなどかしこまった表現が好まれるシーンで使われる敬語。
・謙譲語を使うことで自分の行為を低くし話の受け手を高めている

する の尊敬語「~なさる」「お~なさる」「~される」使い方と例文

つづいて「する」の尊敬語「~なさる」「お・ご~なさる」「~される」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。

そもそも尊敬語とは?

念のため基本となる尊敬語とはなにか?について簡単に復習しておきます。

尊敬語とは、相手を高めるときに使う敬語のことを言います。敬意を表したい相手の動作や行為を高めて使う敬語ですね。

注意点として、

社外のひとに社内のひとのことを話すときには尊敬語ではなく、謙譲語を使います。このシーンで尊敬語を使うと「社内のひと > 社外のひと」というようになってしまいますね。

社外の人の前で尊敬語「弊社の部長がおっしゃいました」ではおかしくって謙譲語「弊社の○○が申しておりました」とします。

高めるべき順番は「社外 > 社内」であり、この図式を守って使いましょう。

使い方

「する」の尊敬語「~なさる」「お・ご~なさる」「~される」の使い方は先にのべたとおり、

「目上の相手が~なさる」のようにして相手の行為・行動に使う尊敬語です。

相手を立てる・うやまう・高める敬語が尊敬語であるため、決して自分の行為にたいして尊敬語を使ってはいけません。尊敬語を自分の行為に使うと、自分で自分をうやまうことになってしまいます。

そうすると、

  • 正しい例文「部長が金閣寺をご訪問なさいました」
  • 正しい例文「いかがなさいましたか?」
  • 正しい例文「いかがされましたか?」

のような感じで誰か対象となる「相手が~する」ときにつかいます。

一方でNGとなる使い方にはたとえば、

  • NG例文「いかがいたしましたか?」

のような例文はダメ。

目上のヒトが「~する」としたいときには謙譲語ではなく、相手の行為をうやまって高める敬語(尊敬語)を使います。

「なさいます」「されます」「お~なさいます」どれを使う?

ここでひとつ注意点というか、まぎらわしいので少し解説を。

「~する」の尊敬語には、

  • ~なさる
  • ~される
  • お・ご~なさる

と3パターンあります。

どれも正しい敬語なのですが「~される」は受け身や可能形の「れる・られる」との混同をまねいてしまいます。

ということで「~なさる」「お・ご~なさる」が無難な尊敬語フレーズ。ただしホントに文脈や組み合わせる言葉によります。違和感のあるフレーズは使わないこと。

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

繰り返しにはなりますが、

「する」の尊敬語「~なさる」「お・ご~なさる」「~される」は、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。

すでに例文にはしていますが…

ビジネスシーンにおいては
「~なさいます」「お・ご~なさいます」「~されます」として使うとより丁寧です。

例文

「する」の尊敬語「~なさる」「お・ご~なさる」「~される」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文。

  1. 目上のヒトが「~する」としたいビジネスシーン
    ・例文「部長が取引先にご訪問なさいました」
    ・例文「取引先が弊社へご訪問なさいました」
  2. 目上のヒトに「~しますか?」と質問するビジネスシーン
    ・例文「部長、取引先の工場にはご訪問なさいますか?」
    ・例文「お食事になさいますか?それとも私になさいますか?」
  3. 目上のヒトに「~してください」とお願いするビジネスメール
    ・例文「ご連絡くださいますようお願い申し上げます」
    ・例文「ご案内いただきますようお願い申し上げます」
    ・例文「一度、弊社オフィスにご訪問いただければと存じます」
    ※「する」の尊敬語ではないものの、よく使うお願いの敬語フレーズ
【補足】
・使い方は「~する」としたいときのビジネスメール、会話
・存じる は「思う」の謙譲語でビジネスメールなどかしこまった表現が好まれるシーンで使われる敬語。
・ください は尊敬語「くださる」の命令形

他にもよく使う敬語の変換表

「する」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)のほかにもビジネスシーンでよく使う敬語をまとめておきます。これを機にマスターしておきましょう。

謙譲語 尊敬語 丁寧語
受け取る  拝受する
拝受いたす
 お受け取りになる  受け取ります
来る  伺う
参る
参上する
 いらっしゃる
来られる
お見えになる
お越しになる
来ます
言う  申す
申し上げる
 おっしゃる
言われる
 言います
会う  お会いする
お目にかかる
 お会いになる
会われる
 会います
する  致す
(いたす)
 なさる  します
伝える  お伝えする
申し伝える
 お伝えになる
伝えられる
 伝えます
思う  存じる  お思いになる
思われる
 思います
訪問する  ご訪問する
ご訪問いたす
 ご訪問なさる
訪問される
 訪問します
行く  伺う
参る
参上する
 行かれる
お行きになる
 行きます
もらう  いただく  くださる  もらいます
「~れる」という尊敬語は受身や可能の「れる・られる」と混同しやすいため「お~なる」「お~なさる」を使うほうがベター。

する の謙譲語・尊敬語はこう使う!

つづいて「する」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点を解説します。

敬語を正しく使うことはもちろん、
ふさわしいビジネスシーンを考えて使いましょう。

×部長、A社にご訪問いたしましたか?

「する」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

きわめて初歩的ではありますが…

謙譲語を使うべき対象がおかしいのはダメ。「ご訪問いたす」は謙譲語であるため、自分の行為にたいして使います。

したがって、

  • NG例文「部長、A社にご訪問いたしましたか?」

は間違い敬語です。

上司や目上のヒトが行くのであれば

  • 正しい例文「部長、A社にご訪問なさいましたか?」
  • 正しい例文「部長、A社に訪問されましたか?」
  • 正しい例文「部長、A社にお訪ねになりましたか?」
  • 正しい例文「部長、A社に行かれましたか?」

とするのが正解。

×お荷物をお持ちなさいますか?

「する」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

こちらもきわめて初歩的ではありますが…

尊敬語を使うべき対象がおかしいのはダメ。「お持ちなさる」は尊敬語であるため、相手の行為にたいして使います。

したがって、

  • NG例文「お荷物をお持ちなさいますか?」

は間違い敬語です。

こうすると、あなたが自分で自分のことを高めてしまっています。荷物を持ちましょうか?とするのであれば、

  • 正しい例文「お荷物をお持ちいたしましょうか?」
  • 正しい例文「お荷物をお持ちいたしますか?」

とするのが正解。

×社外のヒトにたいして「弊社の上司が外でお待ちになっています」

「する」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

こちらもきわめて初歩的ではありますが…

ウチ・ソトが逆転している敬語はダメ。社内のヒトのことを社外に伝えるときには、たとえ上司であっても高めてはいけません。ウチを低める謙譲語を使います。
  • NG例文(社外に対して)弊社の上司が外でお待ちになっています

だと、社外のヒトに対して上司を高めてしまっています。この敬語の使い方だと「上司 > 社外のヒト」となってしまうのですよね。

ということで、

上司を低めて社外の相手を高める謙譲語をつかい「社外のヒト > 上司」という本来あるべきポジションにします。

  • 正しい例文(社外に対して)上司の○○が外でお待ちいたしております
  • 正しい例文(社外に対して)上司の○○が外でお待ちしております

とするのが正しい敬語。

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

「する」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

何度もしつこいですが…

丁寧語「です・ます」を謙譲語や尊敬語と組み合わせると、より丁寧な敬語フレーズになります。むしろビジネスシーンでは必ずといっていいほど組み合わせて使いますね。

たとえば、

  • する の謙譲語「ご/お〜する」「いたす」「お/ご〜いたす」は「ご/お〜します」「いたします」「お/ご〜いたします」
  • する の尊敬語「ご/お〜なさる」「〜なさる」「〜される」は「ご/お〜なさいます」「〜なさいます」「〜されます」

のようにするとより丁寧な敬語となります。

する の謙譲語・尊敬語を使ったビジネスメール全文