ご意向(読み:ごいこう)の意味、
ビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上)にふさわしい使い方、注意点について。
ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。
まずは要点のまとめから。
ご意向 の意味は
・考え、思わく、心の向かうところ
「意=意思、意見」
「向=むかう」
との組み合わせで成り立つフレーズ。
「総理のご意向に沿うようにいたします」とすると
- 総理の思わく、考えに沿うようにします
の意味となります。
ご意向 の使い方は
・総理のご意向に沿う(意思に沿うようにする)
・総理のご意向に従う(意思に従う)
・ご意向に沿えず申し訳ありません
こんな感じで使います。
尊敬語「お・ご」を使い「ご意向」とすることで敬語にしています。
古い言葉だと
仰せのままに(おおせのままに)とおなじような使い方。
①肯定、②謝罪・お詫び といったビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上)で使われます。
またビジネスシーンにふさわしい、
丁寧な敬語にしたフレーズには以下のようなものがあります。
- 例文「ご意向に沿うようにいたします」
- 例文「ご意向に沿えるようにいたします」
- 例文「ご意向に従います」
- 例文「ご意向に沿えず申し訳ありません」
- 例文「ご意向を伺う」
- 例文「ご意向にそぐわない」
最後の謝罪・お詫びに使うのだけは違いますが、いずれも意味は似たようなもの。
どれも丁寧な敬語であり、
ビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上)で使うのにふさわしいフレーズ。
ただちょっとずつ、ニュアンスと敬語の丁寧レベルが違います。
(くわしくは本文にて)
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、
本文中ではいろいろな例文を使いながら意味、使い方、注意点について説明していきます。
【例文①】ご意向に従います
ご意向 のビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上・就活)にふさわしい使い方と、敬語フレーズを使った例文。
「ご意向に従います」
意味
「あなたの思わくに従います」
尊敬語「お・ご」をつかい「ご意向」とし、
丁寧語「です・ます」をつかって敬語にしています。
「ご意向」のもっともオーソドックスな使い方となります。
使い方
とくにビジネス会話で使われるフレーズで、サラッと言えるすばらしいフレーズ。
ただし、
ビジネスメールなど文章ではもう少しかしこまった敬語が好まれます。メールで使うには、ややカジュアルな印象となってしまいます。
ビジネスメールにふさわしい使い方は例文②以降をご参照ください。
ビジネス例文
- 例文(肯定)
上司:○○君にはアメリカ支店に行ってもらおうと思うのだけど…どうかな?
あなた:はい、ご意向に従います。
- 例文(勤務地面談)
人事:新人配属の件、勤務地のご希望はありますか?
あなた:とくにございません。ご意向に従います。 - 例文(人事面談)
上司:異動など、ご希望はありますか?
あなた:とくにございません。会社の意向に従います。 - 例文(異動面談)
上司:〇〇君には営業部に異動してもらうことになったけど、いいかな?
あなた:はい、会社の意向に従います。
【例文②】ご意向に沿うようにいたします
ご意向 のビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上・就活)にふさわしい使い方と、敬語フレーズを使った例文。
「ご意向に沿うようにいたします」
あるいは
「ご意向に沿えるようにいたします」
意味
「あなたの思わくどおりにします」
尊敬語「お・ご」をつかい「ご意向」とし、
「する」の謙譲語「いたす」+丁寧語「です・ます」をつかって敬語にしています。
こちらも「ご意向に従います」と同じく「ご意向」のオーソドックスな使い方となります。
「ご意向に沿うようにします」
「ご意向に沿えるようにします」の違いは…
可能形「できる」を使っているかどうか。
沿えるように〜だと「できるように〜」という意味。
したがって
「できないかもしれないけど、最大限の努力をしますよ」というニュアンスとなります。
ハッキリと言い切るのを好むひとは「ご意向に沿うようにいたします」。
自信がなくてボンヤリと言いたいひとは「ご意向に沿えるようにいたします」。
を使うとよいでしょう。
いずれにせよビジネス会話・メールとわず、
ビジネスシーンでは万能につかえる敬語フレーズです。
使い方
相手からの質問に対して、
「あなたの考えどおりにしますよ」
と返答したいとき。
つまり「お任せします」と言いたいビジネスシーンでつかいます。
他には会社紹介のあいさつ文で
「お客様のご意向に沿えるよう、誠心誠意 努めてまいります」として使いますね。
ビジネス例文
- 例文(肯定)
総理:お友達のいる家計学園に補助金だしたいんだけどなぁ…ちょっと文部科学省と揉めててね。上手くやってくれないかな?
あなた:かしこまりました。総理のご意向に沿うようにいたします。
- 例文(あいさつ文)
お客様のご意向に沿えるよう、誠心誠意 努めてまいります。
お客様のご意向に沿うデザインを提案いたします。
お客様のご意向に沿った、最適な不動産を提案いたします。
できるかぎりお客様のご意向に沿うよう、誠心誠意 対応させていただきます。
【例文③】ご意向に沿えず申し訳ありません
ご意向 のビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上・就活)にふさわしい使い方と、敬語フレーズを使った例文。
「ご意向に沿えず申し訳ありません」
あるいは
「ご意向に沿えず申し訳ございません」
意味
「要望に応えることができず、すみません」
「あなたの思わくどおりにできず、すみません」
尊敬語「お・ご」をつかい「ご意向」とし、
「申し訳ありません」をつかい丁寧な敬語にしています。
ここで「ず」は否定の意味をもちます。
こちらも「ご意向」のオーソドックスな使い方であり、ビジネス会話・メールとわずビジネスシーンでは万能につかえる敬語フレーズです。
使い方
使い方は「謝罪・お詫び」のビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上)。
何かしらの要求・要望にこたえることができないときに使われるフレーズですね。
たとえば…
納期の要求に間に合わないとき。
「納期は最速で8月20日となります。ご意向に沿えず誠に申し訳ありませんが、ご容赦くださいますようお願い申し上げます」
みたいな使い方をします。
ビジネス例文
- ビジネスメール例文(謝罪、お詫び)
納期は最速で8月20日となります。ご意向に沿えず誠に申し訳ありませんが、ご容赦くださいますようお願い申し上げます。 - ビジネスメール例文(謝罪、お詫び)
ご希望の商品はあいにく在庫切れしておりまして、次回入荷が一ヶ月後となる予定でございます。ご意向に沿えず誠に申し訳ありませんが、ご了承くださいますようお願い申し上げます。 - ビジネスメール例文(面談日程調整)
あいにく別件で埋まっておりまして、翌週8月20日ではいかがでしょうか。ご意向に沿えず誠に申し訳ありませんが、ご検討をいただければ幸いです。
・ご容赦ください=お許しください
・ご了承ください=事情を察して認めてください
・〜いただければ幸いです=〜してもらえたら嬉しいなぁ
【例文④】ご意向に沿えない場合もございますので〜
ご意向 のビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上・就活)にふさわしい使い方と、敬語フレーズを使った例文。
「ご意向に沿えない場合もございますので〜」
あるいは
「ご意向に沿えかねる場合もございますので〜」
意味
「あなたの思わくどおりにできない場合もあるので〜」
「あなたの考えどおりにできない場合もあるので〜」
尊敬語「お・ご」をつかい「ご意向」とし、
丁寧語「ございます」をつかって敬語にしています。
「ない」「かねる」という否定のフレーズを使っているため、上記のような意味となります。
ビジネス会話・メールとわず、
ビジネスシーンでは万能につかえる敬語フレーズです。
使い方
使い方は「謝罪・お詫び」のビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上)。
とくに接客業などサービスの「注意書き」として小さく書かれていることが多いですね。
いくらなんでも、
お客さんの要望すべてに応えられるわけではありません。
「無茶な要求には応えられませんよ〜」
だとカドが立つので「ご意向に沿えない場合もございます」
とやんわ〜りとした表現を使います。
こうすると相手に不快感を与えることなく使える、すばらしい敬語になりますね。
ビジネス例文
- 例文(契約書の注意書きなど)
ご意向に沿えない場合もございます。あらかじめご了承くださいますよう、お願い申し上げます。 - ビジネスメール例文(結び)
お客様のお役に立てるよう誠心誠意を尽くしてまいりますが、ご意向に沿えない場合もございます。あらかじめご了承くださいますよう、お願い申し上げます。 - ビジネスメール例文(面接日程調整)
ご希望の面接日程につき、ご連絡くださいますようお願いいたします。
なお、日程によってご意向に沿えない場合もございますので、あらかじめご了承ください。
【例文⑤】ご意向に沿うことができません
ご意向 のビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上・就活)にふさわしい使い方と、敬語フレーズを使った例文。
「ご意向に沿うことができません」
あるいは
「ご意向に沿いかねます」
意味
「あなたの思わくどおりにできない」
「あなたの考えどおりにできない」
尊敬語「お・ご」をつかい「ご意向」とし、
丁寧語「ございます」をつかって敬語にしています。
「ない」「かねる」という否定のフレーズを使っているため、上記のような意味となります。
ビジネス会話・メールとわず、
ビジネスシーンでは万能につかえる敬語フレーズです。
使い方
使い方は「謝罪・お詫び」のビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上)。
何かしらの要求・要望にこたえることができないとき。ビジネス会話で使われるフレーズで、サラッと言えるすばらしいフレーズ。
ただし、
ビジネスメールなど文章ではもう少しかしこまった敬語が好まれます。メールで使うには、ややカジュアルな印象となってしまいます。
ビジネスメールにふさわしい使い方は例文③ご意向に沿えず申し訳ありません の方です。
ビジネス例文
- ビジネスメール例文(面談日程調整)
あいにく別件で埋まっておりまして、ご意向に沿うことができません。
翌週8月20日ではいかがでしょうか。お忙しいところ大変恐れ入りますが、ご検討をいただければ幸いです。 - 例文(拒否)
総理:お友達のいる家計学園に補助金だしたいんだけどなぁ…
ちょっと文部科学省と揉めててね。上手くやってくれないかな?
あなた:申し訳ありません。総理のご意向に沿うことはできません。
【例文⑥】ご意向を伺う
ご意向 のビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上・就活)にふさわしい使い方と、敬語フレーズを使った例文。
「ご意向を伺う」
あるいは
「ご意見を伺いたく存じます」
「ご意見を伺いたく思います」
意味
「考えを聞く、たずねる」
尊敬語「お・ご」をつかい「ご意向」とし、
「聞く・尋ねる・行く」の謙譲語「伺う」をつかって敬語にしています。
ここで使われる「伺う」の意味は「聞く、尋ねる」です。
「貴社に伺う=行く・訪問する」とは違うのでご注意を。
また「存じる」は「思う」の謙譲語
使い方
上司など目上のひとの「意向=考え、思わく」を知りたいときに使われます。
たとえば…
「今回発表のプロジェクトにつき、部長のご意向を伺いたく存じます」
とすれば、
「部長の考えを聞きたい」との意味。
ご意見を伺う とほぼ同じ使われ方をします。
ビジネス例文
- ビジネスメール例文(意思確認)
・歓送迎会の日程につき、部長のご意向を伺いたく存じます。
・新規プロジェクトにつき、課長のご意向を伺いたく存じます。 - 例文
上司のご意向を伺った結果、A案で進める運びとなりました。お力添えのほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
【例文⑦】ご意向にそぐわない
ご意向 のビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上・就活)にふさわしい使い方と、敬語フレーズを使った例文。
「ご意向にそぐわない」
意味
「考えに合わない」
尊敬語「お・ご」をつかい「ご意向」として敬語にしています。
ここで「そぐわない」は「合わない」の意味。
使い方
何かを否定するとき、
「意向にそぐわない=思わくに合わない」として使われます。
たとえば…
「今回発表のプロジェクトは上層部のご意向にそぐわない」
とすれば、
「上層部の思わくと合わない」との意味。
ビジネス例文
- ビジネスメール例文(拒否)
部長のご意向にそぐわないため、今回はお見送りいたします。せっかくのご提案にも関わらず、誠に申し訳ありません。 - ビジネスメール例文(拒否)
取引先のご意向にそぐわないため、花束贈呈は辞めておきます。せっかくのご提案にも関わらず、誠に申し訳ありません。 - 例文(否定)
・部署の意向にそぐわないアイディア
・会社の意向にそぐわない営業マン
【シーン別】違いと使い分け
ご意向 のビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上)にふさわしい使い方と、敬語フレーズを使った例文をみてきましたが…
こんなときにはどれを使う?
というビジネスシーンごとの使い分けを整理しておきます。
ビジネス会話なら…
- 例文「ご意向に従います」
- 例文「ご意向に沿うことができません」
- 例文「ご意向に沿えず申し訳ありません」
といったサラッと言えるフレーズを使います。
ビジネス会話では言葉づかいよりも態度で敬意をあらわすことの方が重要。
ビジネスメールで使うような堅苦しいフレーズを使うと、ぎゃくに「バカ丁寧」となって会話が弾まなくなるためご注意を。
もちろん「最低限の敬語を使える」という前提のもとですが…
ビジネスメールなら…
- 例文「ご意向に沿えず申し訳ありません」
- 例文「ご意向に沿えない場合もございますので〜」
- 例文「ご意向に沿えかねる場合もございますので〜」
- 例文「ご意向に沿うようにいたします」
- 例文「ご意向に沿えるようにいたします」
使えるフレーズが多いのですが…
ビジネスメールなど文書の場合、
シンプルなフレーズではなくよりかしこまった表現を使うため例文のような表現を使います。