「勝手を言う」の敬語ってなに?
という問いにパーフェクトな解答をしめす記事。
まず結論から。
「勝手を言う」はビジネスシーンに応じて、
- 自分なり身内が勝手を言うときには…
謙譲語「勝手を申す」「勝手を申します」
謙譲語「勝手を申し上る」「勝手を申し上げます」 - 上司なり目上・取引先などの相手が勝手を言うときには…
尊敬語「勝手をおっしゃる」「勝手をおっしゃいます」
というように敬語に変換します。
なお敬語にするときのポイントとして。
- “自分が言う”ときには謙譲語「申す」「申し上げる」
- “相手が言う”ときには尊敬語「おっしゃる」
をそれぞれ使います。
ざっくりとした解説はこれにて終了。
くわしくは本文中にてそれぞれの敬語の意味と使い方、注意点を述べていきます。
※長文になりますので、時間の無い方は「見出し」より目的部分へどうぞ。
自分なり身内が勝手を言うときの敬語
「勝手を言う」の敬語変換、まずは「自分なり身内が言う」ときから。
謙譲語「申す・申し上げる」をつかう
まずは敬語の基本的なおさらいを。
敬語にするときのポイントとして。
- “自分なり身内が言う”ときには謙譲語「申す」「申し上げる」
丁寧語”ます”をくっつけて「申します」「申し上げます」としてつかうのが一般的 - “相手が言う”ときには尊敬語「おっしゃる」
丁寧語”ます”をくっつけて「おっしゃいます」としてつかうのが一般的
をそれぞれ使います。
逆はNGです。
自分が言う、あるいは自分のことを言うときに尊敬語「おっしゃる」はNG。
たとえば、
- NG×「私、ノマドとおっしゃいます」
- NG×「まず結論からおっしゃいます」
- NG×「勝手をおっしゃいますがご対応いただけますと幸いです」
では間違い(謙譲語をつかうべきシーンで尊敬語をつかっているため)。
自分のことを言うときには尊敬語「おっしゃる」ではなく謙譲語「申す・申し上げる」をつかいますので正しくは、
- 正◎「私、ノマドと申します」
- 正◎「まず結論から申します/申し上げます」
- 正◎「勝手を申しますがご対応いただけますと幸いです」
としますね。
そうすると。
「自分なり身内が勝手を言う」ときには「勝手を申します」「勝手を申し上げます」とすれば正しい敬語になります。
敬語①勝手を申し上げますが・申しますが
「自分が勝手を言う」ときにつかえる丁寧な敬語。
「言う」の部分を敬語「申します」or「申し上げます」に言い換えし、
- 【例文】勝手を申し上げますが
- 【例文】勝手を申しますが
とすると丁寧。
※「言う」の謙譲語「申す・申し上げる」に丁寧語”ます”で「申します・申し上げます」
意味は「勝手を言いいますが」。
使い方はとくに上司なり社内目上・取引先に何かしら身勝手なお願いをするとき。
「勝手を言ってすみませんが…」「わがままを言ってすみませんが」のようなニュアンスでつかうと、相手への配慮があらわれていて好感がもてます。
たとえば。
「勝手を申し上げますが宜しくお願い致します」とシンプルにお願いする使い方のほかにも、
- 【例文】勝手を申し上げますが、何卒ご対応の程お願い申し上げます
- 【例文】勝手を申し上げますが、どうかご検討いただきますようお願い致します
- 【例文】勝手を申し上げますが、お取り計らいくださいますようお願い致します
- 【例文】勝手を申しますが、ご検討いただけますと幸いです
- 【例文】勝手を申しますが、ご教示いただけましたら幸いです
といように具体的にお願いしたい内容をあらわす語とくみあわせても丁寧。
どの例文も社内メールで目上(上司や先輩)につかっても、社外のビジネスメールにつかってもよい丁寧な敬語表現です。
なお。
等しくつかえる言い換えとしては…
「勝手なお願いとは存じますが」「不躾なお願いとは存じますが」「勝手を申し上げますが」などあり。
敬語②勝手なお願いとは存じますが
「自分が勝手を言う」ときにつかえる丁寧な敬語。
あとは応用編。
「勝手を申し上げますが」は「勝手なお願いとは存じますが」に言い換えできます。
「勝手なお願いとは存じますが」の意味は「勝手なお願いとは思いますが」であり、似たようなビジネスシーンでつかわれます。
- 勝手を言う…
=勝手を申し上げますが
なのか、
- 勝手なお願いとは思いますが…
=勝手なお願いとは存じますが
という意味の違いはあれど結局のところ上司なり目上・取引先を気づかうフレーズという点においてはおなじ事。
したがって似たようなビジネスシーンでつかえます。
使い方はたとえば、
- 【例文】勝手なお願いとは存じますが、何卒ご対応いただければ幸いです。
- 【例文】勝手なお願いとは存じますが、ご対応いただきますようお願い致します。
- 【例文】勝手なお願いとは存じますが、ご承諾くださいますようお願い申し上げます。
というように使います。
あとは似たようなフレーズ「不躾なお願いとは存じますが」に言い換えても丁寧です。
敬語③勝手を申しまして大変恐縮ですが
「自分が勝手を言う」ときにつかえる丁寧な敬語。
さらに応用。
「言います」の部分を敬語「申します」or「申し上げます」に言い換え。
さらに申し訳なく思う気持ちをあらわす敬語フレーズ「恐縮ですが」をくっつけ、
- 【例文】勝手を申しまして大変恐縮ですが
- 【例文】勝手を申し上げて恐縮ですが
- 【例文】勝手を申し上げまして誠に恐縮ですが
とすると丁寧。
意味は「勝手を言って大変申し訳ないと思いますが」。
使い方はとくに上司なり社内目上・取引先に何かしら身勝手なお願いをするとき。
「勝手を言ってすみませんが…」「わがままを言ってすみませんが」のようなニュアンスでつかうと、相手への配慮があらわれていて好感がもてます。
たとえば。
「勝手を申しまして大変恐縮ですが宜しくお願い致します」とシンプルにお願いする使い方のほかにも、
- 【例文】勝手を申しまして大変恐縮ですが、何卒ご対応の程お願い申し上げます
- 【例文】勝手を申しまして大変恐縮ですが、ご検討いただきますようお願い致します
- 【例文】勝手を申しまして大変恐縮ですが、お取り計らいの程お願い致します
- 【例文】勝手を申しまして大変恐縮ですが、ご了承いただけますと幸いです
- 【例文】勝手を申しまして大変恐縮ですが、お時間をいただけますと幸いです
- 【例文】勝手を申しまして大変恐縮ですが、ご教示いただけましたら幸いです
といように具体的にお願いしたい内容をあらわす語とくみあわせても丁寧。
どの例文も社内メールで目上(上司や先輩)につかっても、社外のビジネスメールにつかってもよい丁寧な敬語表現です。
なお。
等しくつかえる言い換えとしては…
「勝手なお願いとは存じますが」「不躾なお願いとは存じますが」「勝手を申し上げますが」などあり。
また。
シンプルに「勝手を申し上げますが」だけでも十分に丁寧です。
敬語④勝手を申しまして申し訳ありませんが
「自分が勝手を言う」ときにつかえる丁寧な敬語。
「言います」の部分を敬語「申します」or「申し上げます」に言い換え。
さらに敬語フレーズ「申し訳ありません・申し訳ございません」をくっつけ、
- 【例文】勝手を申しまして申し訳ありませんが
- 【例文】勝手を申し上げて申し訳ありませんが
- 【例文】勝手を申し上げまして申し訳ございませんが
とすると丁寧。
意味は「勝手を言って申し訳ないと思いますが」。
使い方はとくに上司なり社内目上・取引先に何かしら身勝手なお願いをするとき。
「勝手を言ってすみませんが…」「わがままを言ってすみませんが」のようなニュアンスでつかうと、相手への配慮があらわれていて好感がもてます。
どれも社内メールで目上の人(上司や先輩)につかっても、社外のビジネスメールにつかってもよい丁寧な敬語表現です。
たとえば。
「勝手を申しまして申し訳ございませんが宜しくお願い致します」とシンプルにお願いする使い方のほかにも、
- 【例文】勝手を申しまして申し訳ございませんが、何卒ご対応の程お願い申し上げます
- 【例文】勝手を申しまして申し訳ありませんが、ご検討いただきますようお願い致します
- 【例文】勝手を申しまして申し訳ありませんが、お取り計らいの程お願い致します
- 【例文】勝手を申し上げまして申し訳ございませんが、ご了承いただけますと幸いです
- 【例文】勝手を申し上げまして申し訳ございませんが、お時間をいただけますと幸いです
といように具体的にお願いしたい内容をあらわす語とくみあわせても丁寧。
どの例文も社内メールで目上(上司や先輩)につかっても、社外のビジネスメールにつかってもよい丁寧な敬語表現です。
なお。
等しく丁寧な言い換えとしては…
勝手ではなく「ご無理」をつかって「ご無理をお願いして申し訳ございません」「ご無理を申しまして申し訳ございません」もあります。
相手が勝手を言うときの敬語
「勝手を言う」の敬語変換、つづいて「相手が言う」とき。
尊敬語「おっしゃる」をつかう
繰り返しにはなりますが、まず敬語の基本的なおさらいを。
敬語にするときのポイントとして。
- “自分なり身内が言う”ときには謙譲語「申す」「申し上げる」
丁寧語”ます”をくっつけて「申します」「申し上げます」としてつかうのが一般的 - “相手が言う”ときには尊敬語「おっしゃる」
丁寧語”ます”をくっつけて「おっしゃいます」としてつかうのが一般的
をそれぞれ使います。
逆はNGです。
相手が言う、あるいは相手のことを言うときに謙譲語「申す・申し上げる」はNG。
たとえば、
- NG×「(社内上司の前で)社長が申しました」
- NG×「(社内上司の前で)お客さんがこのように申しておりました」
- NG×「(課長の前で)部長がこのように申しておりました」
では間違い(尊敬語をつかうべきシーンで謙譲語をつかっているため)。
上記のようなビジネスシーンで相手が言うときには謙譲語「申す・申し上げる」ではなく尊敬語「おっしゃる」をつかいますので正しくは、
- 正◎「(社内上司の前で)社長がおっしゃいました」
- 正◎「(社内上司の前で)お客さんがこのようにおっしゃいました」
- 正◎「(課長の前で)部長がこのようにおっしゃいました」
としますね。
そうすると。
「相手が勝手を言う」ときには「勝手をおっしゃいます」とすれば正しい敬語になります。
ウチ・ソトの逆転にご注意を
これまでは一般的な敬語の使い方をおさらいしましたが…
注意点として、どんな人を前にして話すかによってつかうべき敬語が違います。
敬語をつかうときには「誰を立てているのか?」にお気をつけください。
社内会議で「社長が申しました」は間違いだけど、社外の相手には正しい
社内の会議において「社長がこのように申しました」とするのは間違い。
謙譲語「申す・申し上げる」は相手側を立てる敬語であるため、これでは社内の会議に参加しているヒトを立ててしまっています。
社内の会議では社長よりも低い役職のヒトがほとんどであるハズ。
こんなビジネスシーンでは尊敬語「社長がこのようにおっしゃいました」とするのが正解。
いっぽうで。
社外の取引先や顧客には「弊社の社長がこのように申しました」とするのは正しい敬語の使い方です。
社内忘年会には「社長からご挨拶申し上げます」は間違いだけど、顧客には正しい
もうひとつ例を。
社内の忘年会において「社長からご挨拶を申し上げます」とするのも間違い。
謙譲語「申す・申し上げる」は相手側を立てる敬語であるため、これでは社内の忘年会に参加しているヒトを立ててしまっています。
社内の忘年会では社長よりも低い役職のヒトがほとんどであるハズ。
したがってここでは「社長からご挨拶をいただきます」とするのが正解。
いっぽうで。
社外の取引先や顧客には「弊社の社長からご挨拶申し上げます」とするのは正しい敬語の使い方です。
【まとめ】尊敬語と謙譲語の使い分け
どんなシーンで尊敬語をつかい、どんなシーンで謙譲語をつかうべきか?
ややこしいため簡単にまとめをしておきます。
例外もよくありますので目安としてお考えください。
- ウチのことをソトへ話すときには謙譲語
例)上司のことを顧客に話すとき → 立てるべきなのは顧客であるため謙譲語をつかう。
例)自分のことを顧客に話すとき → 〃 - ソトのことをウチへ話すときには尊敬語
例)顧客のことを上司に話すとき → 立てるべきなのは顧客 - 社内同士は話す相手の役職におうじて使い分け
例)部長の前で課長のことを話す → 立てるべきなのは部長であるため謙譲語をつかう。
例)上司の前で後輩のことを話すとき → 〃
※逆はすべて尊敬語をつかう - 自分のことを話すときには謙譲語
※ウチ=身内・自分・社内のこと
※ソト=相手・取引先・顧客のこと
【例文】ビジネスメール全文
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「勝手を言う」の丁寧な敬語をつかったビジネスメール例文をご紹介。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
ビジネスメール例文①納期を早めてほしい(to社外)
メール件名: 製品A納期・前倒しのお願い(注文No.123)
ビジネス株式会社
営業部 ○○ 課長(社外ビジネス取引先)
お世話になっております。
(株)転職・ノマドでございます。
さて、先般ご注文しておりました製品A(注文No.123)に関して、納期を4月20日でお願いしておりましたが諸事情により、4月15日に前倒して納入いただきたく存じます。
貴社製品Aの使用量が増加しており原材料が4月16日には不足する見込みであり、1日でも早くお手配いただけると大変助かります。
勝手を申しまして大変恐縮ではございますが、
何卒お取り計らいの程お願い申し上げます。
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メール署名
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ビジネスメール例文②打合せ日程変更のお願い(to社内上司)
メール件名①: 返信Re:【日程変更】●●打合せのお願い
メール件名②: 新規: ●●打合せ日程変更のお願い
●●部長 (社内上司・目上など)
大変申し訳ございません。
先般お願いしておりました●●打合せの件、急遽顧客とのアポイントが入り、日程変更をお願いしたく連絡いたしました。
日程調整いただいたにも関わらず、ご迷惑をおかけしますこと深くお詫び申し上げます。
なお、以下の通りに新たな候補日につき連絡いたします。
たびたび恐れ入りますが再度ご都合を伺えればと存じます。
・11月3日 AM
・11月6日 AM
・11月7日 PM
勝手を申し上げますがご連絡いただけますと幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
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メール署名
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ビジネスメール例文③値上げのお願い(to社外)
メール件名:エチレン価格改定のお願い(転職・ノマド)
株式会社ビジネス
資材部 ●● 様 (社外取引先)
平素はお世話になっております。
転職・ノマドでございます。
このたび、○月×日付けの弊社プレスリリースにてエチレン価格改定の発表をいたしました。昨今の原材料価格高騰およびユーティリティーコストの上昇がおもな背景となっております。
つきまして、貴社にてご使用いただいております「製品名:エチレンAB」につきましても下記のとおり価格を改定させていただきたく存じます。
記
現行価格:1000円/トン
改定価格:1050円/トン
※+50円/トンの価格改定をお願いいたします
※なお発表内容に関しましては以下URLをご参照ください
URL~~~
以上
勝手を申しまして大変恐縮ではございますが、どうか事情をご高察の上、
ご了承いただければ幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
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メール署名
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※「誠に勝手を申し上げますが」に言い換えても丁寧。