「拝借いたします」の意味と使い方・ビジネスメール例文

拝借いたします(読み:はいしゃくいたします)について、意味と上司や目上への正しい使い方、注意点をビジネスメールの例文つきで誰よりもくわしく解説していく記事。

まず簡単にまとめを。

「拝借いたします」の意味は直訳すると「(モノや金を)借りる」。

敬語をつかっているため実際にはもっと丁寧で「お借りする」という意味になります。

使い方は意味のとおりで上司なり社内目上・取引先に何かしら借りたい、あるいは借りたとき。

  • 現在「借ります」としたい時
    【例文】部長のボールペンをしばし拝借いたします。
    【例文】お手を拝借いたします。
    【例文】お手を拝借させていただきます。
  • 過去「借りました」としたい時
    【例文】大変失礼ながら部長のデスクから拝借いたしました。
    【例文】部長の財布から例のモノを拝借いたしました。
    【例文】不躾ながら会議室の備品を拝借いたしました。
  • 希望「借りたい」とする
    【例文】会議室の備品を拝借したく存じます。
    【例文】部長のお知恵を拝借いたしたく存じます。

たとえば上記のように「何かしらお借りします」あるいは「お借りしました」「お借りしたいです」という意味でビジネスメールにつかうと丁寧です。

どの例文も社内メールで目上(上司や先輩)につかっても、社外のビジネスメールにつかってもよい丁寧な敬語表現。

なお。

等しくつかえる丁寧な言い換えには「お借りします」「お借りいたします」「お借りしたく存じます」などあり。どれをつかっても丁寧です。

ざっくりとした解説はこれにて終了。

くわしくは本文中にて意味と使い方、注意点を述べていきます。

※長文になりますので、時間の無い方は「見出し」より目的部分へどうぞ。

“拝借いたします”の意味と使い方

拝借(読み:はいしゃく)の意味は・・・

  • 借りることをへりくだっていう語。

つまり「借りること」の謙譲語ですね。

「借りる」に謙譲表現「拝」をくっつけているため上記の意味になります。

※なお類語は「借りる」「借用(しゃくよう)」などあり

「拝借いたします」だと「借りる」の意味となります。

※表記は「拝借致します」というように漢字表記でもOK

身近な「拝借いたします」のたとえ・例文

日常シーンではほとんど使うことのない「拝借いたします」ですが…

「拝借いたします」って一体どんなシーンでつかえるのかというと身近ではたとえば…

  • 傘を借してほしい…
    というとき「共用の傘を拝借いたします」
  • 本を借りるとき
    というときに「ちょっとこの本、拝借いたします。よろしいでしょうか?」
  • 友人の所有物を借りた
    というときに「先ほどボールペンを拝借いたしました」

こんなシーンでつかいます。

「拝借する」の使い方

なお「拝借する」の使い方として。

例文にもしましたが「拝借する」を単体でつかうことはほとんどなく。「する」の部分を以下のようにもっと丁寧な敬語にしてつかいます。

  • 【丁寧】丁寧語”ます”をくっつけて「拝借します
  • 【かなり丁寧】謙譲語”いたす”丁寧語”ます”で「拝借いたします
  • 【バカ丁寧】謙譲語”させていただく”丁寧語”ます”で「拝借させていただきます
  • 【許可を得る】謙譲語”させていただく”丁寧語”ます”で「拝借させてください
  • 【借りたいとする時】謙譲語”存じる”丁寧語”ます”「拝借いたしたく存じます」「拝借したく存じます」※希望の表現

※「存じる」は「思う」の意味の敬語(謙譲語)。「~したく存じます・~いたしたく存じます」だと「~したいと思います」の意味になる。

【注意点】”拝借いたします”はこう使う!

つづいて「拝借いたします」の使い方というか注意点について簡単に。

①”拝借いたします”は二重敬語!

「拝借いたします」をつかうときの注意点その一。

もっとも初歩的な敬語の使い方なのですが…「拝借いたします」はNGです。

「拝借」はすでに「借りること」の敬語(謙譲語)なのに、さらに謙譲語「ご」をくわえてしまっています…

結果として「借りること」に①謙譲語「拝借」+②謙譲語「ご」としており二重敬語になりますね。※二重敬語とはひとつの単語におなじ種類の敬語を2回つかうことでありNGです。

あるいは。

「お(ご)~いたす」のひとかたまりを謙譲語として見たとき。「ご拝借いたします」でもいいんじゃないのか?とする意見もあります。ただ「~」の謙譲語が「お(ご)~いたす」だという解釈を適用した場合には「拝借」が謙譲語であるため、そもそも二重敬語ということになります。

②”拝借してください”は間違い敬語!

「拝借いたします」をつかうときの注意点その二。

こちらも初歩的な敬語の使い方なのですが…「借りてほしい!借りてください!」と言いたいときに「拝借してください!」は間違い敬語です。

「拝借」は謙譲語であるため自分の行為につかい相手の行為にはつかいません。※例外あり

たとえば以下の使い方は間違い敬語となりNGです。十分にお気をつけください。

  • NG例×上司なり目上・取引先が拝借いたします「あいにく持ち合わせておりません。別のヒトから拝借してください」
  • NG例×上司なり目上・取引先に拝借いただく「図書室で拝借していただけますか」

相手の行為には基本的に謙譲語ではなく尊敬語をつかいます。※例外あり

したがって相手に見てほしいときには。

借りることの尊敬語「お借りくださる」や例外的に謙譲語「お借りいただく」をつかいます。以下のようにすると正しい敬語になりますね。

  • 正しい例◎「あいにく持ち合わせておりません。別のヒトからお借りください」
  • 正しい例◎「図書室でお借りいただけますか」

いずれも上司なり目上・取引先に何かしら「借りてください・借りてほしい」といいたいときに使える敬語になります。

③”拝借いたします”は二重敬語ではない!

あとは注意点というよりもよくある敬語の勘違いについて。

「拝借いたします」は二重敬語だから誤りだという意見もあります。ただし答えは二重敬語ではなく100%正しい敬語です。

なぜ「拝借いたします」が間違い敬語のように感じてしまうかというと…

「拝借」はすでに謙譲語であり、さらに「する」の謙譲語「いたす」をつかって「拝借いたす」としているから…

「拝借=謙譲語」×「いたす=謙譲語」

「拝借いたします」は「謙譲語 x 謙譲語」だから二重敬語??

このようなロジックで二重敬語だという意見がでてくるのかと。

ただし答えは…「二重敬語ではない」です。

二重敬語とは「ひとつの語におなじ敬語を二回つかうこと」であり敬語のマナー違反です。

たとえば「お伺いいたす」「お伺いする」などが二重敬語の例。「行く・尋ねる」の謙譲語「伺う」をつかっているのに、さらに「お〜いたす」「お〜する」という謙譲語をつかっているためです。

ところが。

「拝借いたす」は以下のように「①借りること」「②する」という2つの異なる単語にそれぞれ謙譲語を用いているため二重敬語ではなく、正しい敬語の使い方をしているのですね。

①「拝借」=「借りること」の意味の謙譲語(単体では名詞)

②「いたす」=「する」の意味の謙譲語

くわしくは以下の記事にて。

【例文】ビジネスメール全文

こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。

ここでは「拝借いたします」の使い方をビジネスメール例文とともにご紹介。

どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。

ビジネスメール例文①備品を借りたい(to社内)

メール件名: プロジェクター拝借のお願い

営業部 ○○様 (社内メール)

お疲れ様です。

さて標記の件、総務部のプロジェクターが足りておらず、宜しければ貴部署のプロジェクターを4月10日13:00-17:00に拝借いたしたく存じます。

不躾なお願いにて恐縮ですが、何卒よろしくお願い致します。

********
メール署名
********

ビジネスメール例文②上司の知恵を借りたい(to社内)

メール件名:東レむけ値上に関するご相談

●●部長(上司)

お疲れ様です。

標記の件、東レむけの値上についてご相談がございます。

現在最終調整に入っており先方から下記の選択を迫られております。

①8月1日~+100円/t
②2段階で実施(9月1日~+50円/t、12月1日~+100円/t)

私としては時期よりも額を重視したく、②で合意することを考えておりますがいかがでしょうか。

ご多忙のところ大変恐れ入りますが、
●●部長のお知恵を拝借したく存じます。

よろしくお願い致します。

*********
メール署名
*********

ビジネスメール例文③デモ機器を借りたい(to社外)

メール件名:デモ機拝借のお願い(転職・ノマド)

ビジネス 株式会社
営業部 〇〇 様(社外ビジネス取引先)

いつもお世話になっております。
転職・ノマドでございます。

さて標記の件、このたび貴社製品A装置の購入を検討しているのですが、使い勝手などを確かめる上でデモ機を2~3日お借りできないかと思い連絡いたしました。

不躾なお願いとは存じますが、よろしければ拝借させてください。

ご検討のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

********
メール署名
********

ビジネスメール例文④取引先の知恵を借りたい(to社外)

メール件名:ご相談(転職・ノマド)

ビジネス 株式会社
営業部 xx 様(社外ビジネス取引先)

いつもお世話になっております。
転職・ノマドでございます。

さて標記の件、このたび弊社ではIT企業のM&Aについて調査を進めております。開始したばかりでいまだ具体的なM&A候補先はなく、これから探索する予定でございます。

そこでIT業界のM&Aに豊富な経験と素晴らしい実績をお持ちのxx 様にぜひ、お知恵を拝借したく連絡いたしました。

メールではお伝えできない部分が多いため、
よろしければ面談しお話を伺えればと存じます。

誠に勝手を申し上げますが、ご検討いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。

********
メール署名
********

【言い換えOK】”拝借いたします”の類語

最後に「拝借いたします」の類語を例文でまとめます。

ビジネスメールではこれらの表現に言い換えすることもできますので、お好みの表現を用いてください。

どれも目上の人(社内上司・先輩)にはもちろんのこと、社外取引先にもつかえる丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。

類語『お借りいたします』など

「拝借いたします」は「お借りする」をつかった敬語に言い換えできます。

拝借(はいしゃく)の意味は「借りること」ですので同じように使えます。

使い方もおなじく上司なり社内目上・取引先に何かしら借りたい、あるいは借りたとき。

  • 現在「借ります」としたい時
    【例文】部長のボールペンをしばしお借りします。
  • 過去「借りました」としたい時
    【例文】大変失礼ながら部長のデスクからお借りしました。
    【例文】部長の財布から例のモノをお借りいたしました。
    【例文】不躾ながら会議室の備品をお借りいたしました。
  • 希望「借りたい」とする
    【例文】会議室の備品をお借りしたく存じます。
    【例文】部長のお知恵をお借りしたく存じます。
  • 許可「借りてもいいか?」とする
    【例文】会議室のプロジェクターをお借りしてもよろしいでしょうか。
    【例文】部長のお知恵をお借りしてもよろしいでしょうか。

たとえば上記のようにビジネスメールにつかうと丁寧です。どの例文も社内メールで目上(上司や先輩)につかっても、社外のビジネスメールにつかってもよい丁寧な敬語表現ですね。