「お貸しいただきたく存じます」の意味、ビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点について。
ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。
なお…
「相手がなにかを貸すこと」はつまり自分の立場からみると借りることなので、
- 【例文】お借り致したく存じます
※意味は「借りたいと思います」 - 【例文】お借りしてもよろしいでしょうか?
※意味は「借りてもいいだろうか?」
などと言い換えても丁寧。
あるいは…
借りることをへりくだって言うフレーズ「拝借する」をつかった言い換えもできます。
たとえば「拝借いたしたく存じます」などいろいろ。
※長文になりますので「見出し」より目的部分へどうぞ
意味と敬語
「お貸しいただきたく存じます」は「貸してもらいたいと思います」という意味。
なぜこのような意味になるのか?
そもそもの意味と敬語について順をおって解説していきます。
“お貸しいただきたく”の意味は「貸してもらいたい」
まずは前半部分。
“お貸しいただきたく〜”の意味は、
「貸してもらいたい〜」
「貸してもらいたく〜」
のように解釈できます。
お貸しのもとになる単語は”貸す”であり、”〜してもらう”の謙譲語「お(ご)~いただく」をつかって敬語にしています。
“いただきたく”の部分は謙譲語”いただく”に意思・希望「〜したい」をつかっています。
ちなみに”お貸し”の「お(ご)」の部分は向かう先を立てるために使う敬語であり謙譲語の「お(ご)」です。
余談ですが尊敬語にも「お(ご)」の使い方があり混同しがち。
難しく感じるかたは「お(ご)●●いただく」のセットで謙譲語とおぼえておきましょう。
“存じます”の意味は「思います」
つづいて後半部分。
“存じます”の意味は「思います」
“思う”の敬語(謙譲語)「存じる」に丁寧語”ます”をつかって敬語にしています。
あわせると意味は「貸してもらいたいと思います」
- お貸し = 貸すこと
- ご・お~いただきたく = 「〜してもらいたい」の意味の敬語(謙譲語)
- 存じます = 「思います」の意味の敬語(謙譲語)
これらの単語を合体させて意味を考えます。
すると「お貸しいただきたく存じます」の意味は…
「貸してもらいたいと思います」
であり、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズになります。
「貸してください!」とストレートに言うのではなく遠回しに自分の意思や気持ちをつたえる、とても丁寧なフレーズですね。
ニュアンスとしては「貸してもらいたいと思うのだけど…」みたいなイメージ。
あまりに堅苦しくて大げさかもしれませんが、とにかく目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズになります。
敬語の解説
ややこしいので、これまでの敬語の解説をまとめておきます。
「お貸しいただきたく存じます」を敬語としてみていくと以下のとおりに成り立ちます。
- もとになる単語「貸す」
- “〜してもらう”の謙譲語”お(ご)〜いただく”で「お貸しいただく」
- 意思・希望”〜したい”で「お貸しいただきたい」
- “思う”の謙譲語「存じる」に丁寧語”ます”をくっつけて「存じます」
→ すべてあわせると「お貸しいただきたく存じます」という敬語の完成
このようにして元になる語「貸す」を敬語にしています。つまり敬語としては何もおかしいところはありません。間違いではなく正しい敬語です。
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズになります。
なお「お貸ししていただきたく存じます」は間違い敬語となりますのでご注意を。
この場合、謙譲語「お(ご)」をなくして「貸していただきたく存じます」とすれば正しい敬語になります。
理由は長くなるので省きますが、あくまでも「お貸しいただきたく存じます」をつかうことをオススメします。
それでは次項より使い方についても見ておきましょう。
【使い方】貸してほしい!と伝えるビジネスメール
「お貸しいただきたく存じます」の使い方
文字どおり何かしら「貸してほしい!」と言いたいときのビジネスメールに使います。
取引先など社外あてに限らず、上司や目上など社内あてのメールにも使える丁寧なフレーズですね。
たとえば、
- 【例文】xxをお貸しいただきたく存じます。
のようにして何かの依頼・お願いをともなうビジネス文書やビジネスメールに使われます。
ようするに「貸してほしい!」という意味なのですが丁寧な敬語にすると、こんな風にややこしい文章になります。
「お借り」をつかって言い換えても丁寧
なお…
「相手がなにかを貸すこと」はつまり自分の立場からみると借りることなので、
- 【例文】お借り致したく存じます
※意味は「借りたいと思います」 - 【例文】お借りしてもよろしいでしょうか?
※意味は「借りてもいいだろうか?」
などと言い換えても丁寧。
「拝借」をつかって言い換えても丁寧
あるいは…
借りることをへりくだって言うフレーズ「拝借する」をつかった言い換えもできます。
たとえば、
- 【例文】拝借いたしたく存じます
※意味は「借りたいと思います」 - 【例文】拝借してもよろしいでしょうか?
※意味は「借りてもいいだろうか?」
などと言い換えても丁寧。
ビジネスメール例文
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「お貸しいただきたく存じます」の使い方をビジネスメール例文とともにご紹介。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
ビジネスメール例文:備品を貸してほしい
メール件名: プロジェクター拝借のお願い
営業部 ○○様 (社内メール)
お疲れ様です。
さて首記の件、総務部のプロジェクターが足りておらず、宜しければ貴部署のプロジェクターを4月10日13:00-17:00にお貸しいただきたく存じます。
大変恐縮ではございますが、ご確認いただければ幸いです。
よろしくお願い致します。
————-
メール署名
————-
“お貸しいただければと存じます”だとなお丁寧
“貸してほしい!”と言いたいときに使える敬語。
「お貸しいただきたく存じます」でも十分に丁寧ではありますが…
「お貸しいただければと存じます」とすると、より丁寧な敬語になります。
たとえば、
- 【例文】xxをお貸しいただければと存じます。
のようにして使います。
意味と違い・使い方
どちらも言いたいことは結局のところ「貸してほしい」なのですが…
敬語の使い方に違いあり。
謙譲語「いただく」に仮定の「たら・れば」をくっつけると「いただければ」という敬語になります。
したがって「お貸しいただければと存じます」のニュアンスとしては「よかったら貸してもらえたらと思うのだけど」というような感じになります。
「お貸しいただきたく存じます」でも遠回しにあなたの希望を伝える敬語なのですが…
「お貸しいただければと存じます」だともっと大げさになります。
かな〜り遠回しにお願いをしているわけで、目上・上司・取引先への言葉づかいとしてはこの上なく丁寧ですね。
そんなに丁寧にする必要あるの?って思うくらい。
まぁ、ひとつのオプションとしてお好みでお使いください。
シンプルに”お貸し頂きたくお願い致します”でも丁寧
“貸してほしい!”と言いたいときに使える敬語。
「お貸しいただきたく存じます」「お貸しいただければと存じます」だけでなく、
「お貸しいただきたく、お願い致します」もあります。
言いたいことは結局のところ「貸してほしい」なのですが…
たとえば、
- 【例文】xxをお貸しいただきたく、お願い致します。
- 【例文】xxをお貸しいただきたく、お願い申し上げます。
のようにして使います。
“存じます”ばかりのメールは気持ち悪い
ビジネスメールで「存じます」つまり「思います」を多用すると気持ち悪い文章になってしまいます。あなたの意思が伝わらずぼんや〜りとしたメールになって「結局なにが言いたいの?」ということになりかねません。
そんなときに活躍するのが「お貸しいただきたく、お願い致します」です。
「お貸しいただきたく存じます」だと「貸してもらいたいと思います」という意味であり、
「お貸しいただきたく、お願い致します」だと「貸してもらいたい、お願い!」というような意味になります。
敬語としてはどちらも、これでもかというくらい丁寧なので使い分けする必要はありません。
文章のバランスを考えてお好みでお使いください。
敬語の解説
一応「お貸しいただきたく、お願い致します」の敬語の成り立ちをまとめておきます。
- もとになる単語「貸す」
- “〜してもらう”の謙譲語”お(ご)〜いただく”で「お貸しいただく」
- 意思・希望”〜したい”で「お貸しいただきたい」
- “願う”に謙譲語”お(ご)〜いたす”で「お願いいたす」
- 丁寧語”ます”をくっつけて「お願いいたします」
→ すべてあわせると「お貸しいただきたく、お願いいたします」という敬語の完成
※「お願い申し上げます=お願いいたします」言い換えOK
※「お願いいたします」の表記は漢字「お願い致します」としてもOK
謙譲語をうまくつかい、このうえなく丁寧な敬語フレーズとなっていることがわかります。
したがって上司・目上やビジネスメールで使うのにふさわしい表現、と言えるでしょう。
ほかにも使える丁寧な敬語
これまで紹介した例文のほかにも…
- 【例文】お貸しいただければ幸いです
※意味は「貸してもらえたら嬉しいです」 - 【例文】お貸しいただけますと幸いです
※意味は「貸してもらえると嬉しいです」 - 【例文】お貸しいただけましたら幸いです
※意味は「貸してもらえたら嬉しいです」 - 【例文】お貸しいただければ幸甚に存じます
※意味は「貸してもらえたら、とても嬉しく思います」 - 【例文】お貸しいただけますと幸甚に存じます
※意味は「貸してもらえると、とても嬉しく思います」 - 【例文】お貸しいただけましたら幸甚に存じます
※意味は「貸してもらえたら、とても嬉しく思います」
なども似たような意味であり、とても丁寧な敬語です。
敬語の補足
※ 幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
※ 「幸い」は「幸せであること、嬉しい気持ち」の意味
※ 「存じる」は「思う」の謙譲語
※ 「いただきたく」は謙譲語「いただく」+希望「~したい」
※ 「いただければ」は謙譲語「いただく」+可能形+仮定「たら・れば」
※ 「いただけましたら」は謙譲語「いただく」+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
結局どれがもっとも丁寧?
あまりにも言い換え敬語フレーズがおおいので、どれを使うべきか迷ってしまうというあなたのために。
これまで紹介しきれなかった敬語もふくめ丁寧レベルごとにまとめておきます。
※ あくまでも目安としてお考えください。
①会話・電話対応につかえる丁寧レベル
下になればなるほど丁寧な敬語になります。また、おすすめの敬語フレーズは青文字にしておきます。
- お貸しください
- お貸しくださいませ
- お貸しいただけますか?
- お貸しいただけますでしょうか?
②ビジネスメール対上司・対社内につかえる丁寧レベル
おすすめの敬語フレーズは青文字にしておきます。
- お貸しください
- お貸しくださいませ
- お貸しいただけますか
- お貸しいただけますでしょうか
- お貸しいただきたく、お願い致します
- お貸しいただきたく存じます
- お貸しいただければと存じます
- お貸しくださいますようお願い申し上げます
- お貸しいただきますようお願い申し上げます
- お貸しいただけますようお願い申し上げます
注)上下関係に厳しい上司や、社内でも相当のポジションにいる人にたいしては例文⑤以降あるいは次項のフレーズをつかいましょう。
・「存じる」は「思う」の謙譲語
・「いただきたく」は謙譲語「いただく」+希望”~したい”
・「いただければ」は謙譲語「いただく」+可能形+仮定”たら・れば”
・「いただけましたら」は謙譲語「いただく」+丁寧語”ます”+仮定”たら”
③ビジネスメール対取引先・対顧客につかえる丁寧レベル
おすすめの敬語フレーズは青文字にしておきます。
- お貸しくださいませ
- お貸しいただきたく、お願い致します
- お貸しいただきたく存じます
- お貸しいただければと存じます
- お貸しいただきますようお願い申し上げます
- お貸しいただけますようお願い申し上げます
- お貸しくださいますようお願い申し上げます
- お貸しいただければ幸いです
- お貸しいただければ幸甚に存じます
- お貸しいただけましたら幸いです
- お貸しいただけますと幸いです
- お貸しいただけますと幸甚に存じます
- お貸しいただけましたら幸甚でございます
- お貸しいただけましたら幸甚に存じます
補)「お願い申し上げます=お願い致します」に言い換えOK
補)幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
・「存じる」は「思う」の謙譲語
・「いただきたく」は謙譲語「いただく」+希望”~したい”
・「いただければ」は謙譲語「いただく」+可能形+仮定”たら・れば”
・「いただけましたら」は謙譲語「いただく」+丁寧語”ます”+仮定”たら”
④最上級の丁寧レベル
おすすめの敬語フレーズは青文字にしておきます。
- お貸し賜りますようお願い申し上げます
- お貸しいただければ幸いです
- お貸しいただければ幸甚に存じます
- お貸しいただけましたら幸いです
- お貸しいただけましたら幸甚でございます
- お貸しいただけましたら幸甚に存じます
・「お願い申し上げます=お願い致します」に言い換えOK
・幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
・賜る(たまわる)は公式なビジネス文書や手紙によくつかう
“お貸しいただく vs お貸しくださる”の使い方
ややこしいので「お貸しいただく vs お貸しくださる」の使い方について。
代表的なパターンを表にまとめておきます。
こまかく解説していくとそれだけで記事がおわってしまいますので、目的にあわせてお使いください。
“お貸しいただく”の使い方まとめ(すべて敬語)
①基本 | ②+丁寧語”ます” | ③その他 | |
---|---|---|---|
現 在 | お貸しいただく | お貸しいただきます | -頂くよう -頂きますよう |
過 去 | お貸しいただいた | お貸しいただきました | × |
進行形 | お貸しいただいている | お貸しいただいています | -頂いております |
過去~現在 | お貸しいただいていた | お貸しいただいていました | -頂いておりました |
希 望 依 頼 |
お貸しいただきたい お貸しいただきたく お貸しいただくよう |
お貸しいただきたいです お貸しいただきますよう お貸しいただけますよう |
-頂きたく思います -頂きたく存じます -頂ければと存じます |
可 能 | お貸しいただける | お貸しいただけます | -頂けるよう -頂けますよう |
仮 定 | お貸しいただければ | お貸しいただけましたら | × |
疑 問 | お貸しいただけるか? | お貸しいただけますか? | -頂けますでしょうか |
禁 止 | お貸しいただけない | お貸しいただけません | × |
命 令 | × | × | × |
※ ②+丁寧語”ます”をつかうとより丁寧な敬語になります。
※ 「頂く」「いただく」は漢字でも平仮名でもOK
※「×」としたのは一般的につかわない
“お貸しくださる”の使い方まとめ(すべて敬語)
①基本 | ②+丁寧語”ます” | ③その他 | |
---|---|---|---|
現 在 | お貸しくださる | お貸しくださいます | -くださるよう -くださいますよう |
過 去 | お貸しくださった | お貸しくださいました | × |
進行形 | お貸しくださっている | お貸しくださっています | -くださっております |
過去~現在 | お貸しくださっていた | お貸しくださっていました | -くださっておりました |
希 望 |
お貸しくださるよう | お貸しくださいますよう | × |
可 能 | × | × | × |
仮 定 | × | × | × |
疑 問 | お貸しくださるか? | お貸しくださいますか? | × |
否 定 | お貸しくださらない | お貸しくださいません | × |
命 令 | お貸しください | お貸しくださいませ | × |
※ ②+丁寧語”ます”をつかうとより丁寧な敬語になります
※ 「下さる」「くださる」は漢字でも平仮名でもOK
※「×」としたのは一般的につかわない