【2018年版】海運会社(船会社)の売上ランキング国内版。2018年3月期あるいは同等の決算報告書から最新の売上ランキングを紹介します。
就職・転職のご参考にどうぞ。
※なお日本国内の海運会社は数がすくないため全てランキングします。
この記事の目次
海運業界の現状と課題、今後の動向
そもそも海運とは、海上を利用した旅客輸送・貨物輸送のこと。
消費者の身近なところではフェリー運航などがあるが、それはビジネスのほんの一部である。メインは企業や国を相手にした取引(BtoB)で、資源エネルギーの運搬、商品の運搬などを手がける。
陸路をつかう「陸運」にたいして海路をつかうので「海運」という。
海運バブル(2000年~2008年)
2000年代には中国の好景気によって住宅建設や工業設備への需要が急成長し、中国政府の資源政策や建設と機械装置用の鉄鋼需要の拡大の影響から、鉄鉱石・石炭といった重量資源の輸送需要が拡大した。
同時に中国製品の貿易量も増大したため、その原材料と製品の輸送需要も加わって、国際的な貨物輸送が行なえる船舶への需要が世界的に急拡大した。
これにより世界的に船賃(トンキロ)が高騰するとともに、貨物船不足が発生しはじめた。
海運各社は新造船発注を増大させ、新造船の価格である船価も高騰して造船各社は活況となった。海運業や造船業で需給が逼迫し、こういった「船バブル」から海運会社の業績は回復してきている。
海運不況(2008年9月~現在)
2008年9月の米国発リーマンショックにより、船舶が運ぶ製品・資源・エネルギーのうち、特に市況の影響を受けやすい製品の荷動きが減少し、製品を運ぶコンテナ船や自動車船の需要が急落。
自動車船や航空輸送等にも資本を投入していた日本郵船や、収益のほぼ半分をコンテナ部門が占めていた川崎汽船などは収益が急落した。
これは日本にかぎった話ではなくグローバルの問題である。かつて世界有数の海運・コンテナ運送会社であった「韓国:韓進海運(はんじんかいうん)」が2016年に経営破たんするなど、海運不況はグローバルで深刻化している。
その後グローバル経済が回復するにしたがい海運需要もたかまっている。しかし供給過剰は解消されておらず市況は低迷をつづける。
その結果、日系各社の業績も低空飛行しており最終利益が赤字となる企業も相次いでいる。
課題と今後の展望
海運業界における課題はおおきく3つ
- 供給過剰による市況低迷
- 市況の影響を受けやすいビジネスモデル
- 2019年以降のグローバル経済減速懸念
これらの課題が解消されないかぎり、海運不況は永遠に終わらないだろう。
なお海運大手各社の実施する構造改革には以下のようなものがある。
- 海運にとどまらず「総合物流企業」としての進化、すなわち3PL(サードパーティー・ロジスティクス)サービスを充実させること
- 市況に左右されない事業構造への変革
なお中長期的には今後も世界の人口は増加するため海運は成長産業である(かもしれない)。
ランキング最下位~10位
【2018年版】海運会社(船会社)の国内売上ランキング。
まずは中小規模の海運会社ランキング最下位~10位。ほとんど無名の船会社がならびます。
- 13位 玉井商船|売上50億円・純利益▲0.1億円
▼1959年、日本軽金属(非鉄金属メーカー)との資本および業務提携を機に、同社が輸入するボーキサイトやアルミナなどの海上輸送を手がけることになったのが起源。海運会社としては弱小。平均年収703万円。→公式HP - 12位 佐渡汽船|113億円・純利▲2億円
▼名のとおり新潟県佐渡市に本社を置く海運会社。新潟県本土と佐渡島とをむすぶ定期航路やフェリーを運航する。1932年、佐渡航路の商船会社3社を経営安定のため新潟県の資本参画のもと統合して成立した。その事業の公共性から現在でも新潟県が資本金の39.2%を出資している。平均年収478万円。→公式HP - 11位 東海汽船|114億円・純利3億円
▼東京と伊豆諸島などを結ぶ航路を運航している海運会社。東海汽船グループで伊豆諸島および小笠原諸島への海運をほぼ独占している。また海運業の他にも子会社などを通じて路線バスの運行(伊豆大島)・ホテル経営および、各島へのセメントや燃料等の販売なども手がけている。平均年収767万円。→公式HP
ランキング10位〜5位
【2018年版】海運会社(船会社)の国内売上ランキング。
つづいて中規模の海運会社ランキング10~5位。ここでも売上規模は500億円以下であり、吹けば飛ぶような会社がならびます。
- 10位 共栄タンカー|125億円・純利7億円
▼1937年に神戸で設立された海運会社。VLCC(大型原油タンカー)の長期契約(貸船)を大きな柱とし、他にもVLGC(大型LPGタンカー)なども保有している。おなじく海運会社の日本郵船が筆頭株主であり得意先でもある。平均年収999万円。→公式HP - 9位 乾汽船|205億円・純利18億円
▼東京に本社をおく海運会社。乾財閥の持株会社「乾合名会社」が2014年に合併し現体制となった。設立の流れから倉庫業・不動産業なども手がける。海運はバラ積み船が主力。北米、カナダ、オーストラリアからの穀物及び北米、ニュージーランドから木材等の海上輸送と、連結子会社や同業他社への船舶貸渡業をおこなう。平均年収825万円。→公式HP - 8位 川崎近海汽船|412億円・純利12億円
▼東京都千代田区に本社を置く日本の海運会社。川崎汽船が株式の47.8%を保有しており、同社の子会社である。1966年に川崎汽船の内航営業権を譲渡されて設立し、内航、フェリー(八戸港 – 苫小牧港、宮古港 – 室蘭港)のほか、東南アジアやロシアなどに近海航路を開設し運航している。事業は近海(セメント・鋼材などの輸出入)、内航(フェリー運航)、OSV(オフショア事業)のおもに3つのセグメントからなる。
平均年収725万円。→公式HP - 7位 明治海運|417億円・純利18億円
▼兵庫県神戸市に本社を置く海運会社である。1911年創業。本業の海運以外に不動産事業、ホテル事業にも進出している。大型原油タンカー、石油化学製品タンカー、LPGタンカー、自動車専用船、大型コンテナ船、木材チップ専用船、ばら積み船等の多種多様な船舶を保有。これらの船舶を国内外の海運会社や大手石油会社等と中・長期契約を締結のうえ50隻前後の船隊を保有運航している。平均年収679万円。→公式HP - 6位 栗林商船|459億円・純利15億円
▼東京都千代田区に本社を置く海運会社。創業は1894年「室蘭運輸合名会社(北海道)」を起源とし、日本の海運業界では古参である。海上輸送だけでなくトレーラーを3000台以上保有するなど、物流を総合的に手がける3PL(サードバーティー・ロジスティクス)サービスの展開を目指している。また物流以外にホテル・不動産事業にも進出している。平均年収692万円。→公式HP
ランキングTOP5
【2018年版】海運会社(船会社)の国内売上ランキング。
つづいて海運会社ランキング上位5位。
5位 飯野海運|売上813億円・純利42億円
1899年(明治32年)京都府舞鶴創業の船会社。
- 資源エネルギー輸送を主力とする海運業(外航海運業、内航・近海海運業)
- 本社の飯野ビルディングなどのオフィスビル賃貸を主力とする不動産業
をコアビジネスとした事業を展開している。海運業ではケミカル船、液化ガス船を含めた不定期船タンカー事業が中心。不動産業では都心五区に賃貸ビルを保有し、イイノホールを運営する。
平均年収934万円。
→ 公式HP
4位 NSユナイテッド海運|売上1390億円・純利66億円
東京都千代田区に本社をおく準大手海運会社。外資系のような社名ではあるが日系であり、新日鐵住金および日本郵船の関連会社である。
- 新日鐵住金の前身で財閥解体によって解体された「日本製鐵(日鉄)」の海運部門を切り離して1950年に設立された「日鐵汽船」が起源。
- その後いくつかの合併を繰り返して新和海運となり、2010年に同じ外航海運業者の日鉄海運と合併して現在の社名となった。
新日鐵住金とのコネクションを活かした鉄鉱石・石炭などの鉄鋼原料や鉄鋼製品のほか、原油・液化石油ガスLPG などの海上輸送をおこなっている。
平均年収850万円。
→ 公式HP
3位 川崎汽船|売上1.1兆円・純利103億円
東京都千代田区に本社を置く大手海運会社。通称「K Line」
1919年川崎造船所(現・川崎重工業)の船舶部門が独立する形で設立された。売上では日本郵船・商船三井に次いで国内第3位である。
上位2社と比較するとコンテナ船への依存率が高いとされる。このほか石炭・鉄鉱石などの不定期貨物船、自動車運搬船、LNGタンカー、石油タンカーなどを運航する。
- どの海運会社もリーマンショック以降、グローバルで船舶などの供給過剰にくるしみ市況が低迷。海運不況となり業績は低空飛行をつづける。
これは海運会社である以上は避けられない宿命ではあるが、それでも市況に左右されないビジネスを展開するべく改革をおこなっている。
具体的には海運にとどまらず「総合物流企業」としての価値を高めるべく頑張っている。市況に左右される海運はそれなりに維持しつつ、安定収益を生む事業の育成・拡大をもくろむ。
が、今のところアイディアに乏しい感じがぬぐいきれない。
平均年収771万円。
→ 公式HP
2位 商船三井|売上1.6兆円・純利▲473億円
東京都港区に本店を置く大手海運会社。通称「MOL」
1964年に三井船舶と大阪商船が合併し「大阪商船三井船舶」が誕生したことを起源とする。その後1999年にナビックスラインと合併し現在の社名にいたる。
日本郵船・川崎汽船とともに日本三大海運会社のひとつである。液化天然ガス(LNG)・海洋事業、ケミカル船、フェリーといった事業セグメントに強みを持つ。
なお先述のとおり、海運業界は供給過剰により不況におちいっている。
- そこで2016年には構造改革として商船三井が主導し、大手海運3社(日本郵船・商船三井・川崎汽船)の定期コンテナ船事業を統合すると発表した。
その後2018年コンテナ船事業統合会社「Ocean Network Express(ONE)」が発足しサービスを開始。統合によるシナジーが期待されるところである。
日本に大手海運会社が3社も存在する意味はなく、海運業界のさらなる構造改革に期待したい。
平均年収942万円。
→ 公式HP
1位 日本郵船|売上2.1兆円・純利201億円
東京都千代田区に本社をおく日本最大手の海運会社。海運業界では運航船舶数・売上・純利益などで国内1位、またグローバルにみても有力な大手海運会社である。
英称「NIPPON YUSEN KAISHA」から海外では「NYK LINE」とよばれる。
歴史的には1885年に郵便汽船三菱会社と共同運輸会社(三井系)が合併し発足した。当時は三菱財閥の中核企業であり、三菱重工とともに三菱グループの源流企業であった。
海運不況下において、ほか大手とおなじく市況に左右されないビジネスの確立をめざしているが、そう簡単ではない。
厳しい経営環境がつづくものと思われる。
平均年収971万円。
→ 公式HP