「お目通しいただけますと幸いです」は「目を通してもらえると嬉しいです」という意味。
ようは「目を通してほしい!」「目を通してください!」と言いたいわけですが・・・丁寧な敬語にするとこんな風にややこしい表現になります。
使い方は何かしら目を通してほしいときのお願い・依頼ビジネスメール。社内上司や目上にかぎらず社外取引先にもつかえる丁寧なフレーズです。
くわしくは本文にて意味や敬語の種類、ビジネスシーンにふさわしい使い方、ビジネスメール例文、注意点を解説していきます。
※長文になりますので「見出し」より目的部分へどうぞ
意味
まずは「お目通しいただけますと幸いです」の意味と敬語について順をおって解説します。
“目を通す”の意味は「ひととおり見る」
目を通す(めをとおす)の意味は・・・
「ひととおり見る。通覧する。」
使い方はたとえば、
- 【例文】資料に目を通す。
- 【例文】資料を作成しましたので、一度お目通しいただけますか?
- 【例文】講義のまえに、あらかじめお目通しください。
のようにして使います。
“お目通しいただけますと”の意味は「目を通してもらえると」
まずは前半部分。
「お目通しいただけますと〜」の意味は…
「目を通してもらえると〜」
このように解釈できます。
「お(ご)〜いただけますと」は「〜してもらえると」という意味の敬語(謙譲語+丁寧語)
「〜いただける」は謙譲語「いただく」の可能表現。可能の表現をつかっているので意味としては「〜してもらえる」となります。
おなじような可能の表現にはたとえば、
「泳ぐ → 泳げる」
「書く → 書ける」
「聞く → 聞ける」
などあり。どれも「〜できる」という意味になりますね。
こまかい敬語の解説は長くなるため次項にて。
なお表記は、
漢字表記「お目通し頂けますと」vs. ひらがな表記「お目通しいただけますと」の両方ともOK。どちらをつかっても正しい敬語です。
“幸いです”の意味は「嬉しいです、幸せです」
つづいて後半部分。
「幸いです」の意味は…
「嬉しいです」
「幸せです」
このように解釈できます。
もととなる単語は「幸い(さいわい)」であり、丁寧語「です」を使って敬語にしています。
あわせると意味は「目を通してもらえると嬉しいです」
- お目通し = 目を通すこと
- ご・お~いただけますと = 「〜してもらえると」の意味の敬語
- 幸いです= 「幸せです、嬉しいです」の意味
これらの単語を合体させて意味を考えます。
すると「お目通しいただけますと幸いです」の意味は…
「目を通してもらえると嬉しいです」
のように解釈できます。
ようは「目を通してほしい!」「目を通してください!」ということなのですが、このままではあまりにストレートすぎて目上や上司・取引先につかうにはイマイチです。
そこで「~してもらえると嬉しいです」というように遠回しにして、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズにしています。
そんなに丁寧にお願いする必要あるの?って思うくらい。
目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズですね。
敬語の解説
「お目通しいただけますと幸いです」を敬語としてみていくと以下のとおりに成り立ちます。
難しいので敬語についてくわしく学ぶ必要のない方はスキップしてください。
- もとになる単語「目を通す」
- “〜してもらう”の謙譲語”お(ご)〜いただく”で「お目通しいただく」
- 可能形にして「お目通しいただける」
- 丁寧語”ます”をくっつけて「お目通しいただけます」
- 接続助詞”と”をくっつけて「お目通しいただけますと」
- “嬉しい”の意味である”幸い”に丁寧語”です”をくっつけて「幸いです」
→ すべてあわせると「お目通しいただけますと幸いです」という敬語の完成
このようにして元になる語「目を通す」を敬語にしています。つまり敬語としては何もおかしいところはありません。間違いではなく正しい敬語です。
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズになります。
なお「お目通ししていただけますと幸いです」は間違い敬語となりますのでご注意を。「目を通していただけますと幸いです」とすれば正しい敬語ではありますが…長くなるため理由は省略。
補足
- 漢字表記「お目通し頂けますと」vs. ひらがな表記「お目通しいただけますと」の両方ともOK。
- 「〜いただける」は謙譲語「いただく」の可能表現。可能の表現をつかっているので意味としては「〜してもらえる」となります。
- 接続助詞「と」は助詞の一類。用言・助動詞について、それよりまえの語句をあとの語句に接続し、前後の語句の意味上の関係をしめすはたらきをする。
ちなみに敬語「お(ご)」は…
- 「自分がお目通しする」「相手にお目通しいただく」のであれば謙譲語としての使い方。
- 上司・目上・取引先などの「相手がお目通しくださる・お目通しになる」のであれば尊敬語としての使い方。
というように2パターンあります。
難しく感じるかたは「お(ご)〜いただく」のセットで謙譲語とおぼえておきましょう。
【使い方】目を通してほしい時の依頼・お願いビジネスメール
つづいて「お目通しいただけますと幸いです」の使い方について。
ようは「目を通してほしい!」「目を通してください!」という意味なので、そのような依頼・お願いビジネスメールに使います。
取引先など社外あてに限らず、上司や目上など社内あてのメールにも使える丁寧なフレーズですね。
例文
たとえば、
- 【例文】お目通しいただけますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
- 【例文】お目通しいただけますと幸いです。よろしくお願い致します。
※ 意味は「目を通してもらえると嬉しいです。よろしく」
のようにして何かの依頼・お願いをともなうビジネス文書やビジネスメールで結び・締めくくりとして使われます。
もちろん結びでなく文章の途中でつかっても丁寧です。
ビジネスメール例文(全文)
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「お目通しいただけますと幸いです」の使い方をビジネスメール例文でご紹介。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
なおビジネスメールにおいては以下の敬語もオススメです。
① それなりに丁寧「お目通しくださいませ」
② 丁寧「お目通しいただければと存じます」
③ かなり丁寧「お目通しいただけますと幸いです」など
④ ↓とくにビジネスメール結び/文末につかう↓
「お目通し頂きますようお願い申し上げます」
「お目通しくださいますようお願い致します」
ビジネスメール例文①資料に目を通してほしい(社内)
メール件名:会議資料送付の件
営業部 各位 (社内上司・目上など)
お疲れ様です。
さて標記の件、10月度の販売会議資料を添付ファイルにて送付いたします。
大変お手数ではございますが、
お手すきの際にお目通しいただけますと幸いです。
以上
資料に不備などがございましたらお申し付けください。
よろしくお願い致します。
**************
メール署名
**************
※「ご査収=よく調べて受け取ること」に言い換えできます。
ビジネスメール例文②資料に目を通してほしい(社外)
メール件名:マーケット調査に関するご報告
株式会社ビジネス
営業部 xx部長 (社外取引先)
平素はお世話になっております。
(株)転職・ノマドです。
このたびはマーケット調査をご依頼いただき誠にありがとうございます。
さて、その後の進捗状況を添付ファイルにてご報告申し上げます。
大変お手数ではございますが、
お手すきの際にお目通しいただけますと幸いです。
以上
ご不明な点等ございましたら何なりとお申し付けください。
ご査収の程よろしくお願い申し上げます。
**************
メール署名
**************
ビジネスメール例文③お礼
メール件名:返信Re:会議資料送付の件
○○課長
お疲れ様です。
早速お目通しいただき誠にありがとうございます。
また資料に不備があり大変失礼いたしました。
さて、ご指摘の箇所につき下記のとおり訂正いたしました。
①売上:(修正前)10億円→(修正後)100億円
②利益:
つきまして再度、修正したファイルを送付いたします。
ご査収のほどお願い申し上げます。
**************
メール署名
**************
“お目通し頂けましたら幸いです”としても丁寧
「お目通しいただけますと幸いです」と似たような敬語には・・・
- 【例文】お目通しいただけましたら幸いです
もあります。言いたいことは「目を通してほしい」であり、どちらも丁寧な敬語なので使い分ける必要はありませんが…
いちおう意味と違いについて考えてみます。
“お目通し頂けますと vs. お目通し頂けましたら”の意味と違い
どちらも結局のところ「目を通してほしい!」「目を通してください!」という意味になるのですが…こまかくは以下のとおり意味と敬語の違いあり。
- 「お目通しいただけますと」だと意味は「目を通してもらえると」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+接続助詞”と”
いっぽうで、
- 「お目通しいただけましたら」だと意味は「目を通してもらえたら」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+仮定”たら”
となります。
「いただけますと」に仮定の「たら」をくっつけると「いただけましたら」という敬語になります。
なお「お目通しをいただけましたら幸いです」というように「を」を入れるケースもあります。どちらを使っても正しい敬語です。
どちらも丁寧であり使い分けの必要はない
これまで見てきたように、どちらの敬語もこのうえなく丁寧なフレーズです。上司など社内の目上はもちろんのこと、社外取引先にもつかえる素晴らしく丁寧な敬語です。
どちらかお好きな方を使えばよく、使い分けする必要はありません。
“お目通し頂けますと幸甚に存じます”だとなお丁寧
さらに死ぬほど丁寧なメールや文書にしたいときには・・・
「幸い」ではなく「幸甚(こうじん)」をつかい、
- 【例文】お目通し頂けますと幸甚に存じます
→ 意味は「目を通してもらえると、この上なく嬉しく思います」 - 【例文】お目通し頂けますと幸甚です
→ 意味は「目を通してもらえると、この上なく嬉しいです」
とするともう、本当に死ぬほど丁寧になります。
※ 幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
※ 存じる(ぞんじる)は「思う」の敬語(謙譲語)
これまで紹介した敬語と言いたいことはおなじ。
ただ、幸甚(こうじん)というフレーズのほうがよりカチッとした表現になりますので、文書や手紙・公式なビジネスメールなど本当に堅苦しい文章にしたいときにオススメです。
普段づかいのメールであれば「幸い」で十分に丁寧です。
いちおう意味と違いについて簡単に解説しておきます。
“幸いです vs. 幸甚です”の意味と違い
どちらも結局のところ「嬉しいです!」「幸せです!」という意味になるのですが…
幸甚(こうじん)のほうがより、嬉しさや幸福度合いを強調したフレーズになります。
つまり「幸甚です」とすると意味は・・・
「とてつもなく嬉しいです!」「大変ありがたいです!」「この上なく幸せです!」という感じになりますね。
手紙や公式なビジネスメールにおすすめ
これまで見てきたように、どちらの敬語もこのうえなく丁寧なフレーズです。上司など社内の目上はもちろんのこと、社外取引先にもつかえる素晴らしく丁寧な敬語です。
ただ、より堅苦しいというかビジネス文書や手紙むけというか・・・
カチッとした表現は「幸甚(こうじん)」のほうです。
本当に死ぬほど丁寧なメールや文書にしたいときに使いましょう。
ほかにも使える丁寧な敬語
これまで紹介した例文のほかにも・・・
似たような言い換え敬語で、おなじように丁寧なフレーズをまとめておきます。
どれも「目を通してほしい!」「目を通してください!」と依頼・お願いしたいときのビジネスメールに使えます。
『お目通しいただければ幸いです』
「お目通し頂けますと幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
- 例文「お目通しいただければ幸いです」
意味は『目を通してもらえたら嬉しいなぁ、幸せだなぁ』
つまり『目を通してもらえたら嬉しいです』
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズですね。
「いただければ」は「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」+可能形+仮定の「~れば」
「幸いです」は「幸い」+丁寧語「です」
というように敬語にしており、目上のひとや上司・社外取引先につかえるとても丁寧なビジネスフレーズです。
『お目通し頂けますと幸甚に存じます』など
「お目通し頂けますと幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
- 【例文】お目通しいただければ幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「目を通してもらえたら、とても有り難く思います/有り難いです」 - 【例文】お目通しいただけますと幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「目を通してもらえると、この上なく有り難く思います/有り難いです」 - 【例文】お目通しいただけましたら幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「目を通してもらえたら、この上なく有り難く思います/有り難いです」
なども似たような意味であり、とても丁寧な敬語です。
幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
「存じる」は「思う」の謙譲語
「いただければ」は謙譲語「いただく」+可能形+仮定「たら・れば」
「いただけましたら」は謙譲語「いただく」+可能形+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
『お目通し賜れますと幸甚に存じます』など
「お目通し頂けますと幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
「いただく」よりもカチッとした敬語「賜る(たまわる)」をつかい、
- 【例文】お目通し賜れますと幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「目を通してもらえると、この上なく有り難く思います」 - 【例文】お目通し賜れましたら幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「目を通してもらえたら、とても有り難く思います/です」
とするとより丁寧な敬語になります。
幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
「存じる」は「思う」の謙譲語
「賜れますと」は謙譲語「賜る」+可能形+丁寧語「ます」+接続助詞”と”
「賜れましたら」は謙譲語「賜る」+可能形+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
ビジネスメール結びをより丁寧にするコツ
あまり関係ないのかもしれませんが重要なので念のため。
ビジネスメールの文末・結び・締めとして使うことのおおい「お目通し」
ここでは、
ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツをご紹介します。
①メール結びに使うときは「よろしく!」を加えると丁寧
ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツ。
「お目通しいただけますと幸いです」はそれだけではビジネスメール結び締めとしてイマイチ。
そこで結びにつかう時にはうしろに「よろしく!」的なフレーズを組み合わせて、セットで使うとより丁寧なメール結びになります。
すでに例文にはしましたが…
- 【例文】お目通しいただけますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
- 【例文】お目通しいただけますと幸いです。よろしくお願い致します。
- 【例文】お目通しいただけますと幸いです。よろしくお願い申し上げます。
ビジネスメールの結び締めに使うときにはこんな感じにするとよいでしょう。
②どうか・何卒+お目通し
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「お目通し」の前置きに添える丁寧なお願いフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」を使うとより丁寧な印象のメールとなります。
たとえば以下のようなフレーズがあります。
- どうか/どうぞ
例文「どうかお目通しくださいますようお願い申し上げます」
例文「どうかお目通しくださいますようお願い致します」
例文「どうかお目通しいただけますと幸いです」
例文「どうかお目通しいただければと存じます。何卒よろしくお願い申し上げます」 - 何卒(なにとぞ)
例文「何卒お目通しくださいますようお願い申し上げます」
例文「何卒お目通しくださいますようお願い致します」
例文「何卒お目通しいただけますと幸いです」
例文「何卒お目通しいただければと存じます。よろしくお願い申し上げます」
③恐縮・お手数+お目通し
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「お目通し」の前置きには強調するフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」だけでなく、申し訳なく思う気持ちや、相手を気づかうフレーズをもってきても丁寧です。
たとえば「誠に勝手を申し上げますが」などと組み合わせ、以下例文のようにすると好感がもてますね。上司や目上にはもちろんのこと、取引先のメールにも使える丁寧な例文にしています。
- 恐縮=申し訳なく思うこと
「お忙しいところ恐縮ではございますがお目通し〜」
「大変恐縮ではございますがお目通し〜」
「たびたび恐縮ではございますがお目通し〜」 - 恐れ入る=申し訳なく思う
「お忙しいところ恐れ入りますがお目通し〜」
「大変恐れ入りますがお目通し〜」
「たびたび恐れ入りますがお目通し〜」 - お手数=お手間
「お忙しいところお手数お掛けしますがお目通し〜」
「大変お手数ではございますがお目通し〜」 - 勝手を申し上げる=自分勝手を言う
「誠に勝手を申し上げますがお目通し〜」 - ご無理申し上げる = 無理を言う
「ご無理申し上げますが、何卒お目通しのほどお願い申し上げます」 - ご多忙とは存じますが=忙しいとは思うけど
「ご多忙とは存じますがお目通し〜」