理系で特に機電系(機械・電子)が、化学素材メーカー就職を選ぶってどうなの?
という就活生からの疑問に回答する記事。
当ブログに以下のご質問が寄せられたため、解説していきますね。
「最近このブログを読むようになりました。化学メーカー志望で理系のものです。
機電系の院卒になるのですが、やはり化学メーカーに自分のような機電系が入ると土日出勤が普通なくらい激務な部署になるのでしょうか?転勤も多いという噂も聞きました。
大学に来ている求人票を見ると完全週休二日制(土日)とは書いているのですが、実際はそうではないのですかね。
なんとなくこのブログの記事を読んでいると、化学メーカーは文系総合職で入るメリットは多いみたいですが、理系(特に機電系)総合職はあまりそうでもないような印象をうけました。」
このご質問に対する答えはこうなります。
- 機電系は化学メーカーに就職した場合、行き先が「設備技術」しかない。
- したがって激務になる。土日出勤も当たり前のように行われる(その分の残業代はすべて支給されるため年収は高くなる)。
- 完全週休二日制は嘘なので信用しないこと(全企業共通、化学メーカーはその点ではまだマシ)
- 転勤は多い、3年毎くらいには確実に転勤する(全企業共通、総合職の宿命)
- 長期出張もある(設備技術・生産技術の宿命)
- トラブルがあれば土日もなくなる(設備技術・生産技術の宿命)
これにてほとんど疑問は解消されているかと思いますが、背景などにつき詳しく解説します。
機電系で化学メーカーを志望するメリット、デメリット
機電系(機械・電気系)の就活生は通常、電機メーカーや重電メーカー、自動車業界を中心にお考えかと思われますが…。たま〜にアウトローな就活生もいて、そういった人が化学素材メーカーに就職するのかなぁ。何より地味ですし化学メーカーが機電系を採用していることすら、あまりご存じない方も多いことでしょう。
機電系→化学メーカー就職のメリット
さて話は逸れましたが、まずはなんとな〜く結論です。
化学素材メーカーを就職先に選ぶメリットは、
「雇用の安定(富士フィルム除く)」
「年収の安定」の2つです。
それ以外には特にメリットありません。他業界と似たようなものです。折角ご興味を持っていただいたのに、ごめんなさい…。
化学メーカーは基本、リストラをしない会社がほとんどであり、雇用の安定感は抜群です。ボーナスの振れ幅も変動が少なく、つまり業績も浮き沈みが少なく安定で、まるで公務員が高給になったかのような業界。一部の企業を除き30年先くらいまでは問題なく経営できるでしょう。
これは再三、当ブログで述べている通りですね。
機電系→化学メーカー就職のデメリット
一方のデメリットですが、
「①配属先がほぼ設備技術しかない」
「①の結果として激務、転勤おおい、土日出勤もよくある状況になる」です。
これは機電系の職種がこうだ、というよりも生産技術・設備技術といった部署に配属されるものの運命。機電系は研究開発とか、化学メーカーっぽい職種にはなれなくて、ほぼ100%「生産技術・設備技術」という部署に配属されます。
つまり機電系の学生は化学メーカーに就職すると、ほぼ100%激務になるということ(上司と部署にもよる)。
ただしこれは、化学メーカーに限った話ではありません。自動車メーカーであろうと、ゼネコンであろうと、石油元売であろうと、重電メーカーであろうと同じこと。
生産技術・設備技術といった部署は激務ですので、そこは覚悟を決めましょう。
なぜ生産技術・設備技術の職種が激務になるのか?
さらなる疑問としては、なぜ機電系の職種(生産技術・設備技術)は激務になるのか?ということでしょう。
その理由をさらっと解説しますと、
- 機械トラブルによる突然の呼び出し
▼工場に機械トラブルは付きもの。どんなに完璧だと思われる設備も完璧には動きません(苦笑)。予期していなかったトラブル、老朽化によるトラブル、作業者のミスによるトラブル、工場の爆発…などなど。小さいものから、大きいものまで含めると、数々のトラブルに見舞われるでしょう。どんなトラブルがいつ発生するか?読めないためにプライベートに影響しがち。 - 工場・定期修理の対応
▼化学工場は1~2年に一回、工場をストップして定期メンテナンスを行います。その期間はだいたい1~2ヶ月で、これも設備技術の仕事。工事業者の選定から、見積もり、メンテナンス箇所の確認…などなど。やることは無限にあります。そしていざ定期修理がスタートしたら、全体の現場監督もする必要あり。この仕事はマジメにやり出したら終わりがありません。そしてマジメにやらないと必ず上司に怒られます、それくらい重要な仕事であり、会社の利益にかなり効いてくるので。 - 設備投資の対応
▼こちらは工場の新設、増設、手直しなどの仕事。設計〜工期など見積り〜現場監督〜立ち上げ〜トラブル対応までの仕事。コメントは定期修理の仕事と同じ。 - そもそも人手が足りていない(採用数が少ない)
▼化学メーカーの機電系採用数は、大手であっても毎年3人程度です(私の勤める会社のことなので違ったらゴメンなさい)。それなのに、機電系の社員が面倒を見なければいけない工場や研究所の数は、多すぎる。たとえば米国・EU・日本・東南アジアで4拠点生産していて各国に4工場ずつあったら…。16箇所の面倒をみなければいけない訳で…。こんな少人数しか採用しない意味がわからない。
ダラダラと書きましたが、一言でまとめると
「トラブル対処に仕事の大半を費やす」ということです。
だから激務な時もあれば、暇な時もある。365日、忙しい訳ではなく、突発的なトラブルによりプライベートの調整が難しくなる、ということ。
転勤は3年毎にあり、転勤なければラッキー
どんな職種であっても、総合職は転勤が多く3年毎くらいには確実に転勤すると考えましょう。転勤がなければラッキー、くらいの心つもりでないとツライです。
特に機電系の職種において、なぜ転勤が多いのか?
理由は簡単でプロジェクト単位の仕事が多いから。
たとえば新たな工場をインドに建設する!!となった場合。
工事を進めるために会社は設備技術の社員を、ある程度の期間、現地に派遣する必要あり。これを長期出張と見るのか転勤と見るのか、ということもありますが、少なくとも6ヶ月の長期出張は普通にあります。
もちろん転勤は工場と研究所の数だけあります(私の勤める会社では、総合職であっても転勤の拒否権があります)。
どんな会社もそうですが、ビジネスがグローバルになっているので総合職であれば国内外の転勤を必ず経験するでしょう。工場の立地は大抵、ど田舎なので、それが合うか合わないか、ということですね。
機電系からの人気がない化学メーカー、就職のチャンスは多い!?
ところで化学メーカーは機電系の就活生からの人気が全くありません(苦笑)。
なぜ就職人気がないのか?
デメリットでも挙げましたが「設備技術か生産技術にしか配属されない」という点がネックかと思われます。大学で高度な教育を受けた側からすると、やはり研究開発とか、新しいものを生み出す仕事に就きたい訳で…。でもそれは機電系で化学メーカーに就職した人には、100%達成できないことです。
どこで何をやるかも決まりきっているような化学メーカーに就職したい人は、よほどマニアックなのだと思います。
でも、これって逆にチャンスだと私は考えます。機電系であれば、化学メーカー就職の競争倍率が少ないですから。自分の学歴より1~2ランク上の企業に内定することも、十分に可能です。入社してしまえば東大も京大もMARCHも関係なく、みんな平等。だとすれば、できるだけ高いレベルの企業を狙うのが、今後の人生のためであると考えます。
で、結局どうよ?
それではまとめ。
- 機電系は化学メーカーに就職した場合、行き先が「設備技術」しかない。
- したがって激務になる。土日出勤も当たり前のように行われる(その分の残業代はすべて支給されるため年収は高くなる)。完全週休二日制は嘘なので信用しないこと(全企業共通、化学メーカーはその点ではまだマシ)
- 転勤は多い、3年毎くらいには確実に転勤する(総合職の宿命)
- 長期出張もある(設備技術・生産技術の宿命)
- トラブルがあれば土日もなくなる(設備技術・生産技術の宿命)
機電系で化学メーカー就職を志望するというあなたへのアドバイスは、
「設備技術の仕事を生涯、楽しめますか??」自身に問うてみてください。
それが「イエス」であればオススメできます。
「ノー」であれば仕事が辛くなるだけです。
ではでは〜。
いつものようにオチもなく終わりますが、ご了承ください。
コメント
いつも興味深い記事ありがとうございます。
いままでの経験がまったくなくて面接やESをどうすればいいのか困っています。
書籍やホームページで勉強したほうがいいのですか?
またそうであればおすすめの書籍やホームページを紹介してほしいです。
あと自分はmarchの文系なのですが、化学系のメーカー総合職を目指しています。
とりあえず学内説明会に来ている化学系メーカを20社ほど受けてみようと思っています。このブログの就職偏差値56から63の企業です。
これではひとつも内定ない可能性が高いでしょうか?
ちなみに非体育会系で英語も全然できません。
自分の質問に対して、詳しくまとめてくださりありがとうございました。とても参考になりました。
化学メーカーがというよりは、設備・生産技術の特徴なのですね。
また海外出張は総合職の宿命ということで、やはり院卒として雇ってもらう以上、それなりの仕事をしないといけないということですね。
もう少し質問させてください。
・例えば、重工・電機・機械メーカ-など機電系が花形と思われる企業に勤めた場合、研究職や設計開発職になる可能性が高くなりますよね?自分の大学レベルでは研究職は厳しく、OBは設計開発職が主ですが、この場合でもやはり土日勤務が当たり前の世界なのでしょうか?自分たちが就活をする場合、設備設計・生産技術や設計開発、研究職(高学歴限定)というイメージなのですが、職種によって激務度や転勤具合にも差異が生じますよね?もちろん企業によるところもあるでしょうが。
・もう一つ、「海外転勤とは一般的に何年ぐらい常駐しないといけないか」という疑問があるので参考程度に教えてください。
はじめまして。いつも興味深く読ませていただいております。
現在、私は私立理系大学の電気系の修士1年です。
こちらのサイトの記事を読んでいて、待遇や収入、雰囲気が自分に合っているのではと思い、化学メーカーの総合職に興味が湧きました。
しかし、たとえ文系総合職に応募したとしても、電気系では営業や企画などと言った部門に就くことは難しいのでしょうか?
私は電気電子(修士)でこのブログに度々登場する「高給だと思われる硝子メーカー」に新卒の時に就職しました。このブログに書かれていることはかなり真実に近いので、非常に興味深く読ませてもらっています。
私が就職したときは景気が良かったので所謂設備・エンジニアリング部門で電気・機械合わせて10人+程度採用でした。通常おっしゃる通り5人弱です。
この記事の通り、設備技術系は多忙ですし、ドサ周りの仕事が多い感じです。幸い私は入社後に研究所の方に回してもらえたので、そういう仕事はしなかったですが、その一方でグローバル感は失うという結果にはつながりました。
機電系の就職は、研究・開発部門でも多少あるので素材メーカーとは言え、研究開発をする場はあるかと思います。ただ、レベルはやはり少し低いのかなとも。また、本流の仕事はできないと思った方が良いですね。
公務員のように何もしなくても高給であるのは確かな業界です。時間軸もゆっくりですし、「やってもやらなくても同じ」感はかなりありました。他の記事に合った通り、能力のある人は来ない方が良いですね。暇を持て余しますし、多分色々な事がくだらなすぎてつまらないと思います。
電電出身で化学メーカーの設備系で働いています。
書かれている内容について半分正しく、また半分過剰だなと感じました 笑。
いくつかの点
①機電系は化学メーカーに就職した場合、行き先が「設備技術」しかない。
設備技術といっても化学メーカーの場合いろいろ職種があります。調べれば出て
きますが、設備の保全であるとか、プラントの新設であるとか、設備の故障診断
であるとか。一概に設備系とは言えません。
それにどの仕事にも面白みはあります。
②したがって激務になる。土日出勤も当たり前のように行われる
これはかなり意味合いが違います。結局のところ工場の定期修繕(年一の大きなメ
ンテナンスみたいなもの)の期間であれば工事が立て続いたりやるべきことも多数
ありますが、日常はそこまで忙しくはありません。(まぁ工事が重なると多忙では
ありますが)。そもそも実際に我々がやることは工事の手配すので、動かすのは
口と頭です。頭を使ってコミュニケーションが取れなければ仕事になりません。
③転勤は多い、3年毎くらいには確実に転勤する(総合職の宿命)
これはどこの企業に行ってもある程度あるのではないでしょうか。金融などは
昔は10回以上転勤しないと出世できないとかもありました。
④長期出張もある(設備技術・生産技術の宿命)
事実ですね。ただ、建設の仕事をしながら海外に行けるぐらいな感じなので、
むしろ行く人はうれうれと行きます(この感覚がない人は厳しいかも)。
⑤トラブルがあれば土日もなくなる(設備技術・生産技術の宿命)
事実です。ただ、あまり学卒で保全(トラブル対応)に回る人は少ないように
思います。大変ではありますが、知識も経験も得られるため、会社としては
ありがたい人材になっていきます。
この筆者はガセネタが多いと思いますが、この記事は事実ですよ。
機械系、電気系出身であれば、プラント産業(非鉄金属、鉄鋼、化学系メーカー)へ行くのは間違いで、自動車産業(完成車メーカー、Tier1サプライヤー)、電機産業(電機メーカー,、電子部品メーカー)、機械産業(機械メーカー、装置メーカー)などへ行くべきです。
機械系技術職ですが、「完成車メーカー」⇒「非鉄金属メーカー」⇒「電機メーカー」と経験していますが、「非鉄金属メーカー」の場合、本当に機電系は、設備保全・操業管理(生産管理)しか行き場が無い。
しかも、非鉄金属メーカーは、超学歴差別主義的で、東大・京大・一橋大・東工大以外は低学歴扱いされ、本社や研究所配属は無理で、地方旧帝大、早慶、東京理科、同志社、立命館、中堅国立(名古屋工大、横国大、神戸大、筑波大)クラスの学生が、設備保全・操業管理(生産管理)に回されて、高卒作業員の管理や、設備の管理・修繕などをやらされ、数年毎に地方のド田舎の工場を転々と転勤させられますからね。
完成車メーカー、電機メーカーなら、上記大学であれば、研究部門、設計部門、実験部門、生産技術部門、購買部門、品質保証部門などの技術系職種に就けますから。
本当に、非鉄金属メーカーは、超絶ブラックな職場環境だったので、在職1年で再転職しました。
機械系出身で設備保全をやっています。
上のほうで電気の人も書いてますけど一言で生産設備といっても
担当する設備カテゴリーが鉄工か回転機か土建か計装か電気か非破壊検査か、
業務は保全をやるのか新規建設をやるのかで仕事内容も忙しさも忙しいタイミングも変わってきますね。別に理系だから研究や設計第一ではなく、ユーザー側エンジニアの道を選ぶのもありかと思いますよ。サプライヤー側よりは大抵楽で、国境を越えて大きな仕事ができますからね。
保全に関していえば人的トラブルも設備トラブルも正直自分次第で、うまく根回ししたり予防の手を打ってコントロールすればいいだけの話で、土日に仕事を回さないようにするのも自分次第です。向上心があって真面目に粘り強く設備改善をしていれば土日に出なければいけなくなるような規模のトラブルはほぼ0にできます。
>6の方、完成車メーカー➡非鉄金属➡電機メーカーって化学メーカー経験してないんですね・・そもそもの話、本社が幸せかというとどうでしょうね。そのような社風の会社なら余計に本社内での学閥や競争も激しくてブラック度アップのように思いますけど。