「ご捺印いただきたく存じます」意味と使い方・ビジネスメール例文

「ご捺印いただきたく存じます」は「捺印してもらいたいと思います」という意味。

ようは「捺印してほしい!」「捺印してください!」と言いたいわけですが・・・丁寧な敬語にするとこんな風にややこしい表現になります。

使い方は何かしら捺印してほしいときのお願い・依頼ビジネスメール。社内上司や目上にかぎらず社外取引先にもつかえる丁寧なフレーズです。

くわしくは本文にて意味や敬語の種類、ビジネスシーンにふさわしい使い方、ビジネスメール例文、注意点を解説していきます。

※長文になりますので「見出し」より目的部分へどうぞ

意味と敬語

「ご捺印いただきたく存じます」は「捺印してもらいたいと思います」という意味。

なぜこのような意味になるのか?

そもそもの意味と敬語について順をおって解説していきます。

“捺印”の意味

捺印(なついん)の意味は…

「印判をおすこと。また、おした印影。押印。」

たとえば、

【例文】契約書には部長ではなく取締役の捺印が必要です。

【例文】契約書にご捺印をお願いします!

のようにして使います。

“ご捺印いただきたく”の意味は「捺印してもらいたい」

まずは前半部分。

“ご捺印いただきたく〜”の意味は、

捺印してもらいたい

捺印してもらいたく

のように解釈できます。

「ご捺印」のもととなる単語は「捺印」であり、「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)~いただく」をつかって敬語にしています。

「いただきたく」の部分は謙譲語「いただく」に意思・希望「〜したい」をつかっています。

ここで「ご捺印」の「お(ご)」の部分は向かう先を立てるために使う敬語であり謙譲語の「お(ご)」です。

余談ですが尊敬語にも「お(ご)」の使い方があり混同しがち。

難しく感じるかたは「お(ご)●●いただく」のセットで謙譲語とおぼえておきましょう。

なお表記は、

漢字表記「ご捺印頂きたく」vs. ひらがな表記「ご捺印いただきたく」の両方ともOK。どちらをつかっても正しい敬語です。

“存じます”の意味は「思います」

つづいて後半部分。

“存じます”の意味は「思います」

“思う”の敬語(謙譲語)「存じる」に丁寧語”ます”をつかって敬語にしています。

あわせると意味は「捺印してもらいたいと思います」

  1. ご捺印 = 捺印すること
  2. お(ご)~いただきたく = 「〜してもらいたい」の意味の敬語(謙譲語)
  3. 存じます = 「思います」の意味の敬語(謙譲語)

※漢字表記「ご捺印頂きたく」vs. ひらがな表記「ご捺印いただきたく」の両方ともOK。

これらの単語を合体させて意味を考えます。

すると「ご捺印いただきたく存じます」の意味は…

「捺印してもらいたいと思います」

であり、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズになります。

「捺印してください!」とストレートに言うのではなく遠回しに自分の意思や気持ちをつたえる、とても丁寧なフレーズですね。

ニュアンスとしては「捺印してもらいたいと思うのだけど…」みたいなイメージ。

あまりに堅苦しくて大げさかもしれませんが、とにかく目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズになります。

敬語の解説

ややこしいので、これまでの敬語の解説をまとめておきます。

「ご捺印いただきたく存じます」を敬語としてみていくと以下のとおりに成り立ちます。

  • もとになる単語「捺印」
  • “〜してもらう”の謙譲語”お(ご)〜いただく”で「ご捺印いただく
  • 意思・希望”〜したい”で「ご捺印いただきたい
  • “思う”の謙譲語「存じる」に丁寧語”ます”をくっつけて「存じます

→ すべてあわせると「ご捺印いただきたく存じます」という敬語の完成

このようにして元になる語「捺印」を敬語にしています。つまり敬語としては何もおかしいところはありません。間違いではなく正しい敬語です。

相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズになります。

なお「ご捺印していただきたく存じます」は間違い敬語となりますのでご注意を。

この場合、謙譲語「お(ご)」をなくして「捺印していただきたく存じます」とすれば正しい敬語になります。

理由は長くなるので省きますが、あくまでも「ご捺印いただきたく存じます」をつかうことをオススメします。

それでは次項より使い方についても見ておきましょう。

【使い方】捺印してほしい!と伝えるビジネスシーン

「ご捺印いただきたく存じます」の使い方は…

意味のとおりで何かしら「捺印してほしい!」と言いたいビジネスシーンに使います。

①おもにビジネスメールに使われる

「ご捺印いただきたく存じます」の使い方その1

「ご捺印いただきたく存じます」にかぎらず「〜いただきたく存じます」という表現は電話対応や商談よりも、どちらかというとビジネスメールで多くつかいますね。

会話でつかうにはあまりに堅苦しいフレーズだからです。

だからと言って電話対応などにつかったら失礼とかではなく、堅苦しいというだけ。

ようするにビジネスメールで上司や目上・社外取引先に「捺印してほしい!」と言いたいシーンであれば使えます。

②電話対応・会話では”ご捺印いただけますか?”など推奨

「ご捺印いただきたく存じます」の使い方その2

わたし個人としては電話対応や会話シーンに「ご捺印いただきたく存じます」のような堅苦しいフレーズをつかうのがあまり好きではありません。

そこで、

  • 【例文】ご捺印ください
  • 【例文】ご捺印くださいませ
  • 【例文】ご捺印いただけますか?
  • 【例文】ご捺印いただけますでしょうか?

など会話シーンにふさわしい、ちょっとカジュアルな敬語をつかって意思や希望をつたえますね(下の例文ほど丁寧な敬語になります)。

とくに「〜いただけますか?」サラッと言えるためビジネスシーンで重宝するフレーズです。

※「~いただけますか?」の意味は「~してもらえますか?」

※「~いただけますでしょうか?」の意味は「~してもらえますでしょうか?」

敬語の補足

念のため「ご捺印いただけますか?」「ご捺印いただけますでしょうか?」の敬語について少し。

  • “捺印”に「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」で「ご捺印いただく」
  • 可能形にして「ご捺印いただける」
  • さらに丁寧語”ます”で「ご捺印いただけます」
  • 疑問形にして「ご捺印いただけますか?」

“〜だろうか”の丁寧語「〜でしょうか」を使うと「ご捺印いただけますでしょうか?」

どちらの表現も謙譲語をうまくつかい、このうえなく丁寧な敬語フレーズとなっていることがわかります。

したがって上司・目上・社外取引先につかえる素晴らしい敬語、と言えるでしょう。

どちらかというと「〜いただけますでしょうか?」のほうが丁寧なのですが…

バカ丁寧だという意見もあるため「〜いただけますか?」でも十分に丁寧です。

“ご捺印いただければと存じます”だとなお丁寧

“捺印してほしい!”と言いたいときに使える敬語。

「ご捺印いただきたく存じます」でも十分に丁寧ではありますが…

「ご捺印いただければと存じます」とすると、より丁寧な敬語になります。

意味と敬語

どちらも言いたいことは結局のところ「捺印してほしい」なのですが…

「ご捺印いただければと存じます」の意味は…「捺印してもらえたらと思います」

謙譲語「ご捺印いただく」を可能形にして「ご捺印いただける」とし、

さらに仮定の「たら・れば」をくっつけると「ご捺印いただければ」という敬語の完成。

かな〜り遠回しにお願いをしているわけで、目上・上司・取引先への言葉づかいとしてはこの上なく丁寧ですね。

そんなに丁寧にする必要あるの?って思うくらい。

違いと使い分け

「ご捺印いただきたく存じます」vs.「ご捺印いただければと存じます」の違いと使い分けについて簡単に。

  • 「ご捺印いただきたく存じます」だと意味は「捺印してもらいたいと思います」
    → 敬語は”お(ご)~いただく”+希望”~したい”+謙譲語”存じる”+丁寧語”ます”

いっぽうで、

  • 「ご捺印いただければと存じます」の意味は「捺印してもらえたらと思います」
    → 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形”いただける”仮定”たら・れば”+謙譲語”存じる”+丁寧語”ます”

「ご捺印いただきたく存じます」だと「~してもらいたい」と言いながらも「思います」として、遠回しにあなたの希望を伝える敬語にしています。

いっぽうで、

「ご捺印いただければと存じます」だと「~してもらえたらと思います」というように、もっと遠まわしかつ大げさなお願いのフレーズになります。

まぁ、どちらも丁寧な敬語であり使い分けの必要はありませんが…

より丁寧なメールがもとめられるシーンでは「ご捺印いただければと存じます」を使うとよいでしょう。

シンプルに”ご捺印いただきたくお願い致します”でも丁寧

“捺印してほしい!”と言いたいときに使える敬語。

「ご捺印いただきたく存じます」「ご捺印いただければと存じます」だけでなく、

「ご捺印いただきたく、お願い致します」もあります。

言いたいことは結局のところ「捺印してほしい」なのですが…

“存じます”ばかりのメールは気持ち悪い

ビジネスメールで「存じます」つまり「思います」を多用すると気持ち悪い文章になってしまいます。あなたの意思が伝わらずぼんや〜りとしたメールになって「結局なにが言いたいの?」ということになりかねません。

そんなときに活躍するのが「ご捺印いただきたく、お願い致します」です。

「ご捺印いただきたく存じます」だと「捺印してもらいたいと思います」という意味であり、

「ご捺印いただきたく、お願い致します」だと「捺印してもらいたい、お願い!」というような意味になります。

敬語としてはどちらも、これでもかというくらい丁寧なので使い分けする必要はありません。

文章のバランスを考えてお好みでお使いください。

なお「ご捺印いただきたく、お願い致します」というように「」を入れるケースもあります。どちらを使っても正しい敬語です。

敬語の解説

一応「ご捺印いただきたく、お願い致します」の敬語の成り立ちをまとめておきます。

  • もとになる単語「捺印」
  • “〜してもらう”の謙譲語”お(ご)〜いただく”で「ご捺印いただく
  • 意思・希望”〜したい”で「ご捺印いただきたい
  • “願う”に謙譲語”お(ご)〜いたす”で「お願いいたす
  • 丁寧語”ます”をくっつけて「お願いいたします

→ すべてあわせると「ご捺印いただきたく、お願いいたします」という敬語の完成

※「お願い申し上げます=お願いいたします」言い換えOK

※「お願いいたします」の表記は漢字「お願い致します」としてもOK

謙譲語をうまくつかい、このうえなく丁寧な敬語フレーズとなっていることがわかります。

したがって上司・目上やビジネスメールで使うのにふさわしい表現、と言えるでしょう。

もっとシンプルに”ご捺印をお願い致します”でもOK

“捺印してほしい!”と言いたいときに使える敬語。

あとはシンプルに、

  • 【例文】ご捺印をお願い致します/ご捺印をお願い申し上げます
  • 【例文】ご捺印をお願いします

としてもOKです。

意味としては「捺印をお願いします!」であり、

言いたいことは結局のところ「捺印してほしい」となります。

社内メールや懇意にしている取引先につかう

基本の使い方はこれまでとおなじ。

なにかしら「捺印してほしい!」というときに使います。

とくに懇意にしている社外取引先や社内コミュニケーション(上司・目上)であれば、そこまで堅苦しい敬語をつかう必要はありません。

あまりに丁寧すぎる敬語は相手との間に壁をつくってしまいますからね。

ということで相手をみてシンプルに「ご捺印をお願い致します」としてもなんら問題はありません。

※ ただし上下関係に厳しい上司・目上や初めての相手には丁寧すぎるくらいの敬語がオススメです。

ほかにも使える丁寧な敬語

これまで紹介した例文のほかにも…

  • 【例文】ご捺印いただければ幸いです
    ※意味は「捺印してもらえたら嬉しいです」
  • 【例文】ご捺印いただけますと幸いです
    ※意味は「捺印してもらえると嬉しいです」
  • 【例文】ご捺印いただけましたら幸いです
    ※意味は「捺印してもらえたら嬉しいです」
  • 【例文】ご捺印いただければ幸甚に存じます
    ※意味は「捺印してもらえたら、とても嬉しく思います」
  • 【例文】ご捺印いただけますと幸甚に存じます
    ※意味は「捺印してもらえると、とても嬉しく思います」
  • 【例文】ご捺印いただけましたら幸甚に存じます
    ※意味は「捺印してもらえたら、とても嬉しく思います」

なども似たような意味であり、とても丁寧な敬語です。

補足

※ 幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」

※ 「幸い」は「幸せであること、嬉しい気持ち」の意味

※ 「存じる」は「思う」の謙譲語

※ 「いただきたく」は謙譲語「いただく」+希望「~したい」

※ 「いただければ」は謙譲語「いただく」+可能形+仮定「たら・れば」

※ 「いただけましたら」は謙譲語「いただく」+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」

ビジネスメール例文

こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。

ここでは「ご捺印いただきたく存じます」の使い方をビジネスメール例文とともにご紹介。

どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。

なおビジネスメールにおいては以下の敬語もオススメです。

① それなりに丁寧「ご捺印くださいませ」

② 丁寧「ご捺印いただければと存じます」

③ かなり丁寧「ご捺印いただければ幸いです」など

④ ↓とくにビジネスメール結び/文末につかう↓

「ご捺印頂きますようお願い申し上げます」

「ご捺印くださいますようお願い致します」

「ご捺印のほど宜しくお願い致します」

ビジネスメール例文①契約書に捺印をお願いする(社内)

メール件名: 秘密保持契約ご捺印のお願い

開発部 xx部長 (社内上司・目上)

お疲れ様です。
営業部・ノマドです。

標記の件、日東電工と共同開発をするにあたり、秘密保持契約を締結いたしたく添付ファイルのとおりに案を作成いたしました。

法務部によるチェックは完了しておりますので、添付ファイルの内容で問題ないようでしたらご捺印およびご署名いただきたく存じます。

ご多忙のところ大変お手数ではございますが、
ご査収の程お願い致します。

—————
メール署名
—————

ビジネスメール例文②返信メールで捺印をお願いする(社内)

メール件名: 返信RE:売買契約(案)送付の件

開発部 xx部長 (社内上司・目上)

早速ご確認いただきありがとうございます。

それでは後ほど2部プリントアウトしお持ちしますので、ご捺印いただけますと幸いです。

よろしくお願い致します。

—————
メール署名
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ビジネスメール例文③仕様書に捺印をお願いする(社外)

メール件名: 納入仕様書送付の件(転職・ノマド)

株式会社ビジネス
資材部 ○○ 様 (社外取引先)

いつもお世話になっております。
株式会社転職・ノマドです。

先般は打合せに際して貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。

さて、お打合せの際にご依頼いただいておりました納入仕様書の案を添付ファイルのとおりに作成いたしました。

内容をご確認いただき不備等がないようでしたら2部ご捺印の上、ご返送いただけますと幸いです。

到着しましたら当方にて同様に2部押印し、そのうち1部を貴社あてに郵送いたします。

お忙しいところ大変恐れ入りますが、
何卒よろしくお願い申し上げます。

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メール署名
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結局どれがもっとも丁寧?