「ご提供いたします」が正しい敬語である理由・意味・使い方・例文

「ご提供いたします」は間違い敬語?二重敬語?

とご心配のあなたへ。

「ご提供いたします」は完璧に正しい敬語でありビジネスシーンではよく使われます。

たとえば、

  • 【例文】お客様だけにとっておきの情報をご提供いたします

などとして使われます。

「ご提供」の「ご」はあっても無くても丁寧な敬語です。

くわしい解説は本文にて。

それでは、

「ご提供いたします」が正しい敬語である理由と、ビジネスシーンでの使い方(電話・メール・手紙・文書・社内上司・社外取引先・目上・就活・転職)、メール例文を紹介します。

「ご提供いたします」は間違い敬語・二重敬語ではない

まずは結論から。

「ご提供いたします」は二重敬語ではありませんし、間違い敬語でもありません。正しい敬語です。

なぜなら、もとになる単語「提供」に「お(ご)〜いたす」という謙譲語の基本形をつかっているから。

「ご提供いたします」の意味

「ご提供いたします」のそもそもの意味は敬語にする前のもとになる語「提供」の意味を考えるとわかります。

辞書によると「提供」の意味はおおきく以下2つ

  1. 金品・技能などを相手に役立ててもらうために差し出すこと
    【例】場所を(ご)提供いたします
    【例】血液を(ご)提供いたします
    【例】情報を(ご)提供いたします
  2. 広告主がスポンサーとなりテレビ番組を視聴者に公開すること
    【例】この番組は●●の提供でお送りしました

一般的に私たちが使うときには①何かしらを「差し出す」という意味で使われる語です。

ここで(ご)というように( )書きにしたのは、「ご」はあっても無くても敬語として正しいからです。

ちなみに敬語「ご提供いたします」は自分が「提供する」ときにつかいます。

相手に「提供してもらう」としたいときには…

「ご提供いただく=提供してもらう」
「ご提供くださる=提供してくれる」

という敬語をつかいます。

上記の説明だけですべてを物語っているのですが説明不足かもしれませんので、

  • なぜ「ご提供いたします」を間違い敬語とおもってしまうのか?
  • なぜ正しい敬語なのか?
  • そもそも謙譲語とか尊敬語って何?
  • そもそも二重敬語って何?

という部分についてもくわしく解説していきます。

間違い敬語と感じる理由は「尊敬語」と判断しているから

なぜ「ご提供いたします」が間違い敬語のように感じてしまうかというと…

「ご提供」の「お(ご)」の部分にあります。

この「ご提供」は尊敬語「お(ご)」をつかって敬語にしているかのように見えます。

尊敬語は相手の行為につかうため「ご提供」が尊敬語であればたしかに「ご提供いたします」は間違い敬語です。

尊敬語「お(ご)」の使い方

尊敬語とはたとえば、

「お客様、お忘れものはございませんか?」
「部長はお戻りになりましたか?」

などとしてつかう「お・ご」のこと。これらはいずれも尊敬語であり、目上の行為をうやまってつかう敬語。

ところが「ご提供いたします」は自分が「提供する」という意味であるハズ。したがって尊敬語ではおかしいのです。

でも実際には「ご提供いたします」は尊敬語ではなく、謙譲語をつかっています。

謙譲語「ご(お)〜いたす」を使っているから正しい

ここではなぜ「ご提供いたします」が敬語として正しいのか?という部分について順をおって解説していきます。

「ご提供いたします」敬語の種類

繰り返しにはなりますが「ご提供いたします」を敬語としてみると、以下のように成り立ちます。

▼敬語の解釈 ①

  1. もとになる単語「提供」
  2. 「〜する」の謙譲語「(お・ご)〜いたす」を使い、
  3. 丁寧語「ます」をくっつけた敬語

あるいはもっと細かくすると以下のような敬語の解釈もできます。

▼敬語の解釈 ②

  1. もとになる単語「提供」に謙譲語「お・ご」で「ご提供」
  2. さらに「〜する」の謙譲語「〜いたす」で「ご提供いたす」
  3. さらに丁寧語「ます」をくっつけて「ご提供いたします」

本来あるべきなのは解釈②なのですが…

ややこしくなるため「(お・ご)〜いたす」「(お・ご)〜いたします」のセットで謙譲語とし解釈①で考えたほうがシンプルでわかりやすくなります。

ここで(お・ご)と(  )にしたのは「お・ご」があっても無くても敬語としては丁寧だからです。

とにかく敬語としては全くおかしいところは見当たりません。間違い敬語でもなく二重敬語でもなく、正しい敬語です。

謙譲語の「お(ご)●●する」「お(ご)●●いたす」の使い方

ご参考までに謙譲語には「お・ご〜する」「お・ご〜いたす」という使い方があります。

代表的な例としては以下のような敬語フレーズがありますね。

  • 「ご連絡する」「(ご)連絡いたす」
    →「ご連絡します」「(ご)連絡いたします」
  • 「ご確認する」「(ご)確認いたす」
    →「ご確認します」「(ご)確認いたします」
  • 「ご挨拶する」「(ご)挨拶いたす」
    →「ご挨拶します」「(ご)挨拶いたします」
  • 「お願いする」「お願いいたす」
    →「お願いします」「お願いいたします」

こんな感じでつかう敬語です。ちなみに丁寧語「ます」をくっつけて「お・ご〜します」「お・ご〜いたします」とするのが一般的。

補足①敬語の種類(ざっくり復習)

① 尊敬語とは?
相手をうやまって使う敬語の一種。
相手の行為にたいして使い、自分の行為には使わないことが基本。

敬語の種類はほかに②謙譲語、③丁寧語がある

② 謙譲語とは?
自分をへりくだって下にすることで、相手への敬意をあらわす敬語。
自分の行為に使い、相手の行為には使わないことが基本(例外あり)。

③ 丁寧語とは?
いわゆる「です・ます」口調のこと。

補足②謙譲語にも「お・ご+名詞」という使い方がある

ややこしいので基本的な敬語の使い方についてくわしく解説を。

じつは尊敬語と謙譲語にはどちらも「お・ご」の使い方があります。

謙譲語としての「お・ご」の使い方はたとえば、

「会議日程のご連絡
「忘年会開催のお知らせ
「販売状況のご報告
「転勤のご挨拶
「貴社ご訪問のお願い

こんな感じのフレーズがあります。よくビジネスメールの件名で目にする表現ですね。

ところが例文は自分が「ご連絡・お知らせ・ご報告・ご挨拶」するため「お・ご」をつかうのはおかしいと感じるかたもいらっしゃることでしょう。

これは、

謙譲語「お・ご」の使い方を知らないためにくる勘違いです。尊敬語の「お・ご」だと勘違いしているために間違い敬語と感じるのですが、実際にはどれも正しい敬語をつかっています。

いっぽうで尊敬語の「お・ご」は、「●●部長からご連絡がありました」などのようにして、相手の行為をうやまって使う敬語です。

ただし謙譲語にも「お・ご」を使い始めると文章が「お・ご」だらけになって読みにくくなります。文章のバランスを考えて使い分けしましょう。

「ご提供いたします」は二重敬語ではない

「ご提供いたします」は二重敬語だという意見があります。

「ご提供する」はすでに謙譲語であり、さらに「する」の謙譲語「いたす」をつかって「ご提供いたす」としているから…

「ご提供する=謙譲語」×「いたす=謙譲語」

「ご提供いたす」は「謙譲語 x 謙譲語」だから二重敬語??

このようなロジックで二重敬語だという意見がでてくるのかと。

ただし答えは「二重敬語ではない」です。

二重敬語とは「ひとつの語におなじ敬語を二回つかうこと」であり敬語のマナー違反です。

たとえば「お伺いいたします」「お伺いする」などが二重敬語の例。「行く」の謙譲語「伺う」をつかっているのに、さらに「お〜いたす」「お〜する」という謙譲語をつかっているためです。

ところが、

「ご提供いたします」は「提供」+「する」という2つの単語から成り立ちます。「提供」を謙譲語には変換せず「お・ご〜いたす」という謙譲語を適用しているため、謙譲語は一回しかつかっていません。

したがって二重敬語ではありません。

よくよく考えてみると…

「ご提供いたします」が二重敬語になるのでしたら、ビジネスメールの結びで必ずといっていいほど使う「お願いいたします」も二重敬語になるはずですよね。

そもそも二重敬語とは?よくある間違い敬語

で先ほど、

よくある二重敬語のたとえとして「お伺いする」「お伺いいたす」があるとしました。

なぜ二重敬語といえるのか?これらのもとになる文章を考えてみましょう。

「伺う」は「行く・聞く・たずねる」の謙譲語ですので、これらが原文となります。

  • 「お伺いする」の元になる文章は「行く・聞く・たずねる」
  • 謙譲語「伺う」
  • さらに謙譲語「お~する」「お~いたす」

もとになる語「行く・聞く・たずねる」に謙譲語を2回つかっていますね。ひとつの語に同じ種類の敬語を2回つかうことが二重敬語であり、敬語のマナー違反になります。

➡︎「お伺いいたします」が間違い敬語である理由、正しい使い方

➡︎「お伺い致します/お伺いします/お伺いさせて頂きます」すべて間違い敬語!

よく使う謙譲語の「お(ご)」

謙譲語の「お・ご」は尊敬語の「お・ご」と勘違いしやすい敬語です。

ただ謙譲語で使われる「お・ご」はパターンが限られます。ざっくりと以下の使い方をマスターしておけばビジネスシーンでは困らないでしょう。

  1. お・ご●●する
    お・ご●●します
  2. (お・ご)●●いたす
    (お・ご)●●いたします
  3. お・ご●●いただく
    お・ご●●いただきます
  4. (お・ご)●●させていただく
    (お・ご)●●させていただきます
    ※ただし「させていただく」は日本語としておかしい表現になる時もあり何でもかんでも使える訳ではない

●●の部分にイロイロな語がきて謙譲語になります。たとえば「了承」「連絡」「確認」「検討」「容赦」「査収」「取り計らい」など。

ここで(お・ご)と(  )書きにしているフレーズは「お・ご」があってもなくても敬語としては丁寧。

この謙譲語の「お・ご」を使いすぎると文章が「お・ご」ばかりになるため要注意。バランスを考えて使いましょう。

また丁寧語「ます」とくみあわせて「〜します」「〜いたします」とするのが丁寧な使い方ですのでご留意ください。

ただし「提供いたします」で十分に丁寧な敬語

じつは「ご提供いたします」という謙譲語は「ご」を省いて「提供いたします」としても謙譲語として成り立ちます。

なぜなら「提供いたします」は、

もとになる単語「提供」に「する」の謙譲語「いたす」をつかい丁寧語「ます」をくっつけた敬語だから。

ビジネスメールでは「(お・ご)〜いたします」といった謙譲語をほんとうによく使います。さらには尊敬語の「お・ご」もたくさん使います。

でこれの何が問題かというと、

「お・ご」だらけのビジネスメールになって読みにくくなってしまうこと。

気持ち悪いメールになってしまいます。

尊敬語「お・ご」とも混同しやすいため「提供いたします」推奨

そもそも「お・ご〜いたします」という謙譲語は尊敬語の「お・ご」と混同しやすいです。間違い敬語と思われても仕方ないのですね。

で、

ご提供いたします」「提供いたします」どっちを使うべきかの結論としては、文章のバランスを考えて「提供いたします」をメインに使うことをオススメします。

「ご提供いたします」ビジネスメール例文

より実践的に敬語をまなぶために、ビジネスメールでの「ご提供いたします」の使い方を例文でおさらいしておきましょう。

ようは目上や上司・取引先に、あなたがなにかしら「提供します!」と言いたいきに使います。

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メール件名: 返信Re:【製品A】サンプルご提供のお願い(ビジネス・のまど)

株式会社転職
営業部 ノマド 様

お世話になります。
(株)ビジネス・営業部の●●と申します。

このたびはお問い合わせいただき、誠にありがとうございます。

さてご依頼の件、下記のとおりサンプルを提供いたします。

手配のほう進めており、お届けには概ね1週間前後のお時間を頂戴しておりますが、あらかじめご了承いただけましたら幸いです。

製品名:
数 量:
お届け先:

以上

ご不明な点がございましたら何なりとお申し付けください。

よろしくお願い申し上げます。

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メール署名
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この場合は「送付いたします」という敬語を用いてもOKです

“ご提供させていただきます”敬語は正しいけど…

「(ご)提供させていただきます」という表現を使うビジネスパーソンをよく見かけます。

「〜させていただく」は「させてもらう」の謙譲語なので、敬語としては正しいです。

ちなみに「させてもらう」の意味は辞書によると「相手方の許しを求めて行動する意をこめ、相手への敬意を表す」

つまり、

許しが必要なときにつかう言葉です。

ご提供するとき、相手からの許可って要る?

ビジネスシーンで上司・目上や取引先に提供するとき、はたして相手からの許しが必要でしょうか?

答えは「No、必要ありません」

ただまぁ「恐れ多くもご提供させてもらうよ」と解釈するのであれば正しいような気もします。

わたしは必要ないと思いますけど実際によく使われているのは事実。使うかどうかは、あなたの考えにお任せいたします。

参考記事

➡︎「お伺いいたします」が間違い敬語である理由、正しい使い方
➡︎「お伺い致します/お伺いします/お伺いさせて頂きます」すべて間違い敬語!
➡︎ 誤用の多い「させていただく」症候群には「いたします」が効く!
➡︎「ご連絡差し上げます」は間違い敬語?意味と正しい使いかた

依頼・お願いビジネスメールでの「ご提供」