日経平均やアメリカの株価が、毎日すごい勢いで上がっていますね! まさに世界中が「お祭りムード」です。
最近NISAを始めた方は、アプリを開くたびに資産が増えていて、「投資って、すごく楽しい!」と感じている頃ではないでしょうか。
こんな風にうまくいっている時って、私たちはついつい「このまま大丈夫だろう」「もっとお金を入れて、一気に増やしたい!」と、強気になりがちです。
でも、”投資の神様”として知られるウォーレン・バフェット氏は、こんな言葉を残しています。
みんなが浮かれている時は慎重に。
みんなが怖がっている時に、思い切って行動しなさい。
“Be fearful when others are greedy, and greedy when others are fearful.”
まさに、お祭りムードの「今」だからこそ、一度立ち止まって冷静になることが大切なのかもしれません。
なぜ、これほど「暴落への備え」を呼びかけるのか。それは私自身が過去の暴落で何の準備もしておらず、「資産を大きく増やす絶好のチャンス」を何度も指をくわえて見送ってきた、本当に悔しい経験があるからです。
今日の記事では、このお祭りムードの裏側で、こっそり考えておくべき「もしもの暴落への備え」について、私の壮絶な失敗談と、そこから学んだ教訓をお話しします。
1. そもそも、暴落したら私のNISA口座、どうなっちゃうの?
まず、一番気になるところからお話ししますね。もし株価が大暴落したら、もちろんNISA口座に入っている資産の価値(評価額)は、一時的に大きく下がります。
でも、本当に知っておいてほしい怖いことは、別にあります。それはNISAだけの特別な「税金のルール」です。
NISAの注意点:損失が出ても、誰も助けてくれない
NISAのすごいところは、投資で出た利益に税金がかからない(非課税)ことです。
しかし、その裏返しで、もしNISAで損が出てしまっても、他の投資の利益と合算して税金を安くする、ということが一切できません。
これは、NISAじゃないふつうの証券口座(課税口座)なら使える、2つの“助かる仕組み”が使えない、ということなんです。
- 利益と損失をチャラにできない(損益通算ができない)
ふつうの口座なら、Aの株で出た利益と、Bの株で出た損失を合算して、払う税金を安くできます。でも、NISAで出た損失は、この計算に含めることができません。 - 損失を翌年以降に持ち越せない(繰越控除ができない)
ふつうの口座なら、今年出た大きな損を、来年以降3年間、利益が出た時に差し引いて税金を安くできます。でも、NISAの損失は翌年に持ち越せません。
つまり、NISA口座で損が出ている時にパニックになって売ってしまうと、税金面で助けてくれる仕組みが一切ない、ただの「大損」で終わってしまう可能性がある、ということです。
2. 【私の体験談】暴落のとき、絶対にやっちゃダメなこと
では、実際に暴落が来たらどうすればいいのか。その答えは、過去の私の失敗の中にあります。
やっちゃダメなこと①:怖くなって、全部売ってしまう(狼狽売り)
何年もかけて現金を貯め、準備万端のはずだった2020年、歴史的な大暴落「コロナショック」が私を襲いました。
「ついに、チャンスが来た!」
そう思うはずでした。でも、取った行動は全くの逆。毎日すごい勢いで資産が減っていく恐怖に負けて、持っていた株のほとんどをパニックになって売ってしまったのです(これを狼狽売りと言います)。
何年もかけて準備したのに、たった数週間の恐怖に負けてしまった。底値で売ってしまった資産は、その後のV字回復に乗れず、ただただ呆然とするしかありませんでした。
やっちゃダメなこと②:もう一度立ち上がれないほどのダメージを受ける
さらにパニックになった私は「もっと下がるに違いない!」と思い込み、「株価が下がる」ほうに賭ける投資(空売り)という、危ないやり方にまで手を出してしまいました。結果はもちろん大失敗。一瞬で大切なお金をさらに失いました。
これは、投資デビューしたリーマンショック直前と同じ過ちでした。危なくないように管理すること(リスク管理)も知らずに、無謀な挑戦をして大金を失う。
バフェット氏の有名な言葉に「潮が引いたときにはじめて、誰が裸で泳いでいるかわかる。 (Only when the tide goes out do you discover who’s been swimming naked.)」というものがあります。私は当時まさにその状態だったのです。
暴落の時に一番避けたいのは、怖くなって投資の世界から逃げ出してしまったり、もう一度チャレンジできないほどのお金と自信を失ったりすることなんだと、高い授業料を払って学びました。
3. じゃあどうすれば?暴落した時の具体的な動き方
① NISAの基本技:「いつも通り」積立を続ける
もしNISAの「つみたて投資枠」で毎月コツコツ投資をしているなら、何も変えず、いつも通り続けることが、一番強くて簡単な方法です。
これは「ドル・コスト平均法」という考え方で、株価が安いときにはたくさん、高いときには少なく買うことになり、自然と平均の購入価格を下げてくれます。
暴落は「良い資産のタイムセール」です。いつも通り買い続けるだけで、セール品をたくさん仕込めるのです。
② 準備があれば:チャンスと見て、追加で買う
もし「暴落した時に使う」と決めていた現金を持っているなら、暴落は「最高の買い場」に変わります。
コロナショックで大失敗した後、私は一度すべての株を売り払って頭を冷やし、ゼロから冷静に買い直しを始めました。その時にやったのが、次の3つの作戦です。
- 本来の価値に比べて割安になっている株(バリュー株)を拾う
- 暴落で安くなった「素晴らしい会社」の株を買う
- たくさんの配当金がもらえる株(高配当株)で守りを固める
この作戦がうまくいき、資産はV字回復しました。準備していた現金と、冷静な作戦があれば、暴落は怖くないのです。
③ 何もしない、ただ待つ
追加で買うお金がない、これ以上ドキドキしたくない、という場合は、「何もしない」のが正解です。歴史を見れば、株価はどんな暴落からも必ず回復してきました。慌てて売るのが一番もったいない。アプリをそっと閉じて、嵐が過ぎ去るのを待ちましょう。
4. 【歴史のお勉強】暴落は必ず来る。でも、必ず終わる。
ここで、世界の株式市場の歴史をちょっと見てみましょう。日本だけでなく、世界最強と言われるアメリカ株(S&P500)も、何度も悪夢のような暴落を経験してきました。
- ブラックマンデー(1987年):
アメリカ発の株価暴落。ある日突然、アメリカ株S&P500が1日で約-20%も暴落。「暗黒の月曜日」と呼ばれました。 - 日本のバブル崩壊(1990年〜):
日本株固有の暴落。日本の日経平均株価がピークから約-82%も下落。「失われた30年」の引き金となりました。 - ITバブル崩壊(2000年〜2002年):
アメリカ発の全世界株安。期待が先行しすぎたIT関連株が暴落。S&P500は約2年半かけて約-50%下落しました。 - リーマンショック(世界金融危機)(2008年):
アメリカ発、世界中を巻き込んだ金融危機。S&P500は約1年半で約-57%、日経平均も-60%以上下落しました。当時、アメリカの金融機関は全部つぶれるんじゃないか?と思うくらいのインパクトでしたね、ものすごかったです。会社員だった方はこの日を境にビジネスが激減したのはなつかしく、ここで生き残った人々は武勇伝のように当時を語られますよね。 - 東日本大震災ショック(2011年):
日本固有の暴落。震災発生後のわずか2営業日で日経平均が約-17%も暴落。特に3月15日は1日で10%を超える歴史的な下げを記録しました。リーマンショックの傷がいえていないところに直撃した暴落で、しかもその後の超円高時代で日本株にはダブルの試練が…結局、アベノミクス開始まで日本株が低迷する要因のひとつになりました。 - コロナショック(2020年):
世界的な暴落。未知のウイルスへの恐怖から、S&P500も日経平均も、わずか1ヶ月あまりで約-35%という歴史的なスピードで急落しました。サーキットブレーカーが鳴りやまない、という経験は後にも先にもできないと思います。
【体験談】歴史の証人になった、あの日のこと
コロナショックが他の暴落と一線を画すのは、その圧倒的な「速度」です。当時、アメリカ株の動きに日本株も完全に連動していました。
アメリカ市場では、あまりの急落にパニックを抑えるため、取引を強制的に一時停止する「サーキットブレーカー」という仕組みがあります。あのリーマンショックですら一度も発動しなかったこの装置が、コロナショックではわずか2週間で4回も発動したのです。
リアルタイムで市場を見ていた者として、サーキットブレーカーが「鳴りやまない」という、後にも先にもないだろう経験をしました。まさに歴史の証人になった瞬間であり、暴落の本当の恐ろしさを肌で感じた出来事でした。
あの、値動きがとまる瞬間の恐怖、再開してからさらに下落していく様子は完全にホラーでしたね。
このように、暴落の形は様々ですが、およそ10年に一度のペースで大きな危機が訪れているのが分かりますね。
そして、一番大事なこと。それは、どんな暴落の後でも、日経平均やS&P500は時間をかけて必ず回復し、最後には昔の最高価格を力強く更新してきたということです。
この事実を知っているだけで、「暴落はいつか来る。でも、大丈夫。いつか終わる」と、少し落ち着いて考えられるはずです。
5. 暴落に備えて、お祭りムードの「今」からできる3つのこと
備え①:「チャンスの時に使うお金」を用意しておく
私がリーマンショックの時に一番悔しかったのが、これです。当時、借金があった私には投資するお金がなく、歴史的な大安売りをただ指をくわえて見ていることしかできませんでした。「暴落はチャンス」と分かっているのに、そもそも参加することすらできない。
この無力感が、私の投資の原点です。
だからこそ今の私は、総資産の10%程度にあたる1000万円の現金を、常に証券口座に用意しています。これは生活のためのお金とは別に、いつ暴落が来てもいいように「買い向かう」ためだけの待機資金です。
経験則ですが、暴落時にこの1000万円で優良株を全力買いできれば、10年ほど放置しておくだけで5倍の5000万円になっていると信じています。仮に今持っている9000万円分の株の価値が半分(4500万円の損失)になったとしても、この将来の利益があれば十分お釣りがきます。
もちろん、この金額は人それぞれの資金力によります。大切なのは、「総資産の10%」のように自分なりのルールを決めて、暴落時に動かせる現金を別に確保しておくという考え方そのものです。
実際に暴落の渦中にいると恐怖で動けなくなるもので、「言うは易し」なのは百も承知です。それでも、この『弾薬』があるかどうかが、暴落をチャンスに変えられるかを分けるのです。
備え②:「これくらいなら大丈夫」と思える範囲でやる
コロナショックでパニックになったのは、自分の限界以上に危ない投資をしていたからです。自分の資産の組み合わせ(ポートフォリオ)が、「自分がどれくらいの損までなら夜眠れるか(リスク許容度)」を超えていたのです。
「もし今、自分の資産が半分になったら、自分はどうするだろう?」
一度、ご自身の資産の組み合わせが、本当に「自分にとって大丈夫な範囲」か、チェックしてみてください。
備え③:「心の準備」をしておく
これが一番大切かもしれません。「暴落は、いつか必ず来るものだ」と、先に覚悟を決めておくことです。
「その時が来たら、自分はパニックにならずにいつも通り積立を続けられるかな?」
このシミュレーションを頭の中でしておくかどうかで、いざという時の行動は全く変わってきます。暴落を避けられない自然災害だと考えるなら、私たちは防災訓練をしておくべきなのです。
まとめ:ちゃんと備えれば、暴落は「最高の買い場」に変わる
バフェット氏の「みんなが怖がっている時に、思い切って行動しなさい」という言葉は、言うのは簡単ですが、やるのは本当に難しいです。私も、渦中にいる時は恐怖で冷静な判断なんてできませんでした。
でも、「①チャンスの時に使うお金」「②自分にとって安全な資産の組み合わせ」「③心の準備」という3つの備えができていれば、話は別です。
暴落が来ても、あなたはきっと冷静でいられるでしょう。投資から逃げ出すことなく、むしろ他の人がパニックで手放す「良い会社の株」を、バーゲン価格で手に入れることさえできます。
きちんと備えさえすれば、暴落はただの「怖いもの」から、あなたの資産を大きく増やす「最高の買い場」に変わります。
お祭りムードの今だからこそ、来るべき日のために、静かに、でも着実に準備を始めませんか。
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