総務省の調査によれば、二人以上世帯の平均貯蓄額は約1900万円。
その数字と比べると、「資産5000万円」というステージは、多くの人にとって一つの大きな目標であり、遥か遠い世界に見えるかもしれません。
かつてギャンブルで借金300万円を抱えていた僕にとっても、それは夢のまた夢でした。
しかし、僕は30代でその壁を突破し「準富裕層」の仲間入りをしました。
もし、資産5000万円を達成した人間に、何でも質問できるとしたら、あなたは何を知りたいですか?
今回は、僕がそのステージに立つまでに経験した「過去」、その時点での「現在」、そして見据えていた「未来」について。僕の思考と経験のすべてを、Q&A形式で語り尽くしたいと思います。
1. 資産形成の道のり(過去)について
まずは、5000万円という資産を築き上げるまでの、泥臭い道のりからお話しします。
最初の100万円、1000万円はそれぞれどのように貯めましたか?
正直に言うと、僕の資産形成は一般的なセオリーとは全く違います。20代の頃はギャンブル依存で貯金はゼロ、むしろ300万円の借金を抱える状態でした。
そんな僕が最初のまとまったお金を手にしたのは、副業の収入です。人生を懸けて取り組んだ輸入転売で借金を完済し、次に始めたこのブログで得た収益が、資産の核となりました。
「毎月コツコツ貯金する」という正攻法が苦手だった僕は、まず収入自体を爆発的に増やすという、ある意味、荒療治で最初の壁を突破したのです。
最も効果的だった「収入を増やす」方法と「支出を減らす」方法は何ですか?
収入を増やす上で最も効果的だったのは、間違いなく副業です。サラリーマンの昇進による昇給ペースでは、資産形成のスピードはあまりにも遅すぎます。僕の場合、副業収入が給料の何倍にもなった時期があり、これが資産形成のエンジンとなりました。
一方、支出を減らすことについては、正直に言って、投資を本格的に始めるまで、僕は完全に失敗し続けていました。
20代の借金は副業収入で返済できましたが、今度は月収200万円を超えるキャッシュフローが、僕を新たな「浪費家」に変えてしまったのです。皮肉なことですが、浪費癖が本当に収まったのは、ブログという大きな労働収入源を断ち、有り金はすべて投資に回すと決めてから。
収入が減った時にこそ、支出は最適化される。これが僕の学んだ教訓です。
これまでで最大の失敗談と、そこから学んだ教訓を教えてください。
最大の失敗は自分で投資を始めて1年も経たないうちに経験した、コロナショック時の空売りです。
「暴落はまだ続くはずだ」という素人の浅はかな相場観で、日経平均に連動するレバレッジのかかったインデックスの空売りに、1000万円単位の資金を投じました。結果はご存知の通り、歴史的なV字回復。僕は空売りを積み増し続け、気づけば含み損は数百万円に…そこまできてようやく間違った取引をしていることに気づき、人生最大の損失を確定させました。
今だから言える、もっと恥ずかしいお話をすると…実は同時期にオプション取引にも百万円単位で資金を投じ、すべて溶かしました。どういう取引だったかというとプットオプションの大量購入です。これはご存じの方はピンとくると思いますが、暴落がきたときには一気に100倍とか1000倍、つまり平気で1000万円とか1億円単位の利益がでるような、ゼロか、ワンチャン1億かみたいな、ハイリスクの投機です。
個人投資家にとってのプットオプションは暴落の保険に1枚2枚買うようなものに留めておくべきです。こんなバカげた取引をする方はいないと思いますが、浅はかにも一攫千金をねらったビギナー投資家の大失敗でした。
この失敗から学んだ教訓は二つ。
- 「自分の相場観など全くアテにならない」ということ
- 「市場の長期的な成長に逆らうショート戦略は、破滅的なリスクを伴う」ということ
この失敗がなければ、今の僕の慎重な投資スタイルはなかったでしょう。
資産形成のスピードが最も加速した「ターニングポイント」は何でしたか?
ターニングポイントは、大きく二つあります。
一つ目は、以前にもお話しした、ある投資ファンドマネージャーとの出会いです。これをきっかけに「労働収入」から「資本収入」へと、思考のOSを完全に入れ替えました。それまでの僕は、副業で稼いだ現金をただ銀行に寝かせているだけでした。彼のセミナーで「バリュー投資」という哲学に出会い、初めて「お金に働いてもらう」という資本主義の本質に触れたのです。
これが、投資の世界に足を踏み入れる最初の大きな一歩でした。
そして、資産を「爆発的に」加速させた、もう一つの決定的な出会いがあります。それは、世界的に著名な投資家ウォーレン・バフェット氏との出会い(もちろん、実際に会ったわけではありませんが)です。
当初学んだバリュー投資だけでは、爆発的な資産成長は難しいと感じ始めていた頃、生きる伝説であるバフェット氏のことをもっと深く知ろうと、彼の著作や株主総会の動画を徹底的に研究しました。そこで彼は単なる「割安株」投資家ではないと気づいたのです。
事業の将来性や競争優位性(モート)を見抜き、「優れた企業を、適正な価格で買う」という彼の思考法を元に、僕はポートフォリオをガラッと入れ替えました。もちろん、コロナショック後に安いところを拾えたという運の要素も大きいですが、この方針転換によって、単純なバリュー投資だけでは見過ごしていたであろう機会を、しっかりとモノにできたと思っています。
2. 現在の資産管理とライフスタイルについて
つぎに資産5000万円を達成した当時、どのようにお金を管理し、どんな生活を送っていたのかをお話しします。
資産ポートフォリオ(現金、株式、不動産などの割合)を教えていただけますか?
当時のポートフォリオは、非常に偏っていました。
- 日本の個別株:100%
- 保有銘柄:今は非公開(20銘柄ほどに分散)
- 投資スタイル:バリュー投資、中長期目線
- 現金:ほぼゼロ
- 信用取引(レバレッジ):常時1000万円程度
今見ても、かなり攻撃的なポートフォリオですね。ただ、すべての資産を「金の卵を産むガチョウ」に変えたいという思いが強く、現金をほとんど持たないスタイルを取っていました。
また、インデックス投資も不動産もやっていませんでした。なので投資信託(ETF)の保有もゼロです。今にして思うと米国のS&P500のETFくらいはコア資産として買っておいたほうが、精神的にはるかに楽だったろうなと思います。米国株は気づいたときにはもう円安が進みすぎていて、買う気にすらもならなかったのですよね。
僕は幸運にもここまで指数をアウトパフォームしてきましたが、「ほとんどの個人投資家はインデックス指数に勝てない」というのは、紛れもない事実だと思います。
あともうひとつ。デイトレやスキャルピングなどの短期売買もやっていません。昼間はサラリーマンをやっていて何度も売買する余裕がありません。それに大学の時にデイトレをやって当時の貯金全額(数十万円)を溶かしているので短期トレードの才能が自分には無いと自覚していました。
なぜそのポートフォリオに行き着いたのですか?
投資を始めた頃は、教科書通りに30銘柄以上に分散していました。しかし、バフェットの「分散とは無知に対する保険である」という言葉の意味を理解するにつれ、自分の知識と確信度が深まれば、分散はリターンを薄めるだけだと気づきました。
自分が心の底から信じられる、数少ない優良企業に大きく賭ける。その方が、僕の性格にも合っていました。「無知」からの卒業と共に、ポートフォリオは自然と集中していったのです。
あと、サラリーマンをやっていると、昼間は実際に手を動かして売買することができないので、朝から寝るまでぼ~っと投資アイディアを考えています。そうすると不思議なもので1-2カ月毎くらいにポンっと出てくるのですよね。その段階では「このアイディアはいけるんじゃないか?」という仮説で、そこからリサーチして絞っていく感じですね。
たまに思いつく投資アイディアの中から、確実なリターンを得られそうな投資先を厳選してやっています。初めからとくに戦略っぽいことがあったわけではないです。
資産が5000万円に到達して、生活やお金に対する考え方に変化はありましたか?
「お金持ちの実感は全くないが、お金に対する不安はかなり減った」というのが正直なところです。しかし、株式投資をしている方にはお分かりと思うのですが、資産3000万円だろうと5000万円だろうと、それは証券口座にある単なる数字であって特別な感情がわかないです。
つぎの日に暴落をくらって2割減ったりするリスクもあるので自分は金持ちだ、みたいな気持ちになったことはありません。
また、5000万円あっても、年間1000万円の生活費の前では、数年で尽きてしまう額です。FIREできるわけではありません。なので生活水準もとくに変わりませんね。
それでも「万が一、会社が倒産したり、クビになっても、数年間は路頭に迷うことはない」という精神的なセーフティネットは安心感を与えてはくれました。
現在の年間支出額はどのくらいですか?また、どのようなことにお金を使っていますか?
当時の年間支出は、今と同じく約1000万円でした。
そのほとんどは、都内の家賃と子供3人の教育費(塾や習い事)に消えていました。ブログで月200万円稼いでいた頃のような浪費は完全に影を潜め、むしろ質素な生活を送っていましたね。
ぶっちゃけると、
- 一番大きな支出は家賃(賃貸住まいなので)
- ついで子どもたちの教育費(習い事を含む)
- 食費
- 娯楽(旅行とか)
- その他生活に必要なもの
、、、みたいな順番です。子どもたちの学区や習い事のことを考え住むエリアにお金をかけています。なので結局のところ教育費がほとんどを占めているものかと。その費用対効果は…子どもたち次第なので必ずしも確実なリターンの見込める投資ではないのが気がかりです。
なんにでもリターンを求めてしまうのはもはや投資家の職業病ですね。妻にいつも怒られていますが治りません(笑)。
なお教育については、僕自身が公立小中高からの大学も国立大に進学したので、子どもたちもそれで良いという考えです。が、いかんせん周りの影響(中学受験が当たり前の世界)とか、妻の思い(公立はダメだ・笑)、子どもたち本人が学校でほかの子たちの影響を受けるとかがあって、今のところそれに付き合わされている感じです。
まとめると、(妻が)子どもたちにやらせておきたい、あるいは子どもたち自身がやりたい、ということは否定せずお金を出しています。
もっと教育費をセーブしたいという僕自身の思いとは裏腹に、残念ながら出費がかさんでしまっています。
3. 未来の展望と資産哲学について
お金そのものに対する考え方や、今後の目標についてです。
今後の資産目標はいくらですか?(例:1億円、FIRE達成など)
この頃から明確に「純資産1億円」を次の目標として意識し始めました。
そして資産額以上に「年間配当金1000万円」というキャッシュフロー目標の重要性にも気づき始めた時期です。
しかし5000万円に至るまでに相当な苦労があったので、1億円はほとんど達成不可能に思えて毎日ゲンナリしていましたね。今思えば。
あなたにとって「お金」とは何ですか?
「人生の選択肢を増やすための、最強のツール」です。
お金があれば、嫌な仕事を辞める選択肢も、子供に最高の教育を受けさせる選択肢も、世界中を旅する選択肢も手に入る。お金そのものが目的なのではなく、その先にある「自由な選択」こそが、僕が求めるものです。
よく「人生お金がすべてではない」という人がいます。しかしこれは、お金持ちが言うからこそ説得力のある発言です。バフェット氏も「お金がすべてではないが、自分がお金を十分に持っているかを確認してから言うべきだ」と皮肉を込めていますね。うまいこと言うなぁと思います。
経済的自由を手に入れた先に、どのような人生を送りたいですか?
完全に仕事からリタイアして、南の島で暮らしたい、という願望は今はもうありません。昔はよく夢見ていたのですがモルディブに1週間旅行へ行って、ヒマを持て余す生活は僕にはできそうにないことが分かったので。だんだん時間がもったいない気がしてくるのですよね。ちなみに当時お世話になった旅行代理店の方も「1か月でモルディブ生活には飽きました」と言ってましたね(笑)。僕には1週間もいれば十分な非日常体験でした。
戻りますが、完全FIREしたらおそらく、好きなだけ企業分析をしたり、こうしてブログで自分の考えを発信したり、何らかの形で社会と関わり続けていると思います。重要なのは「何をやるか」ではなく、「誰にも強制されず、すべてを自分で選択できる状態」であることです。
次世代への資産継承(相続)について、どのようにお考えですか?
僕が20代で犯した過ち(借金)は、良い大学を出て、良い会社に入っても、金融教育を受けていない人間がいかに脆いかを証明しています。
ですから子供たちには資産そのものを残すこと以上に、お金に困らないための「知識」と「哲学」を遺したいと考えています。資産を管理し、増やし、賢く使う能力。それこそが、一生涯彼らを守ってくれる、本当の財産だと信じています。
4. 成功を支えたマインドセットについて
テクニック以上に重要だった、精神的な部分についてです。
市場の暴落時など、資産が大きく減少した際に、どのように精神を安定させましたか?
サラリーマンとしての給料です。これ以上の精神安定剤はありません。
資産が1日で数百万円吹き飛んでも、「まあ、来月も給料は入ってくるしな」と思える。この精神的な余裕が、パニック売りを防ぎ、むしろ冷静に買い向かう勇気を与えてくれました。専業投資家にはない、サラリーマン投資家の最大の強みです。
あと暴落時には著名な投資家がどういう発言をしているか、どういう動きをしているかを見るのも参考になりましたね。僕の場合、コロナショック渦中にはバフェット氏の株主総会動画を何年にもさかのぼって見続けたり(YouTube上に公開されています、英語ですが…)、彼の最新のインタビュー動画などがあればそれも探して何度も見ました。こうして精神を落ち着けました。
それで結果、コロナ直後には大損しているので何を学んでたのって感じですが(笑)。まぁ当時は投資歴1年未満のビギナーだったこともあり、心構えがまったくできていませんでしたね。
最後に、暴落は避けられないので「いったんは誰でも必ず食らうもの」と心得ておくことでずいぶんと精神が楽になります。投資をしているとわかるのですが暴落を予測して備えるなんて、絶対に無理です。いったん食らうのは仕方なし、そのあとに自分の頭脳をフル回転させ、どういう動きをしたらダメージ軽減できるかを考えることが重要です。僕はこれで心がだいぶ楽になりましたね。
とにかく会社員であることが最大の精神安定剤です。
資産形成に関する情報収集は、主にどこから(書籍、Webサイト、専門家など)行っていますか?
一次情報を最も重視しています。具体的には企業の決算書や有価証券報告書です。
その上で、日経新聞で世の中の流れを掴み、信頼できるアナリストやブロガーさんの意見を参考に、自分の考えを補強していきます。
ただ、じつは重要なのに意外と誰も教えてくれないのは「投資家の心構え」的なもので、それはバフェット氏に関する書籍を何冊か読みながら身につけました。生ける伝説なので動画類も豊富に残されています。株主総会の様子や各種インタビュー、あるいはドキュメンタリー取材ビデオなんかも何度も見ましたかね(ほとんど全部英語ですが…最近は日本語字幕も自動翻訳で簡単にでると思います)。彼と同じ時代に生きているのが幸運と考え、マインドセットを吸収し、モノにしようと日々研鑽を重ねています。
しっかりとした土台(投資に対する心構えや考え方)を身に着ければ、あとは自分の努力次第でどこまででもいけるという考えです。
最も大切にしているルールや習慣は何ですか?
ルールは、バフェットの教えでもある「損をしないこと」。
習慣は「学び続けること」です。企業のビジネスモデルを分析することが、僕にとっては趣味であり、最高の娯楽です。
と、格好よく言いたいですが、実のところルールはあってないようなもので、柔軟性を持つことが最高のルールだと思っています。マイルールで縛ると自分のやり方に固執してチャンスを失うリスクがあります。これの弊害のほうが大きいのでなるべくマイルールを設けないことをお勧めします。
あとビジネス分析の習慣も、自分の興味の持てない分野は一切やらないので「え、それ知らないの?」みたいな時が結構あると思います。たとえばビットコイン関連株とか。
まとめると株式投資はルールブックにはない、想定外のことばかり起こります。そこで生き残っていくためにはその場その場で最善の手を打っていく柔軟性が必要です。
5. これから資産形成を始める人へのアドバイス
最後に、これから資産5000万円を目指す方々へのメッセージです。
もし今、貯金ゼロの20代に戻れるとしたら、何から始めますか?
まず、ギャンブルを即刻やめます(笑)。
そして、稼いだお金で米国(S&P500)と日本(日経225)のインデックスファンドを半々くらいにして、毎月可能な限り積み立てます。オルカンも結局のところほぼ米国と先進国株なので、それなら米国株と日本株だけで十分です。僕のように副業で一発当てるのは再現性が低い。若いうちから時間を味方につけて、複利の力を最大限に活用するのが、最も確実な道です。
資産形成において「絶対にやってはいけないこと」は何だと思いますか?
いろいろありますが、たった一つだけ挙げるとするならば、それは「投資そのものを諦めてしまうこと」です。
途中で怖くなって市場から完全に撤退し、「労働収入だけで5000万円を目指そう」と考えること。それこそが、目標達成を最も遠ざける行為だと、僕は断言します。相場で生き残りさえすれば、5000万円という目標は自ずと見えてきます。
なぜなら資本主義社会には「r > g」という、残酷とも言える鉄則が存在するからです。
経済学者トマ・ピケティが示したこの公式は、r(資本収益率)が、g(経済成長率、つまり給料の伸び)を常に上回る傾向にあることを意味します。平たく言えば、「お金持ちがお金で資産を増やすスピードは、一般人が労働で給料を増やすスピードよりも速い」ということです。
この事実は、資産形成の戦略に大きな示唆を与えます。それは、あなたの貴重な時間とエネルギーを、労働収入の最大化よりも、資本収入の最大化に注力すべきだということです。
もちろん昇進や転職も大事ですが、そのために必死になるくらいなら、その時間で優良な高配当株を一つでも多く探し、買うことの方が、長期的にはよほど資産形成に貢献するのです。市場に居続け、資本を育て続けること。絶対にやってはいけないことは、その逆です。
資産5000万円を目指す上で、最も重要な心構えを一言で表すとしたら何ですか?
「時間を味方につけること」
あせらず、市場から退場せず、コツコツと種を蒔き続ける。そうすれば、複利という人類最大の発明が、やがてあなたの資産を大きく育ててくれるはずです。
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