資産5000万円の罠。私が30代でFIREを思いとどまり、2年で1億円に到達できたワケ

サイドFIRE

「資産5000万円」——。
この響きには、一種の魔法がありますよね。コツコツと働き、節約と投資を重ねてようやくたどり着く、大きな大きな節目です。

「ここまで頑張ったんだ。もう会社に縛られず、自由に生きていけるんじゃないか?」

もしあなたが今、そんな期待に胸を膨らませているなら、まず心から「おめでとうございます!」と言わせてください。それは本当に素晴らしい成果です。

しかし、その決断を下す前に、少しだけ立ち止まって考えてみてほしいのです。
「あなたの年齢は、今おいくつですか?」

実は、資産5000万円というゴールは同じでも、あなたが30代・40代なのか、それとも50代なのかによって、その先の正解は180度変わってきます。

この記事では、かつて同じ場所に立った私の実体験から、「30代・40代の家族持ちならFIREもサイドFIREも時期尚早」である理由と、私がFIREを思いとどまった結果、なぜ2年で1億円に到達できたのか、その具体的な「ワケ」を包み隠さずお話しします。


【本音Q&A】資産5000万円で「できること」と「できないこと」

あなたが一番知りたいのは、「で、結局どんな生活ができるの?」という点でしょう。実感に基づき、Q&A形式で正直にお答えします。

Q. FIRE(完全に仕事を辞める早期リタイア)は可能ですか?

A. 独身ならかろうじて可能。しかし、家族持ち、特にリタイア後の人生が50年以上続く30代・40代なら、はっきり言って不可能です。

これが私の結論です。資産5000万円というと大金に見えますが、重要なのは資産の額そのものよりも、その資産が「寝ていても確実に入ってくるお金」をどれだけ生み出してくれるか、です。

当時、私が受け取っていた年間の配-当金は、税金を引いた後で約150万円。月々にすると、わずか12.5万円です。

総務省の家計調査(2023年)によると、2人以上の勤労者世帯の平均的な月間支出は約32万円。もちろん、これはあくまで平均ですが、月12.5万円では、家族を養い、家のローンやこれから重くのしかかる子どもの教育費を払い、安心して暮らすのは難しいと直感的にわかるはずです。

足りない分は、せっかく築いた5000万円の資産そのものを売って、お金に換えなければいけません。これは、金の卵を産むニワトリを少しずつ食べてしまうようなもので、精神的にものすごく不安になります。

明日、株価が暴落して5000万円が3000万円になるかもしれない…。そんな不確実なものに、家族の生活を賭けることはできませんでした。

有名な「4%ルール(資産の4%までなら毎年使っても30年は資産がもつ、という目安)」も知っていましたが、30代の私には「30年」では全然足りません。人生100年時代、残り50年以上の人生をこのルールだけで乗り切るのは、あまりに危険な賭けだと感じたのです。

Q. では、「サイドFIRE(セミリタイア)」なら可能ですか?

A. これも年代によります。私の結論は「30代・40代ならフルタイム継続」、「50代以降なら現実的な選択肢」です。

なぜなら、5000万円という資産は、「守り」の生活に入るには心もとなく、仕事を続けて「攻め」の姿勢を続ければ大きく化ける可能性を秘めた金額だからです。

仕事を続けていれば、この資産に一切手を付けずに、雪だるま式にお金が増えていく力(複利の力)で、さらなる高みを目指せます。

事実、私自身、このステージからサイドFIREという「守り」の選択をせず、「攻め」を選んだ結果、2年ちょっとで資産1億円を達成することができました。

守りに入って資産を少しずつ使ってしまうよりも、攻め続けて次のステージを目指す方が、遥かに大きなリターンを狙えるのです。


【年代別】資産5000万円の最適戦略はこれだ!

資産5000万円という「エンジン」をどう使うか。それはあなたのライフステージによって全く異なります。

【30代・40代】まだ「攻め」のステージ。アクセルを緩めてはいけない

この年代のあなたが持っている最強の武器は、5000万円の資産だけではありません。それは「これからの時間」「給料から資産に回せる力」です。

5000万円という巨大な雪玉の芯がある今、給料という新しい雪をどんどん追加していけば、資産の雪玉は驚異的なスピードで大きくなっていきます。

最適戦略
FIRE・サイドFIREは一旦、心の引き出しにしまいましょう。フルタイム労働を継続し、5000万円の資産には手を付けず、「資産1億円、そしてその先」へと育てることに全力を注ぐべきです。

【50代】「守り」への移行も視野に。賢くサイドFIREを検討する

一方、50代で子どもが独立し、住宅ローンも終わりが見えているなら話は別です。今後の大きな支出がある程度計算でき、ゴールまでの距離が見えているからです。

このステージでは、資産がもたらす「月12.5万円」が全く違う意味を持ちます。これは生活費のすべてを賄うには足りませんが、働く時間を減らすための強力なサポートになります。

最適戦略
フルタイムに固執せず、週3勤務や短時間労働など、ペースを落として働くサイドFIREが非常に有効な選択肢になります。資産からの収入を生活の補填とすることで、お金のためだけに働くのではない、自分らしい働き方を選び取ることができるのです。

【60代以降】本当の「上がり」

30代・40代が「攻め」のステージなら、60代はまさに本当の意味での「上がり」のステージです。ここまで資産を築き上げたあなたは、もうお金の心配をする必要はほとんどありません。なぜなら、その安心感は感覚的なものではなく、具体的なデータによって裏付けられているからです。

少しデータを見てみましょう。

  • 高齢夫婦の平均的な「支出」:総務省の家計調査(2023年など近年のデータ)によると、高齢夫婦無職世帯の平均的な月の支出(税金等含む)は約27万円です。
  • 夫婦2人の標準的な「年金額」:厚生労働省が公表するモデルケースでは、夫が会社員・妻が専業主婦だった場合の年金受給額は、月額約22万円です。

つまり、平均的な暮らしをすると、毎月約5万円が不足する計算になります。

この不足分を、あなたの資産5000万円が余裕で埋めてくれるのです。

  • たとえば株なら、年間3%(税引き後)、金額にして150万円の配当があれば、資産を切り崩さずに穴埋めどころかおつりが来ます。
  • あるいはもっと安全に、日本の長期国債や米国債、社債を中心に運用し年2%前後の利息収入を得るだけでも5000万円はそっくりそのまま残り続けます。
  • また、投資をせず現金預金のみの場合。毎月5万円(年間60万円)を取り崩しても、単純計算で5000万円をすべて使い切るまでにはなんと83年もかかります。死ぬまでに枯渇する心配はまずありません(それでもインフレリスクがあるため現金保有は推奨しません…)。

資産からの収入は不足分を補うだけでなく、趣味や旅行、孫へのお祝い、家のリフォームといった「人生を彩るためのお金」として、十二分に活用できるのです。

このように、「公的年金」という揺るぎない土台があり、さらに「資産5000万円」という強力なエンジンが不足分を補って余りある状況を、データは示してくれています。

これからは資産を「増やす」ことではなく、「どう賢く使い、人生を楽しむか」を考える、最も喜ばしいフェーズに入ったのです。


【実録】私が2年で1億円に到達できた、3つのワケ

タイトルに「1億円に到達できたワケ」と書いた以上、その中身を具体的にお話しする責任があると思っています。

もちろん、私が特別な才能を持っていたわけではありません。むしろ、コロナショックでは焦りから大きな失敗も経験しました。しかし、その失敗から学んだこと、そして「会社員」という立場を最大限に活用したからこそ、幸運を掴むことができたのです。

その「ワケ」は、突き詰めると以下の3つに集約されます。

ワケ①:最強の武器「給与所得」を手放さなかったこと

これが資産増加の最大の原動力でした。

会社員として得られる安定収入は、すべて生活費に充てる。そして、5000万円の資産が生み出す利益(配当など)はすべて再投資に回す。この「生活と投資の完全分離」を徹底しました。

これにより、投資資産には一切手を付けることなく、まさに雪だるま式に資産が育っていく環境を作り出すことができたのです。

もし私がサイドFIREを選び、生活のために毎月資産を切り崩していたら、雪だるまは大きくなるどころか、むしろ小さくなっていたでしょう。2年で1億円という結果は、絶対にあり得ませんでした。

ワケ②:「プチ暴落」をチャンスに変える精神的安定

年に一度あるかないかの「〇〇ショック」といった市場のプチ暴落。多くの投資家が恐怖で資産を手放してしまう局面です。しかし、私にとってそれは「優良資産のバーゲンセール」に他なりませんでした。

なぜ、そんな風に冷静でいられたのか?

それは、会社員として毎月決まった給料が振り込まれる、という絶対的な安心感があったからです。生活が脅かされないため市場の恐怖に飲み込まれることなく、むしろ待機させていた資金で冷静に買い向かうことができました。この暴落時の仕込みが、のちの大きなリターンを生んだのです。

まさに、私の尊敬するウォーレン・バフェット氏が言う、

『皆が恐怖を感じている時に貪欲になり、皆が貪欲な時に恐怖を感じなさい』

を実践できたのです。この精神的な安定こそ、会社員を続けたからこそ得られた、最大の強みでした。

ワケ③:「10年間、市場が閉まってもいい」という長期視点

コロナショックの時、私は「焦りがいかに大きな損失を生むか」を痛いほど学びました。その経験から、短期的な株価の上下で一喜憂するのはやめ、「今後10年間、市場が閉鎖されても気にしない」と思えるほどの、心から信頼できる優良な資産だけを持つことを徹底しました。

不思議なもので、そのくらいの“軽い気持ち”でいる方が、日々の細かな値動きが気にならなくなり、結果としてどっしりと構え、資産を持ち続けることができました。

これもバフェット氏の哲学ですが、

『素晴らしい企業をそこそこの価格で買うことは、そこそこの企業を素晴らしい価格で買うことより、はるかに優れている』

という言葉を信じ、目先の安値を探すより、「素晴らしい資産を持ち続ける」ことだけを重視しました。

もちろん、この2年間、市場が全体的に好調だったという幸運が味方したことは間違いありません。しかし、幸運の女神は準備ができた者にしか微笑まない、とも言います。いつ市場の追い風が吹いてもいいように、長期視点で優良資産を握りしめていたからこそ、その恩恵を最大限に受けることができたのだと確信しています。


結論:5000万円はゴールではない。あなたの年代に合った「次の一手」を

資産5000万円は、人生の上がりを意味するゴールテープではありません。
それは、あなたの人生を、より豊かに、より自由にデザインするための強力なスタートラインです。

画一的なFIREの理想像に惑わされず、ご自身の年齢、家族、そして価値観に合った「資産5000万円の活かし方」を見つけることが、何よりも大切です。

最後に、年代別のメッセージを贈らせてください。

  • 30代・40代のあなたへ
    あなたは今、本当の経済的自由へと続く滑走路に立っています。守りに入って小さな満足を得るのではなく、もう一段上の、誰にも気兼ねしない最高の景色を目指しましょう!
  • 50代のあなたへ
    あなたは今、人生の後半を自分らしくデザインするための、素晴らしい切符を手にしました。お金のためだけでない、心から充実できる働き方を見つけて、豊かな時間を過ごしてください。
  • 60代のあなたへ
    お金の心配はもうありません。ただし、現金ではなく最低限、日本の長期国債や米国債などへの投資を中心に、安全重視の運用を続けましょう。それが万が一の支えになりますし、資産を切り崩さずに老後を乗り切る力になるでしょう。

【追伸】資産5000万円で浮かれる前に。あえて伝えたい3つの厳しい現実

ここまで、私の体験に基づいた年代別の戦略をお話ししてきました。しかし最後に、あなたが真の経済的自由を手に入れるために、どうしてもお伝えしておきたい「厳しい現実」が3つあります。

これは、かつての私自身も直面し、肝に銘じてきたことです。

苦言①:あなたの「5000万円」、本当に“戦える資産”ですか?

一口に「資産5000万円」と言っても、その中身(ポートフォリオ)は人それぞれです。そして、その中身こそが決定的に重要です。

  • 現金や預金ばかりではありませんか?
    インフレが進む現代では、現金の価値は年々目減りします。5000万円が10年後、今と同じ価値を保っている保証はどこにもありません。「守っている」つもりが、実は「緩やかに失っている」状態かもしれません。
  • 特定の値上がり期待株に集中投資していませんか?
    私の「2年で1億円」という話も、相場環境という「運」の要素が大きかったことは否定できません。特定の銘柄への集中投資は、大きなリターンを生む可能性がある一方、資産を半分以下にするリスクも常に内包しています。それは「運用」ではなく「投機(ギャンブル)」に近くなっていないか、自問すべきです。

私が語ってきた戦略は、安定して「寝ていてもお金を生み出す(配当金など)」仕組みが、資産の核として構築されていることが大前提です。あなたの5000万円は、その「質」をクリアできていますか?

苦言②:会社員という「見えない傘」を失う覚悟はできていますか?

FIREやサイドFIREを考えるとき、私たちは給料という「収入」ばかりに目を向けがちです。しかし、本当に大きいのは、会社が提供してくれている「見えない傘」です。

  • 税金と社会保険の現実
    会社を辞めれば、これまで会社が半分負担してくれていた健康保険厚生年金を、全額自分で支払うことになります。特に国民健康保険料は、前年の所得を基に計算されるため、退職した翌年に高額な請求が来て驚くケースが後を絶ちません。扶養していた家族がいれば、その負担はさらに増します。
  • 社会的信用の低下
    住宅ローンを組む、クレジットカードを作る、賃貸契約を結ぶ…。これらはすべて「会社員」という社会的信用の上で成り立っています。無職(あるいは個人事業主)になった途端、これまで当たり前にできていたことが、途端に難しくなるという現実も知っておくべきです。

この「見えない傘」の価値を正しく計算せずにリタイア計画を立てると、想定外の支出と不便さで、あっという間に計画は破綻します。

苦言③:お金の心配がなくなった後、あなたは何をして生きますか?

これが最も本質的な問いかもしれません。
お金のために働く必要がなくなったとき、人は「生きがい」や「社会との繋がり」という、まったく別の問題に直面します。

  • 「毎日が夏休み」は、本当に幸せか?
    最初の数ヶ月は最高でしょう。しかし、目的のない自由な時間は、やがて苦痛に変わることがあります。世の中の多くの人が働いている平日の昼間に、自分だけが何もしていない…。その状況に、孤独や焦りを感じる人は少なくありません。
  • 家族との関係性
    特に配偶者がいる場合、自分がリタイアして常に家にいることが、相手の生活リズムや精神的な負担になる可能性も考慮すべきです。FIREは自分一人の問題ではなく、家族全体のライフスタイルを根本から変える決断なのです。

資産を築く過程で、リタイアした後に「何をしたいのか」を具体的に描けていないのであれば、それは単なる現実逃避かもしれません。お金は、あくまで人生を豊かにするための「手段」であって、「目的」ではないのです。

これらの厳しい現実は、あなたの夢を壊すために言っているのではありません。
この現実から目をそらさずに、一つ一つ対策を講じることで、あなたの計画は初めて「絵に描いた餅」から「実現可能な未来」に変わるのです。

資産5000万円は、素晴らしい成果です。だからこそ、その大切な資産とあなたの人生を守るために、ぜひこの3つの視点も忘れずにいてください。

この記事を書いた人

大手化学メーカー営業。純資産1億円のサイドFIRE投資家。

20代借金300万から副業と資産運用で人生を逆転。30代で資産1億円を達成し会社に縛られないサイドFIRE生活に。

自身の経験を元にサラリーマンが自由を手に入れるための戦略を語ります。

※SNS無し。ご連絡は「お問い合わせ」からお気軽にどうぞ。

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