先のアマゾンで本を買うときの例で考えると、
- 漫画家(メーカー1)
↓
- 集英社(メーカー2)
↓
- アマゾン(商社) → あなた
「アマゾンに中間マージンを取られたら、漫画本の値段が高くなるじゃん?集英社から漫画本を買ったら安くなるんじゃないの?」
という疑問がでてきます。集英社はあなたに直接本を売るほうが、販売価格も安くできるし、自分の取り分を増やせばアマゾンに売るより儲かるわけですからね。
ただし集英社はあなたに直接販売しません。
アマゾンに販売を代理でやってもらうことは、お互いにとってメリットがあるからですよね?
商社においても同様です。
いつの時代も「商社から買うと手数料が値段に上乗せされて高くなるから、メーカーから直接買うよ」とお客さんから言われるのです。
でも商社が今の時代にも生き残っているのは、何かしらの存在意義があるから。
まずは一般的な議論から入ります。
【一般論】な商社(総合・専門商社)の存在意義5つ
まずは一般論。なんのこっちゃ分からない単語が続きますので、極めて単純に紹介だけします。
①お金だすよ(金融機能)
企業にお金を貸したり、いろいろな事業に出資する役割のこと。
資源権益への投資などが挙げられる。←石油を掘ったり、鉄鉱石を掘ったりするのには何千億円という莫大なお金が必要。普通の企業は、手持ちのお金だけではとてもじゃないけどまかなえないので、株式を発行して出資者を集める。
その株式を買って(出資して)、利益の分配を得る。
②お金の回収もするよ(与信機能)
こちらもお金を貸すのとほぼ同じ。企業が製品を売るとき、お金を回収しなければいけません。ところが、中にはお金を払ってくれない企業もあります。
そうすると「製品を売ったはいいけどお金が回収できない!」という困った状況に…そこで、商社がリスクを取ってメーカーの代わりにお金を回収して、メーカーに支払ってくれます。
商社は仮にお客さんからお金を回収できなくても、メーカーへの支払い義務は発生。従ってメーカーは、リスク無しでお金のないお客さんにも商品を売れるようになります。
このような機能のことを、商社の与信機能といいます。
③モノ運ぶよ(物流機能)
国内だけならまだしも製品を輸出したり、輸入したりするのは結構めんどくさい。船の手配をしたり、いろいろな書類を作成したり…
このようなめんどくさい手続きをメーカーの代わりにやることによって、商社は中間マージンを得ます。
④営業もやるよ(販売代行機能)
「製品を作ったはいいけど、めんどくさくて営業したくない。どうしようか?」というワガママな願いを叶えてくれるのが商社。メーカーの代わりに営業活動をすることによって、中間マージンを得ます。
⑤買い物も任せてね(購買代行機能)
「ウチの会社は原材料を1,000種類も買っているど、1,000社のメーカーを相手にするのはめんどくさい。誰か代わりにやってくれないかなぁ…」
こういう困りごとも商社は解決してくれます。顧客の代わりにまとめて原材料を購入する機能のこと。
それでは一般論を学んだところで、私の考える商社の機能を解説します。
2017年現在、商社の必要性を考える
①~⑤までをみると、これらの機能って本当に必要なの?
という疑問が出ます。
だって、①金融機能は銀行やメーカー、ヘッジファンドがやればよいし、②与信機能はお金回収専門の保険会社があるし、③物流機能はメーカーでも十分に対応できるし、④販売代行機能はメーカーの営業が強化されてきてもはや不要だし、⑤購買代行機能はITシステムの発達で何万種類あろうと管理できる…
こう見ていくと「商社がいないとビジネスが成り立たない、本当に困る…」と言える機能は何一つ無いのです。
でもでも、もう少し身近な例でよく考えてみます。
アマゾンや楽天が無くなったらあなたは困る!?
「アマゾンや楽天は商社的な仕事をしている。」という話を前回の記事でしました。
- アマゾン、楽天、書店=商社
- 漫画家、作者=メーカー
だと考えると、商社的なアマゾン・楽天・書店が無くなったらどうなりますか?
本を買うにも、漫画家から直接買わないといけなくなる。でも漫画家も何億人というお客さんの対応など出来ない…
服を買うにも、中国の生産工場まで買いに行かないといけない…生産会社は1着、2着しか買わないお客さんなど客とはみなされず、門前払い。
ティッシュを買うにも、日本製紙の営業本部に問い合わせしないといけない…けど日本製紙は何億人というお客さんの相手などできない。
商社がいないと困る場合もある
ということで商社がいないと、とても不便な世の中になりませんか?
商社はメーカーの営業を手伝ってくれるし、お客さんの「できるだけ楽に買いたい」という欲求も同時に満たしてくれます。ただ、もちろん商品の値段は商社を経由する分、高くなりますが…
これは上述した商社機能の中では④販売代理機能、⑤購買代理機能ということになります。
ということで「商社不要論」を言うのは簡単ですが、必ずしもそうではなく商社が役に立つケースもあります。
どんな場面で商社が必要になるのか?
商社がどんな場面で役に立って、どんな場面で不要になるか。という議論は長くなるのですが、わかりやすいパターンだけまとめてみます。
商社が不要なケース
- たくさん買ってくれる大事なお客さん。メーカーの営業マンが直接みていないと、開発案件などで乗り遅れるケースがある。また取引額が大きいだけに、商社にマージンを渡すのがもったいない。
- お客さんが「商社を通すな」といってくる場合。ユーザーの命令には従わなければいけません。
- 値段しか見ない、安物買いの客。値段だけで商売が決まるので、商社を通す必要性はゼロ。
商社が必要なケース
- 少ししか買ってくれない客。メーカーの営業マンが見るに値しないお客さんには、商社を積極的に起用します。これは相手の会社が大きい・小さい関係なく、取引額だけで決まります。
- 新規商品開発に消極的な客。イノベイティブでないお客さんにメーカー営業マンが張り付いていても、何も成果を期待できません。メーカーは新たな商品を生み出してなんぼ。このようなメーカー営業マンが見る価値なしの顧客には、商社を起用したほうがベター。
- イランやコロンビアなど、メーカーの営業拠点がない国に売りたいとき。この場合は、メーカーの営業機能がないので、商社に助けを求めます。商社が現地に倉庫を借りて在庫販売してくれたり、営業を代行してくれたり。メーカーにとって、ありがたい存在です。
- お客さん指定の「商社」がある。ユーザーの命令であれば従います。
分かりやすかったです。