「手伝ってください」よりも丁寧な敬語「お力添え」の使い方

「手伝ってください」は目上の人に失礼?ビジネスメールに使えるもっと丁寧な敬語ってなに?

とご心配のあなたへ。

「手伝ってください」はビジネスシーンでは不適切であり「お力添え(読み:おちからぞえ)」をつかったフレーズに言い換えするべきです。

それでは、

「手伝ってください」よりも丁寧な敬語「お力添え」のビジネスシーン(電話・メール・手紙・文書・社内上司・社外取引先・目上・就活・転職)での使い方、例文を紹介します。

「お手伝いください」は敬語として正しい

まずは「手伝ってください」の敬語「お手伝いください」について。なぜ敬語として正しいのかを見ていきます。

敬語としての成り立ちを細かく解説すると…

  1. もとの単語「手伝い」に尊敬語「お・ご」で「お手伝い」
  2. 「くれる」の尊敬語「くださる」の命令形

上記のようにして敬語にしています。

「ください」単体としての意味は命令形「〜してくれ」あるいは願望「〜して欲しい」の丁寧な言いまわしと考えることができます。

「お手伝いください」の「ください」という敬語が問題

が、

問題は「お手伝いください」の「ください」の部分にあり。

なぜなら「ください」は敬語ではあるものの、結局のところ命令形であるために強い口調となるから。

ビジネスシーンにおいては社内メールや親しい取引先への社外メール、あるいは会話シーンに使える丁寧レベル。

ただし使っても失礼にはあたりません。もっと丁寧な敬語フレーズがあるよ、ということです。

あまり親睦のない取引先への社外メールや、きびしい上司・目上へのビジネスメールには言い換えするほうが無難です。

※ 会話や電話シーンよりも相手の見えないビジネスメールでは堅苦しい敬語が好まれます。

「お手伝い」という敬語フレーズもしっくりこない

また、

「お手伝い」つまり「手を貸してほしい」というのも、ビジネスシーンにおいてはイマイチしっくり来ない表現です。

失礼とまでは言わないものの「お手伝い」という言葉は小学生から大人まで万人がつかうフレーズであり、なんとな~く幼稚な感じがするのですよね。

そこで冒頭でも示したとおり、

「お力添え=力を貸すこと・手助けすること」というフレーズを使うとより丁寧な印象のビジネスメールになります。

あくまでも「お手伝いください」に固執するなら「お手伝いくださいますようお願い申し上げます」とする

それでも、

どうしても「お手伝いください」という敬語フレーズを使いたい!というあなたは…

「お手伝いくださいますようお願い申し上げます」
「お手伝いくださいますよう宜しくお願い致します」

といった敬語を使いましょう。

「お手伝いくださいますよう」の「くださいますよう」の敬語はややこしいため、くわしく解説しておきます。

  1. 「くれる」の尊敬語「くださる」の命令形
  2. 丁寧語「ます」
  3. ように

上記のようにして敬語にしています。

繰り返しになりますが、

「ください」は敬語ではあるものの、結局のところ命令形であるために強い口調となります。

そこで「ますようにお願い」と続けることで「お願い」とすり替え、やんわ〜りとした表現にしています。とても丁寧な敬語フレーズと言えますね。

たとえば、

  1. ご査収くださいますようお願いいたします
    意味「よく中身を確認して受け取ってくれるようお願い!」
  2. ご確認くださいますようお願いいたします
    意味「確認してくれるようお願い!」
  3. ご一考くださいますようお願いいたします
    意味「一度考えてくれるようお願い!」
  4. ご検討くださいますようお願いいたします
    意味「検討してくれるようお願い!」
  5. ご容赦くださいますようお願いいたします
    意味「許してくれるようお願い!」

などのようにして使います。

これらはもともと「●●してください」という命令形なのですが、「●●くださいますようお願い〜」を使うことによって相手に強制しないやんわ〜りとした表現となっています。

ビジネスでは下手(したて)に出ることが基本ですので、強い口調を避けるためにこのような使い方をするようになったのだと推測します。

「手伝ってください」の言い換え敬語「お力添え」の意味と使い方

ここまでの解説で、

「手伝ってください」「お手伝いください」が正しい敬語である理由と、正しいにもかかわらず使われない理由がわかりました。

ここからは、

より丁寧な言い換え敬語「お力添え(読み:おちからぞえ)」の意味とビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上など)にふさわしい使い方を、メール例文つきで解説していきます。

お力添えの意味は「手を貸すこと、手助けすること」

「力」を「添える」と書きますのでこのような意味となります。

もとになる単語「力添え」に尊敬語「お・ご」を使うと「お力添え」という敬語の完成。

① 尊敬語とは?
相手をうやまって使う敬語の一種。
相手の行為にたいして使い、自分の行為には使わないことが基本。

敬語の種類はほかに②謙譲語、③丁寧語がある

② 謙譲語とは?
自分をへりくだって下にすることで、相手への敬意をあらわす敬語。
自分の行為に使い、相手の行為には使わないことが基本(例外あり)。

③ 丁寧語とは?
いわゆる「です・ます」口調のこと。

使い方①お願いのビジネスメール結び締め

ビジネスシーン別「お力添え」の使い方と例文。

まずは「お願い、要望、要求」のビジネスメールの結び締め。

たとえば上司に仕事のサポートをお願いをする、手伝いをお願いする・・・などあり。

ようは仕事で誰かの助けがほしいときに「手助けお願いします」みたいな使い方をします。

このようなビジネスシーン(メール・目上・就活・転職ふくむ)では、メール文末の締めくくりに使うと相手への配慮が感じられて好感がもてます。

使い方は以下の例文をご参考にどうぞ。

▼丁寧な「お力添え」の例文

  • 例文「お力添えいただきたく存じます」
    意味は「(相手に)手助けしてもらいたいと思う」
    「いただく」は「もらう」の謙譲語
    「存じる」は「思う」の謙譲語
  • 例文「お力添えのほど何卒よろしくお願いいたします」
    意味は「手助けしてくれるようお願いします」
    「~のほど」は断定を避けるやんわりとした言い方。深い意味はない
    「何卒(なにとぞ)」は「どうか」の意味
  • 例文「お力添え頂ければ幸いです」
    意味は「手助けしてもらえたら嬉しいです」
    「いただく」は「もらう」の謙譲語
  • 例文「お力添えくださいますようお願い申し上げます」
    意味は「手助けしてくれるようお願いします」
    「くださいますよう」は「くれるよう」の意味の敬語
  • 例文「お力添え頂きますようお願い申し上げます」
    意味は「手助けしてもらうようお願いします」

使い方②お礼のビジネスメール(書き出し挨拶)

ビジネスシーン別「お力添え」の使い方と例文。

つづいては「お礼」のビジネスメール。

具体的にはたとえば、仕事を手伝ってもらったことに対するお礼をする、何かのサポートをしてもらった時のお礼・・・などあり。

ようは「手助けしてくれてありがとう」みたいな意味で使います。

このようなビジネスシーン(メール・目上・就活・転職ふくむ)では、メール冒頭のあいさつ文に使うと相手への配慮が感じられて好感がもてます。

使い方は以下の例文をご参考にどうぞ。

▼丁寧な「お力添え」の例文

  • 例文④このたびは弊社の展示会に際してお力添えいただき、ありがとうございました
  • 例文⑤突然のお願いにもかかわらずお力添え賜り、ありがとうございました
    「いただく・賜る」はどちらも「もらう」の謙譲語。ビジネス文書では「賜る」が好まれ、メールでは「いただく」をよく使う。
  • 例文⑥このたびは弊社の展示会に際してお力添えいただき厚くお礼申し上げます
  • 例文⑦突然のお願いにもかかわらず並々ならぬお力添え賜り深謝いたします

使い方③お詫び・謝罪のビジネスメール(書き出し挨拶)

ビジネスシーン別「お力添え」の使い方と例文。

さいごに「お詫び・謝罪」のビジネスシーン。

たとえば仕事を手伝ってもらったのに上手くいかなかったとき・・・などあり。

ようは「手助けしてもらったのに、すみません…」みたいな意味で使います。

このようなビジネスシーン(メール・目上・就活・転職ふくむ)では、メール冒頭のあいさつ文に使うと相手への配慮が感じられて好感がもてます。

使い方は以下の例文をご参考にどうぞ。

▼丁寧な「お力添え」の例文

  • 例文⑧お力添え頂いたにも関わらずこのような結果となり、誠に申し訳ございません。

【注意点】お力添えはこう使う!

つづいて「お力添え」を使うときの注意点を解説します。

なんでもかんでも使うのではなく、ふさわしいビジネスシーンを考えて使いましょう。

前置きに気づかいのフレーズを!

こちらも繰り返しですが「お力添え」の前置きに気づかいのフレーズを使うとより丁寧な印象のメールとなります。

たとえば以下のようなフレーズがあります。

  • 恐縮=申し訳なく思うこと
    「お忙しいところ恐縮ではございますがお力添え〜」
    「お忙しいところ大変恐縮ではございますがお力添え〜」
    「たびたび恐縮ではございますがお力添え〜」
  • 恐れ入る=申し訳なく思う
    「お忙しいところ恐れ入りますがお力添え〜」
    「お忙しいところ大変恐れ入りますがお力添え〜」
    「たびたび恐れ入りますがお力添え〜」
  • お手数=お手間
    「お忙しいところお手数お掛けしますがお力添え〜」
    「お忙しいところ大変お手数ではございますがお力添え〜」
  • 勝手を申し上げる=自分勝手を言う
    「誠に勝手を申し上げますがお力添え〜」

「お力添えください」でもOKだけど…もう少し丁寧に!

「お力添えください」とする人も中にはいますが…私はオススメしません。

「〜してください」は「〜してくれ」の尊敬語「くださる」の命令形であるため敬語としてはOK。目下のヒトにたいする言葉づかいや、社内あてのメールであれば問題ありません。

ですが「〜してください」は結局のところ命令形であるため、どうしても強い表現です。

もっと丁寧なフレーズがあるのですからそちらを使うのが無難。とくに目上のヒトや取引先に何かをお願いするときには相手への気づかいが必要です。

【参考】「取り急ぎお礼まで」を目上の人に使わない理由・丁寧な言い換え

「お願い致します=お願い申し上げます」で言い換えできる

初歩的ではありますが…

「お力添えのほどお願い致します」

「お力添えのほどお願い申し上げます

と言い換えできます。

あるいは「どうか」という意味の「何卒(なにとぞ)」を使って、

「お力添えのほど何卒よろしくお願いいたします」
「お力添えのほど何卒よろしくお願い致します」

としても丁寧です。頭のかたすみに入れておきましょう。

「ご尽力・お力添え」の違いと使い分け

お力添え の類語としてよく使われるフレーズに「ご尽力」があります。

この2つの違いは意味。

「お力添え」の意味は

手を貸すこと、
他人を手助けすること

「お力添えいただきたく存じます」とした場合、
相手に手を貸してもらいたいと思う=手を貸してほしい の意味となる。

「ご尽力」の意味は

力を尽くすこと、
力を出し尽くすこと

「ご尽力いただき、ありがとうございました」とした場合、
力を尽くしてもらい、ありがとう の意味となる。

もともとの意味が違うため、使い方も若干ですが違います。

ご尽力・お力添えの使い分け

ポイントとなる使い方の違いをまとめておきます。

【注意①】ご尽力は お願い・要望には使わない

NG例文「ご尽力いただきますようお願い申し上げます」

→ このシーンでは「お力添え」が正しい

【注意②】ご尽力は お礼・お詫びのみ

正しい例文「ご尽力いただき、ありがとうございます」
正しい例文「ご尽力いただいたにも関わらず申し訳ありません」

ご尽力 を「お願い・要望」のビジネスシーン(手紙・メール・上司・目上)に使わない理由について。

たとえば
NG例文「ご尽力いただきますようお願い申し上げます」とつかった場合、

「力を尽くしてもらうよう、お願い!」

の意味となります。

もっというと
「力を尽くしてくれ!」

というニュアンス。

ところがビジネスシーンで「力を尽くしてくれ!」っておかしくない?

もし相手が目上のひとだったら、
「なんでオレがお前のために力を尽くさなきゃいけない?」

と思われることでしょう。

ということで、
お願いするときのふさわしいフレーズは「お力添え=力を貸すこと」が正しいと言えます。

【例文】お力添えのビジネスメール全文