「ご出発いただけましたら幸いです」は「出発してもらえたら嬉しいです」という意味。
ようは「出発してほしい!」「出発してください!」と言いたいわけですが・・・丁寧な敬語にするとこんな風にややこしい表現になります。
使い方は何かしら出発してほしいときのお願い・依頼ビジネスメール。社内上司や目上にかぎらず社外取引先にもつかえる丁寧なフレーズです。
くわしくは本文にて意味や敬語の種類、ビジネスシーンにふさわしい使い方、ビジネスメール例文、注意点を解説していきます。
※長文になりますので「見出し」より目的部分へどうぞ
この記事の目次
意味
まずは「ご出発いただけましたら幸いです」の意味と敬語について順をおって解説します。
“出発“の意味
出発(しゅっぱつ)の意味は・・・
- 目的地に向かって出かけること。出立 (しゅったつ) 。
- 物事を始めること。また、その始まり。
たとえば、
【例文】18:00に会社を出発した。→「出かける」の意味
【例文】お茶汲み係から出発する。→「始める」の意味
のようにして使います。
“ご出発いただけましたら”の意味は「出発してもらえたら」
まずは前半部分。
「ご出発いただけましたら〜」の意味は…
「出発してもらえたら〜」
このように解釈できます。
「お(ご)〜いただけましたら」は「〜してもらえたら」という意味の敬語(謙譲語+丁寧語)
「〜いただける」は謙譲語「いただく」の可能表現。可能の表現をつかっているので意味としては「〜してもらえる」となります。
おなじような可能の表現にはたとえば、
「泳ぐ → 泳げる」
「書く → 書ける」
「聞く → 聞ける」
などあり。どれも「〜できる」という意味になりますね。
こまかい敬語の解説は長くなるため次項にて。
なお表記は、
漢字表記「ご出発頂けましたら」vs. ひらがな表記「ご出発いただけましたら」の両方ともOK。どちらをつかっても正しい敬語です。
“幸いです”の意味は「嬉しいです、幸せです」
つづいて後半部分。
「幸いです」の意味は…
「嬉しいです」
「幸せです」
このように解釈できます。
もととなる単語は「幸い(さいわい)」であり、丁寧語「です」を使って敬語にしています。
あわせると意味は「出発してもらえたら嬉しいです」
- ご出発 = 出発すること
- ご・お~いただけますと = 「〜してもらえたら」の意味の敬語
- 幸いです= 「幸せです、嬉しいです」の意味
これらの単語を合体させて意味を考えます。
すると「ご出発いただけましたら幸いです」の意味は…
「出発してもらえたら嬉しいです」
のように解釈できます。
ようは「出発してほしい!」「出発してください!」ということなのですが、このままではあまりにストレートすぎて目上や上司・取引先につかうにはイマイチです。
そこで「~してもらえたらと嬉しいです」というように遠回しにして、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズにしています。
そんなに丁寧にお願いする必要あるの?って思うくらい。
目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズですね。
敬語の解説
「ご出発いただけましたら幸いです」を敬語としてみていくと以下のとおりに成り立ちます。
難しいので敬語についてくわしく学ぶ必要のない方はスキップしてください。
- もとになる単語「出発」
- “〜してもらう”の謙譲語”お(ご)〜いただく”で「ご出発いただく」
- 可能形にして「ご出発いただける」
- 丁寧語”ます”をくっつけて「ご出発いただけます」
- 仮定の”たら”をくっつけて「ご出発いただけましたら」
- “嬉しい”の意味である”幸い”に丁寧語”です”をくっつけて「幸いです」
→ すべてあわせると「ご出発いただけましたら幸いです」という敬語の完成
このようにして元になる語「出発」を敬語にしています。つまり敬語としては何もおかしいところはありません。間違いではなく正しい敬語です。
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズになります。
なお「ご出発していただけましたら幸いです」は間違い敬語となりますのでご注意を。「出発していただけましたら幸いです」とすれば正しい敬語ではありますが…
長くなるため理由は省略。
補足
- 漢字表記「ご出発頂けましたら」vs. ひらがな表記「ご出発いただけましたら」の両方ともOK。
- 「〜いただける」は謙譲語「いただく」の可能表現。可能の表現をつかっているので意味としては「〜してもらえる」となります。
ちなみに敬語「お(ご)」は…
- 「自分がご出発する」「相手にご出発いただく」のであれば謙譲語としての使い方。
- 上司・目上・取引先などの「相手がご出発くださる・ご出発になる」のであれば尊敬語としての使い方。
というように2パターンあります。
難しく感じるかたは「お(ご)〜いただく」のセットで謙譲語とおぼえておきましょう。
【使い方】出発の依頼・お願いビジネスメール
つづいて「ご出発いただけましたら幸いです」の使い方について。
ようは「出発してほしい!」「出発してください!」という意味なので、そのような依頼・お願いビジネスメールに使います。
取引先など社外あてに限らず、上司や目上など社内あてのメールにも使える丁寧なフレーズですね。
例文
たとえば、
- 【例文】ご出発いただけましたら幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
- 【例文】ご出発いただけましたら幸いです。よろしくお願い致します。
※ 意味は「出発してもらえたら嬉しいです。よろしく」
のようにして何かの依頼・お願いをともなうビジネス文書やビジネスメールで結び・締めくくりとして使われます。
もちろん結びでなく文章の途中でつかっても丁寧です。
なお「ご了承をいただけましたら幸いです」というように「を」を入れるケースもあります。どちらを使っても正しい敬語です。
ビジネスメール例文(全文)
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「ご出発いただけましたら幸いです」の使い方をビジネスメール例文でご紹介。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
なおビジネスメールにおいては以下の敬語もオススメです。
① それなりに丁寧「ご出発くださいませ」
② 丁寧「ご出発いただければと存じます」
③ かなり丁寧「ご出発いただけましたら幸いです」など
④ ↓とくにビジネスメール結び/文末につかう↓
「ご出発頂きますようお願い申し上げます」
「ご出発くださいますようお願い致します」
「ご出発のほど宜しくお願い致します」
ビジネスメール例文①どのくらいに出発すべきか返信(社外)
メール件名:返信RE:ゴルフコンペのご案内
株式会社ビジネス
営業部 ●●様 (社外取引先)
いつもお世話になっております。
お問合せありがとうございます。
さてご質問の件、高速道路の出口付近で7:00-10:00の間、渋滞が予測されます。最悪の場合には出口付近で1時間ほど待機する恐れがございます。
つきまして、朝7:00までに高速出口を通過できるようお早めにご出発いただけましたら幸いです。
よろしくお願い致します。
************
メール署名
************
ビジネスメール例文②懇親会の誘導をお願いする(社内)
メール件名:【お願い】本日の懇親会
営業部 ●● 課長 (社内目上・上司など)
お疲れ様です。
営業部・ノマドです。
さて本日の懇親会の件、顧客との商談が長引いてしまい時間に間に合いそうにありません。大変申し訳ありません。
そこで大変恐れ入りますが、小職の代わりに皆さんを下記のとおりレストランまでご誘導いただければと存じます。
集合時間:〜
交通手段:タクシー
オフィス組:〜さん、zさん、xさん、〜、計10名
場所:添付にて
なお集合時間を18:30としておりますが皆さんお揃い次第、
お早めにご出発いただければ幸いです。
よろしくお願い致します。
************
メール署名
************
“ご出発いただけますと幸いです”としても丁寧
「ご出発いただけましたら幸いです」と似たような敬語には・・・
- 【例文】ご出発いただけますと幸いです
- 【例文】ご出発いただければ幸いです
もあります。言いたいことは「出発してほしい」であり、どれも丁寧な敬語なので使い分ける必要はありませんが…
いちおう意味と違いについて考えてみます。
“こ出発頂ければ vs. 頂けますと vs. 頂けましたら”の意味と違い
どちらも結局のところ「出発してほしい!」「出発してください!」という意味になるのですが…こまかくは以下のとおり意味と敬語の違いあり。
- 「ご出発いただけますと」だと意味は「出発してもらえると」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+接続助詞”と”
いっぽうで、
- 「ご出発いただけましたら」だと意味は「出発してもらえたら」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+仮定”たら” - 「ご出発いただければ」だと意味は「出発してもらえたら」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+仮定”れば”
となります。
まとめると・・・
謙譲語「いただく」を可能形にすると「いただける」になり、
「いただける」に丁寧語”ます”+接続助詞”と”をくっつけると「いただけますと」になり、
「いただける」に仮定の「れば」をくっつけると「いただければ」になり、
「いただけますと」に仮定の「たら」をくっつけると「いただけましたら」になります。
なお「ご出発をいただけましたら幸いです」というように「を」を入れるケースもあります。どちらを使っても正しい敬語です。
どれも丁寧であり使い分けの必要はない
これまで見てきたように、どの敬語もこのうえなく丁寧なフレーズです。したがって上司など社内の目上はもちろんのこと、社外取引先にもつかえますね。
お好きなフレーズを使えばよく、使い分けする必要はありません。
“ご出発賜れましたら幸いです”だとなお丁寧
さらに死ぬほど丁寧なメールや文書にしたいときには・・・
「いただく」ではなく「賜る(たまわる)」をつかい、
- 【例文】ご出発賜れますと幸いです
- 【例文】ご出発賜れましたら幸いです
とします。
これまで紹介した敬語と言いたいことはおなじ。
ただ、賜る(たまわる)という敬語のほうがよりカチッとした表現になりますので、文書や手紙・公式なビジネスメールでは「賜る」をよく使います。
普段づかいのメールであれば「いただく」で十分に丁寧です。
いちおう意味と違いについて簡単に解説しておきます。
“ご出発頂けましたら vs. ご出発賜れましたら”の意味と違い
どちらも結局のところ「出発してほしい!」「出発してください!」という意味になるのですが…こまかくは以下のとおり意味と敬語の違いあり。
- 「ご出発いただけましたら」だと意味は「出発してもらえたら」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+仮定”たら”
いっぽうで、
- 「ご出発賜れましたら」だと意味は「出発してもらえたら」
→ 敬語は謙譲語“お(ご)~賜る”+可能形+丁寧語”ます”+仮定”たら”
となります。
「お(ご)〜賜る」「お(ご)〜いただく」はどちらも「〜してもらう」の敬語(謙譲語)。
したがって意味としてはどちらも同じです。
ただし「賜る」のほうがよりカチッとした表現になりますので、文書や手紙・公式なビジネスメールでは「賜る」をよく使います。
なお「ご出発を賜れましたら幸いです」というように「を」を入れるケースもあります。どちらを使っても正しい敬語です。
手紙や公式なビジネスメールにおすすめ
これまで見てきたように、どちらの敬語もこのうえなく丁寧なフレーズです。上司など社内の目上はもちろんのこと、社外取引先にもつかえる素晴らしく丁寧な敬語です。
ただ、より堅苦しいというかビジネス文書や手紙むけというか・・・
カチッとした表現は「賜る」のほうです。
本当に死ぬほど丁寧なメールや文書にしたいときに使いましょう。
ほかにも使える丁寧な敬語
これまで紹介した例文のほかにも・・・
似たような言い換え敬語で、おなじように丁寧なフレーズをまとめておきます。
どれも「出発してほしい!」「出発してください!」と依頼・お願いしたいときのビジネスメールに使えます。
『ご出発いただければ幸いです』
「ご出発頂けましたら幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
- 例文「ご出発いただければ幸いです」
意味は『出発してもらえたら嬉しいなぁ、幸せだなぁ』
つまり『出発してもらえたら嬉しいです』
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズですね。
「いただければ」は「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」+可能形+仮定の「~れば」
「幸いです」は「幸い」+丁寧語「です」
というように敬語にしており、目上のひとや上司・社外取引先につかえるとても丁寧なビジネスフレーズです。
『ご出発いただけましたら幸甚に存じます』など
「ご出発頂けましたら幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
あとは「幸い」ではなく「幸甚(こうじん)」をつかい、
- 【例文】ご出発いただければ幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「出発してもらえたら、この上なくありがたく思います/です」 - 【例文】ご出発いただけますと幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「出発してもらえると、とても有り難く思います/です」 - 【例文】ご出発いただけましたら幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「出発してもらえたら、この上なくありがたく思います/です」
とするとより丁寧な敬語になります。
幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
「存じる」は「思う」の謙譲語
「いただければ」は謙譲語「いただく」+可能形+仮定「たら・れば」
「いただけましたら」は謙譲語「いただく」+可能形+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
『ご出発賜れましたら幸甚に存じます』など
「ご出発頂けましたら幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
「いただく」よりもカチッとした敬語「賜る(たまわる)」をつかい、さらに「幸い」よりも大げさな「幸甚(こうじん)」をつかって…
- 【例文】ご出発賜れますと幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「出発してもらえると、この上なくありがたく思います/です」 - 【例文】ご出発賜れましたら幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「出発してもらえたら、この上なくありがたく思います/です」
とするとより丁寧な敬語になります。
幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
「存じる」は「思う」の謙譲語
「賜れますと」は謙譲語「賜る」+可能形+丁寧語「ます」+接続助詞”と”
「賜れましたら」は謙譲語「賜る」+可能形+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
ビジネスメール結びをより丁寧にするコツ
あまり関係ないのかもしれませんが重要なので念のため。
ビジネスメールの文末・結び・締めとして使うことのおおい「ご出発」
ここでは、
ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツをご紹介します。
①メール結びに使うときは「よろしく!」を加えると丁寧
ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツ。
「ご出発いただけましたら幸いです」はそれだけではビジネスメール結び締めとしてイマイチ。
そこで結びにつかう時にはうしろに「よろしく!」的なフレーズを組み合わせて、セットで使うとより丁寧なメール結びになります。
すでに例文にはしましたが…
- 【例文】ご出発いただけましたら幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
- 【例文】ご出発いただけましたら幸いです。よろしくお願い致します。
- 【例文】ご出発いただけましたら幸いです。よろしくお願い申し上げます。
ビジネスメールの結び締めに使うときにはこんな感じにするとよいでしょう。
②どうか・何卒+ご出発
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「ご出発」の前置きに添える丁寧なお願いフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」を使うとより丁寧な印象のメールとなります。
たとえば以下のようなフレーズがあります。
- どうか/どうぞ
例文「どうかご出発くださいますようお願い申し上げます」
例文「どうかご出発くださいますようお願い致します」
例文「どうかご出発いただけましたら幸いです」
例文「どうかご出発いただければと存じます。何卒よろしくお願い申し上げます」 - 何卒(なにとぞ)
例文「何卒ご出発くださいますようお願い申し上げます」
例文「何卒ご出発くださいますようお願い致します」
例文「何卒ご出発いただけましたら幸いです」
例文「何卒ご出発いただければと存じます。よろしくお願い申し上げます」
③恐縮・お手数+ご出発
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「ご出発」の前置きには強調するフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」だけでなく、申し訳なく思う気持ちや、相手を気づかうフレーズをもってきても丁寧です。
たとえば「誠に勝手を申し上げますが」などと組み合わせ、以下例文のようにすると好感がもてますね。上司や目上にはもちろんのこと、取引先のメールにも使える丁寧な例文にしています。
- 恐縮=申し訳なく思うこと
「お忙しいところ恐縮ではございますがご出発〜」
「大変恐縮ではございますがご出発〜」
「たびたび恐縮ではございますがご出発〜」 - 恐れ入る=申し訳なく思う
「お忙しいところ恐れ入りますがご出発〜」
「大変恐れ入りますがご出発〜」
「たびたび恐れ入りますがご出発〜」 - お手数=お手間
「お忙しいところお手数お掛けしますがご出発〜」
「大変お手数ではございますがご出発〜」 - 勝手を申し上げる=自分勝手を言う
「誠に勝手を申し上げますがご出発〜」 - ご無理申し上げる = 無理を言う
「ご無理申し上げますが、何卒ご出発のほどお願い申し上げます」 - ご多忙とは存じますが=忙しいとは思うけど
「ご多忙とは存じますがご出発〜」