ビジネスメールに「納品いただけますでしょうか」は使える?
そもそも二重敬語/間違い敬語じゃないの?
もっと丁寧な敬語ってなに?
とご心配のあなたへ。
ビジネスにおける「納品いただけますでしょうか?」はとくに商談や電話対応で使われる敬語。
二重敬語ではありませんし、間違い敬語でもありません。
100%正しい敬語です。
もちろん、
ビジネスメールに使ってもまったく差し支えありません。
そもそもの意味や正しい敬語であるという根拠、よりビジネスメールにふさわしいカチッとした言い換え敬語など、くわしくは本文にて。
※長文になりますので「見出し」より目的部分へどうぞ
意味
「納品いただけますでしょうか」は「納品してもらえますか?」という意味。
なぜこのような意味になるのか?
そもそもの意味と敬語について順をおって解説していきます。
“納品“の意味は「品物を納入すること」
納品(のうひん)の意味は・・・
品物を納入すること。また、その品物。
たとえば、
【例文】商品を客先へ納品する。
【例文】納品書を商品に添付する。
【例文】トラックで納品したあと、事故に巻き込まれた。
のようにして使います。
“納品いただける”の意味は「納品してもらえる」
まずは前半部分。
「納品いただける」の意味は…
「納品してもらえる」と解釈できます。
“納品”のもとになる単語は”納品”であり、「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)~いただく」をつかって敬語にしています。
「いただける」の部分は謙譲語「いただく」の可能表現をつかっています。可能の表現をつかっているので意味としては「〜してもらえる」となります。
おなじような可能の表現にはたとえば、
「泳ぐ → 泳げる」
「書く → 書ける」
「聞く → 聞ける」
などあり。どれも「〜できる」という意味になりますね。
ちなみに”納品”の「お(ご)」の部分は向かう先を立てるためにつかう敬語であり謙譲語の「お(ご)」です。余談ですが尊敬語にも「お(ご)」の使い方があり混同しがち。
むずかしく感じるかたは「お(ご)●●いただく」のセットで謙譲語とおぼえておきましょう。
※ただし「ご納品いただく」だと気持ちわるいので、ここでは「お(ご)」を省きました。
「ますでしょうか」ってどんな意味?
“納品いただけますでしょうか?”の「ますでしょうか」ってどんな意味でしょうか?
「ますでしょうか」は”①ます”+”②でしょうか“という2つの単語からなります。
- “①ます”はシンプルに丁寧語の「ます」であり深い意味はなく、
- “②でしょうか”は「〜だろうか?」の丁寧語
これらをあわせると「〜ますでしょうか?」の意味は「〜だろうか?」と解釈できます。
この「②でしょうか」は「不明・不確かなことを問い掛ける意を表す」の意味でつかいます。
たとえば、
- 【例文】このカツラは部長のものでしょうか?→「部長のものだろうか?」の意味
- 【例文】今日のオカズは何でしょうか?→「何だろうか?」の意味
- 【例文】つまり、私をクビにするということでしょうか?
- 【例文】本日はお休みでしょうか?→「休みだろうか?」の意味
などあり。
ちなみに、
「納品いただけましたでしょうか?」と過去形にすると「すでに納品してもらえただろうか?」という催促・確認のフレーズになります。
あわせると意味は「納品してもらえるだろうか?」
- 納品 = 納品すること
- お(ご)~いただける = 「〜してもらえる」の意味の敬語(謙譲語)
- ます = 丁寧語であり深い意味はない
- でしょうか =「〜だろうか?」という意味の敬語(丁寧語)
これらの単語を合体させて意味を考えます。
すると「納品いただけますでしょうか」の意味は…
「納品してもらえるだろうか」
「納品してもらえるでしょうか」
のように解釈できます。
ようするに「納品してほしい!」「納品してください!」というあなたの希望をあらわしているのですが、このままではあまりにストレート過ぎて目上や上司に使うにはイマイチです。
そこで遠まわしに「~してもらえますでしょうか?」として、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズにしています。
そんなに丁寧にお願いする必要あるの?って思うくらい。
目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズですね。
丁寧語「ますでしょうか」は二重敬語ではない
ところで「ますでしょうか」って二重敬語なのでしょうか?
「ます」は丁寧語であり、さらに「でしょうか」という丁寧語をくみあわせるから二重敬語だ、という意見があります。
答えは「二重敬語ではない」です。
「~いただけますでしょうか」は「①いただける」「②~だろうか?」という2つの単語にそれぞれ丁寧語をつかっています。
- “①いただける”に丁寧語”ます”で「いただけます」
- “②〜だろうか?”の丁寧語「〜でしょうか?」
- すべてをあわせると「いただけますでしょうか」という敬語となる
→ 2つの単語にそれぞれ丁寧語をつかっているため二重敬語ではない。
(二重敬語とはひとつの語におなじ種類の敬語を二回つかうこと)
よくよく考えてみると…
「納品いただけますでしょうか」が二重敬語になるのでしたら、ビジネスメールの結びで必ずといっていいほど使う「お願い致します」や「お願い申し上げます」も二重敬語になるはずですよね。
「納品してもらえるだろうか?」を敬語にしているため正しい
二重敬語かどうかをチェックする時はもともとの文章を考えるとすぐにわかります。
「納品いただけますでしょうか?」
のもとになる文章は…
「納品してもらえるだろうか?」です。
これまで見てきたように、それぞれの単語に敬語をつかっているため二重敬語にはならないのです。
そもそも二重敬語とは?よくある間違い敬語
で先ほど、
よくある二重敬語のたとえとして「お伺いする」「お伺いいたす」があるとしました。
なぜ二重敬語といえるのか?これらのもとになる文章を考えてみましょう。
「伺う」は「行く・聞く・たずねる」の謙譲語ですので、これらが原文となります。
- 「お伺いする」の元になる文章は「行く・聞く・たずねる」
- 謙譲語「伺う」
- さらに謙譲語「お~する」「お~いたす」
もとになる語「行く・聞く・たずねる」に謙譲語を2回つかっていますね。ひとつの語に同じ種類の敬語を2回つかうことが二重敬語であり、敬語のマナー違反になります。
【使い方】納品してほしい!と伝えるビジネスシーン
「納品いただけますでしょうか」の使い方は…
意味のとおりで何かしら「納品してほしい!」と言いたいビジネスシーンに使います。
①おもに会話・電話対応シーンで使われる
「納品いただけますでしょうか」の使い方その1
「納品いただけますでしょうか」にかぎらず「〜いただけますでしょうか?」という表現はビジネスメールよりも、どちらかというと電話対応や商談・会話シーンで多くつかいますね。
だからと言ってメールにつかったら失礼とかではなく、ビジネスメールでもまぁ違和感はありません。
ようするに上司や目上・社外取引先に「納品してほしい!」と言いたいビジネスシーンであればたいていは使えます。
②ビジネスメールにも使えるけど…
「納品いただけますでしょうか」の使い方その2
わたし個人としてはビジネスメールに「納品いただけますでしょうか?」のような疑問文をつかうのがあまり好きではありません。
そこで、
- 【例文】納品をお願い致します
- 【例文】納品いただきたく存じます
- 【例文】納品いただきたく、お願い致します
- 【例文】納品いただければと存じます
- 【例文】納品いただければ幸いです
など、自分の意思や願望をつたえる敬語を代わりにえらびます(下の例文ほど丁寧な敬語になります)
いっぽうで電話対応や会話では「〜いただけますでしょうか?」や「〜いただけますか?」を多用します。
これは好みで分かれるところ。
おっさん営業マンのたわ言だと思ってスルーしてもらっても構いません。
まぁとにかく、
「〜いただけますでしょうか?」はシーンをえらばずに使える、とても便利な敬語フレーズ。
上司や目上など社内に限らず、取引先など社外にも使える丁寧な敬語ですね。
【敬語の補足】
・「幸いです」は「嬉しいです」の意味
・「存じる」は「思う」の謙譲語
・「いただきたく」は謙譲語「いただく」+希望「~したい」
・「いただければ」は謙譲語「いただく」+可能形+仮定「たら・れば」
③納品いただきますでしょうか?とは言わない
「納品いただけますでしょうか」の使い方その3
きわめて初歩的なことですが…
「納品いただきますでしょうか?」は使えません。
“〜してもらう”の敬語「お(ご)〜いただく」に丁寧語「ます」を組み合わせると「いただきます」というフレーズの完成。
そう考えると「納品してもらうだろうか?」という意味不明な敬語になってしまいます。
相手にお願いしたいのに「納品してもらう」ことを前提にして話を進めてしまっています…
敬語としては正しいのですが日本語としておかしなことになりますね。
そこで、
「納品いただけますでしょうか?」というように「納品してもらえるだろうか」という意味の敬語にする必要があるのです。
ちなみに、
「お(ご)〜いただきます」をどうしても使いたいのでしたら「納品いただきますようお願い致します」とすれば正しい敬語になります。
④納品いただくことは可能でしょうか?でもいいけど…
「納品いただけますでしょうか」の使い方その4
あとはよく使われる敬語として「納品いただくことは可能でしょうか?」もあります。
これも好みの問題ですが…わたしはオススメしません。
「納品いただけますでしょうか?」は「納品してもらえるだろうか」つまり「納品してもらうことは可能でしょうか?」という意味です。
「納品いただくことは可能でしょうか?」とまったくおなじ意味なのですよね。
ということで、わざわざ長ったらしい文章にする必要などなく「納品いただけますでしょうか?」でいいのです。
常にシンプルな敬語をつかうことをオススメします。
“頂けますでしょうか vs 頂けましたでしょうか?”の違い
ところで…
現在形「納品いただけますでしょうか?」だけでなく
過去形「納品いただけましたでしょうか?」という敬語もよくつかわれます。
ここでは過去形にしたときの意味の違いについて簡単に。
納品いただけますでしょうか?は依頼・お願いフレーズ
すでに見てきたとおり、
- 「納品いただけますでしょうか?」は現在形であるため「納品してもらえるだろうか?」というお願い・依頼のフレーズになります。
なんども説明しているとおりで要するに「納品してほしい」「納品してください」と言いたいときにつかう丁寧な敬語フレーズですね。
納品いただけましたでしょうか?は確認・催促フレーズ
いっぽうで、
- 「納品いただけましたでしょうか?」と過去形をつかうと「すでに納品してもらえただろうか?」「もう納品しただろうか?」という催促や確認の意味でつかわれます。
過去形にすると「すでに納品したか?」「納品したのか?」と言いたいときにつかう丁寧な敬語フレーズになります。
ということで、それぞれまったく違う意味になりますのでご留意ください。
シンプルに”納品いただけますか?”でも丁寧
「納品してもらえますか?」とお願い・依頼したいときに使える丁寧な敬語。
「納品いただけますでしょうか」だけでなく…
「納品いただけますか?」という敬語もよくつかいますね。
“いただけますか vs いただけますでしょうか”の違い
「納品いただけますか?」vs「納品いただけますでしょうか?」の意味と違い。
どちらも言いたいことは結局のところ「納品してほしい!」なのですが…
敬語と意味の違いあり。
- “納品いただけますか?”だと意味は「納品してもらえるか?」
→敬語は謙譲語「お(ご)〜いただく」の可能形+丁寧語”ます”
vs.
- “納品いただけますでしょうか?”だと意味は「納品してもらえるだろうか?」
→敬語は謙譲語「お(ご)〜いただく」の可能形+丁寧語”ます”+“だろうか”の丁寧語「でしょうか」
というように意味と敬語の使い方が違います。
が、
結局のところ言いたいことはどちらも全く同じなわけです。
で、どちらを使うかは結局のところあなたの好み。
「〜いただけますでしょうか?」のほうが丁寧な表現ではありますが、バカ丁寧だという意見もあるため「〜いただけますか?」でも差し支えありません。
納品いただけますでしょうか?のほうが丁寧
「納品してもらえるか?=納品いただけますか?」
よりも”だろうか?”をつかって、
「納品してもらえるだろうか?=納品いただけますでしょうか?」
としたほうが丁寧な印象のフレーズとなります。
理由は意味を考えるとよくわかるのですが、
- ①納品いただけますか=納品してもらえるか?
だと相手の事情はおかまいなしに、より直接的に依頼していることになります。
いっぽうで、
- ②納品いただけますでしょうか=納品してもらえるだろうか?
だと相手に納品してもらうことが決まっているわけでは無いため「納品してもらえるだろうか?」と確かめる意味で「〜でしょうか?」を入れて回りくどい言い方をしています。
ビジネスでは回りくどい敬語であればあるほど丁寧だとみられる傾向にあります。
(本質的には間違っているのですが事実なので仕方ないですね…)
ということでどちらが丁寧かは明白です。
ホントに些細なことなので誰も気にしないのでしょうけど…
まぁ結論としては、
敬語の使い方や意味に違いはあれど、どちらもひとしく丁寧な敬語であり目上・上司・社外取引先につかえるフレーズです。
ひとつのオプションとしてお好みでお使いください。
使い分けの例
ちなみに、おっさん営業マンのわたしは相手やシーンによってつかう敬語を変えます。
社外取引先には「納品いただけますでしょうか?」をつかい、
上司や社内の目上には「納品いただけますか?」をつかうといった感じ。
あるいは、
かなり頼みづらいようなことを依頼するときには相手が誰であろうと「納品いただけますでしょうか?」をつかいますね。
※おっさん営業マンのたわ言だと思って無視していただいて構いません。
敬語の解説
「納品いただけますか?」
の敬語の成り立ちとしては…
- “納品”に「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」で「納品いただく」
- 可能形にして「納品いただける」
- さらに丁寧語”ます”で「納品いただけます」
- 疑問形にして「納品いただけますか?」
“〜だろうか”の丁寧語「〜でしょうか」を使うと「納品いただけますでしょうか?」
どちらの表現も謙譲語をうまくつかい、このうえなく丁寧な敬語フレーズとなっていることがわかります。
したがって上司・目上・社外取引先につかえる素晴らしい敬語、と言えるでしょう。
ビジネスメール・会話シーン例文
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「納品いただけますでしょうか?」の使い方をビジネスメール例文でご紹介。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
なお繰り返しにはなりますが…
とくにビジネスメールにおいては以下の敬語もオススメです。
① それなりに丁寧「納品くださいませ」「納品をお願い致します」
② 丁寧「納品いただければと存じます」
③ かなり丁寧「納品いただければ幸いです」
④ とくにビジネスメール結び/文末につかう
「納品いただきますようお願い申し上げます」
「納品くださいますようお願い致します」
「納品のほどお願い致します」
会話シーン例文①何かしら納品してほしい
- 【例文】明日までに納品いただけますでしょうか?
- 【例文】できる限り早く納品いただけますでしょうか?
※「すでに納品しましたか?」と催促・確認するときは過去形「納品いただけましたか?」「納品いただけましたでしょうか?」とすると丁寧。
ビジネスメール例文①納入場所を指定する(社内)
メール件名:納入場所確定の件
業務部 xx様 (社内上司・目上など)
お疲れ様です。
営業部・ノマドです。
さて標記の件、納入場所未定の東レむけ注文(No.xx)に関しまして、納入場所が判明いたしました。下記の住所へ納品いただきますようお願い申し上げます。
住所:xx
宛名:xx
以上
ご不明な点等ございましたら何なりとお申し付けください。
宜しくお願い致します。
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メール署名
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ビジネスメール例文②早く納品してほしい(社外)
メール件名: 納期変更のお願い
ビジネス株式会社
営業部 ○○ 様 (社外取引先)
いつもお世話になっております。
転職・ノマドです。
さて標記の件、先般注文しておりました東レむけ商品A(注文No.xx)に関しまして、納期変更の依頼がございました。
先方xx課長によりますと、使用量が想定を大きく上回っており今すぐにでも欲しいとのことでした。
大変ご無理申し上げますが何卒ご調整の上、お早めに納品いただけますと幸いです。
ご不明な点等ございましたら何なりとお申し付けください。
お取り計らいの程よろしくお願い致します。
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メール署名
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参考記事
- ︎︎ビジネスシーンでの「お願い・依頼」敬語フレーズのすべて
- ︎︎ビジネスシーンでの『お礼・感謝』敬語フレーズのすべて
- ︎︎ビジネスメールにおける断り方のすべて︎
- ︎上司へお願いするときに使える敬語10の言葉と、例文50選
- ︎「いただくことは可能でしょうか?」の敬語、目上の人への使い方