「お引受けいただけましたら幸いです」は「引受けてもらえたら嬉しいです」という意味。
ようは「引受けてほしい!」「引受けてください!」と言いたいわけですが・・・丁寧な敬語にするとこんな風にややこしい表現になります。
使い方は何かしら引受けてほしいときのお願い・依頼ビジネスメール。社内上司や目上にかぎらず社外取引先にもつかえる丁寧なフレーズです。
くわしくは本文にて意味や敬語の種類、ビジネスシーンにふさわしい使い方、ビジネスメール例文、注意点を解説していきます。
※長文になりますので「見出し」より目的部分へどうぞ
意味
まずは「お引受けいただけましたら幸いです」の意味と敬語について順をおって解説します。
“引き受ける”の意味
引き受ける(ひきうける)の意味は・・・
- 自分が責任をもってその物事を受け持つ。
【例文】仕事を引き受ける
【例文】社長を引き受ける
【例文】上司の依頼を引き受ける - あとを受け継ぐ。他に代わってする。
【例文】借金まみれの事業を引き受けた
【例文】事後処理を引き受けましょうか? - 保証する。保証人となる。
【例文】外人の身元を引き受ける
“お引受けいただけましたら”の意味は「引受けてもらえたら」
まずは前半部分。
「お引受けいただけましたら〜」の意味は…
「引受けてもらえたら〜」
このように解釈できます。
「お(ご)〜いただけましたら」は「〜してもらえたら」という意味の敬語(謙譲語+丁寧語)
「〜いただける」は謙譲語「いただく」の可能表現。可能の表現をつかっているので意味としては「〜してもらえる」となります。
おなじような可能の表現にはたとえば、
「泳ぐ → 泳げる」
「書く → 書ける」
「聞く → 聞ける」
などあり。どれも「〜できる」という意味になりますね。
こまかい敬語の解説は長くなるため次項にて。
なお表記は、
漢字表記「お引受け頂けましたら」vs. ひらがな表記「お引受けいただけましたら」の両方ともOK。どちらをつかっても正しい敬語です。
“幸いです”の意味は「嬉しいです、幸せです」
つづいて後半部分。
「幸いです」の意味は…
「嬉しいです」
「幸せです」
このように解釈できます。
もととなる単語は「幸い(さいわい)」であり、丁寧語「です」を使って敬語にしています。
あわせると意味は「引受けてもらえたら嬉しいです」
- お引受け = 引受けること
- ご・お~いただけますと = 「〜してもらえたら」の意味の敬語
- 幸いです= 「幸せです、嬉しいです」の意味
これらの単語を合体させて意味を考えます。
すると「お引受けいただけましたら幸いです」の意味は…
「引受けてもらえたら嬉しいです」
のように解釈できます。
ようは「引受けてほしい!」「引受けてください!」ということなのですが、このままではあまりにストレートすぎて目上や上司・取引先につかうにはイマイチです。
そこで「~してもらえたらと嬉しいです」というように遠回しにして、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズにしています。
そんなに丁寧にお願いする必要あるの?って思うくらい。
目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズですね。
敬語の解説
「お引受けいただけましたら幸いです」を敬語としてみていくと以下のとおりに成り立ちます。
難しいので敬語についてくわしく学ぶ必要のない方はスキップしてください。
- もとになる単語「引受ける」
- “〜してもらう”の謙譲語”お(ご)〜いただく”で「お引受けいただく」
- 可能形にして「お引受けいただける」
- 丁寧語”ます”をくっつけて「お引受けいただけます」
- 仮定の”たら”をくっつけて「お引受けいただけましたら」
- “嬉しい”の意味である”幸い”に丁寧語”です”をくっつけて「幸いです」
→ すべてあわせると「お引受けいただけましたら幸いです」という敬語の完成
このようにして元になる語「引受ける」を敬語にしています。つまり敬語としては何もおかしいところはありません。間違いではなく正しい敬語です。
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズになります。
なお「お引受けしていただけましたら幸いです」は間違い敬語となりますのでご注意を。「引受けていただけましたら幸いです」とすれば正しい敬語ではありますが…
長くなるため理由は省略。
補足
- 漢字表記「お引受け頂けましたら」vs. ひらがな表記「お引受けいただけましたら」の両方ともOK。
- 「〜いただける」は謙譲語「いただく」の可能表現。可能の表現をつかっているので意味としては「〜してもらえる」となります。
ちなみに敬語「お(ご)」は…
- 「自分がお引受けする」「相手にお引受けいただく」のであれば謙譲語としての使い方。
- 上司・目上・取引先などの「相手がお引受けくださる・お引受けになる」のであれば尊敬語としての使い方。
というように2パターンあります。
難しく感じるかたは「お(ご)〜いただく」のセットで謙譲語とおぼえておきましょう。
【使い方】引受けてほしい時の依頼・お願いビジネスメール
つづいて「お引受けいただけましたら幸いです」の使い方について。
ようは「引受けてほしい!」「引受けてください!」という意味なので、そのような依頼・お願いビジネスメールに使います。
取引先など社外あてに限らず、上司や目上など社内あてのメールにも使える丁寧なフレーズですね。
例文
たとえば、
- 【例文】お引受けいただけましたら幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
- 【例文】お引受けいただけましたら幸いです。よろしくお願い致します。
※ 意味は「引受けてもらえたら嬉しいです。よろしく」
のようにして何かの依頼・お願いをともなうビジネス文書やビジネスメールで結び・締めくくりとして使われます。
もちろん結びでなく文章の途中でつかっても丁寧です。
ビジネスメール例文(全文)
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「お引受けいただけましたら幸いです」の使い方をビジネスメール例文でご紹介。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
なおビジネスメールにおいては以下の敬語もオススメです。
① それなりに丁寧「お引受けくださいませ」
② 丁寧「お引受けいただければと存じます」
③ かなり丁寧「お引受けいただけましたら幸いです」など
④ ↓とくにビジネスメール結び/文末につかう↓
「お引受け頂きますようお願い申し上げます」
「お引受けくださいますようお願い致します」
ビジネスメール例文①仕事を引き受けてほしい(社外)
メール件名:リフォーム新規・価格見積のお願い
株式会社ビジネス
営業部 ●● 様
突然のご連絡、大変失礼いたします。
(株)転職にて総務を担当しておりますノマドと申します。
このたびは貴社HPを拝見し、下記条件にて価格見積をお願いしたく連絡いたしました。
記
施工内容:
価 格:
お支払い:
納 期:
その他 :
以上
ご無理申し上げますが上記内容でお引き受けいただけますと幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
***********
メール署名
***********
ビジネスメール例文②新人教育を引き受けてほしい(社内)
メール件名:新人教育に関するお願い
xx課長 (社内上司・目上など)
お疲れ様です。
このたび、4月1日付で新人が配属となります。
そこで経験豊富なxx課長に導入教育をお願い致したく存じます。
よろしければ4月15日の週のどこかで丸一日と考えておりますが、ご都合のほどいかがでしょうか。
なお、新人配属後のスケジュールや大まかな育成計画は添付ファイルをご参照くださいませ。
また内容に特に制約はありませんが、商品や部署の説明などは別途時間を設けております。
何卒お引受けいただけましたら幸いです。
よろしくお願い致します。
——————
メール署名
——————
“お引受け頂けますと幸いです”でも丁寧
「お引受けいただけましたら幸いです」と似たような敬語には・・・
- 【例文】お引受けいただけますと幸いです
もあります。言いたいことは「引受けてほしい」であり、どちらも丁寧な敬語なので使い分ける必要はありませんが…
いちおう意味と違いについて考えてみます。
“お引受け頂けましたら vs. お引受け頂けますと”の意味と違い
どちらも結局のところ「引受けてほしい!」「引受けてください!」という意味になるのですが…こまかくは以下のとおり意味と敬語の違いあり。
- 「お引受けいただけましたら」だと意味は「引受けてもらえたら」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+仮定”たら”
いっぽうで、
- 「お引受けいただけますと」だと意味は「引受けてもらえると」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+接続助詞”と”
となります。
「いただけますと」に仮定の「たら」をくっつけると「いただけましたら」という敬語になります。
※ 接続助詞「と」は助詞の一類。用言・助動詞について、それよりまえの語句をあとの語句に接続し、前後の語句の意味上の関係をしめすはたらきをする。
どちらも丁寧であり使い分けの必要はない
これまで見てきたように、どちらの敬語もこのうえなく丁寧なフレーズです。上司など社内の目上はもちろんのこと、社外取引先にもつかえる素晴らしく丁寧な敬語です。
どちらかお好きな方を使えばよく、使い分けする必要はありません。
“お引受け頂けましたら幸甚に存じます”だとなお丁寧
さらに死ぬほど丁寧なメールや文書にしたいときには・・・
「幸い」ではなく「幸甚(こうじん)」をつかい、
- 【例文】お引受け頂けましたら幸甚に存じます
→ 意味は「引受けてもらえたら、この上なく嬉しく思います」 - 【例文】お引受け頂けましたら幸甚です
→ 意味は「引受けてもらえたら、この上なく嬉しいです」
とするともう、本当に死ぬほど丁寧になります。
※ 幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
※ 存じる(ぞんじる)は「思う」の敬語(謙譲語)
これまで紹介した敬語と言いたいことはおなじ。
ただ、幸甚(こうじん)というフレーズのほうがよりカチッとした表現になりますので、文書や手紙・公式なビジネスメールなど本当に堅苦しい文章にしたいときにオススメです。
普段づかいのメールであれば「幸い」で十分に丁寧です。
いちおう意味と違いについて簡単に解説しておきます。
“幸いです vs. 幸甚です”の意味と違い
どちらも結局のところ「嬉しいです!」「幸せです!」という意味になるのですが…
幸甚(こうじん)のほうがより、嬉しさや幸福度合いを強調したフレーズになります。
つまり「幸甚です」とすると意味は・・・
「とてつもなく嬉しいです!」「大変ありがたいです!」「この上なく幸せです!」という感じになりますね。
手紙や公式なビジネスメールにおすすめ
これまで見てきたように、どちらの敬語もこのうえなく丁寧なフレーズです。上司など社内の目上はもちろんのこと、社外取引先にもつかえる素晴らしく丁寧な敬語です。
ただ、より堅苦しいというかビジネス文書や手紙むけというか・・・
カチッとした表現は「幸甚(こうじん)」のほうです。
本当に死ぬほど丁寧なメールや文書にしたいときに使いましょう。
ほかにも使える丁寧な敬語
これまで紹介した例文のほかにも・・・
似たような言い換え敬語で、おなじように丁寧なフレーズをまとめておきます。
どれも「引受けてほしい!」「引受けてください!」と依頼・お願いしたいときのビジネスメールに使えます。
『お引受けいただければ幸いです』
「お引受け頂けましたら幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
- 例文「お引受けいただければ幸いです」
意味は『引受けてもらえたら嬉しいなぁ、幸せだなぁ』
つまり『引受けてもらえたら嬉しいです』
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズですね。
「いただければ」は「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」+可能形+仮定の「~れば」
「幸いです」は「幸い」+丁寧語「です」
というように敬語にしており、目上のひとや上司・社外取引先につかえるとても丁寧なビジネスフレーズです。
『お引受け頂ければ幸甚に存じます』など
「お引受け頂けましたら幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
- 【例文】お引受けいただければ幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「引受けてもらえたら、とても有り難く思います/有り難いです」 - 【例文】お引受けいただけますと幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「引受けてもらえると、この上なく有り難く思います/有り難いです」 - 【例文】お引受けいただけましたら幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「引受けてもらえたら、この上なく有り難く思います/有り難いです」
なども似たような意味であり、とても丁寧な敬語です。
幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
「存じる」は「思う」の謙譲語
「いただければ」は謙譲語「いただく」+可能形+仮定「たら・れば」
「いただけましたら」は謙譲語「いただく」+可能形+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
『お引受け賜れましたら幸甚に存じます』など
「お引受け頂けましたら幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
「いただく」よりもカチッとした敬語「賜る(たまわる)」をつかい、
- 【例文】お引受け賜れますと幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「引受けてもらえると、この上なく有り難く思います」 - 【例文】お引受け賜れましたら幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「引受けてもらえたら、とても有り難く思います/です」
とするとより丁寧な敬語になります。
幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
「存じる」は「思う」の謙譲語
「賜れますと」は謙譲語「賜る」+可能形+丁寧語「ます」+接続助詞”と”
「賜れましたら」は謙譲語「賜る」+可能形+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
ビジネスメール結びをより丁寧にするコツ
あまり関係ないのかもしれませんが重要なので念のため。
ビジネスメールの文末・結び・締めとして使うことのおおい「お引受け」
ここでは、
ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツをご紹介します。
①メール結びに使うときは「よろしく!」を加えると丁寧
ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツ。
「お引受けいただけましたら幸いです」はそれだけではビジネスメール結び締めとしてイマイチ。
そこで結びにつかう時にはうしろに「よろしく!」的なフレーズを組み合わせて、セットで使うとより丁寧なメール結びになります。
すでに例文にはしましたが…
- 【例文】お引受けいただけましたら幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
- 【例文】お引受けいただけましたら幸いです。よろしくお願い致します。
- 【例文】お引受けいただけましたら幸いです。よろしくお願い申し上げます。
ビジネスメールの結び締めに使うときにはこんな感じにするとよいでしょう。
②どうか・何卒+お引受け
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「お引受け」の前置きに添える丁寧なお願いフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」を使うとより丁寧な印象のメールとなります。
たとえば以下のようなフレーズがあります。
- どうか/どうぞ
例文「どうかお引受けくださいますようお願い申し上げます」
例文「どうかお引受けくださいますようお願い致します」
例文「どうかお引受けいただけましたら幸いです」
例文「どうかお引受けいただければと存じます。何卒よろしくお願い申し上げます」 - 何卒(なにとぞ)
例文「何卒お引受けくださいますようお願い申し上げます」
例文「何卒お引受けくださいますようお願い致します」
例文「何卒お引受けいただけましたら幸いです」
例文「何卒お引受けいただければと存じます。よろしくお願い申し上げます」
③恐縮・お手数+お引受け
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「お引受け」の前置きには強調するフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」だけでなく、申し訳なく思う気持ちや、相手を気づかうフレーズをもってきても丁寧です。
たとえば「誠に勝手を申し上げますが」などと組み合わせ、以下例文のようにすると好感がもてますね。上司や目上にはもちろんのこと、取引先のメールにも使える丁寧な例文にしています。
- 恐縮=申し訳なく思うこと
「お忙しいところ恐縮ではございますがお引受け〜」
「大変恐縮ではございますがお引受け〜」
「たびたび恐縮ではございますがお引受け〜」 - 恐れ入る=申し訳なく思う
「お忙しいところ恐れ入りますがお引受け〜」
「大変恐れ入りますがお引受け〜」
「たびたび恐れ入りますがお引受け〜」 - お手数=お手間
「お忙しいところお手数お掛けしますがお引受け〜」
「大変お手数ではございますがお引受け〜」 - 勝手を申し上げる=自分勝手を言う
「誠に勝手を申し上げますがお引受け〜」 - ご無理申し上げる = 無理を言う
「ご無理申し上げますが、何卒お引受けのほどお願い申し上げます」 - ご多忙とは存じますが=忙しいとは思うけど
「ご多忙とは存じますがお引受け〜」