「お訪ねいただけますと幸いです」は「訪ねてもらえると嬉しいです」という意味。
ようは「訪ねてほしい!」「訪ねてください!」と言いたいわけですが・・・丁寧な敬語にするとこんな風にややこしい表現になります。
使い方は何かしら訪ねてほしいときのお願い・依頼ビジネスメール。社内上司や目上にかぎらず社外取引先にもつかえる丁寧なフレーズです。
くわしくは本文にて意味や敬語の種類、ビジネスシーンにふさわしい使い方、ビジネスメール例文、注意点を解説していきます。
※長文になりますので「見出し」より目的部分へどうぞ
意味
まずは「お訪ねいただけますと幸いです」の意味と敬語について順をおって解説します。
“訪ねる”の意味
訪ねる(たづねる)の意味は・・・
「会うためにその人のいる所に行く。ある目的があってわざわざその場所へ行く。訪問する。おとずれる。」
たとえば、
【例文】友人の自宅を訪ねる
【例文】顧客の工場を訪ねた
【例文】別の機会にお訪ねいただけますか?
のようにして使います。
“お訪ねいただけますと”の意味は「訪ねてもらえると」
まずは前半部分。
「お訪ねいただけますと〜」の意味は…
「訪ねてもらえると〜」
このように解釈できます。
「お(ご)〜いただけますと」は「〜してもらえると」という意味の敬語(謙譲語+丁寧語)
「〜いただける」は謙譲語「いただく」の可能表現。可能の表現をつかっているので意味としては「〜してもらえる」となります。
おなじような可能の表現にはたとえば、
「泳ぐ → 泳げる」
「書く → 書ける」
「聞く → 聞ける」
などあり。どれも「〜できる」という意味になりますね。
こまかい敬語の解説は長くなるため次項にて。
なお表記は、
漢字表記「お訪ね頂けますと」vs. ひらがな表記「お訪ねいただけますと」の両方ともOK。どちらをつかっても正しい敬語です。
“幸いです”の意味は「嬉しいです、幸せです」
つづいて後半部分。
「幸いです」の意味は…
「嬉しいです」
「幸せです」
このように解釈できます。
もととなる単語は「幸い(さいわい)」であり、丁寧語「です」を使って敬語にしています。
あわせると意味は「訪ねてもらえると嬉しいです」
- お訪ね = 訪ねること
- ご・お~いただけますと = 「〜してもらえると」の意味の敬語
- 幸いです= 「幸せです、嬉しいです」の意味
これらの単語を合体させて意味を考えます。
すると「お訪ねいただけますと幸いです」の意味は…
「訪ねてもらえると嬉しいです」
のように解釈できます。
ようは「訪ねてほしい!」「訪ねてください!」ということなのですが、このままではあまりにストレートすぎて目上や上司・取引先につかうにはイマイチです。
そこで「~してもらえると嬉しいです」というように遠回しにして、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズにしています。
そんなに丁寧にお願いする必要あるの?って思うくらい。
目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズですね。
敬語の解説
「お訪ねいただけますと幸いです」を敬語としてみていくと以下のとおりに成り立ちます。
難しいので敬語についてくわしく学ぶ必要のない方はスキップしてください。
- もとになる単語「訪ねる」
- “〜してもらう”の謙譲語”お(ご)〜いただく”で「お訪ねいただく」
- 可能形にして「お訪ねいただける」
- 丁寧語”ます”をくっつけて「お訪ねいただけます」
- 接続助詞”と”をくっつけて「お訪ねいただけますと」
- “嬉しい”の意味である”幸い”に丁寧語”です”をくっつけて「幸いです」
→ すべてあわせると「お訪ねいただけますと幸いです」という敬語の完成
このようにして元になる語「訪ねる」を敬語にしています。つまり敬語としては何もおかしいところはありません。間違いではなく正しい敬語です。
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズになります。
なお「お訪ねしていただけますと幸いです」は間違い敬語となりますのでご注意を。「訪ねていただけますと幸いです」とすれば正しい敬語ではありますが…長くなるため理由は省略。
補足
- 漢字表記「お訪ね頂けますと」vs. ひらがな表記「お訪ねいただけますと」の両方ともOK。
- 「〜いただける」は謙譲語「いただく」の可能表現。可能の表現をつかっているので意味としては「〜してもらえる」となります。
- 接続助詞「と」は助詞の一類。用言・助動詞について、それよりまえの語句をあとの語句に接続し、前後の語句の意味上の関係をしめすはたらきをする。
ちなみに敬語「お(ご)」は…
- 「自分がお訪ねする」「相手にお訪ねいただく」のであれば謙譲語としての使い方。
- 上司・目上・取引先などの「相手がお訪ねくださる・お訪ねになる」のであれば尊敬語としての使い方。
というように2パターンあります。
難しく感じるかたは「お(ご)〜いただく」のセットで謙譲語とおぼえておきましょう。
【使い方】訪ねてほしい時の依頼・お願いビジネスメール
つづいて「お訪ねいただけますと幸いです」の使い方について。
ようは「訪ねてほしい!」「訪ねてください!」という意味なので、そのような依頼・お願いビジネスメールに使います。
取引先など社外あてに限らず、上司や目上など社内あてのメールにも使える丁寧なフレーズですね。
例文
たとえば、
- 【例文】お訪ねいただけますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
- 【例文】お訪ねいただけますと幸いです。よろしくお願い致します。
※ 意味は「訪ねてもらえると嬉しいです。よろしく」
のようにして何かの依頼・お願いをともなうビジネス文書やビジネスメールで結び・締めくくりとして使われます。
もちろん結びでなく文章の途中でつかっても丁寧です。
ビジネスメール例文(全文)
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「お訪ねいただけますと幸いです」の使い方をビジネスメール例文でご紹介。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
なおビジネスメールにおいては以下の敬語もオススメです。
① それなりに丁寧「お訪ねくださいませ」
② 丁寧「お訪ねいただければと存じます」
③ かなり丁寧「お訪ねいただけますと幸いです」など
④ ↓とくにビジネスメール結び/文末につかう↓
「お訪ね頂きますようお願い申し上げます」
「お訪ねくださいますようお願い致します」
ビジネスメール例文①来てほしい(社内)
メール件名:会議開催のお知らせ
関係者 各位 (社内上司・目上など)
お疲れ様です。
先般はありがとうございました。
さてその後、開発プロジェクトXに進捗がありましたのでご報告のため関係者で会議を開催したく存じます。
候補日程は以下を考えておりますが、営業部の皆様のご都合はいかがでしょうか。
なおご足労お掛けいたしますが、場所は研究所といたしたくお訪ねいただきますようお願い致します。
①〜、②〜、③〜
※所要時間2時間ほど
ご多忙のところ恐れ入りますが、
今週中にご返答のほどお願い致します。
************
メール署名
************
※「お訪ね」をつかわずに「ご足労お掛けしますが場所はxxとさせて頂きます」と言い換えても丁寧
※ また「ご訪問」「ご来訪」に言い換えても丁寧
ビジネスメール例文③オフィスまで来訪してほしい(社外)
メール件名: 打合せのお願い(転職・ノマド)
株式会社ビジネス
営業部 ○○ 様
いつもお世話になっております。
株式会社転職・ノマドです。
先般は打合せに際して貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。
さてその後、当社の開発に進捗があり、ご報告のため1時間ほど打合せのお時間を頂戴したく、今週〜来週あたりでいくつか候補日程をいただければと存じます。
なお場所は弊社オフィスといたしたく、ご足労お掛けいたしますが何卒お訪ねいただけましたら幸いです。
また会議の目的等につきまして下記のとおりご案内申し上げます。
記
①目的
・弊社より新製品開発状況のご報告
・今後の開発方向性のお打合せ
②場所
・弊社オフィス
→ご訪問くださいませ
③候補日程
・今週〜来週
④参加者
・弊社●●(上司)、のまど、計2名
以上
お忙しいところ大変恐れ入りますが、
ご検討のほど何卒よろしくお願いいたします。
*********
メール署名
*********
※「お訪ね」をつかわずに「ご足労お掛けしますが場所はxxとさせて頂きます」と言い換えても丁寧
※ また「ご訪問」「ご来訪」に言い換えても丁寧
“お訪ね頂けましたら幸いです”としても丁寧
「お訪ねいただけますと幸いです」と似たような敬語には・・・
- 【例文】お訪ねいただけましたら幸いです
もあります。言いたいことは「訪ねてほしい」であり、どちらも丁寧な敬語なので使い分ける必要はありませんが…
いちおう意味と違いについて考えてみます。
“お訪ね頂けますと vs. お訪ね頂けましたら”の意味と違い
どちらも結局のところ「訪ねてほしい!」「訪ねてください!」という意味になるのですが…こまかくは以下のとおり意味と敬語の違いあり。
- 「お訪ねいただけますと」だと意味は「訪ねてもらえると」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+接続助詞”と”
いっぽうで、
- 「お訪ねいただけましたら」だと意味は「訪ねてもらえたら」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+仮定”たら”
となります。
「いただけますと」に仮定の「たら」をくっつけると「いただけましたら」という敬語になります。
なお「お訪ねをいただけましたら幸いです」というように「を」を入れるケースもあります。どちらを使っても正しい敬語です。
どちらも丁寧であり使い分けの必要はない
これまで見てきたように、どちらの敬語もこのうえなく丁寧なフレーズです。上司など社内の目上はもちろんのこと、社外取引先にもつかえる素晴らしく丁寧な敬語です。
どちらかお好きな方を使えばよく、使い分けする必要はありません。
“お訪ね頂けますと幸甚に存じます”だとなお丁寧
さらに死ぬほど丁寧なメールや文書にしたいときには・・・
「幸い」ではなく「幸甚(こうじん)」をつかい、
- 【例文】お訪ね頂けますと幸甚に存じます
→ 意味は「訪ねてもらえると、この上なく嬉しく思います」 - 【例文】お訪ね頂けますと幸甚です
→ 意味は「訪ねてもらえると、この上なく嬉しいです」
とするともう、本当に死ぬほど丁寧になります。
※ 幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
※ 存じる(ぞんじる)は「思う」の敬語(謙譲語)
これまで紹介した敬語と言いたいことはおなじ。
ただ、幸甚(こうじん)というフレーズのほうがよりカチッとした表現になりますので、文書や手紙・公式なビジネスメールなど本当に堅苦しい文章にしたいときにオススメです。
普段づかいのメールであれば「幸い」で十分に丁寧です。
いちおう意味と違いについて簡単に解説しておきます。
“幸いです vs. 幸甚です”の意味と違い
どちらも結局のところ「嬉しいです!」「幸せです!」という意味になるのですが…
幸甚(こうじん)のほうがより、嬉しさや幸福度合いを強調したフレーズになります。
つまり「幸甚です」とすると意味は・・・
「とてつもなく嬉しいです!」「大変ありがたいです!」「この上なく幸せです!」という感じになりますね。
手紙や公式なビジネスメールにおすすめ
これまで見てきたように、どちらの敬語もこのうえなく丁寧なフレーズです。上司など社内の目上はもちろんのこと、社外取引先にもつかえる素晴らしく丁寧な敬語です。
ただ、より堅苦しいというかビジネス文書や手紙むけというか・・・
カチッとした表現は「幸甚(こうじん)」のほうです。
本当に死ぬほど丁寧なメールや文書にしたいときに使いましょう。
ほかにも使える丁寧な敬語
これまで紹介した例文のほかにも・・・
似たような言い換え敬語で、おなじように丁寧なフレーズをまとめておきます。
どれも「訪ねてほしい!」「訪ねてください!」と依頼・お願いしたいときのビジネスメールに使えます。
『お訪ねいただければ幸いです』
「お訪ね頂けますと幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
- 例文「お訪ねいただければ幸いです」
意味は『訪ねてもらえたら嬉しいなぁ、幸せだなぁ』
つまり『訪ねてもらえたら嬉しいです』
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズですね。
「いただければ」は「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」+可能形+仮定の「~れば」
「幸いです」は「幸い」+丁寧語「です」
というように敬語にしており、目上のひとや上司・社外取引先につかえるとても丁寧なビジネスフレーズです。
『お訪ね頂けますと幸甚に存じます』など
「お訪ね頂けますと幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
- 【例文】お訪ねいただければ幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「訪ねてもらえたら、とても有り難く思います/有り難いです」 - 【例文】お訪ねいただけますと幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「訪ねてもらえると、この上なく有り難く思います/有り難いです」 - 【例文】お訪ねいただけましたら幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「訪ねてもらえたら、この上なく有り難く思います/有り難いです」
なども似たような意味であり、とても丁寧な敬語です。
幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
「存じる」は「思う」の謙譲語
「いただければ」は謙譲語「いただく」+可能形+仮定「たら・れば」
「いただけましたら」は謙譲語「いただく」+可能形+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
『お訪ね賜れますと幸甚に存じます』など
「お訪ね頂けますと幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
「いただく」よりもカチッとした敬語「賜る(たまわる)」をつかい、
- 【例文】お訪ね賜れますと幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「訪ねてもらえると、この上なく有り難く思います」 - 【例文】お訪ね賜れましたら幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「訪ねてもらえたら、とても有り難く思います/です」
とするとより丁寧な敬語になります。
幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
「存じる」は「思う」の謙譲語
「賜れますと」は謙譲語「賜る」+可能形+丁寧語「ます」+接続助詞”と”
「賜れましたら」は謙譲語「賜る」+可能形+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
ビジネスメール結びをより丁寧にするコツ
あまり関係ないのかもしれませんが重要なので念のため。
ビジネスメールの文末・結び・締めとして使うことのおおい「お訪ね」
ここでは、
ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツをご紹介します。
①メール結びに使うときは「よろしく!」を加えると丁寧
ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツ。
「お訪ねいただけますと幸いです」はそれだけではビジネスメール結び締めとしてイマイチ。
そこで結びにつかう時にはうしろに「よろしく!」的なフレーズを組み合わせて、セットで使うとより丁寧なメール結びになります。
すでに例文にはしましたが…
- 【例文】お訪ねいただけますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
- 【例文】お訪ねいただけますと幸いです。よろしくお願い致します。
- 【例文】お訪ねいただけますと幸いです。よろしくお願い申し上げます。
ビジネスメールの結び締めに使うときにはこんな感じにするとよいでしょう。
②どうか・何卒+お訪ね
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「お訪ね」の前置きに添える丁寧なお願いフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」を使うとより丁寧な印象のメールとなります。
たとえば以下のようなフレーズがあります。
- どうか/どうぞ
例文「どうかお訪ねくださいますようお願い申し上げます」
例文「どうかお訪ねくださいますようお願い致します」
例文「どうかお訪ねいただけますと幸いです」
例文「どうかお訪ねいただければと存じます。何卒よろしくお願い申し上げます」 - 何卒(なにとぞ)
例文「何卒お訪ねくださいますようお願い申し上げます」
例文「何卒お訪ねくださいますようお願い致します」
例文「何卒お訪ねいただけますと幸いです」
例文「何卒お訪ねいただければと存じます。よろしくお願い申し上げます」
③恐縮・お手数+お訪ね
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「お訪ね」の前置きには強調するフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」だけでなく、申し訳なく思う気持ちや、相手を気づかうフレーズをもってきても丁寧です。
たとえば「誠に勝手を申し上げますが」などと組み合わせ、以下例文のようにすると好感がもてますね。上司や目上にはもちろんのこと、取引先のメールにも使える丁寧な例文にしています。
- 恐縮=申し訳なく思うこと
「お忙しいところ恐縮ではございますがお訪ね〜」
「大変恐縮ではございますがお訪ね〜」
「たびたび恐縮ではございますがお訪ね〜」 - 恐れ入る=申し訳なく思う
「お忙しいところ恐れ入りますがお訪ね〜」
「大変恐れ入りますがお訪ね〜」
「たびたび恐れ入りますがお訪ね〜」 - お手数=お手間
「お忙しいところお手数お掛けしますがお訪ね〜」
「大変お手数ではございますがお訪ね〜」 - 勝手を申し上げる=自分勝手を言う
「誠に勝手を申し上げますがお訪ね〜」 - ご無理申し上げる = 無理を言う
「ご無理申し上げますが、何卒お訪ねのほどお願い申し上げます」 - ご多忙とは存じますが=忙しいとは思うけど
「ご多忙とは存じますがお訪ね〜」