「ご遠慮いただきますようお願い致します」の意味、敬語の種類、ビジネスシーンにふさわしい使い方、注意点について。
ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。
※長文になりますので「見出し」より目的部分へどうぞ
意味
「ご遠慮いただきますようお願い致します」は直訳すると「遠慮してもらうようお願いします」という意味。
ようは「遠慮してほしい!」「遠慮してください!」と言いたいわけなのですが…
なぜこのような意味になるのか?
そもそもの意味と敬語について順をおって解説していきます。
遠慮の意味は”慎み控えること”
遠慮(読み:えんりょ)のそもそもの意味は…
-
人に対して、言葉や行動を慎み控えること。
-
辞退すること。また、ある場所から引き下がること。
たとえば、
【例文】遠慮なくご連絡ださい →「控える」の意味
【例文】会議室での喫煙はご遠慮ください →「控える」の意味
【例文】飲み会への出席を遠慮いたします →「辞退する」の意味
のようにして使います。
“ご遠慮いただきますよう”の意味は「遠慮してもらうように」
「ご遠慮いただきますよう~」の意味は直訳すると「遠慮してもらうように」
「~してもらう」の敬語(謙譲語)「お(ご)~いただく」をつかい、
さらに丁寧語「ます」+「よう(様)」を組み合わせると「お(ご)~いただきますよう」という敬語になります。
「ますよう」ってどんな意味?
“ご遠慮いただきますよう”の「ますよう」は「(〜する)ように」の意味。
なぜこのような意味になるのでしょうか?
先ほども示しましたが「ますよう」は「①ます+②よう(様)」という2つの単語からなります。
まず前半部分の「ます」はシンプルに丁寧語の「ます」
つづいて後半の「よう(様)」の意味はいろいろありますが…
ここでは「婉曲 (えんきょく) な命令・希望の意を表す」言葉として使われます。
希望をあらわす「よう(様)」にはたとえば、
- 【例文】時間に遅れないよう、ご留意ください
- 【例文】部長に怒られないように気をつける
- 【例文】風邪などお召しになりませんように
などあり。
ちなみに「ように」でも「よう」でも正しい日本語ですが、「ご遠慮いただきますようにお願い致します」はあまり一般的ではありません。
※ なお表記は漢字「ます様に」でも平仮名「ますように」でも、どちらも正しい日本語です。
お願い致します は「お願いする」よりも丁寧な敬語
「お願い致します」の意味は「お願いする」
ただしよりカチッとした敬語「お(ご)~致します」をつかっているため実際にはもっと丁寧なニュアンス。
もととなる単語は「願う」であり、
謙譲語「お(ご)〜致す」を使い「お願い致す」とし、さらに丁寧語「ます」を使って敬語にしています。
「お願い致します」は「よろしくお願い致します」としてもOK。
さらに「どうか」という意味の「何卒(なにとぞ)」を使い「何卒よろしくお願い致します」としても丁寧。
あるいは「お願い申し上げます」に言い換えるとなお丁寧です。
※ なお表記は漢字表記「お願い致します」& ひらがな表記「お願いいたします」のどちらでも構いません。
あわせると意味は「遠慮してもらうよう、お願いします」
- ご遠慮いただく =「遠慮してもらう」の意味の敬語(謙譲語)
- ますよう =「(〜する)ように」の意味の敬語(丁寧語)
- お願い致します = 「お願いする」よりもかしこまった敬語
これらの単語を合体させて意味を考えます。
すると「ご遠慮いただきますようお願い致します」の意味は…
「遠慮してもらうように、お願いします」
のように解釈できます。
ようするに「遠慮してほしい!」「遠慮してください!」というあなたの希望をあらわしているのですが、このままではあまりにストレート過ぎて目上や上司に使うにはイマイチです。
そこで遠まわりに「~してもらうようにお願い!」として、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズにしています。
そんなに丁寧にお願いする必要あるの?って思うくらい。
目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズですね。
敬語の解説
「ご遠慮いただきますようお願い致します」の敬語の種類についても整理しておきます。
ややこしいので敬語について学ぶ必要のない方はスキップしてください。
- もとになる単語「遠慮」
- 「〜してもらう」の謙譲語”お(ご)〜いただく”で「ご遠慮いただく」
- 丁寧語”ます”をくっつけて「ご遠慮いただきます」
- 希望を表す”よう(様)”で「ご遠慮いただきますよう」
- 「お願いする」よりもかしこまった敬語「お願い致します」
→ あわせると「ご遠慮いただきますようお願い致します」という敬語の完成
上記のようにして元になる語「遠慮」を敬語にしています。つまり敬語としては何もおかしいところはありません。間違いではなく正しい敬語です。
補足
※ 漢字表記「頂きますよう」vs ひらがな表記「いただきますよう」はどちらも正しい
※ 漢字表記「ます様」vs ひらがな表記「ますよう」はどちらも正しい
※ 漢字表記「お願い致します」& ひらがな表記「お願いいたします」のどちらも正しい
ちなみに敬語「お(ご)」は…
- 「自分がご遠慮する」「相手にご遠慮いただく」のであれば謙譲語としての使い方。
- 上司・目上・取引先などの「相手がご遠慮くださる」のであれば尊敬語としての使い方。
というように2パターンあります。
“ご遠慮頂きますよう vs 頂けますよう”の違い
“ご遠慮いただきますようお願い致します”と似たような敬語には…
“ご遠慮いただけますようお願い致します”もあります。
これって何が違うのでしょうか?
念のため「ご遠慮いただきますよう vs ご遠慮いただけますよう」の違いについて簡単に説明しておきます。
意味と敬語の違い
どちらも結局のところ「遠慮してほしい!」「遠慮してください!」という意味になるのですが…こまかくは以下のとおり意味と敬語の違いあり。
- 「ご遠慮いただきますよう」だと意味は「遠慮してもらうよう」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+丁寧語”ます”+希望”よう”
いっぽうで、
- 「ご遠慮いただけますよう」だと意味は「遠慮してもらえるよう」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+希望”よう”
となります。
謙譲語「いただく」に可能表現をつけくわえると「いただける」。
ということなので可能表現をつかうのか、そうでないかという点において違いますね。
可能の表現をつかうと意味としては「〜してもらえるよう」となります。
おなじような可能の表現にはたとえば、
「泳ぐ → 泳げる」
「書く → 書ける」
「聞く → 聞ける」
などあり。どれも「〜できる」という意味になりますね。
“ご遠慮頂けますよう~”のほうが丁寧
「ご遠慮いただきますよう vs ご遠慮いただけますよう」の違い
で結局どちらがより丁寧かというと…
「ご遠慮いただけますよう~」のほうがより丁寧な敬語になります。
可能の表現をつけくわえることによって「もしよかったら遠慮してもらえますか?」というようなニュアンスになるからですね。
よりやわらか~いお願い・依頼のフレーズと解釈できます。
本当に些細なことなので誰も気にしないとは思いますが…
ただ結論としては、
とにかくどちらも上司・社内の目上にかぎらず社外取引先にもつかえる丁寧な敬語です。
ご安心ください。
【使い方】ビジネスメールの結びetc…
つづいて「ご遠慮いただきますようお願い致します」の使い方について。
意味のとおりで何かしら「遠慮してほしい!」「遠慮してください!」と言いたいビジネスシーンに使います。
ただしビジネス会話や電話対応でつかわれることはほとんどなく、ほとんどの場合ビジネスメールで、とくに結び・締め・文末につかいます。
ビジネスメール結び・締め・文末につかう特有のフレーズとお考えください。
※もちろん結びでなくても使えないことはありませんが…
使い方①例文
「ご遠慮いただきますようお願い致します」はたとえば、
- 【例文】どうかご遠慮いただきますようお願い致します
- 【例文】何卒ご遠慮いただきますようお願い致します
- 【例文】大変恐れ入りますが、どうかご遠慮いただきますようお願い致します
のようにして使います。
ほとんどの場合ビジネスメールで、とくに結び・締め・文末としてつかいますね。
まぁようするに「遠慮してほしい!」「遠慮してください!」という意味なのですが丁寧な敬語にすると、こんな風にややこしい文章になります。
使い方②”ご遠慮頂きますようお願い申し上げます”だとなお丁寧
ところでビジネスシーンでは、
「ご遠慮いただきますようお願い致します」としても丁寧ではありますが…
「お願い致します」とおなじ意味の「お願い申し上げます」をつかい、
- 【例文】ご遠慮いただきますようお願い申し上げます
としても丁寧です。
「お願い申し上げます vs. お願い致します」の違いはというと・・・
「お願い申し上げます」は「お願い致します」よりも堅苦しい敬語フレーズとなりますので、とくにカチッとした敬語がもとめられるシーンでよく使います。
- 上司など社内の相手であれば「お願い致します」で十分。
- 社外の相手にはシーンにおうじて「お願い申し上げます」とすると丁寧度UP。
使い方③”どうか・何卒・宜しく”などを添えるとなお丁寧
すでに例文にはしましたが・・・
ビジネスメールを丁寧にするコツとして「どうか・何卒・宜しく」などの語を添えるとより丁寧というか、やわらかい印象のフレーズになります。
どれも深い意味はありませんが、お願い・依頼の際に添える語としてよくつかいますね。
たとえば、
- +どうか
「どうかご遠慮頂きますようお願い致します」
「どうかご遠慮くださいますようお願い致します」
「どうかご遠慮の程お願い申し上げます」 - +何卒(なにとぞ)=どうか
「何卒ご遠慮頂きますようお願い致します」
「何卒ご遠慮くださいますようお願い致します」
「ご遠慮のほど何卒お願い申し上げます」 - +宜しく・よろしく
「ご遠慮頂きますよう宜しくお願い致します」
「ご遠慮くださいますよう宜しくお願い致します」
「ご遠慮のほど宜しくお願い申し上げます」 - +何卒/どうか & 宜しく・よろしく
「ご遠慮頂きますよう何卒よろしくお願い致します」
「ご遠慮くださいますよう何卒よろしくお願い致します」
「どうかご遠慮のほど宜しくお願い申し上げます」
のようにすると丁寧です。
なお「何卒・どうか・宜しく」は「何卒お願い致します」のようにお願いの部分にかけても、「何卒ご遠慮〜」のようにご遠慮の部分にかけても、どちらも丁寧です。
また表記は漢字・ひらがなのどちらでも構いませんが、文章のバランスを考えて読みやすいようにしましょう。
“ご遠慮くださいますようお願い致します”でも丁寧
「ご遠慮いただきますようお願い致します」の他にもビジネスメール結び・締め・文末によく使う敬語には、
- 【例文】ご遠慮くださいますようお願い致します
- 【例文】ご遠慮くださいますよう宜しくお願い致します
※意味はどちらも「遠慮してくれるようお願いします」
もあります。
「遠慮してください!」とストレートに言うのではなく遠回しに自分の意思や気持ちをつたえる、とても丁寧なフレーズですね。
ニュアンスとしては「遠慮してください、お願いします」みたいなイメージ。
意味と違い
「ご遠慮いただきますよう」vs「ご遠慮くださいますよう」の意味と違い。
どちらも言いたいことは結局のところ「遠慮してほしい」なのですが…
意味と敬語の使い方に違いあり。以下のような違いがあります。
- 「ご遠慮いただきますよう」だと意味は「遠慮してもらうよう」
→ 敬語は謙譲語”お(ご)~いただく”+丁寧語”ます”+希望”よう”
いっぽうで、
- 「ご遠慮くださいますよう」だと意味は「遠慮してくれるよう」
→ 敬語は尊敬語”お(ご)~くださる”+丁寧語”ます”+希望”よう”
※ 尊敬語「お(ご)~くださる」の意味は「~してくれる」
となります。
「ください」単体としての意味は「〜してくれ」「〜して欲しい」の丁寧な言いまわしと考えることができます。
が、
「ください」は敬語ではあるものの、結局のところ命令形であるために強い口調となります。
そこで「ますようにお願い」と続けることで「お願い」とすり替え、やんわ〜りとした表現にしています。とても丁寧な敬語フレーズと言えますね。
どちらも丁寧であり使い分けの必要なし
で、どちらが丁寧かという話。
結論としてはどちらも丁寧であり使い分けする必要はありません。
どちらかというとビジネスメールの結びには「~くださいますよう」をつかうことが多いのですが…
これは年代によって違いますし地域によっても差があるかと。
若い世代は「いただきますよう」を好み、私のようなおっさんは「くださいますよう」を好む傾向にあり。
ということで心底どちらをつかっても差し支えありません。
シンプルに”ご遠慮のほどお願い致します”でも丁寧
他にもビジネスメール結び・締め・文末によく使う敬語には「ご遠慮のほどお願い致します」もあります。
ビジネスメールではとかく「いただく」「くださる」ばかりになってしまい、文章が気持ち悪くなってしまうのですよね。
そこで活躍するのが「ご遠慮のほどお願い致します」です。
使い方にはたとえば
- 例文「ご遠慮のほどお願い致します」
- 例文「ご遠慮のほど宜しくお願い致します」
などあり。
“ご遠慮のほど”の「ほど」ってどんな意味?
ここで「ご遠慮のほど」の「のほど」は限定を避ける言い方で、意味としては「〜してもらうよう」「〜してくれるよう」と考えることができます。
断定をさけて表現をやわらげるのに用いる語です。
もともと、とくに深い意味はありません。
ビジネスでは下手(したて)に出ることが基本ですので、強い口調を避けるためにこのような使い方をするようになったのだと推測します。
ちなみに「ご遠慮の程」というように漢字をもちいてもOK。あなたのお好みでお使いください。
ビジネスメール例文(全文)
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「ご遠慮いただきますようお願い致します」の使い方をビジネスメール例文でご紹介。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
なおビジネスメールにおいては以下の敬語もオススメです。
① それなりに丁寧「ご遠慮くださいませ」「ご遠慮をお願い致します」
② 丁寧「ご遠慮いただければと存じます」
③ かなり丁寧「ご遠慮いただければ幸いです」
④ とくにビジネスメール結び/文末につかう
「ご遠慮いただきますようお願い致します」
「ご遠慮くださいますようお願い申し上げます」
「ご遠慮のほどお願い致します」
ビジネスメール例文①参加を遠慮してほしい(社内)
メール件名:英語研修の件
営業部 ノマド 部長 (社内上司・目上など)
お疲れ様です。
人事部・xxです。
さて、このたびお申し込みいただきました英語研修ですが、定員に達したためすでに応募を締め切らせて頂いております。
募集を社内掲示板より削除するのを失念しておりこのような事態となりましたこと、お詫び申し上げます。大変申し訳ございません。
つきまして誠に勝手を申し上げますが、
今回は参加をご遠慮いただきますようお願い致します。
以上
次回募集の際には優先してご案内いたしますので、
どうかご容赦の程お願い致します。
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メール署名
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ビジネスメール例文②出席を遠慮してほしい(社外)
メール件名:会社説明会ご応募に関するお詫び
株式会社ビジネス
営業部 xx 部長 (社外取引先)
お世話になります。
(株)転職 人事部・ノマドと申します。
このたびは弊社の会社説明会にご応募いただきありがとうございます。
さて、このたびお申し込みいただきました会社説明会ですが、定員に達したためすでに応募を締め切っております。
募集締め切りのお知らせを失念しておりこのような事態となりましたこと、深くお詫び申し上げます。大変申し訳ございません。
つきまして誠に勝手を申し上げますが、
今回は出席をご遠慮くださいますようお願い致します。
以上
次回募集の際には優先してご案内いたしますので、
どうかご容赦いただけますと幸いです。
よろしくお願い致します。
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メール署名
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ビジネスメール例文③喫煙は遠慮してほしい(社内)
メール件名:8/1 新人研修のお知らせ
2018年度入社の皆さま(社内上司・目上など)
お疲れ様です。
人事部・ノマドです。
さて、すでにご承知のこととは存じますが下記のとおり新人研修を実施いたします。
記
(省略)
※なお研修施設での喫煙はご遠慮いただきますようお願い致します。
以上
ご不明な点等ありましたらお申し付けください。
宜しくお願い致します。
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メール署名
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ビジネスメール例文④マナーを守ってほしい
メール件名:【全社】懇親会開催のご案内
●●グループ
社員の皆さま (社内全員)
お疲れ様です。
幹事を務めさせて頂きます、総務部・ノマドと申します。
さて首記の件、日頃のご慰労をかねて●●グループ全社の懇親会を下記のとおり開催いたします。
仕事では関わることの少ない部署間の交流を深めるための、懇親の場といたしたく存じます。
皆様お誘い合わせの上、ぜひご参加ください。
どうぞよろしくお願いいたします。
記
①日時:1月30日(木)18:30~
※本社1階に18:00集合 → 移動
②場所:●●ホテル15階
※地図を別途添付いたします
③会費:1000円/人(当日受付にて徴収)
④緊急連絡先:
・xxx(幹事・ノマド)
・xxx(副幹事・野間子)
なお会場は貸切となりますが、ホテルには宿泊の方々・ゲストもいらっしゃいます。マナーを欠くような行為はくれぐれもご遠慮いただきますようお願い致します。
以上
************
幹事
総務部 ノマド
************
※「周囲の方々へ十分にご配慮いただきますようお願い申し上げます」というように「ご配慮」をつかった言い換えもOK