「お預かりの程よろしくお願い致します」の意味、敬語の種類、ビジネスシーンにふさわしい使い方(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)、注意点について。
ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。
※長文になりますので「見出し」より目的部分へどうぞ
意味・敬語
「お預かりの程よろしくお願い致します」の意味は「①預かってくれるよう、お願いします」「②預かってもらうよう、お願いします」と2通りの解釈ができます。
なぜこのような意味になるのか?
そもそもの意味と敬語について順をおって解説していきます。
“預かる”の意味
預かる(あずかる)の意味は・・・
- 頼まれて人の身柄や物品を引き受けてその保管や世話をする。
【例文】貴重品はこちらのボックスでお預かりします
【例文】バッグをお預かりいただけますか? - 物事の管理・運営を任される。
【例文】プロジェクトを預かる - 勝負や争いごとなどの間に入って、一切の処理を任せてもらう。
【例文】この件はすべて上司から預かっています - 発表などを差し控える。保留して公にしない。
【例文】キミの辞表はいったん預かるよ
お預かりの程~意味は「預かってくれるよう」
「お預かり」にかぎらず敬語「お(ご)」には①尊敬語もしくは②謙譲語の2パターンあり。
たとえば、
- 上司/目上などの相手が「お預かりくださる」「お預かりだ」→①尊敬語“お(ご)”
- 「自分がお預かりする」「相手にお預かりいただく」→②謙譲語“お(ご)”
というようになります。
ここではどちらの使い方かイマイチはっきりしないですが、とにかくいずれも正しい敬語であるためあまり深く考える必要はありません。
※ なお表記は漢字「お預かりの程」でも、ひらがな表記「お預かりのほど」でもOK
「のほど」ってどんな意味?
ここで「お預かりの程」の「のほど」は断定をさけて表現をやわらげるのに用いる語。
意味としては「〜してもらうよう」「〜してくれるよう」のどちらかに考えることができます。
たとえば、
- ご査収のほどお願い申し上げます
意味「よく中身を確認して受け取るよう、お願い」 - お取り計らいのほどお願い申し上げます
意味「物事をうまく進めてくれるよう、お願い」 - ご検討のほどお願い申し上げます
意味「検討してくれるよう、お願い」 - ご了承のほどお願い申し上げます
意味「了解してくれるよう、お願い」
などのようにして使います。
これらはもともと「●●してください」という命令形なのですが、「〜のほど」を使うことによって相手に強制しないやんわ〜りとした表現となっています。
ビジネスでは下手(したて)に出ることが基本ですので、強い口調を避けるためにこのような使い方をするようになったのだと推測します。
“よろしくお願い致します”は「お願いする」の丁寧な表現
「よろしくお願い致します」の意味はシンプルに「よろしくお願いします」
もととなる単語は「願う」であり謙譲語「お〜いたす」に丁寧語「ます」を使って敬語にしています。
ここでつかう「よろしく」には深い意味はありません。何かを頼むときに添える語です。
なお表記は「よろしく」は「宜しく」というように漢字を用いてもOK。
また「お願いいたします」の表記は平仮名でも漢字でもOK。文章のバランスを考えて読みやすいように使いましょう。
あわせると意味は「預かってくれるよう、お願いします」
- お預かり = 預かること
- のほど = 「〜してもらうよう」あるいは「〜してくれるよう」の意味
- よろしく = 何かを頼むときに添える丁寧な語
- お願い致します = お願いのかしこまった敬語
これらの単語を合体させて意味を考えます。
すると「お預かりの程よろしくお願い致します」の意味は…
「預かってくれるよう、お願いします」
「預かってもらうよう、お願いします」
のように解釈できます。
シンプルに要約すると「預かってほしい!」「預かってください!」という依頼・お願いの敬語フレーズですね。
敬語の種類(ざっくり復習)
① 尊敬語とは?
相手をうやまって使う敬語の一種。
相手の行為にたいして使い、自分の行為には使わないことが基本。
敬語の種類はほかに②謙譲語、③丁寧語がある
② 謙譲語とは?
自分をへりくだって下にすることで、相手への敬意をあらわす敬語。
自分の行為に使い、相手の行為には使わないことが基本(例外あり)。
③ 丁寧語とは?
いわゆる「です・ます」口調のこと。
使い方
つづいて「お預かりの程よろしくお願い致します」の使い方について。
【基本】依頼・お願いビジネスメール結び締め
「お預かりの程よろしくお願い致します」の使い方
ようするに「預かってほしい!」「預かってください!」という意味の丁寧な敬語なので、何かしらの預かりをお願いするビジネスメールにつかいます。
とくにメール文末の結び締めにつかわれることの多い表現ですね。上司や目上など社内にかぎらず取引先など社外あてにも使える丁寧なフレーズ。
なお、メール結び締めにしかつかえないのか?というとそうでもありません。
比較的どんなシーンでもつかえますが、結びでなければ以下のような敬語フレーズをつかうのが一般的です。
- 【例文】お預かりをお願い致します
- 【例文】お預かりいただきたく存じます
→意味は「預かってもらいたいと思います」 - 【例文】お預かりいただければと存じます
→意味は「預かってもらえたらと思います」 - 【例文】お預かりいただければ幸いです
→意味は「預かってもらえたら嬉しいです」
“お預かりの程よろしくお願い申し上げます”としても丁寧
ところでビジネスシーンでは「お預かりの程よろしくお願い致します」で十分に丁寧ですがほかにも「お願い致します」とおなじ意味の「お願い申し上げます」をつかい、
- 【例文】お預かりの程よろしくお願い申し上げます
としても丁寧です。
あるいは「どうか」という意味の「何卒(なにとぞ)」をくっつけて、
- 【例文】お預かりの程何卒よろしくお願い致します
- 【例文】お預かりの程何卒よろしくお願い申し上げます
としても丁寧。
このように基本フレーズの応用でいろいろとつくれます。お好みに応じてお使いください。
“お預かりください”でもOKだけど…もう少し丁寧に!
「お預かりください」とする人も中にはいます。
たしかに敬語としては正しいですし、目上や上司・取引先につかっても失礼にあたるということでは無いのですが…
「お預かりください」だけでなく「お(ご)~ください」という敬語は、つよい口調に感じられることがあります。
なぜなら「ください」は敬語ではあるものの結局のところ命令形であるから。
極端なたとえですが、よく母親が子供に
「はやく片付けなさい!!」
「静かにしなさい!!」
といっているのを耳にします。
「~なさい」は”する”の尊敬語”なさる”の命令形。
尊敬語”くださる”の命令形「お(ご)~ください」と似たような成り立ちです。
どちらかというと「お(ご)~ください」のほうが丁寧ではありますが…どちらも結局のところ命令形であり、上から目線に感じられることがあります。
もちろん人それぞれ、感じ方はことなります。
私のようにまったく気にしない人もいれば気分を損ねる上司・目上もいます。
だからといって敬語は丁寧であればよいというわけでもなく、バカ丁寧だとそれはそれで問題あり(”慇懃無礼”-“いんぎんぶれい”といいます)。
で、
シンプルな敬語をつかいすぎると失礼だと言われたり…
本当にむずかしいのですよね。
ということで、
これまで紹介したように丁寧な敬語フレーズがあるのですからそちらを使うのが無難。とくに目上のヒトや取引先に何かをお願いするときには相手への気づかいが必要です。
【参考】「取り急ぎお礼まで」を目上の人に使わない理由・丁寧な言い換え
“お預かりくださいますようお願い申し上げます”でも丁寧
「お預かりのほどよろしくお願い致します」の他にもビジネスメール結び・締め・文末によく使う敬語には、
- 【例文】お預かりくださいますようお願い申し上げます
- 【例文】お預かりくださいますようお願い致します
※意味はどちらも「預かってくれるようお願いします」
もあります。
「預かってください!」とストレートに言うのではなく遠回しに自分の意思や気持ちをつたえる、とても丁寧なフレーズですね。
ようするに「預かってほしい!」「預かってください!」ということが言いたいわけですが、堅苦しい敬語にするとこんな表現になります。
意味と敬語
「お預かりくださいますよう〜」の意味と敬語について簡単に。
- 「お預かりくださいますよう」の意味は「預かってくれるよう」
→ 敬語は尊敬語”お(ご)~くださる”+丁寧語”ます”+希望”よう”
※ 尊敬語「お(ご)~くださる」の意味は「~してくれる」
「ください」単体としての意味は「〜してくれ」「〜して欲しい」の丁寧な言いまわしと考えることができます。
が、
「ください」は敬語ではあるものの、結局のところ命令形であるために強い口調となります。
そこで「ますようにお願い」と続けることで「お願い」とすり替え、やんわ〜りとした表現にしています。とても丁寧な敬語フレーズと言えますね。
どちらも丁寧であり使い分けの必要なし
「お預かりのほど〜」vs.「お預かりくださいますよう〜」はどちらが丁寧かという話。
結論としてはどちらも丁寧であり使い分けする必要はありません。
ただ何というか、ビジネスメールって「いただく」や「くださる」ばかりになって読みにくくなってしまうのですよね。
そんなときに「〜のほど」はサラッとつかえて、それでいて丁寧なので重宝するフレーズです。
まぁ心底どちらをつかっても差し支えありませんが・・・
“お預かりいただきますようお願い申し上げます”でも丁寧
他にもビジネスメール結び・締め・文末によく使う敬語には、
- 【例文】お預かりいただきますようお願い申し上げます
- 【例文】お預かりいただきますようお願い致します
→ 意味はどちらも「預かってもらうようお願いします」
あるいは可能形「いただける」をつかい、
- 【例文】お預かりいただけますようお願い申し上げます
- 【例文】お預かりいただけますようお願い致します
→ 意味はどちらも「預かってもらえるようお願いします」
もあります。
これまでとおなじく、どれも結局のところ「預かってほしい!」「預かってください!」という意味になるのですが…
丁寧な敬語であり、とくにビジネスメールの文末・締め・結びに活躍するフレーズです。
“お預かり頂きますよう vs 頂けますよう”の違い
“お預かりいただきますようお願い申し上げます”と似たような敬語には…
“お預かりいただけますようお願い申し上げます”もあります。
これって何が違うのでしょうか?
念のため「お預かりいただきますよう vs お預かりいただけますよう」の違いについて簡単に説明しておきます。
- 「お預かりいただきますよう」だと意味は「預かってもらうよう」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+丁寧語”ます”+希望”よう”
いっぽうで、
- 「お預かりいただけますよう」だと意味は「預かってもらえるよう」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+希望”よう”
となります。
謙譲語「いただく」に可能表現をつけくわえると「いただける」。
ということなので可能表現をつかうのか、そうでないかという点において違いますね。
可能の表現をつかうと意味としては「〜してもらえるよう」となります。
おなじような可能の表現にはたとえば、
「泳ぐ → 泳げる」
「書く → 書ける」
「聞く → 聞ける」
などあり。どれも「〜できる」という意味になりますね。
“お預かり頂けますよう~”のほうが丁寧
「お預かりいただきますよう vs お預かりいただけますよう」の違い
で結局どちらがより丁寧かというと…
「お預かりいただけますよう~」のほうがより丁寧な敬語になります。
可能の表現をつけくわえることによって「もしよかったら預かってもらえますか?」というようなニュアンスになるからですね。
よりやわらか~いお願い・依頼のフレーズと解釈できます。
本当に些細なことなので誰も気にしないとは思いますが…
ただ結論としては、
とにかくどちらも上司・社内の目上にかぎらず社外取引先にもつかえる丁寧な敬語です。
ご安心ください。
“お預かり賜りますようお願い申し上げます”だとなお丁寧
いい加減しつこいのですが・・・
もっとも丁寧というか堅苦しい敬語には、
- 【例文】お預かり賜りますようお願い申し上げます
- 【例文】お預かり賜りますようお願い致します
※ 意味はどちらも「預かってもらうようお願いします」
もあります。
“賜る vs いただく”の違い
敬語「賜る(たまわる)」はとくに挨拶などの公式なビジネスメールやビジネス文書でよくつかわれる敬語です。
かしこまった文章、カチッとしたビジネスメールに好まれる敬語は「賜る」をつかったフレーズですね。
「いただく」も同じく「もらう」の謙譲語ではありますが、「賜る」のほうが堅苦しい表現になります。
※ なお「お預かりを賜りますようお願い申し上げます」というように「を」を入れるケースもあります。どちらを使っても正しい敬語です。
ビジネスメール例文
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「お預かりの程よろしくお願い致します」の使い方をビジネスメール例文とともにご紹介。どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
なお蛇足ですが・・・
ビジネスメールにおいては以下の敬語もオススメです。
① それなりに丁寧「お預かりくださいませ」「お預かりをお願い致します」
② 丁寧「お預かりいただければと存じます」
③ かなり丁寧「お預かりいただければ幸いです」
④ とくにビジネスメール結び/文末につかう
「お預かりいただきますようお願い申し上げます」
「お預かりくださいますようお願い致します」
「お預かりのほどお願い致します」
ビジネスメール例文①預かりのお願い返信メール(社外)
メール件名:返信Re: 郵便物到着のご連絡
株式会社ビジネス
営業部 ●●様
いつもお世話になっております。
郵便物の件、承知いたしました。
出張で今週末まで不在にしており、8月18日の18時頃に引き取りに参ります。
大変申し訳ありませんが、それまでお預かりいただけますと幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。
************
メール署名
************
ビジネスメール例文②預かりのお願い返信(社内)
メール件名:返信Re: 宛先間違い郵便物のご連絡
営業部 ●●さん (社内目上)
お疲れ様です。
郵便物の件、承知いたしました。
それでは明日オフィスに戻り次第に貴部署へ伺い、お引き取りいたします。
大変恐れ入りますがしばしお預かりいただきたく、よろしくお願い致します。
************
メール署名
************
ビジネスメール結びをより丁寧にするコツ
あまり関係ないのかもしれませんが重要なので念のため。
ビジネスメールの文末・結び・締めとして使うことのおおい「お預かりのほど~」
ここではビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツをご紹介します。
+前置きに添えるフレーズを!
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「お預かり」の前置きに添える丁寧なお願いフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」を使うとより丁寧な印象のメールとなります。
たとえば以下のようなフレーズがあります。
- どうか
例文「どうかお預かりの程よろしくお願い致します」
例文「どうかお預かりくださいますようお願い申し上げます」
例文「どうかお預かりくださいますようお願い致します」
例文「どうかお預かりいただければ幸いです」
例文「どうかお預かりいただければと存じます。何卒よろしくお願い申し上げます」 - 何卒=どうか
例文「何卒お預かりの程よろしくお願い致します」
例文「何卒お預かりくださいますようお願い申し上げます」
例文「何卒お預かりくださいますようお願い致します」
例文「何卒お預かりいただければ幸いです」
例文「何卒お預かりいただければと存じます。よろしくお願い申し上げます」
+気づかいの敬語フレーズもGood
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「お預かり」の前置きには強調するフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」だけでなく、申し訳なく思う気持ちや、相手を気づかうフレーズをもってきても丁寧です。
たとえば「誠に勝手を申し上げますが」などと組み合わせ、以下例文のようにすると好感がもてますね。上司や目上にはもちろんのこと、取引先のメールにも使える丁寧な例文にしています。
- 恐縮=申し訳なく思うこと
「お忙しいところ恐縮ではございますがお預かり〜」
「大変恐縮ではございますがお預かり〜」
「たびたび恐縮ではございますがお預かり〜」 - 恐れ入る=申し訳なく思う
「お忙しいところ恐れ入りますがお預かり〜」
「大変恐れ入りますがお預かり〜」
「たびたび恐れ入りますがお預かり〜」 - お手数=お手間
「お忙しいところお手数お掛けしますがお預かり〜」
「大変お手数ではございますがお預かり〜」 - 勝手を申し上げる=自分勝手を言う
「誠に勝手を申し上げますがお預かり〜」 - ご無理申し上げる = 無理を言う
「ご無理申し上げますが、何卒お預かりのほどお願い申し上げます」 - ご多忙とは存じますが=忙しいとは思うけど
「ご多忙とは存じますがお預かり〜」