「お受けできかねます」は間違った日本語であり、以下のようなビジネスメールでの使い方はすべて間違いです。
- ×【NG例文】弊社内のリソースが不足しており、お受けできかねます
- ×【NG例文】ご依頼の案件につきましては、お受けできかねます
- ×【NG例文】誠に遺憾ではございますが、お受けできかねます
正しい日本語としては、
- ◎【正しい例文】弊社内のリソースが不足しており、お受けいたしかねます
- ◎【正しい例文】ご依頼の案件につきましては、お受けいたしかねます
- ◎【正しい例文】誠に遺憾ではございますが、お受けいたしかねます
などがあります。
その根拠やそもそもの意味、敬語の種類、ビジネスシーンでの使い方(電話・メール・手紙・文書・社内上司・社外取引先・目上・就活・転職)、ビジネスメール例文などは本文にて。
「お受けできかねます」が間違いである理由
「お受けできかねます」をフツーに直訳すると意味は「引き受けることができます、できません」
できるのかできないのか、どっちだかよく分からないヘンテコな意味になります。
つまり日本語として100%間違っています。
なぜこのような意味になるのか?
そもそもの意味と敬語について順をおって解説していきます。
「〜しかねます」はすでに「〜できません」の意味なのに…
「〜しかねる(兼ねる)」は「~することができない」という意味。
たとえば、
- 【例文】お応えしかねます
意味は「添うことができません」 - 【例文】出席しかねます
意味は「出席することができません」 - 【例文】ご対応しかねます
意味は「対応することができません」
などのようにして使います。ビジネスメールでは例文のように丁寧語「ます」をくっつけて「〜しかねます」として使うのが一般的
ところが「〜できかねます」とした場合…
「~することができます、できません」というヘンテコな意味になります。なぜなら「〜しかねます」にはすでに「できません」という意味があるから。
できかねます = できます + できません
ということで…
「できる + できません」という相反する二つの言葉を同時に使ってしまったフレーズが「できかねます」なのです。
まぁ何となくこうしたい気持ちもわかりますし、実際にビジネスメールでも目にしたことがあります。「いや、意味はわかるけど日本語として間違ってるよ!」と言いたくもなりますが…
意味はわかるので絶対に使うなとは言いません。
「お受けできかねます」の意味は「引き受けることができます、できません」
- お受け=「受け」に謙譲語「お(ご)」
- できかねます = できる+できない
この2つを元にマジメに「お受けできかねます」の意味を考えると…
「引き受けることができます、できません」
のように解釈できます。
もう明らかに日本語としておかしいですよね!?
「引き受けることができない」ビジネスシーンでの正しい敬語
ここまでの解説で「お受けできかねます」が間違った日本語であることがわかりました。
ここからは、
じゃあビジネスシーンで「引き受けることができない」と言いたい時にはどうしたらいいの?
正しい敬語フレーズは?
という点について解消していきます。
『お受けいたしかねます』
「お受けできかねます」を正しい敬語に変換すると…
- 【例文】お受けいたしかねます
意味は「引き受けることができません」
敬語の成り立ちは以下のとおり。
- もとになる単語「引き受ける」
- 「〜する」の謙譲語「お(ご)〜いたす」を使い「お受けいたす」
- 「できない」の意味の「かねる」をくっつけて「お受けいたしかねる」
- 丁寧語「ます」で「お受けいたしかねます」
上司・目上など社内メールにかぎらず社外取引先にも使える丁寧な敬語フレーズです。
使い方はたとえば…
社外取引先から受けられない質問を受けたとき。返答を断るための敬語フレーズとして使います。
『お受けしかねます』
「お受けできかねます」を正しい敬語に変換すると…
- 【例文】お受けしかねます
意味は「引き受けることができません」
敬語の成り立ちは以下のとおり。
- もとになる単語「引き受ける」
- 「〜する」の謙譲語「お(ご)〜する」を使い「お受けする」
- 「できない」の意味の「かねる」をくっつけて「お受けしかねる」
- 丁寧語「ます」で「お受けしかねます」
上司・目上など社内メールにかぎらず社外取引先にも使える丁寧な敬語フレーズです。
より丁寧なのは「お受けいたしかねます」ですが、「お受けしかねます」でもビジネスシーンでは十分に使えます。
『困難でございます』『叶いません』『見送る』を使った敬語フレーズ他
「お受けできかねます」を正しい敬語に変換すると…
ほかにも断りのシーンでは以下の例文もよく使います。
- 【例文】●●によりお受けすることが大変困難でございます
- 【例文】●●によりお受けすることが難しい状況でございます
- 【例文】●●によりお受けすることが叶いません
- 【例文】●●によりお見送りいたします
- 【例文】●●により見送らせていただきます
- 【例文】●●によりお見送りさせていただきます
などいろいろ
「困難でございます」の意味はそのまま「難しいです」
「〜が叶いません」の意味は「〜することができない」
「見送らせていただく」の意味は「見送らせてもらう」
であり、いずれも断りの丁寧な敬語フレーズです。他には「辞退させていただきます=辞退させてもらう」などを使ってもよいでしょう。
「お受けいたしかねます」使い方・ビジネスメール例文
ここまでの解説で「お受けできかねます」が間違った日本語であること、「引き受けることができない」ビジネスシーンでの正しい敬語フレーズがわかりました。
ここからは、
じゃあ正しい敬語「お受けいたしかねます」「お受けしかねます」をどう使うの、という点についてビジネスメール例文をもとにご紹介します。
取引先など社外あてに限らず、上司や目上など社内あてのメールにも使える丁寧な敬語フレーズにしていますのでご参考にどうぞ。
使い方・例文①問合せビジネスメールに返信する
▼「お受けいたしかねます」ビジネスメール例文
たとえば社外取引先から引き受けられない依頼を受けたとき。仕事を断るための敬語フレーズとして使います。
-ビジネスメール例文-
メール件名:返信Re:製品A・新規お引き合い
株式会社ビジネス
資材部 のまど 様
いつもお世話になっております。
株式会社転職・●●です。
このたびはお引き合い頂き誠にありがとうございます。
さてお引き合いの件、製品Aはすでに廃盤となっており、誠に申し訳ございませんがご注文をお受けいたしかねます。
ウェブサイトの情報を更新しておらずご不便お掛けいたしますこと、深くお詫び申し上げます。
なお、製品Aの類似品「製品AB」ですとご注文いただけますが、いかがでしょうか。スペック等の違いにつきましては下記をご参照いただければと存じます。
①スペックの違い〜
②その他の相違点〜
他に私どもにお手伝いできることがございましたら、何なりとお申し付けください。
どうか事情をご高察の上、ご容赦いただけましたら幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。
***********
メール署名
***********
こんな感じでビジネスメールに使うと丁寧ですね。
まぁようするに「引き引き受けることができません!」というシーンであればたいていは使えます。
➡︎ 【ビジネス】丁寧な断りのメール文例(仕事依頼・誘いなどシーン別)
使い方・例文②引き合いビジネスメールに返信する
▼「お受けいたしかねます」ビジネスメール例文
たとえば取引先から「引き合いに回答してほしい!」というような依頼があったとき。回答できない部分について断るための敬語フレーズに使います。
-ビジネスメール例文-
メール件名:返信Re:施工Aお見積りのお願い(社名・名字)
株式会社ビジネス
資材部 のまど 様
お世話になっております。
このたびはお引き合いを頂戴し誠にありがとうございます。
さてご依頼の件、誠に遺憾ではございますが弊社内でのリソースが不足しており、新規案件を進めることが非常に困難であり、お受けいたしかねます。
お引き合い頂いておきながら弊社内の都合によりご迷惑をお掛けしますこと、深くお詫び申し上げます。
また機会がございましたらご依頼いただければと存じます。
どうかご容赦賜りますよう、お願い申し上げます。
***********
メール署名
***********
こんな感じでビジネスメールに使うと丁寧ですね。
まぁようするに「引き引き受けることができません!」というシーンであればたいていは使えます。
➡︎ 【ビジネス】丁寧な断りのメール文例(仕事依頼・誘いなどシーン別)
「お受けいたしかねます」の言い換え敬語
「お受けいたしかねます」の言い換え敬語はいろいろあります。
上司・目上・取引先にも使えそうな例文をできる限りならべておきますのでご参考にどうぞ。
- 【例文】お受けしかねます
- 【例文】お見送りさせて頂きます
- 【例文】見送らせて頂きます
- 【例文】遠慮させて頂きます
断るときにもっとも丁寧というか、一般的なのは「〜いたしかねます」という敬語フレーズ。
断るときにはどんな敬語フレーズを使うかも重要ですが、それよりもビジネスシーンにふさわしい断り方の構成になっていることの方がもっと重要です。
以下の記事にて詳しく解説していますのでご参考にどうぞ。
ビジネスメールにおける断り方の基本
せっかくの機会ですので、ビジネスメールにおける断り方の基本についても少しだけ。
断りの敬語フレーズ基本構成
ビジネスメールにおける丁寧な断り方には一定のルールがあります。
具体的には…
断りの敬語フレーズの基本構成は以下のようになっていると素晴らしいです。
【例文】
前置き① せっかくのお誘いではございますが、
理 由② あいにく先約があり、
断 り③ 今回は遠慮させて頂きます。
【例文】
お詫び④ お心遣いを無にするような返事となりましたこと、深くお詫び申し上げます
こんな感じ。
すると…
-断りのビジネスメール例文-
(前略)
せっかくのお誘いではございますが、あいにく先約があり今回は遠慮させて頂きます。
お心遣いを無にするような返事となりましたこと深くお詫び申し上げます。
(後略)
というような素晴らしい断りの文章となります。
で、あとは応用。
この組み合わせに、
- 前置き①には何を使う?
- 理 由②には何を使う?
- 断 り③どんな断り敬語を使う?
- お詫び④どんなお詫び敬語を使う?
で色々な誘いに対する断りフレーズを作ることができます。
この基本さえマスターしておけば、
あなたの語彙が広がるほどに断るときの敬語の幅も増えていきます。
語り始めるとこれだけでひとつの記事ができてしまうため、代表的なものだけをこれから紹介します。
「仕事の依頼を断る」ときの敬語フレーズ
- 例文「せっかくご依頼を頂いておきながら心苦しい限りではございますが、ご希望納期での対応が非常に難しく、お受けいたしかねます」
- 例文「せっかくの機会ではございますが、より魅力的なお仕事のオファーを受けたため辞退させて頂きます」
- 例文「弊社内のリソースが不足しており誠に不本意ではございますが、本件お見送りさせて頂きます」
- 例文「ご要望の予算内でお応えすることが非常に困難であるため、お受けいたしかねます」
- 例文「せっかくの機会を頂いておきながら非礼この上ないことと存じますが、より魅力的な仕事の紹介があったため、辞退いたします」
「申し出・購入・提案を断る」ときの敬語フレーズ
※「申し出」は謙譲表現であるため「ご提案」「お誘い」「お気遣い」などとシーンごとにふさわしい語に言い換える。
- 例文「せっかくのご提案にも関わらず心苦しい限りではございますが、プロジェクト予算を超過してしまい、今回はお見送りいたしたく存じます」
- 例文「素晴らしいご提案を頂いておきながら誠に遺憾でございますが、より魅力的なオファーがあったためお見送りさせて頂きます」
- 例文「せっかくのご提案ではございますが、弊社内で精査いたしました結果、現時点では不要であるとの判断が下され、今回はお見送りいたします」
- 例文「価格が想定予算を超過しており誠に不本意ではございますが、お見送りさせて頂きます」
- 例文「せっかくのご提案を頂いておきながら非礼この上ないことと存じますが、より魅力的なオファーがあったため、今回はお見送りさせて頂きます」
「誘いを断る」ときの敬語フレーズ
※「都合が悪い」とは言わず、別の表現に言い換える
- 例文「せっかくのお誘いにも関わらず心苦しい限りではございますが、あいにく先約があり、今回は遠慮させて頂きます」
- 例文「せっかくのお誘いなのですが、あいにく出張で不在にしておりお気持ちだけ頂戴いたします」
- 例文「お誘いを頂き至極光栄に存じますが、あいにく外出で不在にしており辞退させて頂きます」
- 例文「お誘いを頂きとても嬉しく存じますが、どうしても外せないプライベートの都合があり今回はお気持ちだけ頂戴いたします」
- 例文「せっかくお誘いを頂いておきながら非礼この上ないことと存じますが、急な出張が決まったためお見送りさせて頂きます」
➡︎【完全版】断りの丁寧な敬語フレーズ100選(誘い・都合が悪いetc)
➡︎【完全版】誘いを断るときの丁寧な敬語フレーズ50選、メール例文
参考記事
➡︎ ビジネス挨拶文の例文50選(文書・メール・年賀状・時候ほか)
➡︎ ビジネスメールでの「拝啓・敬具」の書き方と位置
➡︎「ご厚誼」「ご交誼」「ご高配」「ご厚情」の意味と違い、使い分け
➡︎「教えてください」の代わりに使えるビジネス敬語、メール電話の例文
➡︎「ご教示」「ご教授」の意味と違い、使い方・メール例文
➡︎上司へお願いするときに使える敬語10の言葉と、例文50選
➡︎「いただくことは可能でしょうか?」の敬語、目上の人への使い方