「ご賢察いただければ幸いです」は「察してもらえたら嬉しいです」という意味。
ようは「察してほしい!」「察してください!」と言いたいわけですが・・・丁寧な敬語にするとこんな風にややこしい表現になります。
使い方は何かしら察してほしいときのお願い・依頼ビジネスメール。社内上司や目上にかぎらず社外取引先にもつかえる丁寧なフレーズです。
それでは本文にて、意味や敬語の種類、ビジネスシーンにふさわしい使い方、ビジネスメール例文、注意点を解説していきます。
※長文になりますので「見出し」より目的部分へどうぞ
意味と敬語
「ご賢察いただければ幸いです」は「察してもらえたら嬉しいです」という意味。
ようするに「察してほしい!」「察してください!」と言いたいわけですが…
なぜこのような意味になるのか?
そもそもの意味と敬語について順をおって解説していきます。
“賢察”の意味
賢察(けんさつ)の意味は・・・
「相手を敬って、その人が推察することをいう語。お察し。」
つまり察することを敬っていうフレーズです。
使い方はたとえば、
【例文】どうか事情をご賢察ください。→「察してほしい」の意味
【例文】事情をご賢察のうえ、ご了承いただければ幸いです。→「察してほしい」の意味
のようにして使います。
“ご賢察いただければ”の意味は「察してもらえれば」
まずは前半部分。
「ご賢察いただければ〜」の意味は…
「察してもらえれば〜」
「察してもらえたら〜」
このように解釈できます。
「ご賢察」のもととなる単語は「賢察」であり、「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)~いただく」をつかって敬語にしています。
「いただければ」の部分は謙譲語「いただく」を可能形にして「いただける」とし、さらに仮定「たら・れば」をつかっています。
ここで「ご賢察」の「お(ご)」の部分は向かう先を立てるために使う敬語であり謙譲語の「お(ご)」です。余談ですが尊敬語にも「お(ご)」の使い方があり混同しがち。
難しく感じるかたは「お(ご)●●いただく」のセットで謙譲語とおぼえておきましょう。
なお表記は、
漢字表記「ご賢察頂ければ」vs. ひらがな表記「ご賢察いただければ」の両方ともOK。どちらをつかっても正しい敬語です。
“幸いです”の意味は「嬉しいです、幸せです」
つづいて後半部分。
「幸いです」の意味は…
「嬉しいです」
「幸せです」
このように解釈できます。
もととなる単語は「幸い(さいわい)」であり、丁寧語「です」を使って敬語にしています。
あわせると意味は「察してもらえたら嬉しいです」
- ご賢察 = 察すること
- ご・お~いただければ = 「〜してもらえれば」の意味の敬語
- 幸いです= 「幸せです、嬉しいです」の意味
これらの単語を合体させて意味を考えます。
すると「ご賢察いただければ幸いです」の意味は…
「察してもらえたら嬉しいです」
のように解釈できます。
ようは「察してほしい!」「察してください!」ということなのですが、このままではあまりにストレートすぎて目上や上司・取引先につかうにはイマイチです。
そこで「~してもらえたらと嬉しいです」というように遠回しにして、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズにしています。
そんなに丁寧にお願いする必要あるの?って思うくらい。
目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズですね。
敬語の解説
ややこしいので、これまでの敬語の解説をまとめておきます。
「ご賢察いただければ幸いです」を敬語としてみていくと以下のとおりに成り立ちます。
- もとになる単語「賢察」
- “〜してもらう”の謙譲語”お(ご)〜いただく”で「ご賢察いただく」
- 可能形にして「ご賢察いただける」
- 仮定「たら・れば」をくっつけて「ご賢察いただければ」
- “嬉しい”の意味である”幸い”に丁寧語”です”をくっつけて「幸いです」
→ すべてあわせると「ご賢察いただければ幸いです」という敬語の完成
※漢字表記「ご賢察頂ければ」vs. ひらがな表記「ご賢察いただければ」の両方ともOK。
このようにして元になる語「賢察」を敬語にしています。つまり敬語としては何もおかしいところはありません。間違いではなく正しい敬語です。
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズになります。
なお「ご賢察していただければ幸いです」は間違い敬語となりますのでご注意を。「察していただければ幸いです」とすれば正しい敬語ではありますが…長くなるため理由は省略。
それでは次項より使い方についても見ておきましょう。
【使い方】察してほしい時のビジネスメール
つづいて「ご賢察いただければ幸いです」の使い方について。
ようは「察してほしい!」「察してください!」という意味なので、そのような依頼・お願いビジネスメールに使います。
取引先など社外あてに限らず、上司や目上など社内あてのメールにも使える丁寧なフレーズですね。
たとえば、
- 【例文】ご賢察いただければ幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
- 【例文】ご賢察いただければ幸いです。よろしくお願い致します。
※ 意味は「察してもらえたら嬉しいです。よろしく」
のようにして何かの依頼・お願いをともなうビジネス文書やビジネスメールで結び・締めくくりとして使われます。
もちろん結びでなく文章の途中でつかっても丁寧です。
なお「ご了承をいただければ幸いです」というように「を」を入れるケースもあります。どちらを使っても正しい敬語です。
ビジネスメール例文
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「ご賢察いただければ幸いです」の使い方をビジネスメール例文でご紹介。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
なおビジネスメールにおいては以下の敬語もオススメです。
① それなりに丁寧「ご賢察くださいませ」
② 丁寧「ご賢察いただければと存じます」
③ かなり丁寧「ご賢察いただければ幸いです」など
④ ↓とくにビジネスメール結び/文末につかう↓
「ご賢察頂きますようお願い申し上げます」
「ご賢察くださいますようお願い致します」
「ご賢察のほど宜しくお願い致します」
ビジネスメール例文①メンテお知らせメール(社内)
メール件名: メールシステム・メンテナンスのお知らせ(8/10 AM1:00-6:00)
社員の皆様 (社内上司・目上など)
業務中、大変失礼いたします。
さて、このたびOutlookメールのセキュリティー強化を目的とし、下記のとおりメンテナンスを実施いたします。
記
- 日程
2017年8月10日(金)AM1:00~6:00 - 目的
セキュリティー強化のため - 留意事項
上記期間中、Outlookメールをご利用いただけません。
以上
社員の皆様におかれましては大変ご不便おかけ致しますが、
どうかご賢察の上、ご了承いただければ幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
************
メール署名
************
ビジネスメール例文②事情を察してほしい(社外)
メール件名: 営業時間変更のお知らせ
◯◯株式会社
△△ 様
お世話になっております。
転職会社の転職太郎です。
さて首記の件、夏季休業にともない営業時間を以下のとおりに変更させていただきます。
期間中は大変ご不便おかけ致しますが、
どうか事情をご賢察の上、ご容赦くださいますよう宜しくお願い申し上げます。
記
- 期 間 8月10日から15日まで
- 営業時間 9:00-12:00
※なお8月16日より通常の営業時間となります。
以上
************
メール署名
************
ビジネスメール例文③メンテお知らせメール(社外)
メール件名: システムメンテナンスのお知らせ(8/10 AM1:00-6:00)
◯◯株式会社 御中
貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます。
さて首記の件、
以下日程においてシステムメンテナンスを実施いたします。
- 日程
2017年8月10日(金)AM1:00~6:00 - メンテナンスの影響
人事、配送、販売システムはご利用できません
上記時間帯におきまして
一部システムの利用が制限されます。
お客さまにおかれましては大変ご不便おかけ致しますが、
どうかご賢察いただければ幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
************
メール署名
************
“ご賢察いただけましたら幸いです”としても丁寧
「ご賢察いただければ幸いです」と似たような敬語には・・・
- 【例文】ご賢察いただけましたら幸いです
- 【例文】ご賢察いただけますと幸いです
もあります。言いたいことは「察してほしい」であり、どちらも丁寧な敬語なので使い分ける必要はありませんが…
いちおう意味と違いについて考えてみます。
“こ賢察頂ければ vs. 頂けますと vs. 頂けましたら”の意味と違い
どちらも結局のところ「察してほしい!」「察してください!」という意味になるのですが…こまかくは以下のとおり意味と敬語の違いあり。
- 「ご賢察いただけますと」だと意味は「察してもらえると」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+接続助詞”と”
いっぽうで、
- 「ご賢察いただけましたら」だと意味は「察してもらえたら」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+仮定”たら” - 「ご賢察いただければ」だと意味は「察してもらえたら」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+仮定”れば”
となります。
まとめると・・・
謙譲語「いただく」を可能形にすると「いただける」になり、
「いただける」に丁寧語”ます”+接続助詞”と”をくっつけると「いただけますと」になり、
「いただける」に仮定の「れば」をくっつけると「いただければ」になり、
「いただけますと」に仮定の「たら」をくっつけると「いただけましたら」になります。
なお「ご賢察をいただけましたら幸いです」というように「を」を入れるケースもあります。どちらを使っても正しい敬語です。
どれも丁寧であり使い分けの必要はない
これまで見てきたように、どの敬語もこのうえなく丁寧なフレーズです。したがって上司など社内の目上はもちろんのこと、社外取引先にもつかえますね。
お好きなフレーズを使えばよく、使い分けする必要はありません。
“ご賢察いただけますと幸甚に存じます”だとなお丁寧
さらに死ぬほど丁寧なメールや文書にしたいときには・・・
「幸い」ではなく「幸甚(こうじん)」をつかい、
- 【例文】ご賢察いただけますと幸甚に存じます
→ 意味は「察してもらえると、この上なく嬉しく思います」 - 【例文】ご賢察いただけますと幸甚です
→ 意味は「察してもらえると、この上なく嬉しいです」
とするともう、本当に死ぬほど丁寧になります。
※ 幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
※ 存じる(ぞんじる)は「思う」の敬語(謙譲語)
これまで紹介した敬語と言いたいことはおなじ。
ただ、幸甚(こうじん)というフレーズのほうがよりカチッとした表現になりますので、文書や手紙・公式なビジネスメールなど本当に堅苦しい文章にしたいときにオススメです。
普段づかいのメールであれば「幸い」で十分に丁寧です。
いちおう意味と違いについて簡単に解説しておきます。
“幸いです vs. 幸甚です”の意味と違い
どちらも結局のところ「嬉しいです!」「幸せです!」という意味になるのですが…
幸甚(こうじん)のほうがより、嬉しさや幸福度合いを強調したフレーズになります。
つまり「幸甚です」とすると意味は・・・
「とてつもなく嬉しいです!」「大変ありがたいです!」「この上なく幸せです!」という感じになりますね。
手紙や公式なビジネスメールにおすすめ
これまで見てきたように、どちらの敬語もこのうえなく丁寧なフレーズです。上司など社内の目上はもちろんのこと、社外取引先にもつかえる素晴らしく丁寧な敬語です。
ただ、より堅苦しいというかビジネス文書や手紙むけというか・・・
カチッとした表現は「幸甚(こうじん)」のほうです。
本当に死ぬほど丁寧なメールや文書にしたいときに使いましょう。
ほかにも使える丁寧な敬語
これまで紹介した例文のほかにも・・・
似たような言い換え敬語で、おなじように丁寧なフレーズをまとめておきます。
どれも「察してほしい!」「察してください!」と依頼・お願いしたいときのビジネスメールに使えます。
『ご賢察いただければ幸甚に存じます』など
「ご賢察いただければ幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
「幸い」ではなく「幸甚(こうじん)」をつかい、
- 【例文】ご賢察いただければ幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「察してもらえたら、この上なくありがたく思います/です」 - 【例文】ご賢察いただけますと幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「察してもらえると、とても有り難く思います/です」 - 【例文】ご賢察いただけましたら幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「察してもらえたら、この上なくありがたく思います/です」
なども似たような意味であり、とても丁寧な敬語です。
幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
「存じる」は「思う」の謙譲語
「いただければ」は謙譲語「いただく」+可能形+仮定「たら・れば」
「いただけましたら」は謙譲語「いただく」+可能形+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
『ご賢察賜れますと幸いです』など
「ご賢察いただければ幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
「いただく」よりもカチッとした敬語「賜る(たまわる)」をつかい、
- 【例文】ご賢察賜れますと幸いです
※意味は「察してもらえると嬉しいです」 - 【例文】ご賢察賜れましたら幸いです
※意味は「察してもらえると嬉しいです」
とするとより丁寧な敬語になります。
「お(ご)~いただく」と「お(ご)~賜る(たまわる)」はどちらも「~してもらう」の謙譲語ですが「賜る」のほうがよりかしこまった表現になります。
『ご賢察賜れますと幸甚に存じます』など
「ご賢察いただければ幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
「いただく」よりもカチッとした敬語「賜る(たまわる)」をつかい、さらに「幸い」よりも大げさな「幸甚(こうじん)」をつかって…
- 【例文】ご賢察賜れますと幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「察してもらえると、この上なくありがたく思います/です」 - 【例文】ご賢察賜れましたら幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「察してもらえたら、この上なくありがたく思います/です」
とするとより丁寧な敬語になります。
幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
「存じる」は「思う」の謙譲語
「賜れますと」は謙譲語「賜る」+可能形+丁寧語「ます」+接続助詞”と”
「賜れましたら」は謙譲語「賜る」+可能形+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
ビジネスメールでは”ご賢察のほど”もよく使う
他にもビジネスメールでよく使う敬語には「ご賢察のほど」もあります。
ビジネスメールではとかく「いただく」「くださる」ばかりになってしまい、文章が気持ち悪くなってしまうのですよね。
そこで活躍するのが「ご賢察のほど~」です。
使い方はたとえば、
- 例文「ご賢察のほどお願い申し上げます」
- 例文「ご賢察のほどお願い致します」
などあり。
“ご賢察のほど”の「ほど」ってどんな意味?
ここで「ご賢察のほど」の「のほど」は限定を避ける言い方で、意味としては「〜してもらうよう」「〜してくれるよう」と考えることができます。
断定をさけて表現をやわらげるのに用いる語です。
もともと、とくに深い意味はありません。
ビジネスでは下手(したて)に出ることが基本ですので、強い口調を避けるためにこのような使い方をするようになったのだと推測します。
ちなみに「ご賢察の程」というように漢字をもちいてもOK。あなたのお好みでお使いください。
ビジネスメール結びをより丁寧にするコツ
あまり関係ないのかもしれませんが重要なので念のため。
ビジネスメールの文末・結び・締めとして使うことのおおい「ご賢察」
ここでは、
ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツをご紹介します。
①メール結びに使うときは「よろしく!」を加えると丁寧
ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツ。
「ご賢察いただければ幸いです」はそれだけではビジネスメール結び締めとしてイマイチ。
そこで、
うしろに「よろしく!」的なフレーズを組み合わせて、セットで使うとより丁寧なメール結びになります。
すでに例文にはしましたが…
- 【例文】ご賢察いただければ幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
- 【例文】ご賢察いただければ幸いです。よろしくお願い致します。
- 【例文】ご賢察いただければ幸いです。よろしくお願い申し上げます。
ビジネスメールの結び締めに使うときにはこんな感じにするとよいでしょう。
②どうか・何卒+ご賢察
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「ご賢察」の前置きに添える丁寧なお願いフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」を使うとより丁寧な印象のメールとなります。
たとえば以下のようなフレーズがあります。
- どうか
例文「どうかご賢察くださいますようお願い申し上げます」
例文「どうかご賢察くださいますようお願い致します」
例文「どうかご賢察いただければ幸いです」
例文「どうかご賢察いただければと存じます。何卒よろしくお願い申し上げます」 - 何卒=どうか
例文「何卒ご賢察くださいますようお願い申し上げます」
例文「何卒ご賢察くださいますようお願い致します」
例文「何卒ご賢察いただければ幸いです」
例文「何卒ご賢察いただければと存じます。よろしくお願い申し上げます」
③勝手を申し上げますが+ご賢察
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「ご賢察」の前置きには強調するフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」だけでなく、申し訳なく思う気持ちや、相手を気づかうフレーズをもってきても丁寧です。
たとえば「誠に勝手を申し上げますが」などと組み合わせ、以下例文のようにすると好感がもてますね。上司や目上にはもちろんのこと、取引先のメールにも使える丁寧な例文にしています。
- 勝手を申し上げる=自分勝手を言う
「誠に勝手を申し上げますがご賢察〜」 - ご無理申し上げる = 無理を言う
「ご無理申し上げますが、何卒ご賢察のほどお願い申し上げます」